お嬢様なんて柄じゃない

スズキアカネ

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さようなら、エリカちゃん。ごきげんよう、新しい人生。

私は決めた。エリカちゃんの分まで生きて、幸せになると。

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 私は一刻も早くあの場から逃れたかった。そのため部室を目指して走っていたのだが、後ろから追ってくる気配を感じていた。
 やばいアイツ追いかけてきた!
 今はそっとしておいてほしくて、私は走りながら叫んだ。

「お願いだから冷静になるまでそっとしておいてよ!」
「断る! 避けられるこっちの身にもなってみろ!」

 訴えは却下された。あんたに今の私の気持ちがわかるか!? 私は非常に動揺しているんだぞ! そっとしておけよ!
 慎悟、意外と足速いな! 私も走る速さには自信があるんだけど、このままだと追いつかれそう…なんとしてでも撒かなきゃ!

 昼休みの今の時間、部室棟付近は無人状態。しんとした一帯で、私達が追いかけっこする足音だけが辺りに響いていた。
 部室棟の手前で寄り道して逃げて、撹乱させて撒いたはずなのだが、女子バレー部の部室の解錠をしているタイミングで捕まってしまった。
 慎悟に後ろから抱きつかれたのだ。驚いた私の手から学生証の入ったパスケースが落ちそうになった。

「なんで逃げるんだよ」
「…恥ずかしいんだよ! わかれ!」

 背後から抱きつき行為、これ場合によってはわいせつ事案だけど、私は現金にも嬉しいと感じていた。変態か私は。
 走った直後のため、お互い息を切らせている。相手の肩が上下しているのが伝わってきた。

「…様子がおかしかったのは、昨日西園寺さんに指摘されたから?」
「うるさいなぁ! 鈍感すぎるアホだって笑えばいいでしょ!」

 鈍感と言われる私だけど、追い詰められないと自分の気持ちに気づかない自分の鈍感さにげんなりしてるんだよ!
 何でこのタイミングでバレちゃうのさ!?

「…昨日…西園寺さんは改めて私に告白するつもりだったって…だけど私は慎悟を見ているから望みが薄いですねって…す、好きなんでしょうって」

 じわじわと再び恥ずかしくなってきた。居た堪れない。ここから逃げ去ってしまいたい…!
 笑えばいいさ! いつものように鼻で笑ってくれよ! 

「昨日気づいたんだよ! 私があんたを好きだって! おかしいでしょ、さんざんデートもしたし、キスもしたのに私は自分のことしか考えてなくて、今まであんたの想いに応えることすらしなかった。自分の残酷さに自己嫌悪してるよ!」
「…確かにあんたは残酷だ。俺は何度も傷ついた」

 肯定する言葉に私はビクリと肩を震えさせてしまった。私は本当に最低だ。…どうしてこうもうまく回らないのだろう。
 私を捕獲するために回された慎悟の腕に力が入った。絶対に逃さないとばかりに。
 私はその腕にそっと手を添えた。この苦しさは私がここにいる証明のような気がして、このまま強く抱きしめていて欲しかったのだ。

「でもあんたが自覚せずとも、あんたの想いはちゃんと伝わってきた。今はそれで満足していた」
「…私…態度に出てたの?」
「出てた。だから山本と阿南がけしかけて来たんだろ」

 あぁー、やっぱり! 皆気づいていたのか! 自分なんなの!? 何してんの!? 本当に恥ずかしい奴だな自分!

「…俺の顔を見て、さっきの告白をもう一度言ってくれよ」
「えぇ!? さっき言ったじゃん! 聞いていたんでしょ!?」
「一度言えば二度も三度も同じことだろ」

 この欲張りめ。一度じゃ満足しないっていうのか…!
 慎悟は私を拘束していた腕を解くと、肩を掴んでグルッと180度方向転換させた。
 正面から見た慎悟は嬉しそうに笑っていた。わぁキレイな笑顔。だけどここでそれを褒めたら多分しかめっ面になるんだろうな。本当のことなのに。
 コイツはキラキラしている。空は曇り空で今にも雨が降ってきそうなのに、コイツの周りだけがキラキラして見えるのは……私が幻覚を見ているだけなのだろう。
 
 ここまで来たら、腹を括るしかない。
 私は慎悟の目を見てパッと逸して、再度見てパッと逸らすという謎行動を数回繰り返していた。バクバク鼓動する心臓のある辺りを手で押さえつけ…深呼吸をする。
 慎悟はまっすぐ私を見つめていた。あの時とは逆だ。今度は私から告白する。…なんだか私ばかり緊張しているみたいじゃない。

「よく聞きな…私は、松戸笑は加納慎悟が好きだ。…私を見てくれる、私を認めてくれるあんたのことが……好きだよ、好きなんだよ!」
「……もうちょっと可愛げのある告白しないか?」
「私にそんな物求めるな!」

