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第九話 魔法適正と罪悪感

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この世界の魔法文明は俺が読んでいたのとちょっとだけ違う。俺が読んでいた異世界魔法は魔力があればあとは想像すれば発動できるものばかりだった。
だがこの世界で魔法を発動するには魔法適正が必要で、適正があってもさらに属性適正というのが必要になる。
属性とはお馴染みの「火」「水」「風」「雷」「土」「光」「闇」「無属性」の8つで、火の魔法を使うには火の適正が必要になる。
ちなみに身体強化は無属性な!!
このいずれかの適正を持ち、さらに発動したい魔法の呪文と個人の持つ魔力を合わせてようやく発動できる。
だがこの世界の人々には魔法適正を持っている者は少なく複数の適正を持っている者など天文学的な確率になる。
ちなみに、今回トオル・サカウエが発動した「リカバリー」は無属性魔法に分類される。この魔法がなぜ伝説的な扱いを受けるのか?それは無属性魔法は別名個人魔法と呼ばれるからだ。無属性魔法以外の魔法は魔法適正と呪文、それと魔法発動に必要な魔力があれば使える。しかし無属性魔法は大体の人が無属性魔法の適正一つに魔法一つと決まっているらしい、例えば無属性魔法の適正を持っている人間がいて「リカバリー」を使えたとする。その人間は「リカバリー」は使えても同じ無属性魔法である「身体強化」は使えない。それがこの世界の常識だ。
稀に複数の無属性魔法を使える人物もいるらしいが俺は会ったことがない。
この事から彼、トオル・サカウエが異質であることが分かる。
しかも彼は名前から分かる通り俺と同郷日本から来たと思われ、転生者の俺とは違く転移者の可能性がある。
彼は俺の代わりに救世主になるべくこの世界に呼ばれた
ある日突然なんのまいぶれもなく見知らぬ土地に飛ばされた。家族や友人に何も言えないまま・・そして知識も土地勘もないこの世界でいきなり始まる戦いの日々・・
それはもしかしたら俺が投げ出さなければ彼がする必要のなかった日々

「はぁ」

今日は晴天、日差しが強いが心地よい風が吹いていい感じ♪
だが俺の心はどんより曇っていた

『どうされた主?』
「いや、神様との話し合いあの時は自分が痛い思いや面倒くさいことに巻き込まれたくなかったかは咄嗟にお願いしたんだけど、それで巻き込まれ迷惑をかけた相手がいるって思うと申し訳ないやら彼に丸投げした自分が情けないやらといろんな感情が渦巻くもんなんだよ」
『でしたら力を開放しますか?主が実力を示せば彼、トオル・サカウエの負担も幾らか減るのではないか?』
「それは・・・」
『それは?』
「無しで」
「・・・主?」
「いや、たしかに罪悪感はあるよ?でもさ?クラリスに、聞いた話だとなんか既に王道異世界ハーレムを形成してるじゃん?ほら、Win-Winだよね?俺は楽ができる!!むこうは異世界ハーレムで美少女うはうは!!ね!!フェイもそう思うだろ?」
『・・・たしかに美味しい思いはしているかもしれませんな』
「だろ!!フェイもそう思うよな!!」
『しかし!!』
「へ?」
異世界ハーレムウハウハそれは本来こちらの世界に来る必要が無く、さらに普通ならする必要のなかった戦い労力の対価であり、主の代わりの代償ではないはずですな』
「うっ」
『つまり主は彼、トオル・サカウエ殿に主の代わりに世界を救って頂く為の助力、もしくはそれに支払う対価を用意するべきではありませんか?』
「う、た、たしかに・・・?」 

フェイの言葉に俺は頭を抱えた

フェイの言うとおり俺は彼に何かしらの対価を用意するべきなのかもしれない、でも世界を救った対価ってなんだよ!?何をどれくらい用意すればいいんだ?
ああ!!もー、これも全部この世界に俺を送り込んだ神様のせいだ!!今度あったら文句言ってやる!!
・・・・・・ん?あれ?

「なぁ、フェイ?」
『なんですか主?』
「お前は俺の精霊であり分身、もうひとりの俺みたいな存在だよか?」
『いかにも、小生には主の今世での記憶だけでなく前世の記憶ももっております。』
「つまりお前は神様との話し合った時のやり取りの記憶もあるわけだ」
『ええ、そうですな』
「じゃ、フェイ、俺がなんでこの世界に転生したか覚えているか?」
『もちろん、主は神殿のミスで前世を終えそのお詫びに・・・』

フェイは理由を話しながらも段々と声を落としていった
どうやら俺が何を言いたいか察したらしい、最後には口を閉じ顔を背けた。だから代わりに俺が続けた

「そう、俺は神様のミスで死にそのお詫びでこの世界に転生した。なぜこの世界だったのか?それはこの世界しか候補がなかったからだ。決して世界を救うためじゃない」
『し、しかし』
「それにトオル・サカウエがこの世界に来たのだって神様がお詫びに俺の願いを叶えてやるって言うから頼んだんだ、トオル・サカウエに来て世界を救って欲しいなんて頼んでない」
『それはそうですが』
「よって!!俺がトオル・サカウエに助力する必要はない!!あまつさえ世界を救った対価をはらうひつようはない!!違うか?」
『・・おっしゃるとおりです』
「よし!!あ~、答えが出てすっきりしたよ!!久しぶりにこんなに悩んだわ!!疲れた!!あはは!!」

悩みが解決したらなんだか心地いい疲れが俺を襲った
なんだか眠くなってきたな
天気もいいし、昼寝でもするか!!
俺は庭にある東屋に向かいそこで惰眠を貪った

これだよこれ!!
面倒な事は全部トオル・サカウエにぶん投げて俺は悠々自適ライフを満喫するのだ!!
これから彼はどんどん名声や地位を高めて行くだろう
だが!!俺にはそんな事関係ないね
彼ががんばって世界を救い俺の平穏を救ってくれる
なんて素晴らしい世界なのだろう!!
君との道は混じらないだろうが俺は君陰ながら応援してるぞ!!
ファイト!!トオル!!

俺は未来の英雄へとエールを送り眠りについた

おやすみなさい

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