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外伝・東で花咲く菊花
統べる星のもとで愛される菊花
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伯父さんは自慢気に言った。
『あちらから是非嫁にと声がかかったんだぞ!』と。
あたしに来た縁談のことを自分のことのように誇らしげに言う伯父さん。
「キッカ、お前の母さんの若い頃はここらで一番の美人だったんだ」
それはこっちにきて色んな人に聞かされた。若い頃の母さんは舞踊を習っていた。美しさとその腕を買われて、向こうに踊り子として旅立った。興行に出向いた先々では売れっ子の踊り子になったそうだ。……グラナーダであのクソ親父に目をつけられたのが運の尽きだったけど。
「お前もきっと匂い立つような美女になるはずだ。あちらさんは流石お目が高いな」
ウキウキした様子の伯父さんはやれ顔合わせだ、結納だと話を先に推し進めていた。あたしの意思確認など必要ないとばかりに皆が結婚へと話を進めていく。
「どうしたの、キッカ。顔色が悪いわよ?」
母さんが問いかけてくるけど、あたしは息苦しさを覚えてうまく言葉が出せなかった。
「……ちょっと、考えさせて」
あたしが断るとは思っていなかったのか、皆が目を丸くして固まっている。三対の視線にさらされるのが辛くなって、あたしは一人で外に出ていった。
外はすっかり日が落ちて暗くなってた。じゃりじゃりと地面を踏む音と、どこからか聞こえてくる虫の音色が耳に突き刺さる。
結婚。
あたしが男と結婚。
……それは、男に抱かれなくてはいけないということだ。
それを想像すると、吐き気に襲われた。口元を抑えて吐き気を飲み込むと、深呼吸をして落ち着かせる。
──いやだ。気持ち悪い。
落ち着かせようとしたのに、あたしの身体は震えていた。恐怖と嫌悪でいっぱいだった。クソ親父に暴力を受けていた母さんを思い出してゾッとする。
どうしてみんな乗り気なんだ。あたしは結婚したいなんて一言も言っていないのに。
「……キッカ?」
後ろから静かに呼びかけてきた声にあたしはばっと後ろを振り返る。
そこには風呂敷包みを持ったスバルさんが不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
「暗いのにひとりで何してるんだ? 探しものかなにかか?」
彼の顔を見たらあたしは泣きそうになった。抑え込んでいた感情が爆発して、両腕を広げて彼の胸に飛び込むと気が抜けてジワリと目頭が熱くなった。
「!? キッカ!?」
あたしに抱きつかれてぎょっとした様子のスバルさん。だけど今のあたしには冷静に振る舞う余裕なんてなかった。
「…いやなの」
ポツリと呟いた弱音に、スバルさんの身体が小さく動いた。
「いやだいやだ、知らない男になんか抱かれたくない、反吐が出る…!」
「どうした、また襲われたのか!? あれだけ念押ししたってのにどこのどいつだ!」
慌てた声を出してあたしに何事かと尋ねるスバルさん。そうじゃない、そうじゃないんだ。あたしはどこの誰だかわからない男のものにならなきゃいけないのだ。
「長老の孫! 結婚しろって言われたけど嫌だ!」
「…は?」
スバルさんは間抜けな声を漏らして呆けていた。
……あたしが期待していた反応と違う。
は? ってなんだよ。あたしは本気で嫌がっているのになんでそんな呆けた声を出すのか。スバルさんは無理やり縁組されたら嫌だと感じないか!?
「お前、俺のことそこまで嫌がってるのか!?」
焦った顔で、少しばかり傷ついた様子のスバルさんの様子に今度はあたしが間抜けな顔をする。
「……。え?」
俺のこと嫌がる?