 クレームを付けながらも慎悟は笑顔だ。こんなに嬉しそうな顔は…もしかしたら初めて見るかもしれない。今までにも見た嬉しそうな顔の中で、飛び抜けて嬉しそう…
 慎悟の手が頬を包み、親指が唇の上をなぞる。慎悟が醸し出す空気に私は息を止めてしまった。暴くようなその瞳。心がソワソワするけれど、私はそれが嬉しくてたまらないのだ。
 慎悟はゆっくり顔を近づけながら「俺も笑さんが好きだ」と囁いてきた。私はそれにドキドキしていたが、急に恥ずかしくなってしまい、顔を背けて慎悟の唇を避けた。
 それに慎悟は目を丸くして固まっていた。

「やっぱりダメ! 恥ずかしいし、エリカちゃんの身体を穢すなんて真似出来ない!」

 キスは何度かしたけど、自覚してしまっては急に気恥ずかしくなってきた。

「…今更じゃないのか? 一生を生きていく上でそれを守り通せるわけがないだろ。そんな言い訳して…子どもを作る時どうするんだ」

 子ども…!? 私は口をあんぐり開けて一歩後退りした。顔が熱く燃えるように熱い。
 ちょっと待って、私そこまでは何も考えてないの! 一生独身かもなぁって考えていたくらいだから! その…知識はあるよ? だけどエリカちゃんの身体は自分以上に大切にしなきゃいけなくて…
 そもそも私達まだ高校生だし、慎悟も今の私もセレブなお家の子どもという立場だ。色々と制約もあると思うんだ! ……そうだ! この手があった!!

「今は医療が発達しているから、子供を作る手段は色々とあるんだよ! 手をつなごう! そこから始めよう! セレブらしく清く正しい交際をしよう!」
「……」
「むぐぅ!」

 妙案をひらめいた私が、清く正しい交際を提案したら、慎悟は有無を言わさずに私を掻き抱くと、強引に唇を塞いできた。なんて男だ。
 おいあんたはセレブなんだろう。男女交際では段階を踏むものじゃないのか。こんな所を人に見られたらなんと噂が立つか…
 モゴモゴと文句を言うために声を出そうとして出せていない口を、反論はさせないとばかりに塞いでくる慎悟。私は抵抗する気が失せた。
 おきれいな顔をしているのに、こんな時はズイッと男を出してくるよね。クールな性格のはずが中身は熱いという奴なん?

 ぽつぽつ、と部室の屋根に雨が落ちる音が鳴った。その音はどんどん大きくなり、さぁぁ…と静かに雨が降り注ぐ音が耳に入ってくる。部室の出入り口にはひさしが付いているから、私達の身体が雨に濡れることはなかった。
 部室のドアに背中を押し付けられた状態で、私は慎悟とキスを交わした。今まで抑えてきたものを放出するかのようなキスに私は翻弄されてしまった。
 …年下のくせに…私を翻弄するなんて…!
 
 最後に軽いキスを一つ落とされると、慎悟はゆっくり名残惜しげに私から離れた。 
 長いキスの後に解放された私は黙り込んでいた。…部活で部室に行く度にこのキスを思い出してしまいそうだ。
 慎悟に手を引かれて、雨になるべく濡れないようにして校舎に戻っていると、その途中で私の友人たちと合流した。中にいた阿南さんがにこやかに声を掛けてきた。

「あら加納様、二階堂様と合流できたのですね。良かったですわ」
「…阿南のおかげでいいことが聞けたよ。ありがとう」

 私は恥ずかしくなったので、慎悟の手を握りつぶした。だけど相手は全然痛くも痒くもないようだ。私が鍛えた握力に全く動じないぞ…おかしいな…
 いつまでも手を繋いでいる私達の姿とその言葉を受けた阿南さんは、わかりやすく表情を明るくさせた。

「いいこと? …まさか…とうとうですの…!? 山本さん、私の読みが当たりましたわよ! 3ヶ月でした!」
「思ったよりも早かったね! 私は半年だと踏んでいたのに…やっぱり修学旅行のデートが効果的だったんだよ!」

 何やら2人は楽しそうにはしゃいでいた。2人賭け事みたいな発言をしてたこともあるよね…私をなんだと思っているのか…

「良かったですね、二階堂様。おめでとうございます」
「う、うん…予定外のことだったんだけどね?」

 幹さんだけが私の良心だよ…私で賭け事なんかしてないもんね? …してないよね?
 この身体はエリカちゃんの身体であるという意識はまだ残っている。だけど、私はいい加減に認めなければいけないのかもしれない。もう恋はしないと誓った私は、慎悟を好きになってしまった。慎悟も私に想いをぶつけてくれる。
 ここで「エリカちゃんの身体で幸せになんてなれない」と以前の私のようなことを言っていたら、私はまた深く後悔をすることになる。
 なら、私はエリカちゃんの分まで生きて、そして幸せになるしかない。

