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公妃になるなんて無茶難題過ぎます。
社交界の流儀、見せていただきますわ!
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──さぁ、何が来る。
飲み物を引っ掛けるか、怪しい男に襲わせるか。それとも出てお行きなさいとビンタしてくるか!?
何でも来い返り討ちにしてやると私が意気込んでいたのだが、彼女たちは嫌味を言うだけだった。育ちの悪さが見えるとか、ヴィックを色仕掛けしたの? とかそういう感じの悪口をオブラートに包んだ感じのね。……多分普通の女の子なら傷つくだろうし、泣いてしまうだろうけど、アクの強い令嬢たちに先に出会ってしまった私には毒が弱すぎた。
私の反応が思ったようなものじゃないことに令嬢たちは気づいたのか、徐々にその表情には疑問が浮かびはじめていた。
私はふふ、と笑いを漏らしてしまった。覚悟していたよりは軽い、って。
私はスラム生まれ故に差別と共に生きていた。侮蔑や軽蔑の視線だけならまだしも、口汚く罵られたり、理不尽な暴力に晒されたこともある。それと比べたら…
「…何がおかしいのかしら?」
私が笑ったことを不快に思った令嬢の1人が眉間にシワを寄せていた。
「いえ、思っていたより皆様お優しいなと思って──…だって」
──世の中にはティーカップを投げて怪我をさせたのに謝罪しないお嬢様とか、いきなり扇子で叩いてこようとしたり、ヒステリーを起こして物を破壊したり、庭のお花を抜いて絨毯の上で踏みつけたり、人のドレスを破きにくるお嬢様たちばかりと思っていたのにここのお嬢様方は皆さん、ただ牽制するだけで優しい──
私が笑った理由を教えてあげると、私を囲っていた令嬢たちの目がテンになった。
「私はてっきり飲み物をかけられたり、嵌められたり、とんでもない罵倒が飛んでくるかと思いましたけど、言葉遣いも態度もお上品だし安心しました」
こんくらいなら全然余裕だ。なんとか我慢できるしあしらえそう。ずっと気張っていたけど、私は少し肩の力を抜いた。
あの令嬢が異常だったのかな。最初に刺激が強いタイプを相手にしていたから自然と抗体ができていたみたいだ。なーんだ。
「まぁ…どこのどなたなのかしら…」
「そうね…それは一体どんな令嬢なのかしら…?」
扇子で顔半分を隠して表情を取り繕っているが、動揺を隠しきれていないお嬢様方。さっきまで高慢に笑っていたのに今では全くの別人じゃないか、変わりようが面白いな。
「彼の婚約者候補の1人だったという令嬢と、それとは別の取引先関係の令嬢です。出会う貴族女性みんな過激な行動する人ばかりだったら怖いなぁってパーティ参加するのが不安だったんです」
いくら社交が必要でも、モンスターみたいな令嬢複数相手にしていたら私の気が滅入ってしまいそうだったので気分が乗らなかったけど、この会場のお嬢様たちは意地悪を言っても常識を持ち合わせている方で良かった。
「……きちんとしたレディならそのようなこと致しませんわよ…一緒にしないでほしいですわ」
さっきまで私を虐めようと嫌味を飛ばしていた令嬢はなんだか萎んでいた。アクの強いタイプと一緒にしないでほしいと自分の行いを恥じたのだろうか。
──そこでちょうど一曲終わった。踊り終わったヴィックが戻ってくるかなとダンスフロアを見たら、引き返すところで別の令嬢に捕まっていた。モテる男は大変である。
「そ、それで…貴方はどんな生活をしていましたの? ヴィクトル様と出会う前まで」
話を変えようとしたのか、令嬢の1人が私の生い立ちを尋ねてきた。
「皆さんご存知のとおり、私はスラムの生まれです。前の領主様がお亡くなりになった途端税制が悪化して更に貧しい生活を強いられるようになりました」
サザランドのことなら他国の人でも知っているんじゃないだろうか。あの国のスキャンダルは有名だからな。
「過剰な税金取り立てに加えて物価高騰で領地は荒れて大変でしたが、私は家族仲が良かったのと、周りの人に恵まれていたのでなんとか生きていけました。親兄弟の稼ぎはほぼ税金などで消えてしまったので、食料は私が森で狩ったり、畑で育てたりして賄っていました」
「食料? 狩猟をするの?」
「大げさなものじゃありませんけど…あちらに潜伏していたヴィクトル殿下に原始的な狩りのやり方をお教えしたこともありますよ」
お嬢様には少々刺激の強い話だろうに、私のスラムで生きた日々の話をすると彼女たちの眼差しは軽蔑から同情に変わっていた。別に同情してほしいわけじゃなかったんだけどまぁいいや。
「野うさぎ、鴨、猪とあとはカエルとか」
「まぁ、カエルですって?」
狩ってきた生き物を教えているとカエルに過剰反応された。
「カエルは高タンパク低カロリーでして…えぇと美容に向いている食材なんです。身体の活動のために必要な栄養素はあるけれど、脂肪になりにくいので体型維持にはピッタリの食材ですね」
お嬢様方に囲まれていて気づかなかったけど、壁の花状態の私達の周りを貴族男性がチョロチョロしていた。
「あの、お嬢様方をダンスにお誘いに来たのでは?」
お誘いしたそうに見ていますよ? と彼女たちに教えるも、彼女らはちらりとこちらを伺う男性の顔を一瞥してすぐに興味なさそうにしていた。
「いいえ、いいの」
「わたくしをお誘いしたいわけじゃなさそうですし…」
知らんぷりを決め込むつもりらしい。
えぇ、でもこっち見てるよ。一度くらい踊ったら? 貴族は踊るのが大好きでしょ?
