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番外編・もしも笑がお嬢様だったら
ごめん遊ばせ、二階堂笑でございます【2】
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『昨晩22時過ぎ、〇〇市の住宅街で17歳の少年が刃物で家族3人を斬りつける事件が起きました。警察によりますと、犯人の少年は容疑を概ね認めており、「父親と母親が憎かった。殺したかった」と自供したことが判明しました…』
テレビニュースのキャスターが不穏な事件をお知らせしている。テレビ映像の中に映る住宅は規制線の向こうをブルーシートで覆われていて何も見えない。
家族を刺すって、家族にものすごい恨みを持っていたんだな…。
「現役スパイカーであるお嬢様のビンタは痛かったでしょうね。…それにしても婚約破棄なんてして宝生様はいかがなさるおつもりなのでしょう」
その言葉にはっと我に返った私はテレビから視線を外した。私に話しかけてきた婦人は今晩の夕飯の支度をする手を一旦止めて、こちらを気遣う視線を向けていた。
彼女は一応宝生氏とも顔見知りなのだが、立場的にそんなに肩入れしていないのかな。
「会社の従業員のことが心配だから、宝生氏を説得してきたけど無理だったよ。お父さんとお母さんが宝生家に話をつけに行って、援助の話は立ち消えになったんだって」
「宝生様は少々自分本意な部分がお有りですからねぇ…よほど、夢子さんは魅力的な女性なのでしょう」
彼女の名は登紀子さん。我が二階堂家のお手伝いさんだ。小さな頃からずっと私のお世話までくれていて、親とよりも親子らしい関係を結べているような気がしている。両親は私がしっかりしているからと仕事に熱中して私を半ば放置しているため、私は一番近くにいる登紀子さんに頼り切りだったのだ。
両親のことは嫌いじゃないけど、どこか距離があって近づきがたいと思っている。
親代わりをしてくれる登紀子さん、旦那さんである運転手さんとは色んな話をしてるし、話を聞いてる。自分の両親には複雑な思いを抱いているが、彼女らを側に住まわせて私の側に居させてくれたことは強く感謝している。
ふわわんとカレーのいい匂いが鼻をくすぐった。私はスンスンと鼻を鳴らし、うっとりする。今日は私の好物を作ってくれるということで、私は後ろのダイニングテーブルで宿題しながら調理風景を監督していた。困ったことにさっきから全然宿題が進んでいない。
あぁお腹すいた。こんなときはカレーだよね。何もなくても食べたいけど。
「お嬢様が婚約破棄なされた、ということは次のお相手探しが始まるかもしれませんね」
その言葉に私は渋い表情を浮かべた。
婚約破棄騒動は本家のお祖父さんの耳にも届き、お祖父さんはとてもお怒りらしく…それと同時に私のことを心配して、新たな婚約者候補を見繕っているそうだ。
両親はまだ早い、こちらで決めるからとお祖父さんを止めたそうだが、5歳というあまりにも早い時期に何もわかっていない娘を婚約させた両親の見る目がないせいで私の経歴に傷が付いたから、今度は自分が決める。と言って聞かないそうだ。
私の心が置いてけぼりってのはあるけど、お祖父さんも私に幸せになってほしいから動いてんだよなと思うと何もいえない。
ていうか私は結婚相手を自由に決めていい立場じゃないのでなんとも言えないのだ。…流石に、生理的に無理な人を紹介されたらそれを突っぱねる権利くらいは持っているけどね。
「もう始まってるよ。うちにお相手の釣書が届けられたもの。向こうにも釣書が届いてるはず」
詐称された釣書がね。
釣書上では私の趣味が生け花と茶道となっていたけど、本当に得意なものはバレーボールと乗馬なんだけどなぁ……。まいった。
「お相手の方はどのようなひとなんですか?」
「男子校に通うひとつ上の人だよ。海運会社のご子息なんだって…」
