148 / 209
Day‘s Eye デイジーの花が開くとき
過去の恋心と嫉妬の猫獣人
しおりを挟む
「そういえば聞いたかい? エイミスさん家のミアちゃん、昨晩遅くにひとりで帰ってきたんだって」
朝ごはんの時間に何気なくお母さんが話した内容に私は眉をひそめた。
狭い村の中ではあっという間に噂が駆け回る。朝ごはんのパンを買いに行ったお母さんは隣の奥さんから呼び止められて話を聞かされたのだという。
先日結婚して、相手の住む町へと引っ越していったミア。今は新婚ホヤホヤで下手したら蜜月真っ盛りなのに…帰省とは不穏な空気である。
あんなに幸せそうだったのになんだ? 痴話喧嘩かなにかかな。同じ猫獣人でも暮らしてきた場所が違うから価値観の相違でぶつかったとか?
例えばエスメラルダ東部であるこの村では朝は目玉焼きが主流だけど、西部ではスクランブルエッグが普通らしいので、それで喧嘩したとか……。いや、流石にそれは無いか。
「泣きながら家に帰ってきたって話だよ。新婚ホヤホヤなのに喧嘩かねぇ…」
「他所の家のことだ。余計な口出すんじゃないぞ」
お母さんとしては気になるらしいが、お父さんは関わるなと言う。私は黙ってちぎったパンを食べていた。つい最近テオと喧嘩してしばらく無視し続けていた私には偉そうなことは言えない。ここは回答を控えさせてもらうとしよう。
ミアの気が済んだら家に戻るか、旦那のほうが迎えに来るだろう。
夫婦喧嘩に他人は関わらないのが一番だ。そう納得させて、今日の仕事の段取りを考えていた私だったが、まさか修羅場の方からやってくるとは思わなかった。
いつもの丘の上。私は薬をすり潰しながら空を見上げた。どこまでも続く青空が広がっている。穏やかだ。
私はこの日常が当然だと思っていたが、先のハルベリオン陥落作戦以降、考えが変わった。なにもないただ平穏な日がたまらなく愛おしいものなのだと学んだ。
勉強ばかりで空よりも本を眺め続けてきた私だが、雲ひとつない青空がこんなにも愛おしいなんてものすごい心境の変化である。
「よーし、できた」
注文分の胃腸薬を煎じ終えると、個別包装して完了である。注文分の薬を作り終えた後は、今や常連客の多い美容クリーム作成に着手する。
私はずっとこの丘の上で薬を作り続けているが、いい加減薬専用の小屋かなにかがほしい。だから一人暮らしを考えていたのだが、家族は反対だと言うし…この村には賃貸ってものが無いからなぁ。自分で手配して小さな小屋を作ろうかなぁ。
美容成分が配合された薬草から花殻をもぎ取る作業をしていると、シタンッと軽々と地面を蹴り飛ばす音が聞こえてきた。直後、私の肩にノシッと何かが乗った。
「!?」
倒れ込むほどの重さではないが、ずっと載せられるほど軽いわけじゃない。
四足のなにかが器用に乗っている。暖かくてふかふかした感触を項に感じていた私は、レイラさんに肩を噛みつかれた時のことを思い出して固まっていた。
あの噛み噛み事件の再来かと冷や汗をかいて動けなくなったのだ。
「──ミアッ」
咎めるような男の声に、肩に乗っかっていた何かの腕が私の後頭部を抱き込んできた。私に縋っているのか、ブルブルと震えているのがこちらにまで伝わってくる。
「いい加減にしないか」
苛立っているような声で上から怒られたけど、多分これは私の後頭部に居る何かに叱っているのであろう。
サクサクと草を踏みしめる音がして、うつむきがちになった私の目の先に男性の靴が現れた。ちらりと見上げるとそこには灰色猫獣人の姿。彼はミアの旦那さんだ。
ということは…私の後頭部にしがみついているのは、獣化したミアってこと……?
