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【 第5章 ”彼”の怒りを鎮める方法 】

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ザハール国の執務室にはヴィクトルと宰相のアレクセイ、そうして今回の隣国からの脅迫状とも取れる手紙に名前が上がっていたリーリエが集まっていた。

手紙に書かれていたのは、隣国の皇帝であるイヴァンが捕らえたジャスミンの身柄と、リーリエの身柄の交換だった。


「ジャスミンがまさか、隣国で捕らえられているだなんて。…お兄様、お願い。私が直接説得するわ。だから、この条件、引き受けてほしいの。そして、私を隣国に連れて行って!ジャスミンが殺された姿なんて、私見たくないわ…」
「いや、同意できない。そもそも相手の皇帝は恐ろしいと噂の人物だ。条件を確実に飲んでくれる保証なんてない。気が変わったら、人質を殺すくらいなことはするだろう」
「お兄様…でも!」
「リーリエ、お前の立場を考えてくれ。…彼女1人で国が守られると思えば」

ヴィクトルは突然、リーリエによって思いっきり頬を打たれた。じんじんと痛みが響く中、リーリエは涙を目に溜めながらこちらを見ている。


「信じられない!!どうして、お兄様は思い出してくれないの!?リーリエはあんなにいい子で、お兄様だってずっと片思いしていたくせに!!!死んでから苦しんだってもう遅いのよ!!」

そう大声で叫び、リーリエは部屋を出て行ってしまう。ヴィクトルは一つため息を突いた後、部屋にいたアレクセイに、リーリエの婚約者であるルスラン侯爵を呼ぶように告げた。


「ルスラン侯爵に、リーリエから必ず目を離さないようにいっておけ。リーリエに何かあったら、死をもって償わせるとな」
「…本当に、ジャスミンのことを見捨てて後悔なさいませんか?」

アレクセイの言葉に、ヴィクトルは視線を上げる。真っすぐにこちらを射抜いてくるアレクセイと目があうヴィクトル。


「あぁ、彼女の記憶が俺から消えてくれて良かったと思うほどにな」

そんな風に皮肉を込めて告げると、アレクセイは一礼した後に足早に部屋を出て行ってしまう。部屋の扉をイラついた様子で強く閉めるアレクセイ。彼にも思うところがあるのだろう。そんな姿に、ヴィクトルは苦笑いを漏らした。

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