「肌がおきれいね、どんな美容法を?」
お嬢様方の興味は私に注がれているらしい。肌のことを指摘されたので、私は使用人任せにしている肌ケアを思い出す。
「普通に化粧水と、美容クリームと…それと毎晩オイルマッサージをしてもらっています」
「そのオイルはどこの商会のものなの? 気になるわ」
気になるわ、と言われてもそのへんで流通しているものじゃないからなぁ。
「スラムで暮らしていたときに知り合った流れの商人が今はうちのお抱え商人になっているんですが、彼は異国を渡り歩いているので他にはない商品を持ち込んでくれるんです。今日のオイルは東南の国に咲く植物から抽出されるもので…」
この説明は私よりもメイドさんたちのほうが上手かもしれない。私はされるがままマッサージ受けているだけでそんなに詳しくないんだ。とりあえずこっちの方の国の植物にはないもので作られているので入手は難しいとだけ…
「あの、レディ…」
お嬢様方が無視するから焦れたらしい貴族男性が恐る恐る声をかけてきた。私とそこまで年が変わらなそうな青年は緊張の眼差しで令嬢の群れに声をかけると、意を決した様子で口を開いた。
「宜しければ僕と」
「リゼット待たせたね」
青年と私達の間にぬっと割り込んできたのは額に汗をにじませたヴィックであった。私が彼の登場の仕方に目を丸くしていると、ヴィックは何事もなかったかのように私の周りに居た令嬢一人ひとりに笑いかけた。
美形パワーに堕ちた彼女たちは頬を赤らめてヴィックに見惚れている。
「リゼットのお相手をありがとうございました。…何もなかった?」
「みなさんが気にかけてくださったから」
いじめられるかと思えば、どんどん違う方に話が進んで最後の方はただ雑談してただけだった。でも立派に社交できていたと思うよ!
私が元気そうなのを見て安心したのかホッとした彼は私を自然な動作で抱き寄せると、優しく微笑んだ。
「私どもはここで失礼します。婚約者が疲れているようなので」
彼のお暇発言に私は目を丸くした。
「え? まだ大丈夫だけど……パーティ参加は顔を広める目的だからって言っていたのにもう?」
まだまだ序の口だろう。私の修行は終わっていないぞ。
それにヴィックの後ろにはまだダンス希望待機のお嬢さん方がいるのにお暇したら壁の花が増えちゃうぞ?
「いいから行くよ」
私の腰を抱いて彼は少しばかり強引に歩き始めた。
「ねぇ、ヴィックどうしたの」
「男が虎視眈々と君を見てる」
……それは仕方ないだろう。身分違いの私達は今日一番目立っているからね。それをヴィックもわかっているはずなのに急にどうした。
「君の魅力を一番よくわかっているのは私だって自負はある。周りの男にそれを見せつけて、私のものなのだと知らしめるのはとても気持ちいいが、だからといって君が男に笑いかけたり、君にダンスを誘おうとする不埒ものを見逃せるかと言えば話が別なんだ」
「…ヴィック、お酒でも飲んだの?」
私の問いかけにお酒は飲んでないと回答があった。素面ですか。
つまり私に向けられる好奇の視線を、下心ありの目線だと思い込んで1人で嫉妬してパニクっているってわけかな? 相変わらず恋は盲目状態なんだねヴィックは。
全部ヴィックの気のせいだって。みんなどうせ“身分の低い女だ”って珍しく思っているだけだよ。
飲み物を引っ掛けるか、怪しい男に襲わせるか。それとも出てお行きなさいとビンタしてくるか!?
何でも来い返り討ちにしてやると私が意気込んでいたのだが、彼女たちは嫌味を言うだけだった。育ちの悪さが見えるとか、ヴィックを色仕掛けしたの? とかそういう感じの悪口をオブラートに包んだ感じのね。……多分普通の女の子なら傷つくだろうし、泣いてしまうだろうけど、アクの強い令嬢たちに先に出会ってしまった私には毒が弱すぎた。
私の反応が思ったようなものじゃないことに令嬢たちは気づいたのか、徐々にその表情には疑問が浮かびはじめていた。
私はふふ、と笑いを漏らしてしまった。覚悟していたよりは軽い、って。
私はスラム生まれ故に差別と共に生きていた。侮蔑や軽蔑の視線だけならまだしも、口汚く罵られたり、理不尽な暴力に晒されたこともある。それと比べたら…
「…何がおかしいのかしら?」
私が笑ったことを不快に思った令嬢の1人が眉間にシワを寄せていた。
「いえ、思っていたより皆様お優しいなと思って──…だって」
──世の中にはティーカップを投げて怪我をさせたのに謝罪しないお嬢様とか、いきなり扇子で叩いてこようとしたり、ヒステリーを起こして物を破壊したり、庭のお花を抜いて絨毯の上で踏みつけたり、人のドレスを破きにくるお嬢様たちばかりと思っていたのにここのお嬢様方は皆さん、ただ牽制するだけで優しい──
私が笑った理由を教えてあげると、私を囲っていた令嬢たちの目がテンになった。
「私はてっきり飲み物をかけられたり、嵌められたり、とんでもない罵倒が飛んでくるかと思いましたけど、言葉遣いも態度もお上品だし安心しました」
こんくらいなら全然余裕だ。なんとか我慢できるしあしらえそう。ずっと気張っていたけど、私は少し肩の力を抜いた。
あの令嬢が異常だったのかな。最初に刺激が強いタイプを相手にしていたから自然と抗体ができていたみたいだ。なーんだ。
「まぁ…どこのどなたなのかしら…」
「そうね…それは一体どんな令嬢なのかしら…?」
扇子で顔半分を隠して表情を取り繕っているが、動揺を隠しきれていないお嬢様方。さっきまで高慢に笑っていたのに今では全くの別人じゃないか、変わりようが面白いな。
「彼の婚約者候補の1人だったという令嬢と、それとは別の取引先関係の令嬢です。出会う貴族女性みんな過激な行動する人ばかりだったら怖いなぁってパーティ参加するのが不安だったんです」
いくら社交が必要でも、モンスターみたいな令嬢複数相手にしていたら私の気が滅入ってしまいそうだったので気分が乗らなかったけど、この会場のお嬢様たちは意地悪を言っても常識を持ち合わせている方で良かった。
「……きちんとしたレディならそのようなこと致しませんわよ…一緒にしないでほしいですわ」
さっきまで私を虐めようと嫌味を飛ばしていた令嬢はなんだか萎んでいた。アクの強いタイプと一緒にしないでほしいと自分の行いを恥じたのだろうか。
──そこでちょうど一曲終わった。踊り終わったヴィックが戻ってくるかなとダンスフロアを見たら、引き返すところで別の令嬢に捕まっていた。モテる男は大変である。
「そ、それで…貴方はどんな生活をしていましたの? ヴィクトル様と出会う前まで」
話を変えようとしたのか、令嬢の1人が私の生い立ちを尋ねてきた。
「皆さんご存知のとおり、私はスラムの生まれです。前の領主様がお亡くなりになった途端税制が悪化して更に貧しい生活を強いられるようになりました」
サザランドのことなら他国の人でも知っているんじゃないだろうか。あの国のスキャンダルは有名だからな。
「過剰な税金取り立てに加えて物価高騰で領地は荒れて大変でしたが、私は家族仲が良かったのと、周りの人に恵まれていたのでなんとか生きていけました。親兄弟の稼ぎはほぼ税金などで消えてしまったので、食料は私が森で狩ったり、畑で育てたりして賄っていました」
「食料? 狩猟をするの?」
「大げさなものじゃありませんけど…あちらに潜伏していたヴィクトル殿下に原始的な狩りのやり方をお教えしたこともありますよ」
お嬢様には少々刺激の強い話だろうに、私のスラムで生きた日々の話をすると彼女たちの眼差しは軽蔑から同情に変わっていた。別に同情してほしいわけじゃなかったんだけどまぁいいや。
「野うさぎ、鴨、猪とあとはカエルとか」
「まぁ、カエルですって?」
狩ってきた生き物を教えているとカエルに過剰反応された。
「カエルは高タンパク低カロリーでして…えぇと美容に向いている食材なんです。身体の活動のために必要な栄養素はあるけれど、脂肪になりにくいので体型維持にはピッタリの食材ですね」
お嬢様方に囲まれていて気づかなかったけど、壁の花状態の私達の周りを貴族男性がチョロチョロしていた。
「あの、お嬢様方をダンスにお誘いに来たのでは?」
お誘いしたそうに見ていますよ? と彼女たちに教えるも、彼女らはちらりとこちらを伺う男性の顔を一瞥してすぐに興味なさそうにしていた。
「いいえ、いいの」
「わたくしをお誘いしたいわけじゃなさそうですし…」
知らんぷりを決め込むつもりらしい。
えぇ、でもこっち見てるよ。一度くらい踊ったら? 貴族は踊るのが大好きでしょ?
