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勘違いを続ける彼女と彼女が気になる彼。
はじめに大阪城の建築に着手した年は何年か。また、何度焼失したか答えなさい。
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大阪に到着した後はクラスごとに団体行動になったため、悠木君とはほぼ別行動になった。団体で昼食を取ったあとは修学旅行らしく歴史の勉強を交えて大阪城へと出向いた。
現地ではガイドさんの説明を聞きながら、混雑を避けるために順番ずつ城に入っていく。ちなみに学生は1階から階段で昇降しろとのお達しを受けている。先生はエレベーターで移動しているのに不公平である。
天正11年に工事が着手されたという大阪城の天守閣は何度か焼失し、その度に再建がなされて現在3代目だ。内部は博物館みたいになっていた。
1階はミュージアムショップとシアタールームがあったがそこはスルーされた。
階段を登った先の2階では、パネルとレプリカ展示があった。豊臣秀吉や真田幸村の兜の試着ができる有料コーナーもある。若い観光客の女性たちがきゃあきゃあはしゃぎながら撮影していた。あぁいうのうちのお姉ちゃんが好きそうである。コスプレ的な意味で。
面白がった男子たちが兜体験しようとしていたが、団体行動中なので断念していた。
3階では歴史資料の展示の他に、秀吉が作らせた組み立て式の茶室が原寸大で復元された黄金の茶室原寸大模型が展示されていた。めっちゃキンキラキンで目が痛い。
4階には豊臣秀吉ゆかりの品々をはじめとする戦国時代の貴重な資料など、大阪城にまつわる文化財が展示されていた。ここては2ヶ月ごとに展示品が変わるらしい。
5階には真田幸村隊と松平忠直隊の戦闘シーンを立体的に再現したミニチュア夏の陣を展示されていた。真田幸村が奮闘したことで有名な天王寺口の戦いが再現されてて、女性たちがスマホでパシャリしてるが、これって撮影してもいいのだろうか…? いわゆる歴女という方々なのだろう…
大坂夏の陣図屏風に描かれている名場面を絵解きしたパノラマビジョン周りでは日本人以外の観光客も説明に聞き入っていた。
7階には豊臣秀吉の生涯をジオラマと映像で表現したからくり太閤記展示されていた。立体的な模型の中に、人物たちの映像を浮かび上がらせて作られたユニークな展示で、秀吉の生涯や伝説について紹介されている。小さな秀吉人形が動き回っていた。
8階が展望台となり、大阪の風景が網越しに一望できた。落下防止の網があるので風景撮影には向かないのが残念だった。ミュージアムショップでは記念品を物色する観光客と修学旅行生が密集している。
しかし私はまだ買わない。お小遣いは計画的に使う主義なので、吟味して買わなくては後で息切れを起こしてしまう。お土産の数々を見ないように目をそらしたのだが、私の目にあるお菓子が映る。
「いかがですか? 美味しいですよ」
タッパーの中に小さくカットされたお菓子が入っており、爪楊枝に刺さったそれを差し出された。人好きしそうな売店のおばさんの笑顔に釣られてふらふらと引き寄せられるように試食した。
これ大阪城と通販と製造元のお店でしか購入できないらしい。白あんの中にさつまいもが入ってて美味しかった。……誘惑に負けて結局お土産として買ってしまった。
□■□
次にやってきたのは学問の神様・菅原道真公が旅の途中で立ち寄ったとされる大阪天満宮。ちなみにここは少なくとも過去に7回は燃えてる。
学問だけでなく、いろんなご利益があるという大阪天満宮。生徒たちがお参りに行ったり、授与所でお守りを買い求めに行ったり散らばっていた。
道真公に縋りたいのか5千円を賽銭する同級生を見て、お前本気かと二度見してしまった。ちなみに私は5円お賽銭した。神頼みしても勉学は身に付かない。努力あるのみだ。
お参りをそこそこに終わらせると、お守りを買おうと人混みができている授与所で物色開始した。学業守はみんなが購入しており、同じものを購入するのはどうなのかなぁと思った私は目についたお守りを手に取る。鳥の形をしたお守り。これなら通学用のリュックにつけても悪目立ちしないし、いいかも。
「すみませんこれください」
授与所に居る巫女さんにお会計をお願いしてお守りを購入した私は大阪天満宮のちいさな袋に入ったそれをまじまじと眺めた。なくしたらアレだから、宿泊先に着いてからカバンにつけよう。そう考えていると、横からガッとお守りの入った袋ごと手を掴まれた。
「!?」
「悠木君! こっちこっち!」
手を掴んだのはゆうちゃんだ。彼女は私の手を捕獲したまま、生徒の群れの中から彼の名を呼ぶ。
私はぎょっとして手を引っ込めようとしたが、ゆうちゃんの手の力は強かった。
「丁度いいじゃん。悠木君と交換したら?」
反対側からは季衣がニヤニヤと悪巧みをしているようないい顔で提案してくる。友人たちの突然の行動に私が困惑していると、呼ばれた悠木君が疑問顔でこちらに近づいてきた。
「なに?」
「あのね! 美玖がお守り買ったの!」
「悠木君もお守り買ってこの子と交換してあげてほしいの!」
「はぁ…?」
友人よ、訳のわからないことを言うな。悠木君も困った顔をしているではないか。なぜお守りを交換しなきゃいけないのか。自分の金で自分のものを買えばそれで良かろうに。
「ねぇちょっと」
私が友人たちの暴走を止めようと口を挟むと、季衣が私の背中をグイグイ押してきた。足を踏ん張らせて抵抗していると、そんな様子を眺めていた悠木君が「まぁ…別にいいけど」と了承してきた。
うわぁー完全にこっちの状況を見て合わせてくれた感がする!
