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下人と老婆。
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走り続けていた下人は足を止め、雨に染まった自分を水たまりの上から眺めていた。雨が止んでも下人は雨に濡れたままである。下人は老婆との話を思い出した。馬鹿な老婆の被服を剥ぎ取ったものの、どこかやるせない気持ちになり下人は歩き出した。しばらくすると、声が聞こえ始める。家の戸が開くと人が出てきて笑顔で話しかけられる。その他の家の者も同様に下人に同じ言葉をかける。だが下人はそれが自分に言われていることだと気づかなかった。それに気づく余裕すらないほど、下人は考えていた。老婆のことである。いつのまにか下を向いていた下人は右手に持っている服が見えるたびに、自責の念にかられていく。すると見慣れた、さっき見たばかりの石段が見え、やっと下人は上を向いた。そのさびれた門を見たとき下人は決意した。老婆に会わなくてはならないと思った。その瞬間、下人は梯子をかけ登り「おい」と叫んだ。薄暗い空気の中を進んだけれど、そこには誰もいなかった。転がっている死体の中に裸体のものがいた。下人は近くに正座し、手を添えて頭を屋根裏の床に当てた。それから裸体の死体に服をかぶせ、下人が羅生門を後にしたのは日が沈む頃だった。下人は頰をつたうものをそのままにして、沈む夕日を眺めていた。下人は村人に検非違使の場所を聞くとまた、静かに歩きだした。それから一回たりとも、下人は頰のにきびを触ることはなかった。
「ねえねえ、おふくろさま。さっき、ちょっと汚い服を持ってた兄さまくらいの人をみかけたの」
「私もみかけて、ご挨拶致しました。」
「まあ、あこちゃんも挨拶しちゃったの」
「はい」
「こんにちはって言った~」
「ねえねえ、おふくろさま。さっき、ちょっと汚い服を持ってた兄さまくらいの人をみかけたの」
「私もみかけて、ご挨拶致しました。」
「まあ、あこちゃんも挨拶しちゃったの」
「はい」
「こんにちはって言った~」
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