そんな訳ないじゃない…。
「うちの爺さんがノリノリで縁談を申し込んだって聞いて慌てて挨拶に来たら、好きな女本人に面と向かって振られるとかないわ…」
首を横に振って嘆き悲しんでいるスバルさんを見上げたあたしはようやく合点がいった。
「…長老の孫って、スバルさんのこと?」
あたしの問いに、彼は不貞腐れたように「そうだよ」と頷く。
スバルさん、長老の孫だったんだ…知らなかった…。なるほど、権力持ったお祖父さんってそういう……
「…好きな女って…あたし?」
次の問いには照れた風に目をそらすスバルさん。
……さっきまで見ず知らずの男との結婚なんてゴメンだと思っていたのにその相手が彼だとわかると、あたしの心は不思議なくらいに浮上した。
「あたしと結婚するの? 正気なの? あたし、罪人の子なんだよ?」
だけど喜んでばかりじゃいられない。
あたしは決してきれいな立場じゃないのだ。それがスバルさんの肩書を傷つける恐れだって…
「それはあっちの国での話だろ。しかも親の話だ。処刑されたことで罪は償ったんだろう」
親の咎を子が背負う必要はない、と言ってのけたスバルさんの目は迷いがなかった。清々しいほどまっすぐした視線であたしを射抜く。
「でも、向こうで窃盗して暮らしていた。あたしの手も汚れて」
「……生き抜くため仕方なくだろ。件の国は修羅の国だったと聞いている。そうでもしなきゃ生きられなかったのだから。俺はちゃんとわかってる」
あたしの手を両手で掴み上げたスバルさんはあたしの目をしっかり見つめて言った。
「こっちでお前が手を汚さなければいいだけのこと。そうだろ?」
確かに、あたしはもう決して手を汚さないと誓ってあの地獄のような国を旅立った。東の国では真面目に仕事をしてまっとうに生きると心に決めている。二度と罪は犯さない。
それでも、やっぱり心に引っかかるのだ。
「……あたしなんかと結婚したいとか、スバルさんは趣味が悪いよ」
あたしはここに来てスバルさんにたくさん迷惑をかけた。意味のわからないやつあたりをぶつけたこともあるし、さんざん振り回してきた。
我ながら女らしくもない、面倒な存在だと思う。そんなあたしを選ぶなんてスバルさんは趣味が悪い。
「そうか? お前はかなりのべっぴんだし、足掻きながら不器用に生きてるお前が俺は好きだぞ。なんか放っておけない」
お前が思う以上に、お前は魅力的だぞ、と言われて、あたしは顔が熱くなったのを感じた。
そんな事言われても、女として見られているみたいできっと気持ち悪く感じるはずなのに、スバルさんに言われると特別な言葉のように聞こえてくすぐったくて恥ずかしくて……嬉しい。
「一生、子作りしなくてもいいの?」
あたしはそれがこわい。
国で見てきた暴力的なそれは今でも色濃く残る心の傷だ。
「うっ、それはおいおい…一生は辛いな、流石に。……信頼してもらえるように頑張る」
一生、というのは無理みたいだ。
だけどスバルさんは譲歩してくれる気でいるみたいである。
……なぜだろう、あたしもスバルさんなら大丈夫かなと思えてきた。
「もう信頼してるよ……あたしが抱きつくのも、一番頼りにしてるのもスバルさんだけなんだから」
それは嘘も偽りもない。
ここに来て最初から親身になってくれたのはスバルさんだった。色眼鏡で見ることなく、無知なあたしを笑うことなく、接してくれた。この国のことを常識を文化を教えてくれたのは彼だ。
たくさん助けてくれた。たくさん包んでくれたのは彼だ。
そうか、スバルさんはあたしの特別な人なんだ。
あたしが笑いかけると、スバルさんは目を細めてこちらをじっと見つめてくる。その瞳の熱があたしに感染してしまいそうで、胸が高鳴るのを抑えきれなかった。
「…口吸いしてもいいか?」
あたしは小さく笑ってしまった。
「さっき、おいおいにって言った」
「キッカが可愛くて、たまらないんだ」
スバルさんの指があたしの唇を撫で、頬を手のひらで包み込む。
なぜだろう。スバルさんならされてもいいと思った。手も、唇も、あたしの女の部分も、彼にならあげてもいいと素直に思えた。
あたしは抵抗せずに彼の唇を待つ。ゆっくりと顔が近づいていく……目を閉じるその前に見えた風景。スバルさんの後ろで星が瞬いていた。
唇にふんわりと重なった彼のそれ。繋いだままの指先を絡めとられ、そのくすぐったさにあたしは身じろぎした。角度を変えて優しく優しく、壊れ物に触れるように唇を食まれる。
あぁ、愛されるってこんなに幸福なことなのか。
あたしは初めて知ったのだ。
奪うか奪われるか、生きるか死ぬかしか生き方を知らなかったあたしは初めて、男の人に愛されることと、恋を知った。
頬を流れる涙。それは悲しいからじゃない。幸せで苦しくて溢れ出してきた涙。
あたしは幸せになってもいいのだろうか。
彼の腕の中で幸せを噛み締めてもいいのだろうか。
あたしたちはしばらく言葉もなく、唇を重ね続けたのである。
『あちらから是非嫁にと声がかかったんだぞ!』と。
あたしに来た縁談のことを自分のことのように誇らしげに言う伯父さん。
「キッカ、お前の母さんの若い頃はここらで一番の美人だったんだ」
それはこっちにきて色んな人に聞かされた。若い頃の母さんは舞踊を習っていた。美しさとその腕を買われて、向こうに踊り子として旅立った。興行に出向いた先々では売れっ子の踊り子になったそうだ。……グラナーダであのクソ親父に目をつけられたのが運の尽きだったけど。
「お前もきっと匂い立つような美女になるはずだ。あちらさんは流石お目が高いな」
ウキウキした様子の伯父さんはやれ顔合わせだ、結納だと話を先に推し進めていた。あたしの意思確認など必要ないとばかりに皆が結婚へと話を進めていく。
「どうしたの、キッカ。顔色が悪いわよ?」
母さんが問いかけてくるけど、あたしは息苦しさを覚えてうまく言葉が出せなかった。
「……ちょっと、考えさせて」
あたしが断るとは思っていなかったのか、皆が目を丸くして固まっている。三対の視線にさらされるのが辛くなって、あたしは一人で外に出ていった。
外はすっかり日が落ちて暗くなってた。じゃりじゃりと地面を踏む音と、どこからか聞こえてくる虫の音色が耳に突き刺さる。
結婚。
あたしが男と結婚。
……それは、男に抱かれなくてはいけないということだ。
それを想像すると、吐き気に襲われた。口元を抑えて吐き気を飲み込むと、深呼吸をして落ち着かせる。
──いやだ。気持ち悪い。
落ち着かせようとしたのに、あたしの身体は震えていた。恐怖と嫌悪でいっぱいだった。クソ親父に暴力を受けていた母さんを思い出してゾッとする。
どうしてみんな乗り気なんだ。あたしは結婚したいなんて一言も言っていないのに。
「……キッカ?」
後ろから静かに呼びかけてきた声にあたしはばっと後ろを振り返る。
そこには風呂敷包みを持ったスバルさんが不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
「暗いのにひとりで何してるんだ? 探しものかなにかか?」
彼の顔を見たらあたしは泣きそうになった。抑え込んでいた感情が爆発して、両腕を広げて彼の胸に飛び込むと気が抜けてジワリと目頭が熱くなった。
「!? キッカ!?」
あたしに抱きつかれてぎょっとした様子のスバルさん。だけど今のあたしには冷静に振る舞う余裕なんてなかった。
「…いやなの」
ポツリと呟いた弱音に、スバルさんの身体が小さく動いた。
「いやだいやだ、知らない男になんか抱かれたくない、反吐が出る…!」
「どうした、また襲われたのか!? あれだけ念押ししたってのにどこのどいつだ!」
慌てた声を出してあたしに何事かと尋ねるスバルさん。そうじゃない、そうじゃないんだ。あたしはどこの誰だかわからない男のものにならなきゃいけないのだ。
「長老の孫! 結婚しろって言われたけど嫌だ!」
「…は?」
スバルさんは間抜けな声を漏らして呆けていた。
……あたしが期待していた反応と違う。
は? ってなんだよ。あたしは本気で嫌がっているのになんでそんな呆けた声を出すのか。スバルさんは無理やり縁組されたら嫌だと感じないか!?
「お前、俺のことそこまで嫌がってるのか!?」
焦った顔で、少しばかり傷ついた様子のスバルさんの様子に今度はあたしが間抜けな顔をする。
「……。え?」
俺のこと嫌がる?
そんな訳ないじゃない…。
「うちの爺さんがノリノリで縁談を申し込んだって聞いて慌てて挨拶に来たら、好きな女本人に面と向かって振られるとかないわ…」
首を横に振って嘆き悲しんでいるスバルさんを見上げたあたしはようやく合点がいった。
「…長老の孫って、スバルさんのこと?」
あたしの問いに、彼は不貞腐れたように「そうだよ」と頷く。
スバルさん、長老の孫だったんだ…知らなかった…。なるほど、権力持ったお祖父さんってそういう……
「…好きな女って…あたし?」
次の問いには照れた風に目をそらすスバルさん。
……さっきまで見ず知らずの男との結婚なんてゴメンだと思っていたのにその相手が彼だとわかると、あたしの心は不思議なくらいに浮上した。
「あたしと結婚するの? 正気なの? あたし、罪人の子なんだよ?」
だけど喜んでばかりじゃいられない。
あたしは決してきれいな立場じゃないのだ。それがスバルさんの肩書を傷つける恐れだって…
「それはあっちの国での話だろ。しかも親の話だ。処刑されたことで罪は償ったんだろう」
親の咎を子が背負う必要はない、と言ってのけたスバルさんの目は迷いがなかった。清々しいほどまっすぐした視線であたしを射抜く。
「でも、向こうで窃盗して暮らしていた。あたしの手も汚れて」
「……生き抜くため仕方なくだろ。件の国は修羅の国だったと聞いている。そうでもしなきゃ生きられなかったのだから。俺はちゃんとわかってる」
あたしの手を両手で掴み上げたスバルさんはあたしの目をしっかり見つめて言った。
「こっちでお前が手を汚さなければいいだけのこと。そうだろ?」
確かに、あたしはもう決して手を汚さないと誓ってあの地獄のような国を旅立った。東の国では真面目に仕事をしてまっとうに生きると心に決めている。二度と罪は犯さない。
それでも、やっぱり心に引っかかるのだ。
「……あたしなんかと結婚したいとか、スバルさんは趣味が悪いよ」
あたしはここに来てスバルさんにたくさん迷惑をかけた。意味のわからないやつあたりをぶつけたこともあるし、さんざん振り回してきた。
我ながら女らしくもない、面倒な存在だと思う。そんなあたしを選ぶなんてスバルさんは趣味が悪い。
「そうか? お前はかなりのべっぴんだし、足掻きながら不器用に生きてるお前が俺は好きだぞ。なんか放っておけない」
お前が思う以上に、お前は魅力的だぞ、と言われて、あたしは顔が熱くなったのを感じた。
そんな事言われても、女として見られているみたいできっと気持ち悪く感じるはずなのに、スバルさんに言われると特別な言葉のように聞こえてくすぐったくて恥ずかしくて……嬉しい。
「一生、子作りしなくてもいいの?」
あたしはそれがこわい。
国で見てきた暴力的なそれは今でも色濃く残る心の傷だ。
「うっ、それはおいおい…一生は辛いな、流石に。……信頼してもらえるように頑張る」
一生、というのは無理みたいだ。
だけどスバルさんは譲歩してくれる気でいるみたいである。
……なぜだろう、あたしもスバルさんなら大丈夫かなと思えてきた。
「もう信頼してるよ……あたしが抱きつくのも、一番頼りにしてるのもスバルさんだけなんだから」
それは嘘も偽りもない。
ここに来て最初から親身になってくれたのはスバルさんだった。色眼鏡で見ることなく、無知なあたしを笑うことなく、接してくれた。この国のことを常識を文化を教えてくれたのは彼だ。
たくさん助けてくれた。たくさん包んでくれたのは彼だ。
そうか、スバルさんはあたしの特別な人なんだ。
あたしが笑いかけると、スバルさんは目を細めてこちらをじっと見つめてくる。その瞳の熱があたしに感染してしまいそうで、胸が高鳴るのを抑えきれなかった。
「…口吸いしてもいいか?」
あたしは小さく笑ってしまった。
「さっき、おいおいにって言った」
「キッカが可愛くて、たまらないんだ」
スバルさんの指があたしの唇を撫で、頬を手のひらで包み込む。
なぜだろう。スバルさんならされてもいいと思った。手も、唇も、あたしの女の部分も、彼にならあげてもいいと素直に思えた。
あたしは抵抗せずに彼の唇を待つ。ゆっくりと顔が近づいていく……目を閉じるその前に見えた風景。スバルさんの後ろで星が瞬いていた。
唇にふんわりと重なった彼のそれ。繋いだままの指先を絡めとられ、そのくすぐったさにあたしは身じろぎした。角度を変えて優しく優しく、壊れ物に触れるように唇を食まれる。
あぁ、愛されるってこんなに幸福なことなのか。
あたしは初めて知ったのだ。
奪うか奪われるか、生きるか死ぬかしか生き方を知らなかったあたしは初めて、男の人に愛されることと、恋を知った。
頬を流れる涙。それは悲しいからじゃない。幸せで苦しくて溢れ出してきた涙。
あたしは幸せになってもいいのだろうか。
彼の腕の中で幸せを噛み締めてもいいのだろうか。
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