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勘違いを続ける彼女と彼女が気になる彼。
日本で一番最速な新幹線の車両名をあげなさい。
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修学旅行の日がやってきた。行き先は予定通り大阪と奈良。3泊4日の旅となる。修学旅行初日は朝6時に駅に集合だったお陰で、バイトが出来なかった私は不完全燃焼な気持ちで集合場所である駅前広場に立っていた。
「これから新幹線で移動することになるが、指定席エリアの外に出ないように。一般のお客さんの迷惑にはならぬよう心がけること」
点呼の後、引率の先生たちが注意事項を述べた。ただ、修学旅行で浮かれてヒソヒソおしゃべりしている人が多く、生徒たちが話を聞いているかは定かではない。
新幹線車内ではクラスごと、グループごとに配置された席順のまま座る。窓際から人で賑わうホームには生徒の行列が見えた。特進科の生徒も今乗車しているところみたいだ。悠木君どこに居るかなと目で探していると、つんつんと肩を突かれた。
「ねね、美玖悪いんだけど通路側に移動してもらっていいかな?」
友人の季衣にヒソヒソ声でお願いされ、私は一瞬なぜだ? と疑問に思ったが、対面の席に同じグループで友人が狙っている男子が座っていることに気づいて快く席を交換した。先生が決めた座席表通りに座っていただけだから席交換くらいならお安い御用である。
もうひとりの友人であるゆうちゃんも狙っている男子の隣をキープしており、2人はやる気だ。
私はひとり取り残された気分にさせられたが、仕方ない。……修学旅行中ずっとこんなボッチな気分にさせられるのは切ないけども。
『本日も新幹線をご利用いただき、誠にありがとうございます…』
新幹線のアナウンスが車内に響くも、生徒たちのおしゃべりの声でかき消されてしまう。通路側の肘置きに行儀悪く肘を立てて手のひらに顎を乗せていた私は耳栓を持ってくるべきだったかと後悔する。目的地の大阪まで時間がかかるんだ。昼寝ならぬ朝寝すればよかった。
新幹線が動き始め、初めて新幹線を乗るという生徒がはしゃぐ声が聞こえてくる。長い長い新幹線の旅が始まった。
……暇だ。
最初の30分くらいは耐えられたけど、それ以上になると座ってるのも飽きてきた。本とか暇つぶしになるもの持ってくればよかった。
「美玖? どこいくの?」
私が席を立つとお目当ての男子とおしゃべりしていたゆうちゃんに呼び止められた。『何よ、今更構っても遅いから!』とやさぐれたりはしない。孤独感は感じていたけども。
「散歩してくる」
指定席範囲にデッキがあったからそこまで移動して暇つぶしでもしてこよう。
普通科エリアを抜けて、隣の車両へ移る。こっちは特進科の生徒が座る指定席である。学校行事に冷めた眼差しを送る特進科の生徒たちであるが、修学旅行ともなるとはしゃいでしまうものらしい。それは普通科の生徒たちと何も変わらなそうである。
この車両を抜けた先にデッキがある。そこまで歩いても大した時間つぶしにはならなそうだけど、あのまま座っているよりはマシだ。
脇目もふらずにデッキ目指しててくてく歩いていると、座席側からニョッと顔を出してきた人物がいた。私は驚いてビクッと後ろに飛び退く。
「森宮、何してんの?」
「あっ森宮さんだ。なになに、俺に会いに来てくれたの?
「…大輔、そういう風にからかうのはよくないわ」
何を隠そう三銃士…じゃない。特進科の仲良し三人組である。修学旅行でも同じグループらしく、本当に仲がいいなぁと感心してしまう。
なんか桐生さんがまたピリついているけど、邪魔しやがってとか思われてそうで怖い。機嫌悪くなったのは私のせいじゃないよね?
