上 下
84 / 209
Day‘s Eye 魔術師になったデイジー

悲しい瞳

しおりを挟む
 どうして自分がエスメラルダにいたかは未だに不明だが、自分が捨て子ではなく、戦乱の末の迷い子だったことが判明してからは早かった。
 私の意志は関係なく、私は貴族になってしまった。
 私は最後まで渋ったのだが、貴族の血を引く娘という立場上、私を放置するわけにはいかないのだという。

 我慢の限界が来た私が泣きながら村に帰りたいと訴えると、辺境伯はようやく頷いてくれた。私を育ててくれた養家族にお礼の挨拶へ行きたいという辺境伯一家同行の上で里帰りすることとなった。
 ちょっとしたバカンス気分で田舎に行く気分なのか、日傘がどうのドレスがどうのとウキウキ準備する夫人に辟易したのは記憶に新しい。
 領地は大丈夫なのかと聞けば、信頼できる腹心に任せたら大丈夫、何かあれば転送術で戻れるからというのが辺境伯の持論である。
 
 乗り心地の良すぎる立派な馬車がゆっくり止まる。……あぁ、着いたのか。夢にまで見た村を見た私はなんだか泣いてしまいたい気分になった。
 田舎な村にやって来た馬車。以前にもエドヴァルド氏の来訪に戸惑っていたがそれもそうだ。こんな高級そうな馬車が立ち寄るほどうちの村はおしゃれでもなんでも無い。

 困惑した村人たちの視線が、馬車から降りてきた私に突き刺さる。その目は異物を見るかのような目。……昔に逆戻りだ。
 私はデイジーなのに、その名を奪われ、願った自由さえ奪われ、デイジーとしての存在すら脅かされようとしている。

 大きく口を開けたお母さんの姿を見つけると、私はドレスの裾を持ち上げて駆け寄った。

「お母さんっ!」
「で、デイジー…? あんたどうしたの、そんなお姫様みたいな格好して…この人達は一体何だい?」

 幼い頃のようにお母さんの胸に飛び込み抱きつくと、私は泣き叫びたい衝動に駆られた。幼い頃から私を守り、受け止めてくれたお母さんのあたたかい腕。
 状況が理解できないお母さんが私の背中を宥めるように撫でてくる。私がグズるといつもお母さんはそうして優しく宥めてくれた、私のお母さんはこの人だけなのだ。デイジーという存在を作ってくれた大切な人なのだ。

「はじめまして、わたくしシュバルツ王国のフォルクヴァルツ辺境伯が妻・マルガレーテと申します。この度は急な訪問申し訳ございません」

 そこに夫人が貴族らしく優雅に話しかけてきた。私はお母さんの服を握りしめて身を縮こませる。
 ──フォルクヴァルツの人たちと私は未だに距離があった。だって、誰があっさり認められる?
 私は自分を否定されたようなものなのだぞ。従う立場であるメイドにはイビられるし、城に監禁みたいになっているし、好きに動けない。……相手の腹の内もわからず、味方もいない環境でどうやって心を開けと言うのか。

「実はそちらのアステリアはかのシュバルツ侵攻で我が領が戦禍に遭った際に行方不明になった我が娘だと判明いたしまして…」
「嫌だ! 私はデイジーだよ!」

 私は耳を塞いだ。これまでの我慢が一気にはじけ飛んで取り乱してしまったのだ。その名前は私のものじゃない。私はデイジーだ。
 頭では解ってるんだ。夫人は、私の本当の母親はいなくなった娘をずっと探していたって。フォルクヴァルツ家の執事、古参使用人たちからも切々と語られた。
 私の可愛げのない、棘のある態度にめげそうになっても、私の心を開こうとそっと近づいてくる夫人に何度か心揺れそうになったが……デイジーという存在が消されてしまいそうで、私はこの人が怖かった。
 私を産んだこの人が、私という存在を上から塗りつぶして私の人生を勝手に決めてしまうんじゃないかって。

 私はガタガタ震えながらお母さんに抱きつく。不安で仕方ない。今までにこんな恐怖を味わったことがあっただろうか。
 殺されるわけでもない。侮られ、傷つけられたわけでもない。なのに、怖い。
 ……私はこんな風に人生が一変してしまうことを望んじゃいなかった。

 私のこれまでの努力がすべて無駄になってしまいそうで恐ろしかったのだ。


■□■


「…狭いところですが…」

 外で話すことではないということで、家の中に案内されたフォルクヴァルツ一家は物珍しそうにマック一家の家を観察していた。

「この子はここで育ったのですね…」

 目を細めてため息を漏らす夫人はどこか遠くへ思いを馳せているようである。
 私はお母さんにくっついて座り、黙り込んでいた。お母さんはそれになにか言うわけでもなく、私のしたいようにさせてくれた。

「改めて、娘を保護した上に大切に育てて頂きありがとうございます」
「お礼と言っては形ばかりの品で申し訳ないが…」

 辺境伯によってすっと机の上に置かれた箱。恐らく大金が納められているに違いない。まるで私は金で買われて行くようだ。

「あ、いや…いただけません。そんなつもりでこの子を育てたわけじゃありませんから」

 お父さんもお母さんも私に対する態度を迷っているようだ。私がアステリアと呼ばないでと訴えたのでその名では呼ばないが、デイジーとも呼びにくい、そんな反応をしていた。
 お礼を辞退したことでお互いギクシャクして、沈黙が走る。そこで口を開いたのはお父さんである

「…私どもはこの子が望むことを出来る限り叶えてきました。雨に打たれて衰弱していたこの子が不憫でならなくて……周りからの視線に負けじと努力するその姿勢を尊重してきました」

 そうだ、彼らは叶えられる範囲で私のしたいことを尊重してくれた。心配しつつも応援してくれたのだ。

「この子の望まないことはしないでいただきたい。お願いしたいのはそれだけです」

 一介の村人が隣国の貴族に物申すのは気が引けただろうに、お父さんは私の為を思って言ってくれた。それが正しく相手に伝わったかどうかはわからないが、辺境伯夫妻は「もちろんです」とうなずいていた。

「村人風情が生意気ですよ。口をつぐみなさい。一介の村娘から貴族の令嬢になれるのですよ、この上ない幸せでしょう」
「これ、ギルダ。失礼でしょう、おやめなさい」

 そこに水を指したのは家庭教師であり、私のお目付け役であるギルダである。私はこの人が苦手だ。苦手通り越して大嫌いだ。
 夫人がたしなめるとムッとした顔をしていた。この人は使用人の分際でしゃしゃり出過ぎじゃないだろうか。口を挟む権利があるとでも思っているのか。

「失礼なのはどちらですか。私を育ててくださった方々に失礼でしょう。あなたに口を挟む権利はありません」

 ギルダは獣人に対して差別的な思想があるようで、これまでに何度も私の家族を貶してきた。
 それだけは見逃してやらない。放置していたら調子に乗って更に人を傷つけるような発言をするのだ。

「まぁ…アステリアお嬢様、口が回る女は可愛げのないとしてあまり殿方に好まれませんことよ」

 あんたが言うな。
 この人は身分至上主義なところがあって、何かに付けて貶してくる。この人のそばにいると息が詰まって気まで滅入ってくる。
 これまでにも辺境伯夫妻と冷静に話し合おうとしても、頼んでもいないのに横にピッタリくっついて口を挟んでくるので建設的な話し合いにならず…ってことが何度かあった。
 意見を言えば生意気だ、ご両親に失礼だ、貴族の子女というものはうんぬんと説教が始まる。
 こうして言い返すと、まるで私がわがままを言って困らせているみたいな扱いを受けている。……自分の思い通りにならないから、抑えつけようとしているだけなんじゃないか?

「まぁ、そんなことはないわ。しっかりしている女性が好きだという男性もいます。特にうちのような危険を伴う辺境にいる女は自分で判断できる方が好まれるのよ。アステリアはきっといい御縁に恵まれるはずよ」

 私を庇う発言をする夫人。その言葉は庇っているかのように聞こえるが、その言葉の裏にちらつくのは結婚である。
 これまでに何度か話し合いの場で反対意見を訴えてきたが、どうあがいても、私がデイジー・マックからアステリア・フォルクヴァルツになるのは絶対。
 私がその名から逃れるのは、誰かの元にお嫁に行くか、死ぬかの二択である。今の時点で私が誰かと結婚していたら話が違ったのかもしれない……
 私はこの人達に決められた相手と結婚しなきゃならないのか。きっと私の意志なんか無視して、相手を宛てられるんだ。
 ……嫌だな、そんなの。
 私は黙り込んでムッスリしていた。
 …私はまだまだ旅を満足に出来ていない。
 高等魔術師として自由に各地を飛び回りたいのに、貴族の令嬢という枷に嵌められて身動き取れなくされるのか。私は貴族としての恩恵を全く受けていないのに、ここに来て義務だけを押し付けられるというのか……

 私の気持ちはどんどん沈んでいく。
 こんなことなら出会わなければよかった。自分のルーツ探しなんかしなきゃ良かったなって悲しくなってしまった。

 私の心を置いてけぼりにして、夫人は「アステリアはどんな人が好みなの?」と問いかけてくる。そしてその横からギルダがチクチク口を挟んでくる。
 余計なことは言うまい。私は口を閉ざして無になった。

「あの、良かったらお茶を淹れたので休憩しませんか? これ昔自分が書いた絵画なんですが…これでデイジー…彼女の成長の姿を確認できるかと」

 悪くなった空気を和らげようと、タナ義姉さんがお茶を出してくれ、カール兄さんは数枚の絵画を家から持ってきたと言って見せてきた。

「まぁ…」

 絵画が趣味のカール兄さんは昔から色んな絵を書いていた。風景画ばかり書いていたのに、私がやって来た日から私をスケッチするようになったらしい。
 そこには私が成長していく姿が鮮明に描かれている。赤子時代から幼児、少女へと成長していく私の姿が描かれていた。
 お母さんに抱っこされてウトウトしている姿、初めてつかまり立ちできた日、絵本を真剣に読む姿、麦わら帽子をかぶった私が太陽の下で笑顔を向けている姿…
 私のありのままの姿を素直に描かれていた。

「彼女の瞳の色がなかなか表現できなくて色が安定してないんですが」
「私のアステリアが…」

 夫人はカール兄さんが過去に描いた絵画を見て感動していた。私の瞳と同じ色をした彼女の紫色の瞳が潤む。

「こんなに生き生きしているなんて、素敵な絵…」

 そう言って目元をハンカチで拭うと、懇願するような眼差しを向けた。

「カールさん、だったかしら? この絵を売ってくださらない?」

 突然の申し出にカール兄さんは目を丸くして、ブンブンと首を横に振っていた。

「あ、いえ、これは個人で描いたもので売り物ではないので申し訳ないのですが…」

 それに、これは大切な思い出なんです。
 そう言って断っていた。
 今では奥さんのタナ義姉さんや可愛い2人の息子を描くようになったカール兄さんにとって、絵は思い出であり、宝物なのだそうだ。

 そう言われたら無理にとは言えないらしい夫人は悲しそうに「そう、それなら仕方ないわね」と苦笑いしていた。

「……画家に描かせたアステリアの絵はどれも悲しそうな目をしているの」

 年齢ごとに描かせたその絵はどれも素晴らしいものだったが、そのどれも悲しそうな目でこちらを見ているのだと夫人は言った。

「……アステリア、あなたは王宮のパーティで出会った時はとても強い瞳をしていた。……その瞳を曇らせてしまったのは、私なのかしらね」

 夫人の悲しそうな顔に私は口を開きかけたが、なんと言えばいいのかわからずに黙り込んでしまったのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

記憶喪失になったら、義兄に溺愛されました。

せいめ
恋愛
 婚約者の不貞現場を見た私は、ショックを受けて前世の記憶を思い出す。  そうだ!私は日本のアラサー社畜だった。  前世の記憶が戻って思うのは、こんな婚約者要らないよね!浮気症は治らないだろうし、家族ともそこまで仲良くないから、こんな家にいる必要もないよね。  そうだ!家を出よう。  しかし、二階から逃げようとした私は失敗し、バルコニーから落ちてしまう。  目覚めた私は、今世の記憶がない!あれ?何を悩んでいたんだっけ?何かしようとしていた?  豪華な部屋に沢山のメイド達。そして、カッコいいお兄様。    金持ちの家に生まれて、美少女だなんてラッキー!ふふっ!今世では楽しい人生を送るぞー!  しかし。…婚約者がいたの?しかも、全く愛されてなくて、相手にもされてなかったの?  えっ?私が記憶喪失になった理由?お兄様教えてー!  ご都合主義です。内容も緩いです。  誤字脱字お許しください。  義兄の話が多いです。  閑話も多いです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」 結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。 それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。 不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました) ※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。 ※小説家になろうにも掲載しております

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

逃げるための後宮行きでしたが、なぜか奴が皇帝になっていました

吉高 花
恋愛
◆転生&ループの中華風ファンタジー◆ 第15回恋愛小説大賞「中華・後宮ラブ賞」受賞しました!ありがとうございます! かつて散々腐れ縁だったあいつが「俺たち、もし三十になってもお互いに独身だったら、結婚するか」 なんてことを言ったから、私は密かに三十になるのを待っていた。でもそんな私たちは、仲良く一緒にトラックに轢かれてしまった。 そして転生しても奴を忘れられなかった私は、ある日奴が綺麗なお嫁さんと仲良く微笑み合っている場面を見てしまう。 なにあれ! 許せん! 私も別の男と幸せになってやる!  しかしそんな決意もむなしく私はまた、今度は馬車に轢かれて逝ってしまう。 そして二度目。なんと今度は最後の人生をループした。ならば今度は前の記憶をフルに使って今度こそ幸せになってやる! しかし私は気づいてしまった。このままでは、また奴の幸せな姿を見ることになるのでは? それは嫌だ絶対に嫌だ。そうだ! 後宮に行ってしまえば、奴とは会わずにすむじゃない!  そうして私は意気揚々と、女官として後宮に潜り込んだのだった。 奴が、今世では皇帝になっているとも知らずに。 ※タイトル試行錯誤中なのでたまに変わります。最初のタイトルは「ループの二度目は後宮で ~逃げるための後宮でしたが、なぜか奴が皇帝になっていました~」 ※設定は架空なので史実には基づいて「おりません」

処理中です...