「駄目だよ!」
私は気持ち強めに拒絶した。それに驚くは友人らと悠木君である。
「桐生さんがいるのに、悠木君に失礼でしょうが!」
桐生礼奈をとりまく三角関係がどう転ぶかはわからないが、別の女とお守り交換ごっこなんかしては悠木君の不利になるだろう!
「ちょっと待て」
私は友人の謎の行動を叱るつもりで語気粗めに言ったのだが、それを止めたのは意外にも悠木君だった。苦虫でも噛み潰したかのように渋い顔をした悠木君はため息交じりに言った。
「礼奈は関係ないだろ」
「いや、悠木君わかってる? 私一応女なんだよ。異性とそういう特別なことすると誤解が生じると言うかね?」
悠木君はそこまで考えが行き着かないのだろうが、周りはそうじゃないんだよ。変な噂が立てば、悠木君が傷つくことになるんだよ!?
私のことを女として見てないのかもしれないけど、そういう問題じゃないんだよ!
「……俺とあいつはただの友達だよ、中学からのな。周りが勝手に交際してるって勘違いしてそれが噂になってるだけ」
しかし悠木君の口から飛び出してきたのは桐生礼奈との関係を否定するもの。なんだかムスッとして機嫌が悪くなってしまったようにも思える。
「友達? あんなに特別仲いいのに?」
「ずっと同じクラスだったんだよ。そもそもなんとも思ってねーし。言っとくけどあいつ、好きなやつがいるぞ」
「そうなの!?」
私は驚愕する。
桐生さんには好きな人がいる…それは悠木君の失恋を意味するのでは…?
「俺が礼奈を好きになったことなんて無いし、その逆もないからな。勘違いすんな」
しかし新たな可能性も悠木君に否定されてしまった。
なぜ私の考えていることがわかった。私の驚愕する顔をみた悠木君は呆れ半分な表情を浮かべていた。…なぜだ。
彼は私からすっと視線を外すと授与所に並んでいるお守りに目を向けた。
「で? どれがいいんだ」
「え、いいよ。友達が勝手に言い出したことだし」
「欲しい物言わねーと適当に買うぞ。あの鈴とかどうだ。魔除け厄除けの効果があるんだって書いてる」
なんか悠木君はもう交換する気持ちでいるらしい。
友人らの申し出に付き合わせる形でとても申し訳ない気持ちになりながら、私は「うそ鳥守り…」と答える。
私が買ったものは<ruby> 鷽 <rt>うそ</rt> </ruby>という鳥と嘘を掛けた招福守りだ。
「嫌なことを嘘にしてくれるんだって」
鈴のも可愛いけど、私はこっちのほうが欲しい。
悠木君は私の要望に答えてくれた。同じものを購入すると、私がさっき購入したものと交換した。同じものなのに交換して果たして何になるというのか。
男子である悠木君にこういうお守りはどうなんだろうと思いつつも、私はドキドキしながら悠木君の顔色を伺う。
……悠木君と桐生さんってなにもなかったのか。美男美女でお似合いだし、仲がいいから私はてっきり……。
「…なに?」
「いや、なんでも…」
私の視線に気づいた悠木君に何事か聞かれたけど、私はうまいこと誤魔化せずに視線を横にそらした。
なぜだろう急に壁が消え去ったみたいでソワソワしてしまう。
──何故かその背後で友人ズがハイタッチを交わしていたのが妙に気になる。
現地ではガイドさんの説明を聞きながら、混雑を避けるために順番ずつ城に入っていく。ちなみに学生は1階から階段で昇降しろとのお達しを受けている。先生はエレベーターで移動しているのに不公平である。
天正11年に工事が着手されたという大阪城の天守閣は何度か焼失し、その度に再建がなされて現在3代目だ。内部は博物館みたいになっていた。
1階はミュージアムショップとシアタールームがあったがそこはスルーされた。
階段を登った先の2階では、パネルとレプリカ展示があった。豊臣秀吉や真田幸村の兜の試着ができる有料コーナーもある。若い観光客の女性たちがきゃあきゃあはしゃぎながら撮影していた。あぁいうのうちのお姉ちゃんが好きそうである。コスプレ的な意味で。
面白がった男子たちが兜体験しようとしていたが、団体行動中なので断念していた。
3階では歴史資料の展示の他に、秀吉が作らせた組み立て式の茶室が原寸大で復元された黄金の茶室原寸大模型が展示されていた。めっちゃキンキラキンで目が痛い。