会ったことのない人だからなんともいえない。もしかしたら何かのパーティで会ったことがあるかもしれないが、記憶にございません。
■□■
「はじめまして、西園寺貴徳と申します」
婚約破棄して一月足らずだと言うのに、もう次のお相手探しとしてお見合いがセッティングされた。もちろん企画運営全てお祖父さんひとりである。
お見合いの場所は高級料亭だ。そこにお相手の西園寺さんとそのお祖母様、私と二階堂のお祖父さんが参加していた。
…釣書に書いていたが、彼にはお母さんが居ないそうだ。死別か離別かわからない。そのかわり、彼のお祖母さんがお母さん代わりになっていてすごく親しいんだなってのが見て取れた。
私は自分を敵視する父方祖母を思い出して複雑な気分になった。私が前妻である鈴子お祖母さんにそっくりなので、後妻のお祖母さんは危機感を抱いてるとかなんとか……だから会うたびに睨まれ、嫌味を吐き捨てられるのである。人のいないところで嫌がらせも受けることもある。
それと比べて目の前の西園寺青年のお祖母さんは優しそうで何よりだ。
「笑さんは生け花がお得意とか。今度よろしければ作品を見せてくださいな」
「えっ!? …発表会で展示することはあっても、大したものではなくてですね…」
全然得意じゃないよ…未だに花の心なんてわかんないし、いつもやっつけで作品作っているもの。釣書詐欺に加担した隣のお祖父様を恨むぞ…。
「そんなご謙遜なさらないで。お噂はかねがねですのよ。先進的な作品を作られるとかで、購入希望者がいると聞きましたわよ」
それ、同じ教室のおばさまが同情かなんかしらんけどお客様をお迎えする応接間に飾りたいとか言い出して、作品を買い取りたいって申し出てきた件のことかな? 恥ずかしいので断ったけど。
趣味詐欺にしても、私の爆発した芸術にしても、こう突っ込まれると胃が痛くなるんですが…
「笑さん」
「は、はいっ!?」
先程からこちらをガン見してきていた西園寺青年に声を掛けられた私はビクリと肩を震わせた。
「好きな食べ物はありますか?」
「えっ好きな食べ物…ですか」
唐突な質問に私は目を丸くしてしまった。
自分で言うのは何だが、望めばどんなものでも食べられた。お祖父さんに誘われて高級店に連れて行ってもらうこともあるので、私は結構グルメな気がする。
だが、私の心を掴んで離さない料理はあれしかない。
「カレーですね! 本格的なカレーが好きなので、自分でインドカレーやタイカレーを作れるようになりました!」
その答えは相手の興味を引いたらしく、西園寺青年、そのお祖母さんからカレーについて質問攻めにあった。私は饒舌になってカレーについて熱く語ったのだ。
カレーはいいぞ。食べたら元気になる。
■□■
「綺麗な錦鯉ですね」
「本当に」
2人きりでお話してくるようにとお庭に追いやられた私と西園寺さんは庭の池でスイスイ泳ぐ錦鯉を眺めていた。
この西園寺さんはお祖父さんお気に入りの青年なのだそうだ。西園寺さんは私と同じ高校生なのだが、もうすでに大人たちに付いて事業について勉強しているそうだ。それでうちのお祖父さんと関わることが多く、親交を深めたとか。
「笑さんは朗らかで素敵な女性ですね」
「えっそうですか?」
「はじめは可憐な女性だなと思ったんですが、話していたら笑顔の可愛い明るい方で…とても素敵です」
「ありがとうございます」
見た目と中身が違うとよく言われます。
釣書から入ったので、ギャップに愕然としているのだろうかと思ったが、どうも好意的な反応みたいだ。
爽やかに笑う西園寺さんは釣書の写真を見たときから印象は変わらない。穏やかに微笑む好青年である。一緒にいるとわかる温和な人柄。優しい人なんだろうなと思うと、罪悪感がチクリ。
この人は今でもきっと信じている。
私の趣味が生け花と茶道だって。
それらはカッコつけで習っているだけであって、趣味特技はアクティブなバレーと乗馬なんだ…!
いやもう西園寺さんは、私が見た目と中身のギャップが激しい人間だと気づいているみたいだけど、今回の趣味詐欺があとあとトラブルになったら困るな……
「西園寺さん、お話しておかなくてはならないことがあります」
多分彼なら怒らないとは思うんだけど、誠実な相手だからこっちも誠実に対応しなくてはと思うんだ。
「なんですか?」
「実は、釣書詐欺をしていました」
私の自供に西園寺さんはキョトンとしていた。
これで彼が女性不信になったら、私とお祖父さんのせいだ…あぁぁごめんなさいごめんなさい…
「本当の趣味特技はバレーで、今度県大会出場が決まりました。いまインターハイ目指して頑張ってるんです。釣書ではお嬢様らしくお花と茶道と書いていたけど、違うんです」
もう一ついえば、乗馬も好きです。運動の方が大好きです。お花とかお茶とか退屈で苦手です。精神統一にはなるけど、いまいち芸術がわかんないし、私の中ではストレスの素であったりします。
私は自供し終えると、西園寺さんに向かって深々と頭を下げた。
「私は婚約破棄された人間ですし、見た目を裏切るガサツで女性らしくない女なので、無理と思われたら縁談を断ってください!」
全然怒ったりしないから!
これはお祖父さんが大体悪いから! 孫娘可愛さで詐称するんじゃないよ全く! だいたい私、婚約破棄ほやほやのまだ傷心期間なんだよ? 全く傷心してないけど世間的な意味で自粛しておかなきゃいけない時期に次の婚約者探しってどうなのよそれ。
「…笑さんは素直な方なんですね、話していてとても気持ちがいい」
最悪怒られるかなと内心ヒヤヒヤしていたが、西園寺さんは肩の力を抜くようにして微笑んでいた。
「大丈夫です。活発な女性は元気でいいと思いますよ。そうだ、今度一緒にカレーを食べに行きましょう」
ギュッと手を握られる。
なんか正直に自供したことが良かったのか、西園寺さんにデートに誘われた。手まで握られて…なかなか積極的な青年である。
こうして好意的にニッコリと微笑まれると「お断りです」とか言えないよねぇ…
「あっハイ…」
別に嫌悪感があるわけではない。
お祖父さんが推すくらいだからいい人なんだろう。
「友達からお願いします」
すぐに婚約に移行するってのは私の心が追いつかないので、まずはお友達期間から。
私のお願いに対し、西園寺さんはにっこりと笑みを深めて「認めていただけるよう、頑張ります」と返してきたのであった。
テレビニュースのキャスターが不穏な事件をお知らせしている。テレビ映像の中に映る住宅は規制線の向こうをブルーシートで覆われていて何も見えない。
家族を刺すって、家族にものすごい恨みを持っていたんだな…。
「現役スパイカーであるお嬢様のビンタは痛かったでしょうね。…それにしても婚約破棄なんてして宝生様はいかがなさるおつもりなのでしょう」
その言葉にはっと我に返った私はテレビから視線を外した。私に話しかけてきた婦人は今晩の夕飯の支度をする手を一旦止めて、こちらを気遣う視線を向けていた。
彼女は一応宝生氏とも顔見知りなのだが、立場的にそんなに肩入れしていないのかな。
「会社の従業員のことが心配だから、宝生氏を説得してきたけど無理だったよ。お父さんとお母さんが宝生家に話をつけに行って、援助の話は立ち消えになったんだって」
「宝生様は少々自分本意な部分がお有りですからねぇ…よほど、夢子さんは魅力的な女性なのでしょう」
彼女の名は登紀子さん。我が二階堂家のお手伝いさんだ。小さな頃からずっと私のお世話までくれていて、親とよりも親子らしい関係を結べているような気がしている。両親は私がしっかりしているからと仕事に熱中して私を半ば放置しているため、私は一番近くにいる登紀子さんに頼り切りだったのだ。
両親のことは嫌いじゃないけど、どこか距離があって近づきがたいと思っている。
親代わりをしてくれる登紀子さん、旦那さんである運転手さんとは色んな話をしてるし、話を聞いてる。自分の両親には複雑な思いを抱いているが、彼女らを側に住まわせて私の側に居させてくれたことは強く感謝している。
