73 / 96
乱れる乙女心
招かれざる客
しおりを挟む
「断ってくれ。彼女とは会わないと何度も伝えているはずだ」
「ですが……」
ルーカスは即断ったけれど、執事さんはなにか言いたそうにしていた。相手が貴族だから、ルーカスの幼馴染だから追い返すのは気が引けるのだろうか。
「約束せずに押しかけたんだ。別に追い返しても問題にはならないさ。お帰り願ってくれ」
年上の人に命令するルーカスという珍しいものを見てしまった私は、なんだか知らない人を見ているような気分だった。使用人相手にはそれらしい振る舞いをしなきゃいけないんだろうけど、その姿は貴族様みたいに見えて……え。ルーカスって平民身分だったよね? と再確認したくなってくる。
それにしても今日に限ってドロテアさんが来ているとは。気が合うというか間が悪いというか。
「困ります、現在お坊ちゃまはお客様を応対していらっしゃいますので」
「ならばわたくしもご挨拶するわ。そこをおどきなさい」
!?
思ったよりも近くで彼女の声が聞こえたので私は椅子の上で飛び上がった。…てっきり門の前でやり取りしているものだと思っていたら屋敷の敷地内にまで入っていたのか。
「あ、彼女には結界内に入れる術を施しているんだったな……」
クラウスさんがボソッとつぶやく声が聞こえた。
なるほど、ルーカスの幼馴染で仲のいいはとこだったから、制限なく入れるようにドロテアさんには入場許可していたのね。
「ドロテア様、いけません! 今日のところはどうぞお帰りください」
「おどきと言ってるのよ! いつからお前はわたくしに指図できるようになったの!?」
彼女のイライラした声がこっちにまで飛んできた。使用人を叱責する声がピリピリしている。それに執事さんが疲れた顔をして、クライネルト一家は渋い表情を浮かべていた。
──そもそも挨拶するって、ドロテアさんが私に?
ていうかルーカスのお客様はドロテアさんには関係ないのにどうして?
疑問が色々湧いてきたが、ここで考えることではない。今のうちにトイレとかに身を隠した方がいいだろうかと辺りを見渡していると、私が行動へ移す前に彼女が姿を現した。
「ルーク! あら、おじ様おば様もお揃いで……」
止めようとする使用人を振り払ってずかずかと入り込んできた彼女は、ルーカスの姿に表情を明るくしたが、同席しているクライネルト夫妻を見て不思議そうにした後、傍らに私が同席しているのに一瞬呆然とした顔をしていた。
「何故、その女が……!」
重苦しく、憎々しげな声だった。ぎらりと焦げ茶色の瞳が光ったように見えた。目と目が合った瞬間鋭く睨みつけられ、ぎくりとした私はさっと目をそらす。
無意識に身構えて息を止めていた。条件反射というかなんというか。
あからさまに嫌われ、悪意を向けられているものだから私もすっかり彼女のことが嫌いになってしまった。
今までのことを考えたら嫌いになるのは仕方のないことだと思う。
私は平民で向こうは貴族なものだからこっちは手も足も口も出せない。
圧倒的に私は弱者なので、彼女とは関わりたくないのが本音である。
ルーカスは私とドロテアさんを同じ空間に置いてはいけないと察知したのだろう。彼が私の前に立って彼女からの視線を遮ってくれた。
「いささか無作法じゃないか。ここは君の家ではないんだぞ」
「わたくしはおじ様に自由に入っていいと許可を頂いています!」
「それは結界の話で、先触れもなく家にやってきて来客中に妨害するような真似は許可していないはずだよ」
ルーカスに注意されたドロテアさんはムッとした顔で言い返すも、そこはクラウスさんにきっぱり否定されて、ぐっと口ごもっていた。
仮に自由に出入りしていいと言われていたとしても、お客様がいるときに割って入るのは非常識だと思うんだけどな。貴族と平民の考え方の違いだろうか。
「帰ってくれ。見ての通り今はリナリアを招いているんだ」
「何故! わたくしには会ってくださらないのにどうしてそんな平民女を」
「僕もリナリアと同じ平民だ。何か問題でもあるかい?」
ルーカスは彼女の発言を遮った。
声を荒げているわけじゃないのに、彼の声には確かな拒絶があった。ドロテアさんがそれに怯えた様子が伺える。
これまで、何度も同じようなやり取りを目にしてきた。
