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「びっくり、した……」
俺は思わず呟いた。
思っていた返事と全く違う言葉に理解が追いつかない。
あんまり大きな声を出さないヒデの珍しい声に、涙も何もかも引っ込んでしまった。
「びっくりしたのはこっちだよ! 渚、とりあえず一回落ち着いて、ね?」
「っ、俺は落ち着いてるもん! 今だって思いつきじゃないっ」
つい上ずった声で反論してしまう。
またなだめられて、有耶無耶にされたら困るのだ。
そう思うとここで止まっちゃいけないと気持ちが焦る。
「ずっと考えてたもん……」
「渚、その……ごめんね」
お互い少しの沈黙の後、ヒデから小さい声で謝られた。
分かってた。分かってたけど、ヒデの口から聞くともうどうしようもなくて。
本格的に涙が舞い戻ってくる。
耳を塞ぐ代わりに、目をぎゅっとつぶった。
「あっ、ナギっ、ちがっ!」
いつになく慌てた声に、恐る恐る目を開けるとヒデが意味もなく手を上下に動かしていた。
「違うってどういうこと」
「それは……」
「やっぱりっ!」
「だからっ……本当はもっと格好つけたかったんだけど」
よくみるとヒデも不安な顔をしている。
なんでだろう。
「最後まで聞いてほしいんだけど」
「聞けるか分かんない……」
「そこは、聞いてほしいな」
ヒデは苦笑してるけど、ズタボロに言われたら最後までなんて聞けないよ。
がんばるけど。
「渚、好きだよ」
俺の大好きな顔で大好きな声でそんなこと言われたら。
「誤魔化されないからね!」
「ご、誤魔化すとかじゃなくて! 好きだってことは信じてよ」
「うん……」
「よかった。それで、ナギのこと好きだから、別れたくないので……その、別れるの考え直してほしいです」
突然敬語になるヒデから緊張感が伝わってくる。
「けどっ、別れたいのはそっちでしょ!」
「別れたいなんて言ったことないよ!」
今日は珍しいことばっかり。
ヒデが俺に怒鳴るように大声を出すなんて、なかったから。
「別れたくないし、ナギと結婚したいって思ってるよ」
え?
今なんて言った?
「待って! いま、今なんてっ」
「ナギと結婚したい」
「ほんと……?」
ヒデからずっと聞きたかった言葉。
信じられない。幻聴じゃないよね?
嬉しさと不安が入り混じりながら、俺はもう一度聞き返していた。
だって、信じられないもん。
「本当だよ」
「じゃあ、なんで、今まで」
「えっと、恥ずかしいんだけど、プロポーズのタイミングが掴めなくて……」
さっきの勢いはどこへ行ったのか、ヒデはボソボソと恥ずかしそうに続ける。
俺は思わず呟いた。
思っていた返事と全く違う言葉に理解が追いつかない。
あんまり大きな声を出さないヒデの珍しい声に、涙も何もかも引っ込んでしまった。
「びっくりしたのはこっちだよ! 渚、とりあえず一回落ち着いて、ね?」
「っ、俺は落ち着いてるもん! 今だって思いつきじゃないっ」
つい上ずった声で反論してしまう。
またなだめられて、有耶無耶にされたら困るのだ。
そう思うとここで止まっちゃいけないと気持ちが焦る。
「ずっと考えてたもん……」
「渚、その……ごめんね」
お互い少しの沈黙の後、ヒデから小さい声で謝られた。
分かってた。分かってたけど、ヒデの口から聞くともうどうしようもなくて。
本格的に涙が舞い戻ってくる。
耳を塞ぐ代わりに、目をぎゅっとつぶった。
「あっ、ナギっ、ちがっ!」
いつになく慌てた声に、恐る恐る目を開けるとヒデが意味もなく手を上下に動かしていた。
「違うってどういうこと」
「それは……」
「やっぱりっ!」
「だからっ……本当はもっと格好つけたかったんだけど」
よくみるとヒデも不安な顔をしている。
なんでだろう。
「最後まで聞いてほしいんだけど」
「聞けるか分かんない……」
「そこは、聞いてほしいな」
ヒデは苦笑してるけど、ズタボロに言われたら最後までなんて聞けないよ。
がんばるけど。
「渚、好きだよ」
俺の大好きな顔で大好きな声でそんなこと言われたら。
「誤魔化されないからね!」
「ご、誤魔化すとかじゃなくて! 好きだってことは信じてよ」
「うん……」
「よかった。それで、ナギのこと好きだから、別れたくないので……その、別れるの考え直してほしいです」
突然敬語になるヒデから緊張感が伝わってくる。
「けどっ、別れたいのはそっちでしょ!」
「別れたいなんて言ったことないよ!」
今日は珍しいことばっかり。
ヒデが俺に怒鳴るように大声を出すなんて、なかったから。
「別れたくないし、ナギと結婚したいって思ってるよ」
え?
今なんて言った?
「待って! いま、今なんてっ」
「ナギと結婚したい」
「ほんと……?」
ヒデからずっと聞きたかった言葉。
信じられない。幻聴じゃないよね?
嬉しさと不安が入り混じりながら、俺はもう一度聞き返していた。
だって、信じられないもん。
「本当だよ」
「じゃあ、なんで、今まで」
「えっと、恥ずかしいんだけど、プロポーズのタイミングが掴めなくて……」
さっきの勢いはどこへ行ったのか、ヒデはボソボソと恥ずかしそうに続ける。
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