 私が一人決心していると、興奮状態の阿南さんが鼻息荒く声を掛けてきた。

「では、おふたりのご婚約も秒読みですよね?」
「えぇ? 婚約? まだ付き合いはじめて1時間も経ってないのに」

 気が早すぎない? 慎悟だってそこまでは考えていないでしょうよ…

「今日帰ったら、親に交際を始めたことは伝えるけど、段階を踏まなければならないからまだ未定だな」
「なんと」

 慎悟は考えているらしい。やだ、私とのことをそんな真剣に考えてくれてんの? ときめくじゃないの。

「二階堂様も頑張らなくてはですね。加納様の婚約者となるからには、今までのようにはいきませんよ」
「…!」

 それだ。
 盲点であった。私はそれなりに頑張っているつもりだったが、今のままでは全くダメなのだ。
 私が驚愕の顔で固まっていると、ギュッと手を握られたので、隣を見上げた。

「大丈夫。まだ時間はある。あんたなら出来る」
「……そんなプレッシャー掛けないでよ…」

 買いかぶり過ぎだよ…私のポンコツさを知っているくせにそれはないだろ……

「そんな事はありません。二階堂様は着々と成長していらっしゃいます。最近はやる気を見せてくれましたし、このままもっと上昇できるはずです!」
「いやぁ…そんなぁ…」

 秀才の幹さんにそう言われるとそんな気がしてきたが、それでも私はお嬢様としてまだまだポンコツだ……

「1人で頑張らせるつもりはないから、一歩一歩でいい」
「…胃が痛くなってきた」

 以前からちょっとずつお嬢様教育を取り組んできたけど、更に力を入れなくてはならないようだ……
 そういえばそれ以前に、重要な何かがあることを忘れている気がする…

「…嘘でしょう…?」
「慎悟様、気が触れてしまわれたのですか!?」
「おのれ…! 二階堂エリカ…!」
「ハッ!!」

 そうだ、加納ガールズだ。丸山さんは話せばわかってくれるけど、加納ガールズはわかってくれない人種である。
 何処から話を聞いていたのかは不明だが、加納ガールズは般若の形相で私に迫ってきていた。私はその形相に恐れを抱いたが……逃げちゃダメだ。彼女たちの好きな人を私は奪ってしまったのだ。
 
 慎悟と繋いていた手を解くと、私は彼女たちの前に立った。後ろで慎悟が加納ガールズを止めようと動く気配がしたが、ここは私にしっかりケジメを付けさせてくれ。

「おい…」
「ごめん! 私なんだかんだ言って慎悟のこと好きだったみたい! 慎悟のことを大切にするから交際を許してください!」

 私は深々と頭を下げて許しを請うた。 
 彼女たちの慎悟に向ける想いは激しくも深いものだろう。今まで加納ガールズたちからは嫌がらせを受けてきたが、それだけは伝わってきた。
 そんな彼女たちだから私も真剣にお願いしなくてはいけない。そうすれば彼女たちだって…

「……はいそうですか…と許すとでも思ってますのこの女狐!」

 そうはならなかった。
 巻き毛は怒り心頭のようで、私に向かって吠えてきた。廊下にその声が響き渡って、私達は注目を受ける羽目になる。

「許しませんわ、とことん妨害してやりますからね!」
「そうよ! 慎悟様の頭が冷えたら、捨てられるに違いないわ!」
「いひゃい!」

 ロリ巨乳が私を拘束すると、能面がほっぺたを摘んで引っ張ってきた。痛い痛い。
 え、なにこれ、嫌がらせのつもりなの?

「おい、やめろってば」
「よくお聞きください慎悟様! 前々からこの女のことは気に入りませんでしたが…」

 慎悟が間に入ろうとしているが、巻き毛に捕まってギャンギャンと説得されている。普段慎悟の言うことは素直に聞く巻き毛もこんな時は聞けないようだ。

「ちょっとあんた達やめなさいよ! エリカの顔を引っ張って面白くしても、加納君は幻滅しないよ!」
「加納様が選んだ方ですのよ? 当事者でもないあなた方がどうこう言える問題じゃありません。あと、小学生のような振る舞いはいい加減におやめになったほうが宜しいかと」

 ぴかりんと阿南さんがロリ巨乳と能面を引き剥がしてくれた。引っ張られたほっぺたがじんじんするので、両手で擦る。…これいじめとして通報していいのかな?

「いい加減にしろ。俺の人生は俺が決める。お前たちの指図は受けない」

 慎悟は巻き毛の説得(私の悪口?)を一蹴していた。加納ガールズたちは必死の訴えを却下されて、とうとう泣き出してしまった。

「…そんなっ! 慎悟様ひどいですわ!」
「後悔しても知りませんからね!」
「慎悟様の馬鹿! でもお慕いしておりますっ!」

 そして言い逃げのように吐き捨てて走り去っていった。最後にきっちり好意を伝えるところは流石だね。
 言われた色男はというと、それを黙って見送るなり、「大丈夫か?」と私のほっぺたの心配をしてきた。心配してくれるのは嬉しいけど、加納ガールズらはいいの? 長い付き合いなのでは? 
 こういう所がドライだよね慎悟って。


 私が予想しなかった形で話は転がり、ホワイトデー前日のその日、私と慎悟はお付き合いをする事になったのである。

 
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