4階には豊臣秀吉ゆかりの品々をはじめとする戦国時代の貴重な資料など、大阪城にまつわる文化財が展示されていた。ここては2ヶ月ごとに展示品が変わるらしい。
5階には真田幸村隊と松平忠直隊の戦闘シーンを立体的に再現したミニチュア夏の陣を展示されていた。真田幸村が奮闘したことで有名な天王寺口の戦いが再現されてて、女性たちがスマホでパシャリしてるが、これって撮影してもいいのだろうか…? いわゆる歴女という方々なのだろう…
大坂夏の陣図屏風に描かれている名場面を絵解きしたパノラマビジョン周りでは日本人以外の観光客も説明に聞き入っていた。
7階には豊臣秀吉の生涯をジオラマと映像で表現したからくり太閤記展示されていた。立体的な模型の中に、人物たちの映像を浮かび上がらせて作られたユニークな展示で、秀吉の生涯や伝説について紹介されている。小さな秀吉人形が動き回っていた。
8階が展望台となり、大阪の風景が網越しに一望できた。落下防止の網があるので風景撮影には向かないのが残念だった。ミュージアムショップでは記念品を物色する観光客と修学旅行生が密集している。
しかし私はまだ買わない。お小遣いは計画的に使う主義なので、吟味して買わなくては後で息切れを起こしてしまう。お土産の数々を見ないように目をそらしたのだが、私の目にあるお菓子が映る。
「いかがですか? 美味しいですよ」
タッパーの中に小さくカットされたお菓子が入っており、爪楊枝に刺さったそれを差し出された。人好きしそうな売店のおばさんの笑顔に釣られてふらふらと引き寄せられるように試食した。
これ大阪城と通販と製造元のお店でしか購入できないらしい。白あんの中にさつまいもが入ってて美味しかった。……誘惑に負けて結局お土産として買ってしまった。
□■□
次にやってきたのは学問の神様・菅原道真公が旅の途中で立ち寄ったとされる大阪天満宮。ちなみにここは少なくとも過去に7回は燃えてる。
学問だけでなく、いろんなご利益があるという大阪天満宮。生徒たちがお参りに行ったり、授与所でお守りを買い求めに行ったり散らばっていた。
道真公に縋りたいのか5千円を賽銭する同級生を見て、お前本気かと二度見してしまった。ちなみに私は5円お賽銭した。神頼みしても勉学は身に付かない。努力あるのみだ。
お参りをそこそこに終わらせると、お守りを買おうと人混みができている授与所で物色開始した。学業守はみんなが購入しており、同じものを購入するのはどうなのかなぁと思った私は目についたお守りを手に取る。鳥の形をしたお守り。これなら通学用のリュックにつけても悪目立ちしないし、いいかも。
「すみませんこれください」
授与所に居る巫女さんにお会計をお願いしてお守りを購入した私は大阪天満宮のちいさな袋に入ったそれをまじまじと眺めた。なくしたらアレだから、宿泊先に着いてからカバンにつけよう。そう考えていると、横からガッとお守りの入った袋ごと手を掴まれた。
「!?」
「悠木君! こっちこっち!」
手を掴んだのはゆうちゃんだ。彼女は私の手を捕獲したまま、生徒の群れの中から彼の名を呼ぶ。
私はぎょっとして手を引っ込めようとしたが、ゆうちゃんの手の力は強かった。
「丁度いいじゃん。悠木君と交換したら?」
反対側からは季衣がニヤニヤと悪巧みをしているようないい顔で提案してくる。友人たちの突然の行動に私が困惑していると、呼ばれた悠木君が疑問顔でこちらに近づいてきた。
「なに?」
「あのね! 美玖がお守り買ったの!」
「悠木君もお守り買ってこの子と交換してあげてほしいの!」
「はぁ…?」
友人よ、訳のわからないことを言うな。悠木君も困った顔をしているではないか。なぜお守りを交換しなきゃいけないのか。自分の金で自分のものを買えばそれで良かろうに。
「ねぇちょっと」
私が友人たちの暴走を止めようと口を挟むと、季衣が私の背中をグイグイ押してきた。足を踏ん張らせて抵抗していると、そんな様子を眺めていた悠木君が「まぁ…別にいいけど」と了承してきた。
うわぁー完全にこっちの状況を見て合わせてくれた感がする!