ドロテアさんにとって身分や生まれが最優先なのだろうか。ドロテアさんが見ているのはルーカスの家柄と彼の体に流れた高貴なる血なのだろうか。
「……君と会わないようにしている理由はこれまでに何度も話してきたはずだよ。どうして理解してくれないんだ?」
今のルーカスのドロテアさんに対する態度には低学年の時のような親しみはない。むしろ諦めてくれない彼女に苛立っている雰囲気すらある。
それは私のせいか。
それとも、私がこの場にいなくても避けられなかったことなのだろうか。
「いや! わたくしはあなたの花嫁になるの、お父様もお母様も賛成してくれていますわ! お友達だってお似合いだと」
「そこに僕やクライネルト家の意見は含まれていないよね? 身分の事もあるけど、君と僕は血が近すぎるんだ。僕が君と結婚することはありえないよ」
「嫌よ……わたくしがどれほどあなたを愛しているか知っていらして、そんな非道なことおっしゃるなんて……!」
ルーカスの口から出てきた拒絶の言葉に、ドロテアさんはブワッと泣き出してしまった。彼女の言葉の中にさりげなく愛の告白が含まれていたことに私はビクッと反応してしまった。
「とにかく帰ってくれ」
それを慰めるでもなく、絆されるわけでもなく、ドロテアさんを追い返そうと背中を押しているルーカスは首だけを回して、「すぐに戻るから待ってて」と私に告げた。
それに同行するようにクラウスさんがついていく。私は席に座って固まったまま、それを見送っていた。
その間一言も発せなかった。
ドロテアさんという嵐がやってきて、和やかな空気は一掃されてしまった。私は居心地悪くて身じろぐ。
「あの子もねぇ……諦めが悪いのよね」
この場に残っていたマリネッタさんがポツリと呟いたので、私はビクッと肩を揺らしてしまった。
「リナリアさん、学校でドロテアさんにいじめられているんでしょう」
「えぇと」
「ルーカスから色々と聞いてるから隠さなくてもいいのよ」
問いではなく、確認のために聞かれただけのようだった。マリネッタさんはため息を吐き出してここにはいないドロテアさんに呆れているようだった。
いじめ……? いじめなのかな?
私はドロテアさんとの間であったアレコレを思い出す。あれは、いじめられたと表現していいのかな。うーん。
「先方から縁談を頂いたこともあったけど、義父もあの人も最初からドロテアさんとの縁組みには反対だったの。血が近い、濃くなるのは良くないからってね」
それはルーカスに教えてもらったことがある。神妙な顔で黙って頷くと、マリネッタさんは苦笑いを浮かべていた。
「ドロテアさんはちょっと自分本位が過ぎるところがあるのよね。……それに、クライネルト家の在り方が彼女には理解できないと思うわ」
「在り方……というのは?」
なんか難しいことだろうか。口からついて出た疑問にマリネッタさんは答えてくれた。
「クライネルト家は貴族の血を受け継ぎながらも平民身分のまま、平民の立場でこれまで続いてきたの。いざというときは立場が弱い平民の盾になるよう、普段は中立の立場を保ってね」
あぁそのことか。
確かに1年生のときにルーカスから似たような話を聞かされたことがある。他の平民にはない、隠れた権力を持ったクライネルト家が周りに目を光らせる目的があって、立場の弱い平民の代わりに不正や問題を見つけるためなんだと言っていた。
「だけどドロテアさんが嫁いできたら──…それが彼女によって崩される可能性がある」
言われてみれば確かにそうかも。
ドロテアさんは貴族であることに矜持を抱いている。簡単に特権階級や選民主義を捨てるような人じゃないと思う。
遠い過去にクライネルト家へ嫁いできた貴族出身の女性はどの人も穏健派や中立派だったそうだ。だからこれまでクライネルト家の主義は貫き通せたのだという。
ドロテアさんが嫁いだ場合、クライネルト家が築いてきたものを全てぶち壊してしまうこともあるんだ。
「私はルーカスの母親だから表向きは友好的だけど、彼女は根っからの貴族ですもの。なんとなく平民への差別心理が伝わってくるのよ。フロイデンタール侯爵夫妻も同様にね」
それは、マリネッタさんですらなにか嫌なことを言われた経験があるということだろうか……?