「…私のグループ、合コン状態だから抜けてきた。友達ふたりともグループ内の気になる男子狙ってるんだ」
居心地悪いからデッキで時間潰そうかなって思って、と付け加えると、悠木君は隣に座っていた眼鏡を押しのけて対面側にいる桐生礼奈の横へ追いやっていた。「痛い! なにすんの!?」と眼鏡が喚いているが、悠木君には聞こえていないようだ。
「ならここ座れよ、空いているから」
「無理やり空けたのでは…」
空いていた、と言うには語弊が…と言おうとしたが、彼に手を引っ張られてストンと座席に腰を落としてしまった。3人の視線が一気に集まって妙に緊張する。
「合コン状態か。修学旅行だから仕方ないと言えば仕方ないけど、大変ね」
対面の席に座っている桐生さんから労う風に言われた私は少々身構える。
「その調子じゃ、旅行中ずっと森宮さん一人で行動する感じなの?」
首を傾げた彼女の長い髪が肩を流れる。仕草一つ一つが計算尽くされているな。つくづく私とは正反対な女である。
「まぁ、一人の方が楽かなと」
これまでさんざん昼休み自由行動してきたので、今更な気もする。カップル成立間近な人たちの側で身を縮めて気を遣いながら行動するより、一人寂しくロンリーオンリー観光のほうがよっぽど楽しいと思うのだ。現に、合コン状態の彼らと同席している方が息苦しかったし。
「自由行動はどうなの? 余計なお世話かもしれないけど、地理もよくわからない繁華街を女子一人で出歩くのは危険だと思うの」
「うーん…」
ナンパという危険もあるけど、犯罪に巻き込まれると言う可能性もある思う、と彼女から指摘された。私は言われてみればそうだなと思いつつも自分が巻き込まれる想像ができなくて曖昧な返事を返すのみだ。
危険な場所に行くわけでもないし、大丈夫だろうと考えていたのだが隣に座っていた悠木君が「なら!」と食い気味に口を挟んできた。
「自由時間は俺と回ろう」
「え?」
「俺は誰かと約束してるわけじゃないし、一緒に回ろうぜ」
「で、でも」
悠木君の申し出に私は申し訳なくなった。
目の前にいる桐生さんだ。悠木君、彼女のことはいいのか。こんなイベントごとの時に友人を優先したりしていいのか君は。
「礼奈は大輔さえいたら大丈夫」
「え? 俺?」
「ちょっと夏生!」
「ぃてっ」
悠木君が意味深なことを言うと、眼鏡が不思議そうな顔をした。桐生さんの頬に朱が差して照れ隠しのごとく悠木君のスネを蹴り飛ばしていた。
…清純派美女が、正統派イケメンのスネを蹴った……作り上げられた桐生礼奈という仮面にヒビが入ったように見えたが、初めて年相応の彼女の素が見れた気がする。
「明日は宿泊するホテルのロビーかどこかで待ち合わせしようぜ。あと回りたい場所があるなら教えて」
「う、うん…」
なんか自由時間は悠木君と観光することになっちゃった。いいのかな…と桐生さんを盗み見すると、彼女は赤くなった顔を両手で隠している。
……桐生さんは、眼鏡と悠木君を逆ハーレムさせて楽しんでいるはずなのに……これでいいのだろうか。私が悠木君と観光するとなると、桐生さんは残された眼鏡と2人きりになるんだけど……あとになって睨んできたりしないよね…?
「あべのハルカスと鶴橋商店街に行ってみたい」
鶴橋に関してはお姉ちゃんが美味しい韓国料理の惣菜屋さんがあったと熱弁していたから私も食べたいだけなんだけどね。まさに色気より食い気である。
悠木君に大阪で行きたい観光地を告げていると、外野の眼鏡が「はぁ!? あべのハルカス!?」と不満たらたらな反応を示してきた。
なんだよ、展望台に登りたいと思っちゃいけないのか。じろりと眼鏡を睨むと、なぜか眼鏡は青ざめていた。
「展望台なんて高いだけだよ!? 上空から地上を見下ろして何が楽しいというの!? 高いところが好きなのは煙とバカだけなんだよ!?」
「眼鏡に馬鹿だと言われる筋合いはないよ。実力テストで私よりも点数を取れてから馬鹿にするんだね」
「いやそういう意味じゃなくてさ!」
じゃあどういう意味なんだよ。あんたの発言は喧嘩売るような発言にしか聞こえないよ。
「ていうかさ…」
スマホであべのハルカスの情報を調べてた悠木君が顔を上げて眼鏡を胡乱に睨むと、ため息交じりに言った。
「お前は誘ってないから来なくていいよ」
「そんなこと言っちゃう!? みんなで行こうよ! みんなで観光したほうが楽しいでしょう!?」
どうやらロンリーオンリーな修学旅行は、悠木君の心遣いで回避されることになりそうである。
「これから新幹線で移動することになるが、指定席エリアの外に出ないように。一般のお客さんの迷惑にはならぬよう心がけること」
点呼の後、引率の先生たちが注意事項を述べた。ただ、修学旅行で浮かれてヒソヒソおしゃべりしている人が多く、生徒たちが話を聞いているかは定かではない。
新幹線車内ではクラスごと、グループごとに配置された席順のまま座る。窓際から人で賑わうホームには生徒の行列が見えた。特進科の生徒も今乗車しているところみたいだ。悠木君どこに居るかなと目で探していると、つんつんと肩を突かれた。
「ねね、美玖悪いんだけど通路側に移動してもらっていいかな?」
友人の季衣にヒソヒソ声でお願いされ、私は一瞬なぜだ? と疑問に思ったが、対面の席に同じグループで友人が狙っている男子が座っていることに気づいて快く席を交換した。先生が決めた座席表通りに座っていただけだから席交換くらいならお安い御用である。
もうひとりの友人であるゆうちゃんも狙っている男子の隣をキープしており、2人はやる気だ。
私はひとり取り残された気分にさせられたが、仕方ない。……修学旅行中ずっとこんなボッチな気分にさせられるのは切ないけども。
『本日も新幹線をご利用いただき、誠にありがとうございます…』
新幹線のアナウンスが車内に響くも、生徒たちのおしゃべりの声でかき消されてしまう。通路側の肘置きに行儀悪く肘を立てて手のひらに顎を乗せていた私は耳栓を持ってくるべきだったかと後悔する。目的地の大阪まで時間がかかるんだ。昼寝ならぬ朝寝すればよかった。
新幹線が動き始め、初めて新幹線を乗るという生徒がはしゃぐ声が聞こえてくる。長い長い新幹線の旅が始まった。
……暇だ。
最初の30分くらいは耐えられたけど、それ以上になると座ってるのも飽きてきた。本とか暇つぶしになるもの持ってくればよかった。
「美玖? どこいくの?」
私が席を立つとお目当ての男子とおしゃべりしていたゆうちゃんに呼び止められた。『何よ、今更構っても遅いから!』とやさぐれたりはしない。孤独感は感じていたけども。
「散歩してくる」
指定席範囲にデッキがあったからそこまで移動して暇つぶしでもしてこよう。
普通科エリアを抜けて、隣の車両へ移る。こっちは特進科の生徒が座る指定席である。学校行事に冷めた眼差しを送る特進科の生徒たちであるが、修学旅行ともなるとはしゃいでしまうものらしい。それは普通科の生徒たちと何も変わらなそうである。
この車両を抜けた先にデッキがある。そこまで歩いても大した時間つぶしにはならなそうだけど、あのまま座っているよりはマシだ。
脇目もふらずにデッキ目指しててくてく歩いていると、座席側からニョッと顔を出してきた人物がいた。私は驚いてビクッと後ろに飛び退く。
「森宮、何してんの?」
「あっ森宮さんだ。なになに、俺に会いに来てくれたの?
「…大輔、そういう風にからかうのはよくないわ」
何を隠そう三銃士…じゃない。特進科の仲良し三人組である。修学旅行でも同じグループらしく、本当に仲がいいなぁと感心してしまう。
なんか桐生さんがまたピリついているけど、邪魔しやがってとか思われてそうで怖い。機嫌悪くなったのは私のせいじゃないよね?
「…私のグループ、合コン状態だから抜けてきた。友達ふたりともグループ内の気になる男子狙ってるんだ」
居心地悪いからデッキで時間潰そうかなって思って、と付け加えると、悠木君は隣に座っていた眼鏡を押しのけて対面側にいる桐生礼奈の横へ追いやっていた。「痛い! なにすんの!?」と眼鏡が喚いているが、悠木君には聞こえていないようだ。
「ならここ座れよ、空いているから」
「無理やり空けたのでは…」
空いていた、と言うには語弊が…と言おうとしたが、彼に手を引っ張られてストンと座席に腰を落としてしまった。3人の視線が一気に集まって妙に緊張する。
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対面の席に座っている桐生さんから労う風に言われた私は少々身構える。
「その調子じゃ、旅行中ずっと森宮さん一人で行動する感じなの?」
首を傾げた彼女の長い髪が肩を流れる。仕草一つ一つが計算尽くされているな。つくづく私とは正反対な女である。
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これまでさんざん昼休み自由行動してきたので、今更な気もする。カップル成立間近な人たちの側で身を縮めて気を遣いながら行動するより、一人寂しくロンリーオンリー観光のほうがよっぽど楽しいと思うのだ。現に、合コン状態の彼らと同席している方が息苦しかったし。
「自由行動はどうなの? 余計なお世話かもしれないけど、地理もよくわからない繁華街を女子一人で出歩くのは危険だと思うの」
「うーん…」
ナンパという危険もあるけど、犯罪に巻き込まれると言う可能性もある思う、と彼女から指摘された。私は言われてみればそうだなと思いつつも自分が巻き込まれる想像ができなくて曖昧な返事を返すのみだ。
危険な場所に行くわけでもないし、大丈夫だろうと考えていたのだが隣に座っていた悠木君が「なら!」と食い気味に口を挟んできた。
「自由時間は俺と回ろう」
「え?」
「俺は誰かと約束してるわけじゃないし、一緒に回ろうぜ」
「で、でも」
悠木君の申し出に私は申し訳なくなった。
目の前にいる桐生さんだ。悠木君、彼女のことはいいのか。こんなイベントごとの時に友人を優先したりしていいのか君は。
「礼奈は大輔さえいたら大丈夫」
「え? 俺?」
「ちょっと夏生!」
「ぃてっ」
悠木君が意味深なことを言うと、眼鏡が不思議そうな顔をした。桐生さんの頬に朱が差して照れ隠しのごとく悠木君のスネを蹴り飛ばしていた。
…清純派美女が、正統派イケメンのスネを蹴った……作り上げられた桐生礼奈という仮面にヒビが入ったように見えたが、初めて年相応の彼女の素が見れた気がする。
「明日は宿泊するホテルのロビーかどこかで待ち合わせしようぜ。あと回りたい場所があるなら教えて」
「う、うん…」
なんか自由時間は悠木君と観光することになっちゃった。いいのかな…と桐生さんを盗み見すると、彼女は赤くなった顔を両手で隠している。
……桐生さんは、眼鏡と悠木君を逆ハーレムさせて楽しんでいるはずなのに……これでいいのだろうか。私が悠木君と観光するとなると、桐生さんは残された眼鏡と2人きりになるんだけど……あとになって睨んできたりしないよね…?
「あべのハルカスと鶴橋商店街に行ってみたい」
鶴橋に関してはお姉ちゃんが美味しい韓国料理の惣菜屋さんがあったと熱弁していたから私も食べたいだけなんだけどね。まさに色気より食い気である。
悠木君に大阪で行きたい観光地を告げていると、外野の眼鏡が「はぁ!? あべのハルカス!?」と不満たらたらな反応を示してきた。
なんだよ、展望台に登りたいと思っちゃいけないのか。じろりと眼鏡を睨むと、なぜか眼鏡は青ざめていた。
「展望台なんて高いだけだよ!? 上空から地上を見下ろして何が楽しいというの!? 高いところが好きなのは煙とバカだけなんだよ!?」
「眼鏡に馬鹿だと言われる筋合いはないよ。実力テストで私よりも点数を取れてから馬鹿にするんだね」
「いやそういう意味じゃなくてさ!」
じゃあどういう意味なんだよ。あんたの発言は喧嘩売るような発言にしか聞こえないよ。
「ていうかさ…」
スマホであべのハルカスの情報を調べてた悠木君が顔を上げて眼鏡を胡乱に睨むと、ため息交じりに言った。
「お前は誘ってないから来なくていいよ」
「そんなこと言っちゃう!? みんなで行こうよ! みんなで観光したほうが楽しいでしょう!?」
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