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もしも彼と同じ年なら【7】
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「やっと捕まえたぜ……手こずらせやがって…!」
「離してよ!!」
「姉ちゃん!」
弟を救出しようと無謀にも現場に飛び込んだが、私は不良によって後ろから羽交い締めにされてしまった。
先程まで頑張って抵抗していたんだけどね……
目付きの悪いタカギという男がガシッと私の胸ぐらを掴んで来たので殴られる! と思ってキツく目を閉じた。
「コラッお前ら何してる!」
「風紀だ! 校内での暴力行為でお前らを拘束する!」
「田端!」
そこにタイミングよく登場したのは風紀を引き連れた橘君の姿だ。
彼らの華麗なる捕縛術によって、暴力行為を働いていた不良共は残さず検挙された。
彼らによって不良が連行されていくのを見送っていた私は、ぼろぼろになって倒れている弟を抱き起こそうとしていたのだが、そこで「田端」と声を掛けられ振り返った。
私の背後では怒りの形相をした橘君が仁王立ちしていた。
「……なにか言うことはないのか?」
「…助けてくれてありがとうございます」
「……お前、到着を待てなかったのか。もしものことがあったらどうするつもりだったんだ」
「だって弟がリンチされてたから」
「自分の力量を考えろ。お前の行動一つでもっと事が大きくなるところだったんだぞ」
私が後先考えずに特攻したことに怒っているようだ。
折角の高校最後の文化祭に引退した風紀委員の仕事をさせてしまって悪かったとは思ってるよ…
だけど頼れるのが君しかいなかったんだよ。
「……ごめん」
「…反省すればそれでいい」
「今度は二年の風紀委員に連絡するようにする」
「………田端お前……」
橘君のコメカミの血管が浮き上がったのが見えた。
それに私は嫌な予感がした。
「お、弟を、保健室に連れて行ってくるね?」
「いや、風紀委員に連れて行かせる。…お前とはもうちょっと話をしないといけないようだからな」
橘君は怒っていた。そして私はめっちゃ怒られた。
ごめんなさいと謝っても「お前どうせ理解してないんだろうが」と理不尽に怒られた。
謝ってるのに。ちゃんと反省してるのに。
「被害者なんだからもう少し優しくしてよ! 橘君いつも私に怒ってばっかりじゃない!」
「今きちんと怒らないとお前また同じことやらかすだろうが!」
「だからぁ! もう橘君に迷惑はかけないってば!」
「そんな事を怒ってるんじゃないと何度言えばわかる!」
その説教は交代時間間際まで続いた。
高校最後の文化祭初日の自由時間が説教で終わってしまったのである。
不良ども…恨むぞ…!
★☆★
遅番で入った私は裏方ではあるが、研究を重ねたメイクでイケメン風に変身した。自分でもなかなかイケメンになれたんじゃないかと思う。
ギャルソン服は執事服よりも動きやすいので作業がしやすかった。よーし頑張るぞー!
同様に遅番である橘君は私の説教後ということもあり、割増不機嫌なクラシカルメイドに変身していた。
化粧もしていたけど全然化けない。男だよ完璧に。
抜き打ち写真撮影したらすごい形相で消せって凄まれた。宥めるために可愛いよと褒めたら、すごく嫌そうな顔をされてしまった。
作り置きしているお菓子や軽食は給仕担当の人がよそって持って行ってくれるけど、オムライスやパスタなど調理が必要なものは調理担当が作る。
「田端ー! 三番にオムライスふたつな!」
「はーい」
バックヤードでオムライスを調理していたら客席との間を仕切っているカーテンの向こうで「おいおい亮介! お前ひっでぇ格好だな! うわおま、なにをする」と断末魔が聞こえてきた。
大久保君が怖いもの見たさで来たのだろうか。
…すまんな。私のせいで彼の沸点は異常に低いと思う。
「三番さんオムライス出来上がったよ~」
出来上がったオムライスを表の給仕に渡そうとバックヤードから顔を出して声を掛けた。
「あやめせんぱーい! わぁ格好いい!」
「室戸さん。来てくれたんだ?」
「あやめ先輩、写真撮ってくださーい!」
丁度お店に遊びに来てくれた室戸さんに歓声を上げられて写真をお願いされたので男装している私は悪ノリした。
「姫のお望みなら喜んで!」
少々芝居かかった仕草だが、室戸さんの手を取って撮影スポットに誘導した。
室戸さんは私のノリを楽しそうに笑っている。
二人で和やかに撮影をしていると、何処からか息を呑む声が聞こえてきた。
「……? あれ…」
「あれ…本橋先輩。どうしたんですか…顔が赤いですよ?」
そこにはヒロインちゃんが呆然と突っ立っていた。
ブラッディナースに扮するセクシーなヒロインちゃんはいつの間にかウチのクラスにいたらしい。ていうか伊達とデート中だったのか、机の上に私が作ったオムライスが運ばれていた。
伊達がこっちを冷たい目で注視してきたが私は知らんぷりをして差し上げた。
「…あっくん…?」
「……?」
あっくん?
………ん? なんか思い出せそうで思い出せないけど…その呼び方に馴染みが…
ヒロインちゃんはどうしたんだろうか。
私を見てなんだかぼんやりしている。先程から伊達が声を掛けているが、聞こえていないようである。
せっかく作ったオムライスが冷めてしまうじゃないか。温かいうちに是非食べて欲しい。
「…いかがいたしましたか姫? 私の作ったオムライスがお気に召しませんでしたか?」
「え、オムライス……姫…?」
「当店目玉のモエモエオムライスです。姫のお名前を書いて差し上げましょう」
「ちょっと、君…」
「殿方のオムライスにはメイドさんが書く仕組みですので」
伊達の制止はあしらっておく。
私はヒロインちゃんの手を取って席に戻すと、彼女の前に置かれたオムライスにかれんと名前を書いてあげた。
…ヒロインちゃん、そう言えば花恋って名前だったな…
……かれんちゃんか……
私はまたもや既視感に襲われたが今は仕事中。
それを無視すると彼女に向かって一礼をして、待たせたままの室戸さんを給仕した。
ノリの良い室戸さんにお願いされたので注文されたオムライスに名前を書いた後、「もえ、もえ、きゅーん!!」と萌え注入してあげた。
完全に私のノリがメイドなんだけどまぁ良いだろう。
…室戸さんをもてなしている間ずっとヒロインちゃんが私を目で追っているのが気になったけど……私の男装がそんなにイケてるんだろうか。
攻略対象の伊達に勝るくらいイケメンなんだろうか…
室戸さんをお見送りをすると、大久保君に嫌々給仕をしてとっとと追い払っていた橘君(仏頂面)に尋ねてみた。
「ねぇねぇ橘君、私ってイケてるかな。格好いい?」
「……あくまで男装にしか見えないぞ」
「なんだー…橘君と同じなのか…」
その返事にがっかりすると「どういう意味だそれ」と橘君に追及された。
私はそれを無視してまたバックヤードに戻って行った。
その後も沢渡君が遊びに来たり、幼馴染が来たりしたので時折バックヤードから出ておもてなしをしてあげた。
「ほら、橘君照れてないで萌え注入を…」
「しない」
「んもー…」
「俺っちアヤちゃん先輩に萌え注入してほしいっす」
「…仕方ないなぁ。橘君、よく見てちゃんとマスターするんだよ?」
沢渡君がオムライスを注文してくれたので、メイドさんにケチャップで名前を書かせて萌え注入させようとしたら、後者を拒否された。
橘君、オムライスには沢渡君の下の名前書かなきゃ。なんで「さわたり」って書いてんの。
「じゃあ一緒に~もえ、もえ、きゅーん!」
手でハート型を作ってオムライスに萌え注入すると「アヤちゃん先輩可愛い!」と沢渡君が拍手してきた。
そこは格好いいと言わないか。男装してる意味がないだろう。
その後橘君は断固として萌え注入をしなかった。
「離してよ!!」
「姉ちゃん!」
弟を救出しようと無謀にも現場に飛び込んだが、私は不良によって後ろから羽交い締めにされてしまった。
先程まで頑張って抵抗していたんだけどね……
目付きの悪いタカギという男がガシッと私の胸ぐらを掴んで来たので殴られる! と思ってキツく目を閉じた。
「コラッお前ら何してる!」
「風紀だ! 校内での暴力行為でお前らを拘束する!」
「田端!」
そこにタイミングよく登場したのは風紀を引き連れた橘君の姿だ。
彼らの華麗なる捕縛術によって、暴力行為を働いていた不良共は残さず検挙された。
彼らによって不良が連行されていくのを見送っていた私は、ぼろぼろになって倒れている弟を抱き起こそうとしていたのだが、そこで「田端」と声を掛けられ振り返った。
私の背後では怒りの形相をした橘君が仁王立ちしていた。
「……なにか言うことはないのか?」
「…助けてくれてありがとうございます」
「……お前、到着を待てなかったのか。もしものことがあったらどうするつもりだったんだ」
「だって弟がリンチされてたから」
「自分の力量を考えろ。お前の行動一つでもっと事が大きくなるところだったんだぞ」
私が後先考えずに特攻したことに怒っているようだ。
折角の高校最後の文化祭に引退した風紀委員の仕事をさせてしまって悪かったとは思ってるよ…
だけど頼れるのが君しかいなかったんだよ。
「……ごめん」
「…反省すればそれでいい」
「今度は二年の風紀委員に連絡するようにする」
「………田端お前……」
橘君のコメカミの血管が浮き上がったのが見えた。
それに私は嫌な予感がした。
「お、弟を、保健室に連れて行ってくるね?」
「いや、風紀委員に連れて行かせる。…お前とはもうちょっと話をしないといけないようだからな」
橘君は怒っていた。そして私はめっちゃ怒られた。
ごめんなさいと謝っても「お前どうせ理解してないんだろうが」と理不尽に怒られた。
謝ってるのに。ちゃんと反省してるのに。
「被害者なんだからもう少し優しくしてよ! 橘君いつも私に怒ってばっかりじゃない!」
「今きちんと怒らないとお前また同じことやらかすだろうが!」
「だからぁ! もう橘君に迷惑はかけないってば!」
「そんな事を怒ってるんじゃないと何度言えばわかる!」
その説教は交代時間間際まで続いた。
高校最後の文化祭初日の自由時間が説教で終わってしまったのである。
不良ども…恨むぞ…!
★☆★
遅番で入った私は裏方ではあるが、研究を重ねたメイクでイケメン風に変身した。自分でもなかなかイケメンになれたんじゃないかと思う。
ギャルソン服は執事服よりも動きやすいので作業がしやすかった。よーし頑張るぞー!
同様に遅番である橘君は私の説教後ということもあり、割増不機嫌なクラシカルメイドに変身していた。
化粧もしていたけど全然化けない。男だよ完璧に。
抜き打ち写真撮影したらすごい形相で消せって凄まれた。宥めるために可愛いよと褒めたら、すごく嫌そうな顔をされてしまった。
作り置きしているお菓子や軽食は給仕担当の人がよそって持って行ってくれるけど、オムライスやパスタなど調理が必要なものは調理担当が作る。
「田端ー! 三番にオムライスふたつな!」
「はーい」
バックヤードでオムライスを調理していたら客席との間を仕切っているカーテンの向こうで「おいおい亮介! お前ひっでぇ格好だな! うわおま、なにをする」と断末魔が聞こえてきた。
大久保君が怖いもの見たさで来たのだろうか。
…すまんな。私のせいで彼の沸点は異常に低いと思う。
「三番さんオムライス出来上がったよ~」
出来上がったオムライスを表の給仕に渡そうとバックヤードから顔を出して声を掛けた。
「あやめせんぱーい! わぁ格好いい!」
「室戸さん。来てくれたんだ?」
「あやめ先輩、写真撮ってくださーい!」
丁度お店に遊びに来てくれた室戸さんに歓声を上げられて写真をお願いされたので男装している私は悪ノリした。
「姫のお望みなら喜んで!」
少々芝居かかった仕草だが、室戸さんの手を取って撮影スポットに誘導した。
室戸さんは私のノリを楽しそうに笑っている。
二人で和やかに撮影をしていると、何処からか息を呑む声が聞こえてきた。
「……? あれ…」
「あれ…本橋先輩。どうしたんですか…顔が赤いですよ?」
そこにはヒロインちゃんが呆然と突っ立っていた。
ブラッディナースに扮するセクシーなヒロインちゃんはいつの間にかウチのクラスにいたらしい。ていうか伊達とデート中だったのか、机の上に私が作ったオムライスが運ばれていた。
伊達がこっちを冷たい目で注視してきたが私は知らんぷりをして差し上げた。
「…あっくん…?」
「……?」
あっくん?
………ん? なんか思い出せそうで思い出せないけど…その呼び方に馴染みが…
ヒロインちゃんはどうしたんだろうか。
私を見てなんだかぼんやりしている。先程から伊達が声を掛けているが、聞こえていないようである。
せっかく作ったオムライスが冷めてしまうじゃないか。温かいうちに是非食べて欲しい。
「…いかがいたしましたか姫? 私の作ったオムライスがお気に召しませんでしたか?」
「え、オムライス……姫…?」
「当店目玉のモエモエオムライスです。姫のお名前を書いて差し上げましょう」
「ちょっと、君…」
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伊達の制止はあしらっておく。
私はヒロインちゃんの手を取って席に戻すと、彼女の前に置かれたオムライスにかれんと名前を書いてあげた。
…ヒロインちゃん、そう言えば花恋って名前だったな…
……かれんちゃんか……
私はまたもや既視感に襲われたが今は仕事中。
それを無視すると彼女に向かって一礼をして、待たせたままの室戸さんを給仕した。
ノリの良い室戸さんにお願いされたので注文されたオムライスに名前を書いた後、「もえ、もえ、きゅーん!!」と萌え注入してあげた。
完全に私のノリがメイドなんだけどまぁ良いだろう。
…室戸さんをもてなしている間ずっとヒロインちゃんが私を目で追っているのが気になったけど……私の男装がそんなにイケてるんだろうか。
攻略対象の伊達に勝るくらいイケメンなんだろうか…
室戸さんをお見送りをすると、大久保君に嫌々給仕をしてとっとと追い払っていた橘君(仏頂面)に尋ねてみた。
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「……あくまで男装にしか見えないぞ」
「なんだー…橘君と同じなのか…」
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「しない」
「んもー…」
「俺っちアヤちゃん先輩に萌え注入してほしいっす」
「…仕方ないなぁ。橘君、よく見てちゃんとマスターするんだよ?」
沢渡君がオムライスを注文してくれたので、メイドさんにケチャップで名前を書かせて萌え注入させようとしたら、後者を拒否された。
橘君、オムライスには沢渡君の下の名前書かなきゃ。なんで「さわたり」って書いてんの。
「じゃあ一緒に~もえ、もえ、きゅーん!」
手でハート型を作ってオムライスに萌え注入すると「アヤちゃん先輩可愛い!」と沢渡君が拍手してきた。
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