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第十二話 ニュース
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ニュースではこんなことを言っていた。
「昨夜二時頃、東京都東京足元区東町の路地裏のゴミ箱に、男性の惨殺死体があるのが発見されました。男性は関節のところで切断されており、今回も防犯カメラには何も映っておらず、警察は最近の連続殺人事件と関係しているとみて捜査を進めています。住人の皆さんは戸締りをしっかりとして、一通りの多いところを歩くようにしてください。続いて次のニュースです……」
……今まではこんな死体じゃなかったのに。関節のところで切られてるだって?つまり被害者はバラバラということか。なんてことをしたんだ。
「あっ、起きてたのか」
不意に声をかけられて僕は驚いた。
「今起こそうと思ってたんだよ。さすがに十二時となると寝すぎだからね。今のニュース聞いてた?最近こういう事件多いから夜に外出したらだめだよ。あと知らない人が訪ねてきたも開けたらだめだよ。ちゃんと誰か聞いてから開けるようにしてね」
「……」
「大丈夫?気分悪いの?」
「大丈夫……たぶん」
最後のほうは自分でも聞き取れないくらい小さかった。
「そう……、なんかあったら電話してね」
「えっ、どっか行くの?」
「うん。友達と遊ぶんだ」
「友達って研究会の人?」
「ううん。違う人」
僕は少し考えた。話しているとさっきのショックはだんだんと薄れつつあった。
兄貴が研究会の人以外に日曜日に遊ぶような人……。
「……あっ、山村さん?」
「なんでわかったの?」
兄貴は驚いた表情で聞き返してきた。
「兄貴が研究会の人以外に日曜日に遊ぶ人って言ったら山村さんしかいないじゃん」
「ぐっ……」
兄貴は悔しそうにこっちを見た。しかし兄貴よ、これが現実なのだ。あきらめて受け入れてくれ。大丈夫、友達というのは二、三人いればたりるから。
「いつも思うけど山村さんってきれいだよね。でもなんでいつもマスクしてるの?とってるところ二回ぐらいしか見たことないけど」
「病気でマスクせずに息をするとむせちゃうんだって」
「へぇ~。ところで兄貴あの人とどうなの?あの人ならお姉ちゃんになっても全然かまわないよ。むしろそれを望んでる」
「あっちにその気があるのかまだわからないから告ってない」
「僕と同じでチキンだね」
「慎重と言ってくれ。それじゃあそろそろ行くわ。本当に調子悪かったら電話しろよ。すぐに駆け付けるから」
「デートなんだから呼ぶに呼べなんじゃないか」
僕は兄貴に聞こえないくらいのボリュームでそう言った。
「行ってきま~す」
「行ってらっしゃ~い」
バタン。
僕はそのままそこに立っていた。
……今回も言わなかった。
「昨夜二時頃、東京都東京足元区東町の路地裏のゴミ箱に、男性の惨殺死体があるのが発見されました。男性は関節のところで切断されており、今回も防犯カメラには何も映っておらず、警察は最近の連続殺人事件と関係しているとみて捜査を進めています。住人の皆さんは戸締りをしっかりとして、一通りの多いところを歩くようにしてください。続いて次のニュースです……」
……今まではこんな死体じゃなかったのに。関節のところで切られてるだって?つまり被害者はバラバラということか。なんてことをしたんだ。
「あっ、起きてたのか」
不意に声をかけられて僕は驚いた。
「今起こそうと思ってたんだよ。さすがに十二時となると寝すぎだからね。今のニュース聞いてた?最近こういう事件多いから夜に外出したらだめだよ。あと知らない人が訪ねてきたも開けたらだめだよ。ちゃんと誰か聞いてから開けるようにしてね」
「……」
「大丈夫?気分悪いの?」
「大丈夫……たぶん」
最後のほうは自分でも聞き取れないくらい小さかった。
「そう……、なんかあったら電話してね」
「えっ、どっか行くの?」
「うん。友達と遊ぶんだ」
「友達って研究会の人?」
「ううん。違う人」
僕は少し考えた。話しているとさっきのショックはだんだんと薄れつつあった。
兄貴が研究会の人以外に日曜日に遊ぶような人……。
「……あっ、山村さん?」
「なんでわかったの?」
兄貴は驚いた表情で聞き返してきた。
「兄貴が研究会の人以外に日曜日に遊ぶ人って言ったら山村さんしかいないじゃん」
「ぐっ……」
兄貴は悔しそうにこっちを見た。しかし兄貴よ、これが現実なのだ。あきらめて受け入れてくれ。大丈夫、友達というのは二、三人いればたりるから。
「いつも思うけど山村さんってきれいだよね。でもなんでいつもマスクしてるの?とってるところ二回ぐらいしか見たことないけど」
「病気でマスクせずに息をするとむせちゃうんだって」
「へぇ~。ところで兄貴あの人とどうなの?あの人ならお姉ちゃんになっても全然かまわないよ。むしろそれを望んでる」
「あっちにその気があるのかまだわからないから告ってない」
「僕と同じでチキンだね」
「慎重と言ってくれ。それじゃあそろそろ行くわ。本当に調子悪かったら電話しろよ。すぐに駆け付けるから」
「デートなんだから呼ぶに呼べなんじゃないか」
僕は兄貴に聞こえないくらいのボリュームでそう言った。
「行ってきま~す」
「行ってらっしゃ~い」
バタン。
僕はそのままそこに立っていた。
……今回も言わなかった。
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