生き抜くのに必死なんです。〜パンがないならカエルを食べたらいいじゃない〜

スズキアカネ

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公妃になるなんて無茶難題過ぎます。

あなただけの花嫁になりますわ。(※R18)

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 ヴィックのお母さんの形見のティアラと歴代の公妃がつけていたブラックオパールのネックレス。これらはヴィックの部屋で大事に保管していたそうだ。鍵のかかった引き出しに厳重に保管されていたものを取り出したときは何事かと思った。
 そんな大切なものを私の首元、そして頭上に装着され、私は落ち着かなかった。本来であれば挙式のときに初めて身につけるものなのにいいのかな…と困惑していると、ヴィックは泣き腫らした目元を緩めて微笑んでいた。

「私が愛しいと思えた女性は君だけなんだ。絶望のときに厳しいことを言いつつも寄り添ってくれたのは君だけだ」

 その言葉に私はなんだか泣きたい気分になった。
 ヴィックは友好関係だったはずの相手にそっぽ向かれて孤軍奮闘していた時期があったんだ。婚約話が持ち上がった相手も知らんぷりして……それが政治の世界と言われたらあれだけど、当時の彼はまだ子ども。国も両親も奪われ、世界中が敵になったような状況に置かれてものすごく絶望したに違いない。それなのに腐らず目的へ一直線に行けたのはすごい。

「リゼットがいなければ今の私はいない。擦り切れたワンピースを着て泥だらけになりながらも強く生きていた君が何よりも美しい存在なんだ。私の希望なんだよ、リゼット」

 そんな、大げさな、と言いたくなったけど、ヴィックの場合ガチでそんなこと思ってそうだから否定できない。
 ヴィックの言葉に嘘はない。彼は心から私を想ってくれているってわかる。

「神ではなく、私を命懸けで守ってくれた我が両親に誓おう。リゼット、君を一生大切にすると」

 彼に手を握られ、薄水色の美しい瞳に熱く見つめられる。私の高鳴る胸は期待していた。次に言われる言葉を私は今か今かと待ちわびていた。

「愛してるよリゼット。私と結婚してくれるね? 私の妻となって、ずっと私の隣にいてほしい」

 私はすぐに頷いた。最初にプロポーズされたときは驚きと戸惑いばかりだったのに、二度目のプロポーズは素直にうなずけた。
 見届け人も誰もいない二人きりの部屋で結婚の誓いをした。
 今ならはっきり言える。私はヴィックを愛している。大公ではなく、ヴィクトルという一人の男性を心から愛していると断言できる。私は彼の手をとって生きていくと心に誓った。

 降ってきた彼の唇を受け入れ、私達は何度も口づけを交わした。口づけを交わしているだけなのに私の身体は待ちきれないと熱くなっていく。そっと唇が離れた瞬間、閉じていた瞳を開くと、ヴィックと目が合った。私は縋るような目をしていたと思う。もっとキスがほしいと背伸びをして彼の唇に自分から吸い付くと、ヴィックが私をひょいと抱き上げた。
 それが合図だった。キスをしながらベッドまで運ばれた私はヴィックにドレスを脱がせてと目で訴えた。彼は何も言わずに黙って私のドレスの編み上げ紐に手をかける。
 なんとかお互い着ているものを脱ぎ去ると、ヴィックとキスをしながらシーツの波に溺れた。





「んっ…あっ…あぁ」

 ヴィックは私の感じる場所は網羅していると言わんばかりに姑息的に攻めてきた。私はされるがまま喘ぎ、ヴィックによって身も心もとろとろに溶かされていく。達したばかりなのに再度与えられる快感に震えていた。

「ヴィック…」

 隙間なくピッタリ抱き合いたい。一方的に与えられるだけじゃ嫌だ。早く抱いてほしい。ヴィックのものになりたい。私はよほど物欲しそうな顔をしていたのだろう。ヴィックはぐっと何かを我慢するかのように息を止めていた。

「リゼット、あぁ、ようやくだ」

 私の足の間に割り込んできたヴィックの昂りは天を向いて反っており、ヴィックの美麗な顔立ちでは想像できない生々しさとその大きさに私は身が竦みそうになった。以前未遂になったときは夜中で暗かったし、布団をかぶっていたので見えなかったのだ。裂けたりしないだろうか……
 でもここで止めたりするのはヴィックに失礼なので、私はドキドキしつつ彼を待った。濡れた裂陰を撫でるようにヴィックが腰を動かして昂りをこすりつけてくると、その熱さと存在感に私の身体がびびびっと体に電気が走ったように震えた。
 おかしなものだ。私の心は破瓜の瞬間に怯えているのに、体は欲しがっているのだ。現にヒクヒクと秘部が蠢いている。ヴィックの視線がそこに向いているような気がしてとても恥ずかしいが、なんとか耐えた。
 ドクンドクンとお互いの心臓の音が伝わってくるようだった。ピタリと入り口に切っ先がくっつけられた。熱くて火傷してしまいそうな感覚に私は息を呑む。

「愛してる、愛してるよ、リゼット」

 キスをして私の口を塞いだヴィックはそのままぐっと腰を押し付けた。今回は外部の妨害なんてない。ヴィックは止めることなくゆっくりと侵入してきた。

「ひぃ…! い、いたい……」

 ぐぐぐっと無理やり押し込まれる感覚。身体を引き裂かれるような痛み。今まで愛撫を繰り返してきて慣らされたとはいえ、初めて男性を受けれたのだ。流石に破瓜の痛みに呻いた。