「私はこの体に流れる平民の血を恥じたことはない。だからそれを勝手に憐れまれて馬鹿にされるのは気分が悪いわ」
半分は平民で、もう半分は貴族の血が流れているマリネッタさんは、フロイデンタール候爵一家とは馬が合わないのかもしれない。
昔から家同士の付き合いがあったと聞くけど、子ども同士が仲いいからって親同士が仲がいいってわけじゃないものね。
人様のお家の事情を少し覗いてしまったような複雑な気持ちになりながらも、色々と考えさせられてしまった。
それから時間を置かずにルーカスとクラウスさんが戻ってきた。なんだか2人は難しい顔をしている。
「屋敷周辺の結界を強化した。彼女に施した許可呪文を解呪して、今後は許可なくこの敷地に立ち入れないようにしたよ」
ドロテアさんにはお帰り願ったようだ。その上、出入り禁止処分をしたらしい。厳しい沙汰に見えるけど、仕方のないことなのだろう。
「フロイデンタール家にも抗議の手紙を送ることにするよ。いくら旧知の仲でも家主の許可なく入ってくるのは失礼だし、彼女の言動でお客様に不快な思いをさせてしまった。こっちも立場があるからね」
楽しかった時間はぶち壊され、なんとも言えない気分にさせられた私はどんな反応すればいいのか迷った。
こんな空気になってしまったので、私はそこでお暇することにした。
クライネルト夫妻はなんだか名残惜しそうに引き止めてくれたけど、この状況でさっきまでの和やかな空気になるとは思えない。残されたのは気まずさだけだ。
また機会があれば誘ってくださいと言葉を残して、私はクライネルト家を後にしたのである。
「ですが……」
ルーカスは即断ったけれど、執事さんはなにか言いたそうにしていた。相手が貴族だから、ルーカスの幼馴染だから追い返すのは気が引けるのだろうか。
「約束せずに押しかけたんだ。別に追い返しても問題にはならないさ。お帰り願ってくれ」
年上の人に命令するルーカスという珍しいものを見てしまった私は、なんだか知らない人を見ているような気分だった。使用人相手にはそれらしい振る舞いをしなきゃいけないんだろうけど、その姿は貴族様みたいに見えて……え。ルーカスって平民身分だったよね? と再確認したくなってくる。
それにしても今日に限ってドロテアさんが来ているとは。気が合うというか間が悪いというか。
「困ります、現在お坊ちゃまはお客様を応対していらっしゃいますので」
「ならばわたくしもご挨拶するわ。そこをおどきなさい」
!?
思ったよりも近くで彼女の声が聞こえたので私は椅子の上で飛び上がった。…てっきり門の前でやり取りしているものだと思っていたら屋敷の敷地内にまで入っていたのか。
「あ、彼女には結界内に入れる術を施しているんだったな……」
クラウスさんがボソッとつぶやく声が聞こえた。
なるほど、ルーカスの幼馴染で仲のいいはとこだったから、制限なく入れるようにドロテアさんには入場許可していたのね。
「ドロテア様、いけません! 今日のところはどうぞお帰りください」
「おどきと言ってるのよ! いつからお前はわたくしに指図できるようになったの!?」
彼女のイライラした声がこっちにまで飛んできた。使用人を叱責する声がピリピリしている。それに執事さんが疲れた顔をして、クライネルト一家は渋い表情を浮かべていた。
──そもそも挨拶するって、ドロテアさんが私に?
ていうかルーカスのお客様はドロテアさんには関係ないのにどうして?
疑問が色々湧いてきたが、ここで考えることではない。今のうちにトイレとかに身を隠した方がいいだろうかと辺りを見渡していると、私が行動へ移す前に彼女が姿を現した。
「ルーク! あら、おじ様おば様もお揃いで……」
止めようとする使用人を振り払ってずかずかと入り込んできた彼女は、ルーカスの姿に表情を明るくしたが、同席しているクライネルト夫妻を見て不思議そうにした後、傍らに私が同席しているのに一瞬呆然とした顔をしていた。
「何故、その女が……!」
重苦しく、憎々しげな声だった。ぎらりと焦げ茶色の瞳が光ったように見えた。目と目が合った瞬間鋭く睨みつけられ、ぎくりとした私はさっと目をそらす。
無意識に身構えて息を止めていた。条件反射というかなんというか。
あからさまに嫌われ、悪意を向けられているものだから私もすっかり彼女のことが嫌いになってしまった。
今までのことを考えたら嫌いになるのは仕方のないことだと思う。
私は平民で向こうは貴族なものだからこっちは手も足も口も出せない。
圧倒的に私は弱者なので、彼女とは関わりたくないのが本音である。
ルーカスは私とドロテアさんを同じ空間に置いてはいけないと察知したのだろう。彼が私の前に立って彼女からの視線を遮ってくれた。
「いささか無作法じゃないか。ここは君の家ではないんだぞ」
「わたくしはおじ様に自由に入っていいと許可を頂いています!」
「それは結界の話で、先触れもなく家にやってきて来客中に妨害するような真似は許可していないはずだよ」