「肌がおきれいね、どんな美容法を?」
お嬢様方の興味は私に注がれているらしい。肌のことを指摘されたので、私は使用人任せにしている肌ケアを思い出す。
「普通に化粧水と、美容クリームと…それと毎晩オイルマッサージをしてもらっています」
「そのオイルはどこの商会のものなの? 気になるわ」
気になるわ、と言われてもそのへんで流通しているものじゃないからなぁ。
「スラムで暮らしていたときに知り合った流れの商人が今はうちのお抱え商人になっているんですが、彼は異国を渡り歩いているので他にはない商品を持ち込んでくれるんです。今日のオイルは東南の国に咲く植物から抽出されるもので…」
この説明は私よりもメイドさんたちのほうが上手かもしれない。私はされるがままマッサージ受けているだけでそんなに詳しくないんだ。とりあえずこっちの方の国の植物にはないもので作られているので入手は難しいとだけ…
「あの、レディ…」
お嬢様方が無視するから焦れたらしい貴族男性が恐る恐る声をかけてきた。私とそこまで年が変わらなそうな青年は緊張の眼差しで令嬢の群れに声をかけると、意を決した様子で口を開いた。
「宜しければ僕と」
「リゼット待たせたね」
青年と私達の間にぬっと割り込んできたのは額に汗をにじませたヴィックであった。私が彼の登場の仕方に目を丸くしていると、ヴィックは何事もなかったかのように私の周りに居た令嬢一人ひとりに笑いかけた。
美形パワーに堕ちた彼女たちは頬を赤らめてヴィックに見惚れている。
「リゼットのお相手をありがとうございました。…何もなかった?」
「みなさんが気にかけてくださったから」
いじめられるかと思えば、どんどん違う方に話が進んで最後の方はただ雑談してただけだった。でも立派に社交できていたと思うよ!
私が元気そうなのを見て安心したのかホッとした彼は私を自然な動作で抱き寄せると、優しく微笑んだ。
「私どもはここで失礼します。婚約者が疲れているようなので」
彼のお暇発言に私は目を丸くした。
「え? まだ大丈夫だけど……パーティ参加は顔を広める目的だからって言っていたのにもう?」
まだまだ序の口だろう。私の修行は終わっていないぞ。
それにヴィックの後ろにはまだダンス希望待機のお嬢さん方がいるのにお暇したら壁の花が増えちゃうぞ?
「いいから行くよ」
私の腰を抱いて彼は少しばかり強引に歩き始めた。
「ねぇ、ヴィックどうしたの」
「男が虎視眈々と君を見てる」
……それは仕方ないだろう。身分違いの私達は今日一番目立っているからね。それをヴィックもわかっているはずなのに急にどうした。
「君の魅力を一番よくわかっているのは私だって自負はある。周りの男にそれを見せつけて、私のものなのだと知らしめるのはとても気持ちいいが、だからといって君が男に笑いかけたり、君にダンスを誘おうとする不埒ものを見逃せるかと言えば話が別なんだ」
「…ヴィック、お酒でも飲んだの?」
私の問いかけにお酒は飲んでないと回答があった。素面ですか。
つまり私に向けられる好奇の視線を、下心ありの目線だと思い込んで1人で嫉妬してパニクっているってわけかな? 相変わらず恋は盲目状態なんだねヴィックは。
全部ヴィックの気のせいだって。みんなどうせ“身分の低い女だ”って珍しく思っているだけだよ。
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