ふわわんとカレーのいい匂いが鼻をくすぐった。私はスンスンと鼻を鳴らし、うっとりする。今日は私の好物を作ってくれるということで、私は後ろのダイニングテーブルで宿題しながら調理風景を監督していた。困ったことにさっきから全然宿題が進んでいない。
あぁお腹すいた。こんなときはカレーだよね。何もなくても食べたいけど。
「お嬢様が婚約破棄なされた、ということは次のお相手探しが始まるかもしれませんね」
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婚約破棄騒動は本家のお祖父さんの耳にも届き、お祖父さんはとてもお怒りらしく…それと同時に私のことを心配して、新たな婚約者候補を見繕っているそうだ。
両親はまだ早い、こちらで決めるからとお祖父さんを止めたそうだが、5歳というあまりにも早い時期に何もわかっていない娘を婚約させた両親の見る目がないせいで私の経歴に傷が付いたから、今度は自分が決める。と言って聞かないそうだ。
私の心が置いてけぼりってのはあるけど、お祖父さんも私に幸せになってほしいから動いてんだよなと思うと何もいえない。
ていうか私は結婚相手を自由に決めていい立場じゃないのでなんとも言えないのだ。…流石に、生理的に無理な人を紹介されたらそれを突っぱねる権利くらいは持っているけどね。
「もう始まってるよ。うちにお相手の釣書が届けられたもの。向こうにも釣書が届いてるはず」
詐称された釣書がね。
釣書上では私の趣味が生け花と茶道となっていたけど、本当に得意なものはバレーボールと乗馬なんだけどなぁ……。まいった。
「お相手の方はどのようなひとなんですか?」
「男子校に通うひとつ上の人だよ。海運会社のご子息なんだって…」
会ったことのない人だからなんともいえない。もしかしたら何かのパーティで会ったことがあるかもしれないが、記憶にございません。
■□■
「はじめまして、西園寺貴徳と申します」
婚約破棄して一月足らずだと言うのに、もう次のお相手探しとしてお見合いがセッティングされた。もちろん企画運営全てお祖父さんひとりである。
お見合いの場所は高級料亭だ。そこにお相手の西園寺さんとそのお祖母様、私と二階堂のお祖父さんが参加していた。
…釣書に書いていたが、彼にはお母さんが居ないそうだ。死別か離別かわからない。そのかわり、彼のお祖母さんがお母さん代わりになっていてすごく親しいんだなってのが見て取れた。
私は自分を敵視する父方祖母を思い出して複雑な気分になった。私が前妻である鈴子お祖母さんにそっくりなので、後妻のお祖母さんは危機感を抱いてるとかなんとか……だから会うたびに睨まれ、嫌味を吐き捨てられるのである。人のいないところで嫌がらせも受けることもある。
それと比べて目の前の西園寺青年のお祖母さんは優しそうで何よりだ。
「笑さんは生け花がお得意とか。今度よろしければ作品を見せてくださいな」
「えっ!? …発表会で展示することはあっても、大したものではなくてですね…」
全然得意じゃないよ…未だに花の心なんてわかんないし、いつもやっつけで作品作っているもの。釣書詐欺に加担した隣のお祖父様を恨むぞ…。
「そんなご謙遜なさらないで。お噂はかねがねですのよ。先進的な作品を作られるとかで、購入希望者がいると聞きましたわよ」
それ、同じ教室のおばさまが同情かなんかしらんけどお客様をお迎えする応接間に飾りたいとか言い出して、作品を買い取りたいって申し出てきた件のことかな? 恥ずかしいので断ったけど。
趣味詐欺にしても、私の爆発した芸術にしても、こう突っ込まれると胃が痛くなるんですが…
「笑さん」
「は、はいっ!?」
先程からこちらをガン見してきていた西園寺青年に声を掛けられた私はビクリと肩を震わせた。
「好きな食べ物はありますか?」
「えっ好きな食べ物…ですか」
唐突な質問に私は目を丸くしてしまった。
自分で言うのは何だが、望めばどんなものでも食べられた。お祖父さんに誘われて高級店に連れて行ってもらうこともあるので、私は結構グルメな気がする。
だが、私の心を掴んで離さない料理はあれしかない。
「カレーですね! 本格的なカレーが好きなので、自分でインドカレーやタイカレーを作れるようになりました!」
その答えは相手の興味を引いたらしく、西園寺青年、そのお祖母さんからカレーについて質問攻めにあった。私は饒舌になってカレーについて熱く語ったのだ。
カレーはいいぞ。食べたら元気になる。
■□■
「綺麗な錦鯉ですね」
「本当に」
2人きりでお話してくるようにとお庭に追いやられた私と西園寺さんは庭の池でスイスイ泳ぐ錦鯉を眺めていた。
この西園寺さんはお祖父さんお気に入りの青年なのだそうだ。西園寺さんは私と同じ高校生なのだが、もうすでに大人たちに付いて事業について勉強しているそうだ。それでうちのお祖父さんと関わることが多く、親交を深めたとか。
「笑さんは朗らかで素敵な女性ですね」
「えっそうですか?」
「はじめは可憐な女性だなと思ったんですが、話していたら笑顔の可愛い明るい方で…とても素敵です」
「ありがとうございます」
見た目と中身が違うとよく言われます。
釣書から入ったので、ギャップに愕然としているのだろうかと思ったが、どうも好意的な反応みたいだ。
爽やかに笑う西園寺さんは釣書の写真を見たときから印象は変わらない。穏やかに微笑む好青年である。一緒にいるとわかる温和な人柄。優しい人なんだろうなと思うと、罪悪感がチクリ。
この人は今でもきっと信じている。
私の趣味が生け花と茶道だって。
それらはカッコつけで習っているだけであって、趣味特技はアクティブなバレーと乗馬なんだ…!
いやもう西園寺さんは、私が見た目と中身のギャップが激しい人間だと気づいているみたいだけど、今回の趣味詐欺があとあとトラブルになったら困るな……
「西園寺さん、お話しておかなくてはならないことがあります」
多分彼なら怒らないとは思うんだけど、誠実な相手だからこっちも誠実に対応しなくてはと思うんだ。
「なんですか?」
「実は、釣書詐欺をしていました」
私の自供に西園寺さんはキョトンとしていた。
これで彼が女性不信になったら、私とお祖父さんのせいだ…あぁぁごめんなさいごめんなさい…
「本当の趣味特技はバレーで、今度県大会出場が決まりました。いまインターハイ目指して頑張ってるんです。釣書ではお嬢様らしくお花と茶道と書いていたけど、違うんです」
もう一ついえば、乗馬も好きです。運動の方が大好きです。お花とかお茶とか退屈で苦手です。精神統一にはなるけど、いまいち芸術がわかんないし、私の中ではストレスの素であったりします。
私は自供し終えると、西園寺さんに向かって深々と頭を下げた。
「私は婚約破棄された人間ですし、見た目を裏切るガサツで女性らしくない女なので、無理と思われたら縁談を断ってください!」
全然怒ったりしないから!
これはお祖父さんが大体悪いから! 孫娘可愛さで詐称するんじゃないよ全く! だいたい私、婚約破棄ほやほやのまだ傷心期間なんだよ? 全く傷心してないけど世間的な意味で自粛しておかなきゃいけない時期に次の婚約者探しってどうなのよそれ。
「…笑さんは素直な方なんですね、話していてとても気持ちがいい」
最悪怒られるかなと内心ヒヤヒヤしていたが、西園寺さんは肩の力を抜くようにして微笑んでいた。
「大丈夫です。活発な女性は元気でいいと思いますよ。そうだ、今度一緒にカレーを食べに行きましょう」
ギュッと手を握られる。
なんか正直に自供したことが良かったのか、西園寺さんにデートに誘われた。手まで握られて…なかなか積極的な青年である。
こうして好意的にニッコリと微笑まれると「お断りです」とか言えないよねぇ…
「あっハイ…」
別に嫌悪感があるわけではない。
お祖父さんが推すくらいだからいい人なんだろう。
「友達からお願いします」
すぐに婚約に移行するってのは私の心が追いつかないので、まずはお友達期間から。
私のお願いに対し、西園寺さんはにっこりと笑みを深めて「認めていただけるよう、頑張ります」と返してきたのであった。
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