ルーカスに注意されたドロテアさんはムッとした顔で言い返すも、そこはクラウスさんにきっぱり否定されて、ぐっと口ごもっていた。
仮に自由に出入りしていいと言われていたとしても、お客様がいるときに割って入るのは非常識だと思うんだけどな。貴族と平民の考え方の違いだろうか。
「帰ってくれ。見ての通り今はリナリアを招いているんだ」
「何故! わたくしには会ってくださらないのにどうしてそんな平民女を」
「僕もリナリアと同じ平民だ。何か問題でもあるかい?」
ルーカスは彼女の発言を遮った。
声を荒げているわけじゃないのに、彼の声には確かな拒絶があった。ドロテアさんがそれに怯えた様子が伺える。
これまで、何度も同じようなやり取りを目にしてきた。
ドロテアさんにとって身分や生まれが最優先なのだろうか。ドロテアさんが見ているのはルーカスの家柄と彼の体に流れた高貴なる血なのだろうか。
「……君と会わないようにしている理由はこれまでに何度も話してきたはずだよ。どうして理解してくれないんだ?」
今のルーカスのドロテアさんに対する態度には低学年の時のような親しみはない。むしろ諦めてくれない彼女に苛立っている雰囲気すらある。
それは私のせいか。
それとも、私がこの場にいなくても避けられなかったことなのだろうか。
「いや! わたくしはあなたの花嫁になるの、お父様もお母様も賛成してくれていますわ! お友達だってお似合いだと」
「そこに僕やクライネルト家の意見は含まれていないよね? 身分の事もあるけど、君と僕は血が近すぎるんだ。僕が君と結婚することはありえないよ」
「嫌よ……わたくしがどれほどあなたを愛しているか知っていらして、そんな非道なことおっしゃるなんて……!」
ルーカスの口から出てきた拒絶の言葉に、ドロテアさんはブワッと泣き出してしまった。彼女の言葉の中にさりげなく愛の告白が含まれていたことに私はビクッと反応してしまった。
「とにかく帰ってくれ」
それを慰めるでもなく、絆されるわけでもなく、ドロテアさんを追い返そうと背中を押しているルーカスは首だけを回して、「すぐに戻るから待ってて」と私に告げた。
それに同行するようにクラウスさんがついていく。私は席に座って固まったまま、それを見送っていた。
その間一言も発せなかった。
ドロテアさんという嵐がやってきて、和やかな空気は一掃されてしまった。私は居心地悪くて身じろぐ。
「あの子もねぇ……諦めが悪いのよね」
この場に残っていたマリネッタさんがポツリと呟いたので、私はビクッと肩を揺らしてしまった。
「リナリアさん、学校でドロテアさんにいじめられているんでしょう」
「えぇと」
「ルーカスから色々と聞いてるから隠さなくてもいいのよ」
問いではなく、確認のために聞かれただけのようだった。マリネッタさんはため息を吐き出してここにはいないドロテアさんに呆れているようだった。
いじめ……? いじめなのかな?
私はドロテアさんとの間であったアレコレを思い出す。あれは、いじめられたと表現していいのかな。うーん。
「先方から縁談を頂いたこともあったけど、義父もあの人も最初からドロテアさんとの縁組みには反対だったの。血が近い、濃くなるのは良くないからってね」
それはルーカスに教えてもらったことがある。神妙な顔で黙って頷くと、マリネッタさんは苦笑いを浮かべていた。
「ドロテアさんはちょっと自分本位が過ぎるところがあるのよね。……それに、クライネルト家の在り方が彼女には理解できないと思うわ」
「在り方……というのは?」
なんか難しいことだろうか。口からついて出た疑問にマリネッタさんは答えてくれた。
「クライネルト家は貴族の血を受け継ぎながらも平民身分のまま、平民の立場でこれまで続いてきたの。いざというときは立場が弱い平民の盾になるよう、普段は中立の立場を保ってね」
あぁそのことか。
確かに1年生のときにルーカスから似たような話を聞かされたことがある。他の平民にはない、隠れた権力を持ったクライネルト家が周りに目を光らせる目的があって、立場の弱い平民の代わりに不正や問題を見つけるためなんだと言っていた。
「だけどドロテアさんが嫁いできたら──…それが彼女によって崩される可能性がある」
言われてみれば確かにそうかも。
ドロテアさんは貴族であることに矜持を抱いている。簡単に特権階級や選民主義を捨てるような人じゃないと思う。
遠い過去にクライネルト家へ嫁いできた貴族出身の女性はどの人も穏健派や中立派だったそうだ。だからこれまでクライネルト家の主義は貫き通せたのだという。
ドロテアさんが嫁いだ場合、クライネルト家が築いてきたものを全てぶち壊してしまうこともあるんだ。
「私はルーカスの母親だから表向きは友好的だけど、彼女は根っからの貴族ですもの。なんとなく平民への差別心理が伝わってくるのよ。フロイデンタール侯爵夫妻も同様にね」
それは、マリネッタさんですらなにか嫌なことを言われた経験があるということだろうか……?
