35 / 209
Day's Eye 森に捨てられたデイジー
人と獣の距離感
しおりを挟む
今回の長期休暇は特別短く感じた。短すぎる一ヶ月の休暇は幕を閉じようとしていた。
後になって思ったのは、転送術を使えば学校からも通えるんじゃないかってこと。それをファーナム嬢に聞いてみたら、聞いたことがないから先生に一度相談してみたほうがいいと言われた。職員室に寄ったときにでも先生に確認してみよう。
私は王立図書館の一部の本しか読めていない。休暇中毎日睡眠不足になりながら読みまくったが、全然である。圧倒的に時間が足りなさすぎた。
もっと読みたい。どうしたらもっと読めるのだろう。本の転送サービスとか始めてくれないものだろうか。
休暇明け間近になると、学校の寮にはポツポツ人が集まっていた。
一ヶ月会わないうちに背が伸びたり、雰囲気が大人っぽく変わっている生徒の姿が目についた。それは彼らだけじゃなく私もである。
背が伸びてスカート丈が短くなった上に、愛用のワンピースの胸元がキツく感じる。私も体が大きくなっていたようだ。繕えば次の休暇までなんとか保つだろうか。
同室者のカンナは元々女の子らしい子だったが、休暇明けに会った彼女は服装や髪型が大人っぽくなったように思う。あくまで見た目はだが。
カンナは久々に再会した恋人のように正面から私に抱きつき、開口一番こう言った。
「デイジー久しぶり! エリーゼ様のお家どうだった!? 楽しかった!?」
カンナには事前に「休暇中はファーナム嬢のところに数日間厄介になることになった」と説明していたのだが、案の定興味津々で問い詰める気満々で突っ込んできた。
「タウンハウスに泊まらせてもらったよ。一家勢揃いで挨拶してくれて…かなりおもてなししてくれた」
「えぇっ、いいなぁ!」
「王立図書館に案内されたんだけど…最高だった。最高すぎて休みいっぱい滞在してた」
予定よりも長居したのに、迷惑という感情を顔には出さないファーナム嬢と使用人たち。正直悪かったと思う。かなり感謝してるよ。
タウンハウスは豪華で無駄に広くて、高そうな家具とか、普段食べないようなごちそうとか、使用人が多すぎる空間とか色々落ち着かなかった。ファーナム嬢からしてみたら使用人は家具みたいな存在みたいだそうだけど。
私は自分でできるのに「お客様ですので」「仕事ですので」と押し切られそうになり、抵抗したのは記憶に新しい。自分の体くらい自分で洗えると言っているのに何なのだ。お客様の意向は無視か。
王立図書館はとにかく素晴らしかった。目を閉じると館内の光景が蘇ってくるようだ。素晴らしい蔵書で埋め尽くされていて…。書物のあの独特の香り、静寂の空間……あぁ、またあの場所に帰りたい…。むしろあそこに住みたい……
「えぇ? 一度も帰省してないの? 家族寂しがってると思うよぉ」
カンナの言葉に私は我に返る。…まぁ、確かに心配はさせたと思う。
家族からの手紙にも次は絶対に帰ってこいと書かれていた。ちょうどつい最近、予定より少し早めに甥っ子が生まれたのだそうだ。男の子で名前はハロルド。
彼の誕生が私の学校が始まるタイミングと被ってしまったので、お祝いの言葉だけは手紙で先に贈らせてもらったが、次は一度顔出ししたほうが良さげである。
両親からの手紙には『貴族の令嬢や王太子殿下と知り合いになったことで詳しく話を聞きたい』ともあったので、帰省の際は質問攻めを覚悟しておくべきなのかもしれない。
リック兄さんからの手紙には、私が帰省しないからテオがうるさかったと書かれていた。
……あいつはよくわかんない。
昔はよそ者と言ってからかってきたくせに、私が村を出るのを嫌がる。どっちなんだ。……狼と言えば群れのリーダーに従って活動する生き物。
まさか…私、あいつに群れの仲間認定されてるの…?