「迎えに来た、帰るよミア」
「ニィィィ…」
「あの男がいる村に帰ってきたのは僕に対する当てつけ? あの男に泣きつきに来たの?」
灰色猫獣人が目を細めて私の肩に乗っているミアを睨みつけると、猫型のミアは怯えたように縮こまる。
……あの、私を挟んで痴話喧嘩しないでくれませんかね。
「あの、まずは落ち着きましょう」
「君には関係ない」
そう、そのとおりだ。
だが現に私は巻き込まれてしまった。痴話喧嘩にしてもミアの怯えてるし、このままじゃ冷静に公正な話し合いできないでしょ?
「いや、ミアは私に助けを求めに来たんでしょう。あなたがおっかない顔で追いかけてきて怯えているんですよ」
私の指摘にミアの旦那さんは眉間にシワを寄せ、「フシャー!」と猫が発する威嚇音を発してきた。しっぽをピンと立てて、野良猫の縄張り争い一歩手前みたいに威嚇された。
それやめて怖いから。私は拳での話し合いは遠慮したいです。
「…過去の男をいつまでも未練たらしく想い続ける彼女が悪い。僕を選んだというのに、初恋の男にまだ囚われている…!」
「へぇーそうなんですか」
私が気のない返事をしていると、私の肩に乗ったままのミアがミギャーとなにか訴えてきた。何言ってるか分かんないけど、なにか訴えたがってるのはわかる。
なるほどねー獣人の嫉妬深さが原因かなぁ。この人もか。しょうもな。
私はぷちぷちと花殻もぎを再開した。その態度が興味なさそうに映ったのか、目の前の灰色猫獣人は苛立っている様子であった。
「ミアが僕の求婚を受け入れたのはあの男と毛色が似ているからだという!」
「……あの男、というのがこの村の某狼獣人のことを言ってるなら、テオは白銀色ですよ。灰色のあなたとは少し違う…自分の色が気に入らないなら、脱色剤作ってテオと同じ毛色にしてあげますけど。お揃いになれますよ」
「結構だ!」
私も似てるなぁと思ったけど、相手猫獣人だし、灰色はありふれた色だし。顔立ちも性格もテオとは正反対の雰囲気を持つミアの旦那さんだ。流石に色だけで選んだわけじゃないだろう。
そもそもミアがそんな事言ったの? 流石に旦那前にして言うような子ではないと思うけど。
「ミアは、流れ込んでくる縁談をすべて断り、あの男を想い続けてきたという。……寝言で、あの男の名を呼んだんだ……今でも、あの男を思っているに違いない」
いや、夢の中まで干渉するなよ、面倒くさい男だな。
無意識に呼んでしまったのは許しなって。幼馴染なんだから夢に出てくることもあるだろう。私だってあいつに追いかけ回されていた時代の夢を今でも見るぞ。
ミアの心のうちは私にもわからないけど、テオへの恋心は思い出として特別なものとして残ってるんじゃないかなと思う。
「あいにく、私は男女のことは疎いもんで……だけど、世の中では初恋はいつまでも美しい思い出になるものらしいですよ」
これは私が貴族として生活していた頃、母上のお友達の貴族夫人がお茶会の席で言ってた。
彼女たちは家のために結婚しなきゃいけないので、恋愛結婚は稀だ。恋を諦めて嫁いだ人もいる。そのせいか大人になって、成人した子どもがいる年齢になっても、娘時代の甘くほろ苦い恋のことだけは覚えているのだと熱く語られたぞ。
「だとしても!」
「ミアの心はミアのものです。過去の恋心にまで束縛できませんよ?」
「僕はミアの番だぞ! 番以外の男を想うなんてあってはならないことだ!」
獣人はほんと嫉妬深いよなぁ。私は呆れずにはいられなかった。
「違うと言ったのに責め立ててきたのはあなたでしょ! どうして私の言うことを信じてくれないの! なんで友達かどうかも怪しい人の話を鵜呑みにするの! 私は不貞なんかしてない!」
私の背に隠れるようにして人型に戻ったミアが全裸で叫んでいた。私は慌てて、畳んで置いていたマントを彼女の身体にかけてあげる。
だから全裸は駄目だって。危険すぎる。
今の流れだと、この旦那さんに余計なことを言ってきた輩がいるんだな。