「駄目だよ!」
私は気持ち強めに拒絶した。それに驚くは友人らと悠木君である。
「桐生さんがいるのに、悠木君に失礼でしょうが!」
桐生礼奈をとりまく三角関係がどう転ぶかはわからないが、別の女とお守り交換ごっこなんかしては悠木君の不利になるだろう!
「ちょっと待て」
私は友人の謎の行動を叱るつもりで語気粗めに言ったのだが、それを止めたのは意外にも悠木君だった。苦虫でも噛み潰したかのように渋い顔をした悠木君はため息交じりに言った。
「礼奈は関係ないだろ」
「いや、悠木君わかってる? 私一応女なんだよ。異性とそういう特別なことすると誤解が生じると言うかね?」
悠木君はそこまで考えが行き着かないのだろうが、周りはそうじゃないんだよ。変な噂が立てば、悠木君が傷つくことになるんだよ!?
私のことを女として見てないのかもしれないけど、そういう問題じゃないんだよ!
「……俺とあいつはただの友達だよ、中学からのな。周りが勝手に交際してるって勘違いしてそれが噂になってるだけ」
しかし悠木君の口から飛び出してきたのは桐生礼奈との関係を否定するもの。なんだかムスッとして機嫌が悪くなってしまったようにも思える。
「友達? あんなに特別仲いいのに?」
「ずっと同じクラスだったんだよ。そもそもなんとも思ってねーし。言っとくけどあいつ、好きなやつがいるぞ」
「そうなの!?」
私は驚愕する。
桐生さんには好きな人がいる…それは悠木君の失恋を意味するのでは…?
「俺が礼奈を好きになったことなんて無いし、その逆もないからな。勘違いすんな」
しかし新たな可能性も悠木君に否定されてしまった。
なぜ私の考えていることがわかった。私の驚愕する顔をみた悠木君は呆れ半分な表情を浮かべていた。…なぜだ。
彼は私からすっと視線を外すと授与所に並んでいるお守りに目を向けた。
「で? どれがいいんだ」
「え、いいよ。友達が勝手に言い出したことだし」
「欲しい物言わねーと適当に買うぞ。あの鈴とかどうだ。魔除け厄除けの効果があるんだって書いてる」
なんか悠木君はもう交換する気持ちでいるらしい。
友人らの申し出に付き合わせる形でとても申し訳ない気持ちになりながら、私は「うそ鳥守り…」と答える。
私が買ったものは<ruby> 鷽 <rt>うそ</rt> </ruby>という鳥と嘘を掛けた招福守りだ。
「嫌なことを嘘にしてくれるんだって」
鈴のも可愛いけど、私はこっちのほうが欲しい。
悠木君は私の要望に答えてくれた。同じものを購入すると、私がさっき購入したものと交換した。同じものなのに交換して果たして何になるというのか。
男子である悠木君にこういうお守りはどうなんだろうと思いつつも、私はドキドキしながら悠木君の顔色を伺う。
……悠木君と桐生さんってなにもなかったのか。美男美女でお似合いだし、仲がいいから私はてっきり……。
「…なに?」
「いや、なんでも…」
私の視線に気づいた悠木君に何事か聞かれたけど、私はうまいこと誤魔化せずに視線を横にそらした。
なぜだろう急に壁が消え去ったみたいでソワソワしてしまう。
──何故かその背後で友人ズがハイタッチを交わしていたのが妙に気になる。
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