115 / 209
Day‘s Eye 魔術師になったデイジー
届かぬ太陽・前編【テオ視点】
しおりを挟む
あいつから手をかざされたとき、記憶を消されるのではないかと恐怖を抱いた。
デイジーに掛けられた魔法によって強制的に眠りへ落とされた俺は、とても幸せな夢を見ていた気がする。
──デイジーは窓辺で子守唄を歌っていた。その腕にはまだ人化していない子狼の姿。あいつは俺の姿に気づくと、「注文の薬作るから子守よろしくね」と言って俺の腕に小さな命を乗せるんだ。
好きな女と一緒になって、小さくて壊れそうな守るべき命を育む。そんな何気ない幸せを俺は望んでいた。贅沢は言わない。ただそばにいてほしいだけなのに。
夢から覚めたとき、頭はスッキリしていた。だけど現実に引き戻された俺は愕然とした。
あいつが戦地へと出向いた後だったから。
『…あんたは運命の番と沢山子ども作って、孫に囲まれてせいぜい大往生したらいいのよ』
そんな残酷なこと、お前が言うなよ。
俺が心の底から求めているのはお前なのに、他の女と番えなんて冗談でも聞きたくない。
運命の番という呪縛は俺の精神まで蝕もうとしている。
デイジーが旅立って7日くらい経過しただろうか。今まであいつが不在だったことは多かった。
しかし今回は今までとは違う。
最後に見たあいつは、死ぬことすら怖くないと覚悟を決めた目をしていた。
それが恐ろしくて引き留めようとしたが、あいつはその手を振り払った。残酷な言葉を残して去ってしまった。
……俺は生きる希望を失った気がした。
ただ淡々と生きる毎日。食欲が失せ、眠れない日々を送っていた。
周りはデイジーを忘れろ、運命の番がいるじゃないかと慰めてくるけど、そういう問題じゃない。好きな女が命をかけて戦いに行っているのに、俺だけのうのうと生きていられるわけがないのに。
あいつと同じく魔力持ちの人間であれば共に戦えた。あいつを守れたのに。自分の無力さ加減に嫌気が差す。
日に日に元気をなくす俺の姿を見た幼馴染たちは「まるで半身を失ったようだ」と心配した。
俺にもどうしようもなかった。
苦しくて苦しくて、でもその苦しさを癒す方法は見当たらなくて。ただただ飼い主の帰りを待ち続ける犬みたいに、あいつの無事を願い、帰還を待っていた。
レイラの度重なる訪問にも俺が拒絶の意を示し続けていたため、運命の番とその両親が焦れて直談判に来た。
彼らに囲まれて運命の番を拒否するのかと圧力をかけてきても、俺は首を横に振って拒絶した。
「テオ、お前も男なら覚悟を決めたらどうなんだ」
両親もすっかりレイラを俺の嫁にするつもりでいて、家の中でも圧力をかけるようになった。
頭ではわかっている。デイジーに振られたような形になった俺が元気をなくしているのを心配しているんだ。
俺が選ぼうとしている道はきっと獣人としては間違った道なのだろう。めったに出会えないと言われる【運命の番】を拒絶するなんて、運命を夢を見てる奴からしたら愚かな選択に思われることであろう。
周りから説得され、責めるような視線を向けられても、俺は頭を下げ続けた。
「…それでも、俺には心に決めた人がいる。…すみません…本当に申し訳ない」
他にない甘ったるい匂いで惹きつけてくるレイラの項に、自分の中の獣が噛みつこうと暴れているが、俺は手の甲をつねって正気を保っていた。
レイラはプライドを傷つけられたようでわなわな震えながら涙を浮かべていた。それを直視した俺の心にチクチク罪悪感が突き刺さる。
レイラの両親は不快そうに顔をしかめてため息を吐くと、ジト目でこっちを睨んできた。
「君の好きな人というのは、貴族の娘なのだろう。一緒になれるとでも思っているのか?」
その言葉に俺はピクリと反応した。
「運命の番を退けるなんて…お互い不幸になるだけよ?」
そんなの、色んな奴に言われた。
わかってる、だけどどうしても無理だ。レイラには申し訳ないと思ってる。手の届かない想い人を諦めきれずにズルズル引きずってる女々しい男を見て呆れているだろう。
だけど俺は昔からそうなんだ。
あいつを追いかけて、あいつを見つめ続けてきたんだ。
■□■
休日の日曜。
家にいても、親からまた説教混じりの小言を言われると思った俺は早朝から家を飛び出して、あいつがよく薬作りをしていた丘の上でぼうっとしていた。
今頃あいつはなにをしているんだろうか。
ハルベリオン陥落作戦っていうくらいだから、王を撃ち落とすんだよな…それとあのフェアラートっていう魔術師も。恐らく短期集中で決着をつけるのだと思う。
……俺は、デイジーが魔術師として弱いとは思わないけど、彼女は戦闘向きではないと思う。デイジーは静かに読書して、薬作りして、旅をして、自由に平和に過ごすのを好むような女なのだ。
デイジーの友人だという、丸メガネの女魔術師とは決定的に素養が違うように感じた。丸メガネの女は根っからの戦闘狂で、本能で動くタイプだ。隙がなく、敵に情け容赦ないのに対し、デイジーは既のところで判断が遅れる傾向がある。頭で考えている間に隙が生まれるんだ。
……それが命取りにならなければいいが。
「おい」
国を守るために敵を傷つけて、あいつが気に病んだりしなければいい。一番は怪我せずに無事に帰国してくれたら……
「おい、お前がテオ・タルコットか」
考え事をして気がそぞろになっていた。
いつの間にかぬんっと目の前に知らない奴が立ちはだかっており、俺は眉間にシワを寄せて睨みあげた。
色が黒くて、筋肉質の体を持った顔がいかつい男。鼻の穴が大きめでそこに目が行く……誰だ? うちの村の住民じゃないな。
「…誰だお前」
「俺か? 俺はブルーノ。レイラの幼馴染だ」
…レイラの幼馴染……?
パッと見では人間に見えた。しかし、それにしては体格が良すぎる。シャツのサイズが合っていない上半身は今にもボタンが弾け飛びそうにパツパツしている。
「…俺はれっきとした獣人だぞ。大猩々獣人だ」
俺の疑問が伝わったのか、相手は自己紹介してきた。どうやら猿系の獣人らしいが、人間と比べて耳が少し大きめなだけで、見た目は人間とそう変わらない。
「レイラは優しい子だ。…俺は周りに獣人じゃないと昔から仲間外れにされていた。耳なしと差別しなかったのはあの子くらいだった」
そんな告白をされた俺は、幼い頃にあいつの気を引きたくて「よそ者」「人間は出てけ」と意地悪を言っていたことを思い出してひとりで勝手に自己嫌悪していた。
そんな俺の前で、ブルーノは何やらレイラの素晴らしさをペラペラ語ってくれている。美人で性格良くて料理が上手で気立ての良い彼女を好いている男はたくさんいるのだとツバが飛ばされるくらいの勢いで語られた。
「レイラの何が不満だ! 何故彼女を拒絶する!」
締めくくりに怒鳴りつけられた。
確かにレイラはいい子だとは思うが、そういう問題じゃないんだ…そんな事言っても誰も理解してくれないけどな。
「おっ、俺はっ求婚すら出来ないんだぞ! それなのに…!」
ブルーノは拳を握りしめて震えていた。怒りで真っ赤にしていた顔が一瞬泣きそうに歪む。それで俺は察した。
「…お前、レイラのことが好きなのか」
お前も片思いをしているのか、と親近感が湧いたのは俺だけだったのようだ。奴は俺の胸ぐらを包むと、間髪入れずにその拳を振り上げてきた。
普段ならかわせたはずだが、本調子じゃない俺は勢いよくガッと殴られた。
…いてぇ。口の中切った。
「…レイラから聞いたぜ。分不相応に貴族の令嬢に想いを寄せてるとか…馬鹿じゃないのか! ただの村人が貴族のお姫様と結ばれるとか思ってんのかよ、お前頭どうかしてるんじゃないのか!?」
カッとなったブルーノは嫉妬の眼差しをビシビシと俺にぶつけて来た。
…頭どうかしてる…か。そうかもしれないな。
奴は俺の胸元を見ると、表情をますます険しいものにさせていた。奴の鋭い視線は、デイジーのペンダントに突き刺さっていたのである。
デイジーに掛けられた魔法によって強制的に眠りへ落とされた俺は、とても幸せな夢を見ていた気がする。
──デイジーは窓辺で子守唄を歌っていた。その腕にはまだ人化していない子狼の姿。あいつは俺の姿に気づくと、「注文の薬作るから子守よろしくね」と言って俺の腕に小さな命を乗せるんだ。
好きな女と一緒になって、小さくて壊れそうな守るべき命を育む。そんな何気ない幸せを俺は望んでいた。贅沢は言わない。ただそばにいてほしいだけなのに。
夢から覚めたとき、頭はスッキリしていた。だけど現実に引き戻された俺は愕然とした。
あいつが戦地へと出向いた後だったから。
『…あんたは運命の番と沢山子ども作って、孫に囲まれてせいぜい大往生したらいいのよ』
そんな残酷なこと、お前が言うなよ。
俺が心の底から求めているのはお前なのに、他の女と番えなんて冗談でも聞きたくない。
運命の番という呪縛は俺の精神まで蝕もうとしている。
デイジーが旅立って7日くらい経過しただろうか。今まであいつが不在だったことは多かった。
しかし今回は今までとは違う。
最後に見たあいつは、死ぬことすら怖くないと覚悟を決めた目をしていた。
それが恐ろしくて引き留めようとしたが、あいつはその手を振り払った。残酷な言葉を残して去ってしまった。
……俺は生きる希望を失った気がした。
ただ淡々と生きる毎日。食欲が失せ、眠れない日々を送っていた。
周りはデイジーを忘れろ、運命の番がいるじゃないかと慰めてくるけど、そういう問題じゃない。好きな女が命をかけて戦いに行っているのに、俺だけのうのうと生きていられるわけがないのに。
あいつと同じく魔力持ちの人間であれば共に戦えた。あいつを守れたのに。自分の無力さ加減に嫌気が差す。
日に日に元気をなくす俺の姿を見た幼馴染たちは「まるで半身を失ったようだ」と心配した。
俺にもどうしようもなかった。
苦しくて苦しくて、でもその苦しさを癒す方法は見当たらなくて。ただただ飼い主の帰りを待ち続ける犬みたいに、あいつの無事を願い、帰還を待っていた。
レイラの度重なる訪問にも俺が拒絶の意を示し続けていたため、運命の番とその両親が焦れて直談判に来た。
彼らに囲まれて運命の番を拒否するのかと圧力をかけてきても、俺は首を横に振って拒絶した。
「テオ、お前も男なら覚悟を決めたらどうなんだ」
両親もすっかりレイラを俺の嫁にするつもりでいて、家の中でも圧力をかけるようになった。
頭ではわかっている。デイジーに振られたような形になった俺が元気をなくしているのを心配しているんだ。
俺が選ぼうとしている道はきっと獣人としては間違った道なのだろう。めったに出会えないと言われる【運命の番】を拒絶するなんて、運命を夢を見てる奴からしたら愚かな選択に思われることであろう。
周りから説得され、責めるような視線を向けられても、俺は頭を下げ続けた。
「…それでも、俺には心に決めた人がいる。…すみません…本当に申し訳ない」
他にない甘ったるい匂いで惹きつけてくるレイラの項に、自分の中の獣が噛みつこうと暴れているが、俺は手の甲をつねって正気を保っていた。
レイラはプライドを傷つけられたようでわなわな震えながら涙を浮かべていた。それを直視した俺の心にチクチク罪悪感が突き刺さる。
レイラの両親は不快そうに顔をしかめてため息を吐くと、ジト目でこっちを睨んできた。
「君の好きな人というのは、貴族の娘なのだろう。一緒になれるとでも思っているのか?」
その言葉に俺はピクリと反応した。
「運命の番を退けるなんて…お互い不幸になるだけよ?」
そんなの、色んな奴に言われた。
わかってる、だけどどうしても無理だ。レイラには申し訳ないと思ってる。手の届かない想い人を諦めきれずにズルズル引きずってる女々しい男を見て呆れているだろう。
だけど俺は昔からそうなんだ。
あいつを追いかけて、あいつを見つめ続けてきたんだ。
■□■
休日の日曜。
家にいても、親からまた説教混じりの小言を言われると思った俺は早朝から家を飛び出して、あいつがよく薬作りをしていた丘の上でぼうっとしていた。
今頃あいつはなにをしているんだろうか。
ハルベリオン陥落作戦っていうくらいだから、王を撃ち落とすんだよな…それとあのフェアラートっていう魔術師も。恐らく短期集中で決着をつけるのだと思う。
……俺は、デイジーが魔術師として弱いとは思わないけど、彼女は戦闘向きではないと思う。デイジーは静かに読書して、薬作りして、旅をして、自由に平和に過ごすのを好むような女なのだ。
デイジーの友人だという、丸メガネの女魔術師とは決定的に素養が違うように感じた。丸メガネの女は根っからの戦闘狂で、本能で動くタイプだ。隙がなく、敵に情け容赦ないのに対し、デイジーは既のところで判断が遅れる傾向がある。頭で考えている間に隙が生まれるんだ。
……それが命取りにならなければいいが。
「おい」
国を守るために敵を傷つけて、あいつが気に病んだりしなければいい。一番は怪我せずに無事に帰国してくれたら……
「おい、お前がテオ・タルコットか」
考え事をして気がそぞろになっていた。
いつの間にかぬんっと目の前に知らない奴が立ちはだかっており、俺は眉間にシワを寄せて睨みあげた。
色が黒くて、筋肉質の体を持った顔がいかつい男。鼻の穴が大きめでそこに目が行く……誰だ? うちの村の住民じゃないな。
「…誰だお前」
「俺か? 俺はブルーノ。レイラの幼馴染だ」
…レイラの幼馴染……?
パッと見では人間に見えた。しかし、それにしては体格が良すぎる。シャツのサイズが合っていない上半身は今にもボタンが弾け飛びそうにパツパツしている。
「…俺はれっきとした獣人だぞ。大猩々獣人だ」
俺の疑問が伝わったのか、相手は自己紹介してきた。どうやら猿系の獣人らしいが、人間と比べて耳が少し大きめなだけで、見た目は人間とそう変わらない。
「レイラは優しい子だ。…俺は周りに獣人じゃないと昔から仲間外れにされていた。耳なしと差別しなかったのはあの子くらいだった」
そんな告白をされた俺は、幼い頃にあいつの気を引きたくて「よそ者」「人間は出てけ」と意地悪を言っていたことを思い出してひとりで勝手に自己嫌悪していた。
そんな俺の前で、ブルーノは何やらレイラの素晴らしさをペラペラ語ってくれている。美人で性格良くて料理が上手で気立ての良い彼女を好いている男はたくさんいるのだとツバが飛ばされるくらいの勢いで語られた。
「レイラの何が不満だ! 何故彼女を拒絶する!」
締めくくりに怒鳴りつけられた。
確かにレイラはいい子だとは思うが、そういう問題じゃないんだ…そんな事言っても誰も理解してくれないけどな。
「おっ、俺はっ求婚すら出来ないんだぞ! それなのに…!」
ブルーノは拳を握りしめて震えていた。怒りで真っ赤にしていた顔が一瞬泣きそうに歪む。それで俺は察した。
「…お前、レイラのことが好きなのか」
お前も片思いをしているのか、と親近感が湧いたのは俺だけだったのようだ。奴は俺の胸ぐらを包むと、間髪入れずにその拳を振り上げてきた。
普段ならかわせたはずだが、本調子じゃない俺は勢いよくガッと殴られた。
…いてぇ。口の中切った。
「…レイラから聞いたぜ。分不相応に貴族の令嬢に想いを寄せてるとか…馬鹿じゃないのか! ただの村人が貴族のお姫様と結ばれるとか思ってんのかよ、お前頭どうかしてるんじゃないのか!?」
カッとなったブルーノは嫉妬の眼差しをビシビシと俺にぶつけて来た。
…頭どうかしてる…か。そうかもしれないな。
奴は俺の胸元を見ると、表情をますます険しいものにさせていた。奴の鋭い視線は、デイジーのペンダントに突き刺さっていたのである。
10
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王太子様お願いです。今はただの毒草オタク、過去の私は忘れて下さい
シンさん
恋愛
ミリオン侯爵の娘エリザベスには秘密がある。それは本当の侯爵令嬢ではないという事。
お花や薬草を売って生活していた、貧困階級の私を子供のいない侯爵が養子に迎えてくれた。
ずっと毒草と共に目立たず生きていくはずが、王太子の婚約者候補に…。
雑草メンタルの毒草オタク侯爵令嬢と
王太子の恋愛ストーリー
☆ストーリーに必要な部分で、残酷に感じる方もいるかと思います。ご注意下さい。
☆毒草名は作者が勝手につけたものです。
表紙 Bee様に描いていただきました
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる