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番外編
予想以上の暑さに参ってしまいますわ!
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エーゲシュトランド大公宛に届いたそれは、国賓としての招待状。
これまでの人道支援への感謝を伝えたいとのことだったが、おそらく契約延長もしくは条件の更なる緩和を望んでいるのだろうとヴィックは読んでいた。
その国の第23王子によって一度襲撃を受けたこともあり、何か他にも裏があるんじゃ…と気乗りはしてなさそうだったが、支援しているからには一度ハイドラートを視察したかったというヴィックはその誘いに乗った。
そんなわけで公妃である私も一緒に同行したのだが、忘れていた。私は船酔いするタイプであることを。
「うぅ……」
「大丈夫? もうすぐで港に到着するよ」
呻く私の背中をヴィックが優しく撫でた。うんうん唸る私のそばでずっと看病してくれた旦那様。その優しさに惚れ直したい所だが、今はそれどころじゃない。
吐きたいものがないのに吐きそう。
船に乗っている間ずっとダウンしていた私はようやく到着かと安心したのと同時に、帰りも同じ苦しみを味わなければならないのかと思うと今から憂鬱な気分になる。
今度から船で移動する外交先の場合、お城でお留守番したほうがいいのかな……いや、だめか。同行するのも公妃の務めだろうし。
長い長い船旅を経て到着したのは太陽がまぶしい灼熱の大地。
港の近くはまだ涼しかった。
それぞれラクダに乗って、ハイドラート王宮のある内陸部へ移動するとどんどん乾燥していき、過酷さが増してきた。
もちろん慣れない私たちの体調を気遣って途中で休憩を入れてくれたけど、それでも慣れないこの暑さは堪えた。
ヴィックは熱中症予防にターバンみたいな布を手渡されて頭に巻いているけど、慣れない気候のせいか無表情だった。大丈夫だろうか。
ちなみに私は麦わら帽子を持参したのでそれをかぶっている。日焼け対策でなるべく肌を露出しないように気を付けているけど、服を着ていても日焼けしそうな日差しである。
「ヴィック、私が手綱持とうか?」
「大丈夫だよ。リゼットこそ平気?」
「私は体が丈夫だから大丈夫」
この暑さで参っていないかと聞かれたので私は自信満々に答える。
スラム生まれスラム育ちをナメないでいただきたい。
「さっきまで船酔いしていたのに?」
「それは関係ないでしょ」
からかわれたみたいで私はむっとする。
だって仕方ないじゃん。どう頑張っても酔うんだもん。
私がへそ曲げたと思ったのか、私のお腹周りに回している片腕に力を込めて抱き寄せてきたので、知らんぷりしてやる。
本当は一人一ラクダ用意されていたのだが、ヴィックが私と一緒に乗ると言ったので手綱は彼に任せている。
ラクダは見た感じおとなしいし、紐につながれていて操縦者が前にいるから大丈夫だと思ったのだけど、ヴィックは私が落馬ならぬ落ラクダするのを心配しているみたいである。万が一落ちても下が砂だから、打撲で済みそうだけどね。
ジリジリと照りつける太陽の熱が服を突き破って皮膚を焼いている気すらする。
暑い。暑すぎる。
前世で生まれ育った日本の夏で、暑さに慣れているつもりだったけど、暑さのベクトルが違う。正直ナメてた。
あの襲撃者、第23王子が憂いていた、貧しい砂漠の国・ハイドラート王国。
一体どんな国なのだろう。
◇◆◇
砂漠には植物も生き物もないと思い込んでいたけど、実際にはサボテンのような乾燥に強い植物が道中で自生していたし、砂漠に特化した性質を持った生き物もちらっと見かけた。
まぁ人間が砂漠で生きようとするんだから、動物も環境に合わせて進化するってものなんだろう。
船旅に引き続き、ラクダでの旅も終わった。一面の砂漠を抜けたそこには大きな集落があり、その中央に玉ねぎ型の屋根をした王宮みたいな立派な建物が建っていた。
『ようこそ、はるばる参られた』
一族総勢でお出迎えしてくれたのは、お爺さんな年齢の男性だった。
この人がハイドラート国王。
雰囲気は……オスマン帝国のスルタンに近い。イスラムとは全く違うみたいだけど。女性たちは架空のアラビアンナイト的な雰囲気だ。なんとなくベリーダンスの衣装に似ている。デコルテは当然のこと、おへそや腰を大胆に晒している。露出が激しすぎて目のやり場に困る。
ハイドラート王は現在64歳。彼には24人の夫人に、41人の王子と28人の王女がいるらしい。
順に上のほうから自己紹介されたけど、多いよ。全員は覚えられないよ。兄弟だから似てる人もいるし。
一応これでも王宮に住まう王族の数は減ったほうなのだとか。病気で早くに亡くなったり、よそに嫁いでいった王女だったり。
他には次期王位争いで兄弟間で殺し合って共倒れしたとかで、抜けがところどころあるらしい。夫人に関しても奸計を企てたからと処刑された人もいるとか……
──聞きたくなかった、そんな血なまぐさい話。
『彼女はわしの24番目の妻だ。大公殿の奥方と年が近いんじゃないかな』
『ラファ、14歳です』
国王は最近14歳の妻を迎えたとか。お気に入りで片時も手放さないんだと。
えぇ、まだ子供つくるの!? 孫の年齢じゃないの! と心の中で突っ込んだけど、慣れないハイドラート語で『私は16歳なので2歳差ですね』と返すだけにした。
今日のためってわけでなく取引先でもあるので、前々から必修の外国語にハイドラート語が加わったのだが、今日初めて役に立った気がする。
当然ながら付け焼刃なので簡単な会話しかできないが、公妃として最低限の社交はこなしたいと考えている。
『こちらのお部屋をご用意いたしました』
宿泊用に用意された部屋は、なぜかヴィックとは違うフロアの部屋へ通された。
なぜ? 夫婦なんだから同室、もしくは隣の部屋とかにしてくれてもいいのに。もしかして私の生まれを理由に部屋のグレードを下げられたとか?
少しだけ不満に感じながら、私は外につながるベランダの扉を開いた。
どこまでも続いていそうな青い空の下には、王宮の庭があった。多肉植物が植えられた一角にはきらきらと太陽光で乱反射する水場がある。この水はどこから引っ張ってきたのだろう。
私の部屋のある階の真下には日よけの天幕があって、そこはちょうどアラビアンなあずまやみたいなスペースになっているようだ。
ベランダから部屋を一望すると、光を取り込んだ部屋がよく見えた。
赤を基調にした絨毯で彩られたこれまたアラビアンな感じのお部屋だ。調度品の一つ一つが高そうだからなるべく触れないようにしよう。
壁には絨毯が掛けられていた。
見事な模様の絨毯が絵画替わりなのかな。おもむろに裏側を確認しようとひょいと持ち上げようとすると、「リゼット様、お召替えのお時間でございます」と声を掛けられた。
絨毯から手を離すと、私は後ろに控えていたハンナさんに疲れた顔を向けた。
「えー国が違うからそんな着替えなくていいですよー」
「なりません。国が違うからこそしっかり身だしなみを整えなくては」
そんな。
こっちの人絶対に気にしないって。
確かに汗をかいたから着替えたい気持ちはあるけど、そんな毎度毎度着替えていたら時間がもったいないというかなんというか。
しかしキャリアメイドを志すハンナさんには通用しなかった。
あれよあれよと身に着けていたものを脱がされると、冷えた布で私の体を拭ってくれるという親切仕様。あぁ、きもちええ。
こんな暑い国なので普段着用しているドレスは絶対に合わないと想定されていたので、滞在期間中はワンピースドレスや、ブラウスとスカートという軽装で過ごすことになっている。
着替えるのを渋った私だったが、身軽な衣装にお色直ししたことで身体が軽くなった。
その気分のまま、その足で私は早速ハイドラート王宮近くの街にある市場へ出向いた。
「リゼット、これは君のだろう。私はいいから」
自分は自前の麦わら帽子を被るからと日傘をヴィックに持たせると、遠慮された。
装飾が思いっきり婦人用だから恥ずかしがっているのかな。でも今の状況でそんな恥じらいは何の役に立たないよ。
「ヴィックは人一倍色素が薄いから、日差し対策しなきゃなの! 私は手袋もしているし、日焼け止めも塗ったから平気!」
本当はサングラスとかもあればいいけど、そんなもんこの世に存在しないしなぁ。
全身真っ赤に日焼けしてヴィックが苦しむなんて絶対に嫌なので、彼の手にしっかり日傘の柄を持たせた。
ブワッと横から熱風が吹き寄せてきた。あぁ、暑い。汗をかいても、水分だけ蒸発して塩が精製されそう。
今現在私が身につけているのは夏用のワンピースドレスだけど、暑いもんは暑い。
ヴィックも軽装姿だけど額や首筋を流れる汗にうんざりしている様子だ。
滞在中にこの暑さに慣れるだろうか……
出かける前に愛用のなんちゃって日焼け止めを塗ったけど、また塗りなおしたほうがいいかも。
流石に前世の現代日本バリの日焼け止めほどの効果じゃないけど何もないよりはましだろう。
王宮から少し移動した先に、ハイドラート国民たちが住む住宅地が密集している。豪華な王宮とは違って、レンガの茶色一色な街だった。
ここまで案内してくれたのは、王宮の下男として働く召使たちだ。
王族の人は誰一人としてついてこなかった。外国から来たお客様が視察に行きたいと言っているんだから誰かひとり同行してもいいはずなのに誰も来ないんだ……
煉瓦で作られた建物がずらりと並び、その隅には布を被せて日光を遮ったような掘立小屋もある。
市場が開かれていろんな露天が並ぶけど、その品はお世辞にも綺麗とは言えない。質が悪そうなものが並んでいる。生鮮食品は腐っていそうなものもあった。
貧しい国だとは聞いていたけど、これ程とは。
暑いから体力を消耗したくないのだろう。客寄せの声掛けもない。人々はやせ細っていて元気がなかった。
商品があっても彼らにはお金がないんだ。産業の少ないこの国じゃ仕事にもありつけないだろうし。だから民たちは飢えている。
この国の貧しさは、過酷な土地の条件も重なって相当なようである。
これまでの人道支援への感謝を伝えたいとのことだったが、おそらく契約延長もしくは条件の更なる緩和を望んでいるのだろうとヴィックは読んでいた。
その国の第23王子によって一度襲撃を受けたこともあり、何か他にも裏があるんじゃ…と気乗りはしてなさそうだったが、支援しているからには一度ハイドラートを視察したかったというヴィックはその誘いに乗った。
そんなわけで公妃である私も一緒に同行したのだが、忘れていた。私は船酔いするタイプであることを。
「うぅ……」
「大丈夫? もうすぐで港に到着するよ」
呻く私の背中をヴィックが優しく撫でた。うんうん唸る私のそばでずっと看病してくれた旦那様。その優しさに惚れ直したい所だが、今はそれどころじゃない。
吐きたいものがないのに吐きそう。
船に乗っている間ずっとダウンしていた私はようやく到着かと安心したのと同時に、帰りも同じ苦しみを味わなければならないのかと思うと今から憂鬱な気分になる。
今度から船で移動する外交先の場合、お城でお留守番したほうがいいのかな……いや、だめか。同行するのも公妃の務めだろうし。
長い長い船旅を経て到着したのは太陽がまぶしい灼熱の大地。
港の近くはまだ涼しかった。
それぞれラクダに乗って、ハイドラート王宮のある内陸部へ移動するとどんどん乾燥していき、過酷さが増してきた。
もちろん慣れない私たちの体調を気遣って途中で休憩を入れてくれたけど、それでも慣れないこの暑さは堪えた。
ヴィックは熱中症予防にターバンみたいな布を手渡されて頭に巻いているけど、慣れない気候のせいか無表情だった。大丈夫だろうか。
ちなみに私は麦わら帽子を持参したのでそれをかぶっている。日焼け対策でなるべく肌を露出しないように気を付けているけど、服を着ていても日焼けしそうな日差しである。
「ヴィック、私が手綱持とうか?」
「大丈夫だよ。リゼットこそ平気?」
「私は体が丈夫だから大丈夫」
この暑さで参っていないかと聞かれたので私は自信満々に答える。
スラム生まれスラム育ちをナメないでいただきたい。
「さっきまで船酔いしていたのに?」
「それは関係ないでしょ」
からかわれたみたいで私はむっとする。
だって仕方ないじゃん。どう頑張っても酔うんだもん。
私がへそ曲げたと思ったのか、私のお腹周りに回している片腕に力を込めて抱き寄せてきたので、知らんぷりしてやる。
本当は一人一ラクダ用意されていたのだが、ヴィックが私と一緒に乗ると言ったので手綱は彼に任せている。
ラクダは見た感じおとなしいし、紐につながれていて操縦者が前にいるから大丈夫だと思ったのだけど、ヴィックは私が落馬ならぬ落ラクダするのを心配しているみたいである。万が一落ちても下が砂だから、打撲で済みそうだけどね。
ジリジリと照りつける太陽の熱が服を突き破って皮膚を焼いている気すらする。
暑い。暑すぎる。
前世で生まれ育った日本の夏で、暑さに慣れているつもりだったけど、暑さのベクトルが違う。正直ナメてた。
あの襲撃者、第23王子が憂いていた、貧しい砂漠の国・ハイドラート王国。
一体どんな国なのだろう。
◇◆◇
砂漠には植物も生き物もないと思い込んでいたけど、実際にはサボテンのような乾燥に強い植物が道中で自生していたし、砂漠に特化した性質を持った生き物もちらっと見かけた。
まぁ人間が砂漠で生きようとするんだから、動物も環境に合わせて進化するってものなんだろう。
船旅に引き続き、ラクダでの旅も終わった。一面の砂漠を抜けたそこには大きな集落があり、その中央に玉ねぎ型の屋根をした王宮みたいな立派な建物が建っていた。
『ようこそ、はるばる参られた』
一族総勢でお出迎えしてくれたのは、お爺さんな年齢の男性だった。
この人がハイドラート国王。
雰囲気は……オスマン帝国のスルタンに近い。イスラムとは全く違うみたいだけど。女性たちは架空のアラビアンナイト的な雰囲気だ。なんとなくベリーダンスの衣装に似ている。デコルテは当然のこと、おへそや腰を大胆に晒している。露出が激しすぎて目のやり場に困る。
ハイドラート王は現在64歳。彼には24人の夫人に、41人の王子と28人の王女がいるらしい。
順に上のほうから自己紹介されたけど、多いよ。全員は覚えられないよ。兄弟だから似てる人もいるし。
一応これでも王宮に住まう王族の数は減ったほうなのだとか。病気で早くに亡くなったり、よそに嫁いでいった王女だったり。
他には次期王位争いで兄弟間で殺し合って共倒れしたとかで、抜けがところどころあるらしい。夫人に関しても奸計を企てたからと処刑された人もいるとか……
──聞きたくなかった、そんな血なまぐさい話。
『彼女はわしの24番目の妻だ。大公殿の奥方と年が近いんじゃないかな』
『ラファ、14歳です』
国王は最近14歳の妻を迎えたとか。お気に入りで片時も手放さないんだと。
えぇ、まだ子供つくるの!? 孫の年齢じゃないの! と心の中で突っ込んだけど、慣れないハイドラート語で『私は16歳なので2歳差ですね』と返すだけにした。
今日のためってわけでなく取引先でもあるので、前々から必修の外国語にハイドラート語が加わったのだが、今日初めて役に立った気がする。
当然ながら付け焼刃なので簡単な会話しかできないが、公妃として最低限の社交はこなしたいと考えている。
『こちらのお部屋をご用意いたしました』
宿泊用に用意された部屋は、なぜかヴィックとは違うフロアの部屋へ通された。
なぜ? 夫婦なんだから同室、もしくは隣の部屋とかにしてくれてもいいのに。もしかして私の生まれを理由に部屋のグレードを下げられたとか?
少しだけ不満に感じながら、私は外につながるベランダの扉を開いた。
どこまでも続いていそうな青い空の下には、王宮の庭があった。多肉植物が植えられた一角にはきらきらと太陽光で乱反射する水場がある。この水はどこから引っ張ってきたのだろう。
私の部屋のある階の真下には日よけの天幕があって、そこはちょうどアラビアンなあずまやみたいなスペースになっているようだ。
ベランダから部屋を一望すると、光を取り込んだ部屋がよく見えた。
赤を基調にした絨毯で彩られたこれまたアラビアンな感じのお部屋だ。調度品の一つ一つが高そうだからなるべく触れないようにしよう。
壁には絨毯が掛けられていた。
見事な模様の絨毯が絵画替わりなのかな。おもむろに裏側を確認しようとひょいと持ち上げようとすると、「リゼット様、お召替えのお時間でございます」と声を掛けられた。
絨毯から手を離すと、私は後ろに控えていたハンナさんに疲れた顔を向けた。
「えー国が違うからそんな着替えなくていいですよー」
「なりません。国が違うからこそしっかり身だしなみを整えなくては」
そんな。
こっちの人絶対に気にしないって。
確かに汗をかいたから着替えたい気持ちはあるけど、そんな毎度毎度着替えていたら時間がもったいないというかなんというか。
しかしキャリアメイドを志すハンナさんには通用しなかった。
あれよあれよと身に着けていたものを脱がされると、冷えた布で私の体を拭ってくれるという親切仕様。あぁ、きもちええ。
こんな暑い国なので普段着用しているドレスは絶対に合わないと想定されていたので、滞在期間中はワンピースドレスや、ブラウスとスカートという軽装で過ごすことになっている。
着替えるのを渋った私だったが、身軽な衣装にお色直ししたことで身体が軽くなった。
その気分のまま、その足で私は早速ハイドラート王宮近くの街にある市場へ出向いた。
「リゼット、これは君のだろう。私はいいから」
自分は自前の麦わら帽子を被るからと日傘をヴィックに持たせると、遠慮された。
装飾が思いっきり婦人用だから恥ずかしがっているのかな。でも今の状況でそんな恥じらいは何の役に立たないよ。
「ヴィックは人一倍色素が薄いから、日差し対策しなきゃなの! 私は手袋もしているし、日焼け止めも塗ったから平気!」
本当はサングラスとかもあればいいけど、そんなもんこの世に存在しないしなぁ。
全身真っ赤に日焼けしてヴィックが苦しむなんて絶対に嫌なので、彼の手にしっかり日傘の柄を持たせた。
ブワッと横から熱風が吹き寄せてきた。あぁ、暑い。汗をかいても、水分だけ蒸発して塩が精製されそう。
今現在私が身につけているのは夏用のワンピースドレスだけど、暑いもんは暑い。
ヴィックも軽装姿だけど額や首筋を流れる汗にうんざりしている様子だ。
滞在中にこの暑さに慣れるだろうか……
出かける前に愛用のなんちゃって日焼け止めを塗ったけど、また塗りなおしたほうがいいかも。
流石に前世の現代日本バリの日焼け止めほどの効果じゃないけど何もないよりはましだろう。
王宮から少し移動した先に、ハイドラート国民たちが住む住宅地が密集している。豪華な王宮とは違って、レンガの茶色一色な街だった。
ここまで案内してくれたのは、王宮の下男として働く召使たちだ。
王族の人は誰一人としてついてこなかった。外国から来たお客様が視察に行きたいと言っているんだから誰かひとり同行してもいいはずなのに誰も来ないんだ……
煉瓦で作られた建物がずらりと並び、その隅には布を被せて日光を遮ったような掘立小屋もある。
市場が開かれていろんな露天が並ぶけど、その品はお世辞にも綺麗とは言えない。質が悪そうなものが並んでいる。生鮮食品は腐っていそうなものもあった。
貧しい国だとは聞いていたけど、これ程とは。
暑いから体力を消耗したくないのだろう。客寄せの声掛けもない。人々はやせ細っていて元気がなかった。
商品があっても彼らにはお金がないんだ。産業の少ないこの国じゃ仕事にもありつけないだろうし。だから民たちは飢えている。
この国の貧しさは、過酷な土地の条件も重なって相当なようである。
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