あなたの臭いは何味ですか?

マロ

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1話

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「スゥウウウ、ハァアアア」

 暗闇の部屋では、誰にも気付かれないようにベッドの上で毛布を被りもぞもぞと蠢く一つの小さな影があった。

「……この鼻にツンとくるような香水と汗臭い匂いが混ざりあった何とも言えない匂い、まさに──楽園オアシス……」

 自身のパーカーに顔をうずめるている銀髪のサラサラストレートヘアーが特徴の小柄で、とても可愛らしい少女は寝転びながら、何やら意味深なこと呟いていた。

「──今日は海岸に行って海風を浴びたけど、神戸港の潮風みたいな味がしたな~。もしかして、神戸に訪れた時に付着した匂いがまだ残ってたり……クンクンっ」

 一般人が尋ねれば、この子なに言っちゃってるの? もしかしなくても、頭のネジを何本かどこかで落としてしまったのかと心配するだろう。……しかし、それは彼女に対して余計な心配である。

 何故なら彼女は──

「ハァ~、今度は何の匂いを嗅ごうかなー。ブラジャー? パンツ? それとも黒タイツ? ハァハァ、スゥーッ、ハァハァ、スゥーッ!! エヘヘヘへッ」
 
 すでに頭のネジが吹き飛んでいるのだからなっ!

 ペタッ、ペタッ、ペタッ、ペタッ

 物思いにふける変態少女の元に近付く階段を上るスリッパの足音。

 コンコンッ

 その人物は、部屋の前で歩みを止め扉を叩いた。

「コマちゃん、ごはんが出来たから降りてらっしゃい」
「はーい!」
「あー、まーた匂い嗅いでたでしょ」
「フェッ!?」

 コマちゃんと言われた少女は体をビクンと震わす。

「嗅ぐのは別に良いけど、ほどほどにしときなさいよ~」

 そう言葉を残しその人物は階段を下りていった。

「……わかってるよ…………」

 コマちゃんは抱きしめていたパーカーを放り投げ、鏡台に置いてあるフローラルの香りのアロマを嗅ぐため手で仰ぐ。
 そして、ピーチやベリーなどのレッドフルーツパンツの香りがするパンツを少々。
 
(うん、悪くない)

 香りを嗅ぎ終えたコマちゃんは懐にパンツをしまい部屋を後にした。

 ピチピチ変態特殊フェチ小学生こと、體神變孃埜《たいしんへんこの》コマキは鼻が利く極度の匂いフェチかつ匂いに味を感じる共感覚の持ち主であり、匂いと臭いに好感があれば男の子も女の子もいける口のアロマ両性愛者である彼女のフェティシスト物語の幕が上がる。



《今回の登場人物》
 體神變孃埜たいしんへんこのコマキ
 コマキ母

 「カクヨム」にも掲載されております。

 ※この作品は単発となりますが、好評であれば続くかも──

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