「ごめんね、我慢して…」

 彼は痛みで涙ぐむ私の顔にたくさんキスをして、痛みで固まる私の体をほぐすために繋がっている部分の近くを指で優しく撫ぜてきた。

「ひっ、あ…ん!」

 そこに触れられると、私の声は甘えるような声音に変わった。
 指の腹でくすぐるように撫でられ、意識はそちらに向く。小さく喘ぐ私の反応を見たヴィックはゆっくり腰を動かし始めた。
 必要以上に痛みに苦しまないように気遣った優しい抱き方だった。私は痛みと快感と苦しさで頭が一杯でヴィックのことを気遣ってあげられなかったが、彼が私を大切にしてくれていることはものすごく伝わった。

 ヴィックが私の中にいる。
 こんなに熱い、こんなに苦しいのに私は嬉しくて仕方がなかった。
 彼と一つになってしまったらどうなるだろうと不安もあった。
 予想通り私はもうヴィックと離れることはできなさそうだ。だってこんなにも幸せなんだもの。

「…っ!」
「あ…」

 ヴィックがブルッと震えながら小さくうめき声を漏らすと、私の胎内で熱が爆ぜた。息を切らしながら、私を見下ろす彼の瞳は私が愛おしいと訴えてきた。私は彼の愛に包まれて幸せでたまらなかった。
 好きな人と結ばれることがこんなにも幸せなことなんて、彼と出会わなければ知ることすらなかったかもしれない。
 
「リゼット、愛している」
「うん、私も愛してるよ、ヴィック」

 戯れるように唇を重ね合わせていると、私の身体の中に収まったままのヴィックの一部がまた硬度を増した。…嘘でしょ?
 処女相手にちょっと無茶しすぎじゃないでしょうか。腰をグイグイと押し付けて緩やかに動き始めたヴィックの肩を押して止めると、私は彼をジロッと軽く睨んだ。

「もう、ヴィック…」
「君が欲しくてたまらないんだ。許してくれ」

 ヴィックはまた泣いていた。だけど今度は嬉しそうに泣いていたから、私は笑ってしまった。幸せそうに涙を流す彼が可愛くて目元にキスをしてあげる。
 私がヴィックの涙をいつでも拭ってあげる。私は貴方の伴侶になるんだもの。

 吐精されたものが潤滑油となって動きやすくなったのか、先程よりも動きが激しくなった。打ち付けられて肌がぶつかる音と濡れた音が部屋に響き渡る。私はそれに声を漏らす。ただ揺さぶられて彼の欲を受け止めていた。
 ヴィックは頬を赤らめ、眉間にシワを寄せて気持ち良さそうにしている。だけどひとりよがりな行為はしない。私の反応を見つつ、時折キスをして、私が少しでも気持ちよくなるために触れてくれる。私はそれだけで嬉しかった。
 やっぱり彼に求められたら拒絶できない。正直身体はきついけどそれでも受け入れてあげたい。だって嬉しいのだもの。彼が愛おしくてたまらないの。ヴィックの熱をそばで感じていたい。彼の背中に手を回して彼を感じていた。

「ん、あっ……」
「リゼット…!」

 また彼の熱が私の胎内に広がった。
 熱い。彼の一部が私の中でいっぱいになって、そのまま一つになって消えてしまいそうだ。ヴィックは私の腰を両手で掴んでグッグッと腰を押し付ける。私の胎内に一滴も残さずに精を出しきると、繋がったまま私の首筋にキスを落とし、あちこちに赤い所有痕をたくさん残した。

「…喉乾いていない? 水を飲んだほうがいい」

 私が声を出しっぱなしなのを心配してかヴィックがベッド脇の水差しを手に取ろうと、一旦離れようと腰を浮かせようとしたので、私は彼の腰に足を巻きつけて拘束した。ヴィックはそれに驚いた顔をしていた。
 離れないで。もっとくっついていたい。

「…リゼット」
「やだ、離れたら駄目」

 別にお代わりを求めているわけじゃないのだ。くっついていたいだけなのだ。
 だけどヴィックは別の意味で受け取ったようで、私の中で再び猛り始めたそれを擦り付けるように動かし始めた。

「あっ…違うの、そうじゃ…」
「私だって本当は加減したいんだよ? リゼットが煽るのが悪い」

 私のせいにしながらヴィックは再び獣に変貌した。初体験のはずなのに私は甘い喘ぎ声をあげる。私の反応を見た彼は小さく笑った。横向きになって私の片足を持ち上げるとゆっくり柔らかい動き方で愛してきた。私の良いところを探るように膣内を撹拌された私は、痛みとは別に湧き上がってきた快感を拾い上げて溺れていった。

「…感じている顔がすごくかわいいね、リゼット」
「んぅ! …ひぁっあぁ、うっ…」

 ヴィックの言葉に私は返事を返せなかった。気持ちよくて幸せで、じんじん痛んで、胸が苦しくて愛おしさでいっぱいというぐちゃぐちゃな感情で頭がいっぱいだったのだ。
 生理的に流れた涙で濡れた顔をヴィックがキスで拭ってくれる。先程とは逆だ。その後も私は彼によってただただ喘がされ続けたのである。

 このまま溺れて抜け出せなくなってもいい。彼の腕の中でいつまでも愛されていたい。
 ──その日、私は本当の意味でのヴィックのお嫁さんになったのである。
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