BL小説に転生したモブは報われない恋をしている

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「もちろんだよ！あ、俺は矢崎唯。よろしく」
「唯！仲良くしてね」

　屈託のない笑顔に気がつけば距離はグッと近くなっていた。これぞ主人公のパワーか。この笑顔に斗真も、そしてこれから出てくるであろう攻めも夢中になってしまうんだ。

　攻めが旭を好きになるのは良い。
　というか、読者だったあのときもこのカップルが好きだったから、ぜひとも付き合ってほしい。

　だけど、斗真はだめ！
　だって小説の中の斗真は、一巻で旭に告白してフラれる。そしてフラれてからも、旭の良き相談相手だったり付き合い出した二人への良いスパイスになっていた。
　俺が読んだのは社会人編までだけど、その間も斗真は旭が好きだし斗真といい感じになるようなキャラも出てこない。

　つまり、斗真が旭を好きになっちゃったら、この先ずっと斗真は旭のことを追いかけちゃうんだよ！
　一途な斗真がカッコよくて幸せになってほしいと何度思いながら小説を読んだだろう。
　だけど、今は推しじゃなく恋愛として俺は斗真のことが好きだ。斗真が幸せになるんだったら、これから待ち受けている未来を受け入れるよ。でも、あの小説通りに進むなら斗真は人の幸せを見守るだけで斗真本人は幸せじゃないじゃないか。
　俺と結ばれなくても、斗真には幸せになってほしい。
　あわよくば俺と幸せになってほしい。

　それならやっぱり、斗真が旭を好きになるのを阻止しなきゃ。

　ちなみに、俺は一巻で仲介役を終えたら出てきた記憶がないので、これから俺がどうなるかは全く分からない。