■□■
「これ、ありがとうございました」
お借りしていた4年生分の教科書をフレッカー卿にお返しすると、彼はにっこり笑った。
「流石だね、もう読破したのかい。休暇はどう過ごしたのかな」
やけに満足そうにうんうんと頷きながら私の差し出した本を受け取ると、フレッカー卿は休暇のことを尋ねてきた。
なので、休暇いっぱいファーナム嬢のタウンハウスに厄介になり、あちらの家庭教師に座学と実技のご指導を頂いたこと、王立図書館に通い詰めたという話をした。すると彼の笑みは更に深まっていく。
「そうか、それは充実した休暇を送れたんだね。…今回も飛び級試験を受けるかね?」
その問いかけに待ってましたと私は頷く。
「もちろんです。あとできれば5年の教科書も貸してください」
もちろん今年も飛び級目指しますとも。
私の返事をわかっていたとばかりに、フレッカー卿も楽しそうに目を輝かせていた。ありがたいことに今年も手続きを代行してくれるという。
そうと決まれば試験勉強対策に加えて、実技と薬学の練習に力を入れなくては…!
「あっカレド先生!」
「ヒェッ!」
「お忙しいところすみません、薬学のことで質問がいくつかあるんですけども!」
通りすがりの薬学の担当教諭を見つけた私は先生をとっ捕まえた。カレド先生はびくぅと体を揺らし、怯えた目で私を見ていたが、私にはそんなの関係ない。
さぁ、質問に答えるのです。私の質問にすべて答えるのです…! 余すことなく答えるのです!!
今期も私は勉強に燃える。たとえそれが異様に見えても私には振り返る暇などないのだ…!
「今日の授業は古来生物・魔獣について学んでいただきます」
逆三角形レンズ眼鏡のフレームのつるを持ち上げた女性のミルカ先生が私達生徒を見渡した。彼女は生物学担当の先生である。
「我の記憶を映し出せ」
彼女が軽く呪文を唱えると、黒板にぱっと絵が浮かんだ。便利だな、その呪文。視覚の呪文で術者の記憶を投影する事ができる呪文だそうだ。私もいつか操れるようになりたい。
黒板に映っているのは鋭い牙や爪を持つ生き物。顔立ちは凶悪でそのへんの獣とは変わった形をしている。
……彼らは自然界で発生した魔素から生まれたと言われる魔獣という生き物だ。
「魔獣は基本的に人間側が手を出さなければおとなしい生物です。しかしこれまでに人間が彼らの住処を奪って、食料を奪っていったことで、魔獣が食べ物を求めて里へおりてきて、人が殺されるという事件も起きています」
人間のやらかした代償なのだろう。魔獣たちも生きる為にやっていることなので、彼らだけが悪いというわけではないと思う。
「魔獣と出くわすことがあったら、持っている食料を手放して逃げることをおすすめします。野生の獣と遭遇したときと同じです。敵意をあらわさずに素早く撤退することが何より大事です」
私の住む村は辺境で直ぐ側に森がある。その奥深くには野生の獣も沢山棲んでおり、村の人達も仕事や用事以外では森の奥までは入っていかない。木こりの仕事をするお父さんたちも人と獣人の居住地付近から獣たちの生活圏の手前までしか森に入っていかないし、木を切らない。
彼らの住まいや食料を奪ってはいけない、棲み分けることが大事なんだ。
相手に敵意を見せずに、離れて暮らすのがお互いにとっての幸せなのだ。
「…だけどそれだけでは間に合わない場合は致し方ありません。防御に転じてください。そのための回避呪文を今日はお教えいたします」
基本的に呪文は空気中に漂う元素たちに訴えかけるものである。呪文の公式のようなものはあるが、多少崩れた言葉になっても元素たちは力を貸してくれる。特に自分と相性のいい元素だと顕著である。
「我に従う元素たちよ、彼の魔獣の動きを封じよ、須く野へ還したまえ」
先生の言葉から流れる呪文も公式に則った言葉だ。私達はそれに続けて呪文を復唱する。
これを唱えたら、言葉通り魔獣を森の奥深くへ転送できるそうだ。これが一頭程度ならいいけど、数が増えるとそれだけ魔力を奪われちゃうので気をつけてと先生は言っていた。
魔獣という生物は森の奥深く、それこそ活火山のある人の住めない険しい森深くに生息すると言われている。