それが冗談か悪意かは知らないが……きっとそれが旦那さんの心の奥底で不安として残っていたことなんだろうね。それがとうとう爆発した。だからこうして喧嘩になっている。
「ミアにはそれはそれは山程の縁談が流れ込んできたんです。その中であなたが選ばれたんですから、少し位余裕持ったらどうなんですか?」
私はミアを守るようにして相手を注視すると、相手は渋い顔をしていた。
「それは…」
「匂いは? 彼女から浮気相手の匂いがするんですか? 獣人ならわかりますよね?」
私の問いかけに旦那さんは口ごもり、気まずそうに目を逸らすと「いや…」と小さく否定していた。
浮気レベルになったら異性の移り香が顕著になるものなんじゃないか? ごまかせないくらい匂いが染み付いちゃうと思うんだけど。
しくしくとすすり泣く声が聞こえる。私の背中にしがみついてミアが泣いているのだ。
なんだこれ。なんでこの状況に私が挟まれているんだろうか。……駄目だな、旦那さんもミアも頭に血が上ってて冷静に話し合いできなさそうだ。
「一ヶ月くらい、ミアを実家に預かってもらってあなたはひとりで過ごしてみたらいい」
近くにいるから溜め込んだ不満や不安をぶつけてしまうんだ。離れて自分を見つめ直したらどうだ。せめて冷静になって話し合いができるまでは。
「君が決めるな!」
「じゃあ、ミアのご両親に言いますか。嫌がって泣き叫ぶミアを無理やり連れて帰るって」
泣いてる娘を放置しておくようなエイミス夫妻ではないと思うから、きっと止めると思うなぁ。
「あなたに会いたくなったらミアも帰るでしょ。今のままじゃ話は平行線ですよ」
お互いにわだかまりを残してギクシャクするだけだと思うなぁ。
私の言葉に猫獣人旦那は口ごもり、なにか言いたそうにミアを見ていたが、泣く彼女を見て少し冷静になったようだ。
「…また様子見に来る」
そう言ってひとりで帰っていったのだ。
朝ごはんの時間に何気なくお母さんが話した内容に私は眉をひそめた。
狭い村の中ではあっという間に噂が駆け回る。朝ごはんのパンを買いに行ったお母さんは隣の奥さんから呼び止められて話を聞かされたのだという。
先日結婚して、相手の住む町へと引っ越していったミア。今は新婚ホヤホヤで下手したら蜜月真っ盛りなのに…帰省とは不穏な空気である。
あんなに幸せそうだったのになんだ? 痴話喧嘩かなにかかな。同じ猫獣人でも暮らしてきた場所が違うから価値観の相違でぶつかったとか?
例えばエスメラルダ東部であるこの村では朝は目玉焼きが主流だけど、西部ではスクランブルエッグが普通らしいので、それで喧嘩したとか……。いや、流石にそれは無いか。
「泣きながら家に帰ってきたって話だよ。新婚ホヤホヤなのに喧嘩かねぇ…」
「他所の家のことだ。余計な口出すんじゃないぞ」
お母さんとしては気になるらしいが、お父さんは関わるなと言う。私は黙ってちぎったパンを食べていた。つい最近テオと喧嘩してしばらく無視し続けていた私には偉そうなことは言えない。ここは回答を控えさせてもらうとしよう。
ミアの気が済んだら家に戻るか、旦那のほうが迎えに来るだろう。
夫婦喧嘩に他人は関わらないのが一番だ。そう納得させて、今日の仕事の段取りを考えていた私だったが、まさか修羅場の方からやってくるとは思わなかった。
いつもの丘の上。私は薬をすり潰しながら空を見上げた。どこまでも続く青空が広がっている。穏やかだ。
私はこの日常が当然だと思っていたが、先のハルベリオン陥落作戦以降、考えが変わった。なにもないただ平穏な日がたまらなく愛おしいものなのだと学んだ。
勉強ばかりで空よりも本を眺め続けてきた私だが、雲ひとつない青空がこんなにも愛おしいなんてものすごい心境の変化である。
「よーし、できた」
注文分の胃腸薬を煎じ終えると、個別包装して完了である。注文分の薬を作り終えた後は、今や常連客の多い美容クリーム作成に着手する。
私はずっとこの丘の上で薬を作り続けているが、いい加減薬専用の小屋かなにかがほしい。だから一人暮らしを考えていたのだが、家族は反対だと言うし…この村には賃貸ってものが無いからなぁ。自分で手配して小さな小屋を作ろうかなぁ。
美容成分が配合された薬草から花殻をもぎ取る作業をしていると、シタンッと軽々と地面を蹴り飛ばす音が聞こえてきた。直後、私の肩にノシッと何かが乗った。
「!?」
倒れ込むほどの重さではないが、ずっと載せられるほど軽いわけじゃない。
四足のなにかが器用に乗っている。暖かくてふかふかした感触を項に感じていた私は、レイラさんに肩を噛みつかれた時のことを思い出して固まっていた。
あの噛み噛み事件の再来かと冷や汗をかいて動けなくなったのだ。
「──ミアッ」
咎めるような男の声に、肩に乗っかっていた何かの腕が私の後頭部を抱き込んできた。私に縋っているのか、ブルブルと震えているのがこちらにまで伝わってくる。
「いい加減にしないか」
苛立っているような声で上から怒られたけど、多分これは私の後頭部に居る何かに叱っているのであろう。
サクサクと草を踏みしめる音がして、うつむきがちになった私の目の先に男性の靴が現れた。ちらりと見上げるとそこには灰色猫獣人の姿。彼はミアの旦那さんだ。
ということは…私の後頭部にしがみついているのは、獣化したミアってこと……?
「迎えに来た、帰るよミア」
「ニィィィ…」
「あの男がいる村に帰ってきたのは僕に対する当てつけ? あの男に泣きつきに来たの?」
灰色猫獣人が目を細めて私の肩に乗っているミアを睨みつけると、猫型のミアは怯えたように縮こまる。
……あの、私を挟んで痴話喧嘩しないでくれませんかね。
「あの、まずは落ち着きましょう」
「君には関係ない」
そう、そのとおりだ。
だが現に私は巻き込まれてしまった。痴話喧嘩にしてもミアの怯えてるし、このままじゃ冷静に公正な話し合いできないでしょ?
「いや、ミアは私に助けを求めに来たんでしょう。あなたがおっかない顔で追いかけてきて怯えているんですよ」
私の指摘にミアの旦那さんは眉間にシワを寄せ、「フシャー!」と猫が発する威嚇音を発してきた。しっぽをピンと立てて、野良猫の縄張り争い一歩手前みたいに威嚇された。
それやめて怖いから。私は拳での話し合いは遠慮したいです。
「…過去の男をいつまでも未練たらしく想い続ける彼女が悪い。僕を選んだというのに、初恋の男にまだ囚われている…!」
「へぇーそうなんですか」
私が気のない返事をしていると、私の肩に乗ったままのミアがミギャーとなにか訴えてきた。何言ってるか分かんないけど、なにか訴えたがってるのはわかる。
なるほどねー獣人の嫉妬深さが原因かなぁ。この人もか。しょうもな。
私はぷちぷちと花殻もぎを再開した。その態度が興味なさそうに映ったのか、目の前の灰色猫獣人は苛立っている様子であった。
「ミアが僕の求婚を受け入れたのはあの男と毛色が似ているからだという!」
「……あの男、というのがこの村の某狼獣人のことを言ってるなら、テオは白銀色ですよ。灰色のあなたとは少し違う…自分の色が気に入らないなら、脱色剤作ってテオと同じ毛色にしてあげますけど。お揃いになれますよ」
「結構だ!」
私も似てるなぁと思ったけど、相手猫獣人だし、灰色はありふれた色だし。顔立ちも性格もテオとは正反対の雰囲気を持つミアの旦那さんだ。流石に色だけで選んだわけじゃないだろう。
そもそもミアがそんな事言ったの? 流石に旦那前にして言うような子ではないと思うけど。
「ミアは、流れ込んでくる縁談をすべて断り、あの男を想い続けてきたという。……寝言で、あの男の名を呼んだんだ……今でも、あの男を思っているに違いない」
いや、夢の中まで干渉するなよ、面倒くさい男だな。
無意識に呼んでしまったのは許しなって。幼馴染なんだから夢に出てくることもあるだろう。私だってあいつに追いかけ回されていた時代の夢を今でも見るぞ。
ミアの心のうちは私にもわからないけど、テオへの恋心は思い出として特別なものとして残ってるんじゃないかなと思う。
「あいにく、私は男女のことは疎いもんで……だけど、世の中では初恋はいつまでも美しい思い出になるものらしいですよ」
これは私が貴族として生活していた頃、母上のお友達の貴族夫人がお茶会の席で言ってた。
彼女たちは家のために結婚しなきゃいけないので、恋愛結婚は稀だ。恋を諦めて嫁いだ人もいる。そのせいか大人になって、成人した子どもがいる年齢になっても、娘時代の甘くほろ苦い恋のことだけは覚えているのだと熱く語られたぞ。
「だとしても!」
「ミアの心はミアのものです。過去の恋心にまで束縛できませんよ?」
「僕はミアの番だぞ! 番以外の男を想うなんてあってはならないことだ!」
獣人はほんと嫉妬深いよなぁ。私は呆れずにはいられなかった。
「違うと言ったのに責め立ててきたのはあなたでしょ! どうして私の言うことを信じてくれないの! なんで友達かどうかも怪しい人の話を鵜呑みにするの! 私は不貞なんかしてない!」
私の背に隠れるようにして人型に戻ったミアが全裸で叫んでいた。私は慌てて、畳んで置いていたマントを彼女の身体にかけてあげる。
だから全裸は駄目だって。危険すぎる。
今の流れだと、この旦那さんに余計なことを言ってきた輩がいるんだな。
それが冗談か悪意かは知らないが……きっとそれが旦那さんの心の奥底で不安として残っていたことなんだろうね。それがとうとう爆発した。だからこうして喧嘩になっている。
「ミアにはそれはそれは山程の縁談が流れ込んできたんです。その中であなたが選ばれたんですから、少し位余裕持ったらどうなんですか?」
私はミアを守るようにして相手を注視すると、相手は渋い顔をしていた。
「それは…」
「匂いは? 彼女から浮気相手の匂いがするんですか? 獣人ならわかりますよね?」
私の問いかけに旦那さんは口ごもり、気まずそうに目を逸らすと「いや…」と小さく否定していた。
浮気レベルになったら異性の移り香が顕著になるものなんじゃないか? ごまかせないくらい匂いが染み付いちゃうと思うんだけど。
しくしくとすすり泣く声が聞こえる。私の背中にしがみついてミアが泣いているのだ。
なんだこれ。なんでこの状況に私が挟まれているんだろうか。……駄目だな、旦那さんもミアも頭に血が上ってて冷静に話し合いできなさそうだ。
「一ヶ月くらい、ミアを実家に預かってもらってあなたはひとりで過ごしてみたらいい」
近くにいるから溜め込んだ不満や不安をぶつけてしまうんだ。離れて自分を見つめ直したらどうだ。せめて冷静になって話し合いができるまでは。
「君が決めるな!」
「じゃあ、ミアのご両親に言いますか。嫌がって泣き叫ぶミアを無理やり連れて帰るって」
泣いてる娘を放置しておくようなエイミス夫妻ではないと思うから、きっと止めると思うなぁ。
「あなたに会いたくなったらミアも帰るでしょ。今のままじゃ話は平行線ですよ」
お互いにわだかまりを残してギクシャクするだけだと思うなぁ。
私の言葉に猫獣人旦那は口ごもり、なにか言いたそうにミアを見ていたが、泣く彼女を見て少し冷静になったようだ。
「…また様子見に来る」
そう言ってひとりで帰っていったのだ。
10
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。
みみぢあん
恋愛
ミレイユの婚約者、オルドリッジ子爵家の長男クレマンは、子供の頃から仲の良い妹のような従妹パトリシアを優先する。 婚約者のミレイユよりもクレマンが従妹を優先するため、学園内でクレマンと従妹の浮気疑惑がうわさになる。
――だが、クレマンが従妹を優先するのは、人には言えない複雑な事情があるからだ。
それを知ったミレイユは婚約破棄するべきか?、婚約を継続するべきか?、悩み続けてミレイユが出した結論は……
※ざまぁ系のお話ではありません。ご注意を😓 まぎらわしくてすみません。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる