俺と番の10年の記録

アキアカネ

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倦怠期疑惑1

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 朝のプロポーズ騒動から十数時間後。
 夜も更けて、ヒデは今シャワーを浴びに行っている。
 めでたくヒデから指輪を受け取るのことが出来た俺は、浮かれてすっかり忘れていた。

「ヒデくん、最近キスしてくれないよね」

 バスタオルを片手にリビングに戻ってきたヒデに、拗ねた声で言う。
 ヒデが俺に愛想を尽かしていないのは分かったけど、最近スキンシップが減った理由は分かっていない。

「渚、寂しかったの?」

 あ、これ、勘違いしてる。
 ヒデがシャワーから戻ってくるのを俺がひとりで待ってたことに不満があると思ってるやつだ。

 俺の機嫌がまた下がっているのに気づいてなさそうなヒデが、バスタオルをテーブルに置いて俺の隣に座ってくる。

「待たせてごめんね」

 ヒデが俺にぴったりくっついて、ソファのスプリングが控えめに音を立てる。
 久しぶりに隣に感じる体温に思わずヒデのほうに顔を向けると、そのまま唇を奪われた。

 シャワー上がりの湿った唇とせっけんの匂い。
 唇と唇が触れるだけの可愛いキスなのに、うっとりするほど気持ちがいい。
 時間にしたらほんの一瞬だけど、久しぶりのヒデとのキスに夢中になった。

「気持ちよかった?」

 名残惜しい気持ちでゆっくりと離れていく唇を見つめていると、ヒデがエロい顔をして聞いてきた。
 この顔を見るのも久しぶり。
 下心でもなくて、色気がすごくて、なんて言うんだろ。
 発情期じゃないのにヒートが呼び起こされそうになる顔。

 俺は小さく頷いて応えた。

「じゃあベッドいく?」

 久しぶりのお誘いに、お腹の奥が熱くなって胸がキューっとする。
 ヒデもまだ俺で興奮してくれるんだ。
 抱きたいって思ってくれてるんだ。

「まって、俺もシャワー浴びたい」

「別にそのままで」

「汚いからダメっ」

 本当は今すぐにでも抱かれたいけど、ヒデが少しでも嫌悪感を感じないためにもシャワーは必須だ。
 なんでか分からないけど、せっかく抱いてくれるチャンスなんだ。また抱かれなくなったらイヤだから、ヒデがイヤな思いをしないように気をつけないと。

「早く戻ってきてね」

 ヒデの言葉に後ろ髪を引かれながら、俺は浴室に駆け込んだ。

 熱い身体にぬるいシャワーをかけて、早る気持ちを抑えながら念入りに洗っていく。
 すでに緩く勃ち上がる自身に、どんだけ欲求不満だったんだと恥ずかしくなる。
 ついでにいうと、後ろもぐちゃぐちゃに濡れていた。

 シャワーで流しても流しても溢れる愛液のことは諦めて浴室を出る。どうせ履いても濡れて意味がなさそうだからパンツは履かなくていいや。

 オーバーサイズのTシャツの裾を引っ張って、ヒデが待っているだろうベッドに向かっていく。
 発情期のほうがすごいけど、ヒート終わりかけのとき並には興奮してる自分に呆れてしまう。

 部屋に入ると、思った通りヒデがベッドに座って待っていた。

「ナギ、おかえり。おいで」
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