還らずの森と呼ばれるそこには今や絶滅危惧種と言われているドラゴンの住処もあり、人間が入れない危険な場所で彼らは静かに生きているのだ。滅多なことがなければ彼らとは遭遇はしないだろうが……ここ最近、どうにもきな臭い。
異変を感じた時、野生の生物は素早く察知して大移動を始めるいうので、もしかしたら街のど真ん中で遭遇する可能性も出てくるかもしれない。
……そんなことがなければいいとは思うけど……こればかりは私も予想できない。
後になって思ったのは、転送術を使えば学校からも通えるんじゃないかってこと。それをファーナム嬢に聞いてみたら、聞いたことがないから先生に一度相談してみたほうがいいと言われた。職員室に寄ったときにでも先生に確認してみよう。
私は王立図書館の一部の本しか読めていない。休暇中毎日睡眠不足になりながら読みまくったが、全然である。圧倒的に時間が足りなさすぎた。
もっと読みたい。どうしたらもっと読めるのだろう。本の転送サービスとか始めてくれないものだろうか。
休暇明け間近になると、学校の寮にはポツポツ人が集まっていた。
一ヶ月会わないうちに背が伸びたり、雰囲気が大人っぽく変わっている生徒の姿が目についた。それは彼らだけじゃなく私もである。
背が伸びてスカート丈が短くなった上に、愛用のワンピースの胸元がキツく感じる。私も体が大きくなっていたようだ。繕えば次の休暇までなんとか保つだろうか。
同室者のカンナは元々女の子らしい子だったが、休暇明けに会った彼女は服装や髪型が大人っぽくなったように思う。あくまで見た目はだが。
カンナは久々に再会した恋人のように正面から私に抱きつき、開口一番こう言った。
「デイジー久しぶり! エリーゼ様のお家どうだった!? 楽しかった!?」
カンナには事前に「休暇中はファーナム嬢のところに数日間厄介になることになった」と説明していたのだが、案の定興味津々で問い詰める気満々で突っ込んできた。
「タウンハウスに泊まらせてもらったよ。一家勢揃いで挨拶してくれて…かなりおもてなししてくれた」
「えぇっ、いいなぁ!」
「王立図書館に案内されたんだけど…最高だった。最高すぎて休みいっぱい滞在してた」
予定よりも長居したのに、迷惑という感情を顔には出さないファーナム嬢と使用人たち。正直悪かったと思う。かなり感謝してるよ。
タウンハウスは豪華で無駄に広くて、高そうな家具とか、普段食べないようなごちそうとか、使用人が多すぎる空間とか色々落ち着かなかった。ファーナム嬢からしてみたら使用人は家具みたいな存在みたいだそうだけど。
私は自分でできるのに「お客様ですので」「仕事ですので」と押し切られそうになり、抵抗したのは記憶に新しい。自分の体くらい自分で洗えると言っているのに何なのだ。お客様の意向は無視か。
王立図書館はとにかく素晴らしかった。目を閉じると館内の光景が蘇ってくるようだ。素晴らしい蔵書で埋め尽くされていて…。書物のあの独特の香り、静寂の空間……あぁ、またあの場所に帰りたい…。むしろあそこに住みたい……
「えぇ? 一度も帰省してないの? 家族寂しがってると思うよぉ」
カンナの言葉に私は我に返る。…まぁ、確かに心配はさせたと思う。
家族からの手紙にも次は絶対に帰ってこいと書かれていた。ちょうどつい最近、予定より少し早めに甥っ子が生まれたのだそうだ。男の子で名前はハロルド。
彼の誕生が私の学校が始まるタイミングと被ってしまったので、お祝いの言葉だけは手紙で先に贈らせてもらったが、次は一度顔出ししたほうが良さげである。
両親からの手紙には『貴族の令嬢や王太子殿下と知り合いになったことで詳しく話を聞きたい』ともあったので、帰省の際は質問攻めを覚悟しておくべきなのかもしれない。
リック兄さんからの手紙には、私が帰省しないからテオがうるさかったと書かれていた。
……あいつはよくわかんない。
昔はよそ者と言ってからかってきたくせに、私が村を出るのを嫌がる。どっちなんだ。……狼と言えば群れのリーダーに従って活動する生き物。
まさか…私、あいつに群れの仲間認定されてるの…?