「私はこの体に流れる平民の血を恥じたことはない。だからそれを勝手に憐れまれて馬鹿にされるのは気分が悪いわ」
半分は平民で、もう半分は貴族の血が流れているマリネッタさんは、フロイデンタール候爵一家とは馬が合わないのかもしれない。
昔から家同士の付き合いがあったと聞くけど、子ども同士が仲いいからって親同士が仲がいいってわけじゃないものね。
人様のお家の事情を少し覗いてしまったような複雑な気持ちになりながらも、色々と考えさせられてしまった。
それから時間を置かずにルーカスとクラウスさんが戻ってきた。なんだか2人は難しい顔をしている。
「屋敷周辺の結界を強化した。彼女に施した許可呪文を解呪して、今後は許可なくこの敷地に立ち入れないようにしたよ」
ドロテアさんにはお帰り願ったようだ。その上、出入り禁止処分をしたらしい。厳しい沙汰に見えるけど、仕方のないことなのだろう。
「フロイデンタール家にも抗議の手紙を送ることにするよ。いくら旧知の仲でも家主の許可なく入ってくるのは失礼だし、彼女の言動でお客様に不快な思いをさせてしまった。こっちも立場があるからね」
楽しかった時間はぶち壊され、なんとも言えない気分にさせられた私はどんな反応すればいいのか迷った。
こんな空気になってしまったので、私はそこでお暇することにした。
クライネルト夫妻はなんだか名残惜しそうに引き止めてくれたけど、この状況でさっきまでの和やかな空気になるとは思えない。残されたのは気まずさだけだ。
また機会があれば誘ってくださいと言葉を残して、私はクライネルト家を後にしたのである。
10
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜
まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください!
題名の☆マークがえっちシーンありです。
王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。
しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。
肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。
彼はやっと理解した。
我慢した先に何もないことを。
ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。
小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。
不妊妻の孤独な寝室
ユユ
恋愛
分かっている。
跡継ぎは重要な問題。
子を産めなければ離縁を受け入れるか
妾を迎えるしかない。
お互い義務だと分かっているのに
夫婦の寝室は使われることはなくなった。
* 不妊夫婦のお話です。作り話ですが
不妊系の話が苦手な方は他のお話を
選択してください。
* 22000文字未満
* 完結保証
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
寡黙な彼は欲望を我慢している
山吹花月
恋愛
近頃態度がそっけない彼。
夜の触れ合いも淡白になった。
彼の態度の変化に浮気を疑うが、原因は真逆だったことを打ち明けられる。
「お前が可愛すぎて、抑えられないんだ」
すれ違い破局危機からの仲直りいちゃ甘らぶえっち。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【短編】最愛の婚約者の邪魔にしかならないので、過去ごと捨てることにしました
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「ディアンナ、ごめん。本当に!」
「……しょうがないですわ。アルフレッド様は神獣様に選ばれた世話役。あの方の機嫌を損ねてはいけないのでしょう? 行って差し上げて」
「ごめん、愛しているよ」
婚約者のアルフレッド様は侯爵家次男として、本来ならディアンナ・アルドリッジ子爵家の婿入りをして、幸福な家庭を築くはずだった。
しかしルナ様に気に入られたがため、四六時中、ルナの世話役として付きっきりとなり、ディアンナとの回数は減り、あって数分で仕事に戻るなどが増えていった。
さらにディアンナは神獣に警戒されたことが曲解して『神獣に嫌われた令嬢』と噂が広まってしまう。子爵家は四大貴族の次に古くからある名家として王家から厚く遇されていたが、それをよく思わない者たちがディアンナを落としめ、心も体も疲弊した時にアルフレッドから『婚約解消』を告げられ──
これは次期当主であり『神獣に嫌われた子爵令嬢』ディアンナ×婿入り予定の『神獣に選ばれた侯爵家次男』アルフレッドが結ばれるまでの物語。
最終的にはハッピーエンドになります。
※保険でR15つけています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる