春風

鳶狩 爪

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薄明るい空間に、シャープペンシルを走らせる音だけが響く。
忙しなく何かを書き連ねる音。だが、決して前のめりに書いているわけではなさそうだ。

そして時折、陽の光を浴びる大窓に、びゅうという吹き付ける音がする。
その刹那、決まってペンの音は止まる。
横目で窓を見つめる。
だが、それもすぐに、また書きかけの原稿用紙に向かって突き立てる。
彼女は陽が沈むまで、ずっとそれを繰り返していた。



キーンコーンカーンコーン



17:30を告げるチャイムが鳴った。
コーチからの指示が入る。

今日も、良く走ったな。
我ながらよくも15kmもぶっ通しで走ることが出来たものだと感傷に浸る。

とてつもなく疲れた。だが、やりがいもあった。

明日も、また明後日も、この部活に精を入れてしっかりと進んでいこうと密かに心に決めた。



あ。
弁当箱を教室に忘れた。
危うくまた母さんに怒られるところだった。

早く帰りたいので、急いで廊下を走る。教室は突き当りだ。

「あ」

教室の鍵を取りに行くのを忘れた。
職員室はここから真反対の場所だ。

教室の目の前で立ち止まり、ため息をつく。

(まあ、誰かいるのかもしれないし、、)

とは言え、流石にこの時間じゃ誰もいな---

「大宮?」

ガラス越しに、人がいるのを見つけた。
本来なら、ここで「っしゃー!!」とか喜びたいものだが、中にいるのが彼女なら少し、ね。

だが、ここで立ち止まっているのもあれなので、意を決して扉を開けた。
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