■□■
「これ、ありがとうございました」
お借りしていた4年生分の教科書をフレッカー卿にお返しすると、彼はにっこり笑った。
「流石だね、もう読破したのかい。休暇はどう過ごしたのかな」
やけに満足そうにうんうんと頷きながら私の差し出した本を受け取ると、フレッカー卿は休暇のことを尋ねてきた。
なので、休暇いっぱいファーナム嬢のタウンハウスに厄介になり、あちらの家庭教師に座学と実技のご指導を頂いたこと、王立図書館に通い詰めたという話をした。すると彼の笑みは更に深まっていく。
「そうか、それは充実した休暇を送れたんだね。…今回も飛び級試験を受けるかね?」
その問いかけに待ってましたと私は頷く。
「もちろんです。あとできれば5年の教科書も貸してください」
もちろん今年も飛び級目指しますとも。
私の返事をわかっていたとばかりに、フレッカー卿も楽しそうに目を輝かせていた。ありがたいことに今年も手続きを代行してくれるという。
そうと決まれば試験勉強対策に加えて、実技と薬学の練習に力を入れなくては…!
「あっカレド先生!」
「ヒェッ!」
「お忙しいところすみません、薬学のことで質問がいくつかあるんですけども!」
通りすがりの薬学の担当教諭を見つけた私は先生をとっ捕まえた。カレド先生はびくぅと体を揺らし、怯えた目で私を見ていたが、私にはそんなの関係ない。
さぁ、質問に答えるのです。私の質問にすべて答えるのです…! 余すことなく答えるのです!!
今期も私は勉強に燃える。たとえそれが異様に見えても私には振り返る暇などないのだ…!
「今日の授業は古来生物・魔獣について学んでいただきます」
逆三角形レンズ眼鏡のフレームのつるを持ち上げた女性のミルカ先生が私達生徒を見渡した。彼女は生物学担当の先生である。
「我の記憶を映し出せ」
彼女が軽く呪文を唱えると、黒板にぱっと絵が浮かんだ。便利だな、その呪文。視覚の呪文で術者の記憶を投影する事ができる呪文だそうだ。私もいつか操れるようになりたい。
黒板に映っているのは鋭い牙や爪を持つ生き物。顔立ちは凶悪でそのへんの獣とは変わった形をしている。
……彼らは自然界で発生した魔素から生まれたと言われる魔獣という生き物だ。
「魔獣は基本的に人間側が手を出さなければおとなしい生物です。しかしこれまでに人間が彼らの住処を奪って、食料を奪っていったことで、魔獣が食べ物を求めて里へおりてきて、人が殺されるという事件も起きています」
人間のやらかした代償なのだろう。魔獣たちも生きる為にやっていることなので、彼らだけが悪いというわけではないと思う。
「魔獣と出くわすことがあったら、持っている食料を手放して逃げることをおすすめします。野生の獣と遭遇したときと同じです。敵意をあらわさずに素早く撤退することが何より大事です」
私の住む村は辺境で直ぐ側に森がある。その奥深くには野生の獣も沢山棲んでおり、村の人達も仕事や用事以外では森の奥までは入っていかない。木こりの仕事をするお父さんたちも人と獣人の居住地付近から獣たちの生活圏の手前までしか森に入っていかないし、木を切らない。
彼らの住まいや食料を奪ってはいけない、棲み分けることが大事なんだ。
相手に敵意を見せずに、離れて暮らすのがお互いにとっての幸せなのだ。
「…だけどそれだけでは間に合わない場合は致し方ありません。防御に転じてください。そのための回避呪文を今日はお教えいたします」
基本的に呪文は空気中に漂う元素たちに訴えかけるものである。呪文の公式のようなものはあるが、多少崩れた言葉になっても元素たちは力を貸してくれる。特に自分と相性のいい元素だと顕著である。
「我に従う元素たちよ、彼の魔獣の動きを封じよ、須く野へ還したまえ」
先生の言葉から流れる呪文も公式に則った言葉だ。私達はそれに続けて呪文を復唱する。
これを唱えたら、言葉通り魔獣を森の奥深くへ転送できるそうだ。これが一頭程度ならいいけど、数が増えるとそれだけ魔力を奪われちゃうので気をつけてと先生は言っていた。
魔獣という生物は森の奥深く、それこそ活火山のある人の住めない険しい森深くに生息すると言われている。
還らずの森と呼ばれるそこには今や絶滅危惧種と言われているドラゴンの住処もあり、人間が入れない危険な場所で彼らは静かに生きているのだ。滅多なことがなければ彼らとは遭遇はしないだろうが……ここ最近、どうにもきな臭い。
異変を感じた時、野生の生物は素早く察知して大移動を始めるいうので、もしかしたら街のど真ん中で遭遇する可能性も出てくるかもしれない。
……そんなことがなければいいとは思うけど……こればかりは私も予想できない。
40
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる