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【上】
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最初から、少し妙だとは思っていました。
二人きりでの私との会食のときも、時折幼馴染の話を口にしていました。――まだ、婚約を結ぶ前、顔を合わせたばかりの頃です。
お家の事情――祖父方の縁ゆえに結ばれた婚約ですが、――これは少々、いえ大分、とんでもない縁だったと、今であればはっきりとそう思えます。
「アイリス、聞いてほしい。――ローズの容体が芳しくないんだ。また、と思われるかもしれないが……少し、お金を貸してほしい」
――皮肉に思えるほど彼の懸念通り、私は「またか」という念を抱いて、小さくため息を吐きました。
「……ロレディ、ローズの容体は本当に悪いの?」
「ああ。この頃はまた、弱っていて……。見ていられないんだ……」
「……お金を返す充てはあるの?」
「アイリス」
ロレディは生真面目な顔つきになり、ずいと一歩進み出て、私に非難のような視線を向けて言いました。
「心も体も弱めた、一人の人のためなんだ。頼むよ、……冷たいことは言わないでくれ」
こめかみに、ピキリと筋が奔る心持ちでした。
私は何度も警告したけれど……彼がきちんとそれに耳を貸したことは一度としてなかった。
――それに。
その話しは、私と何の関係があるの?
私の家のお金で貴方の幼馴染を養う理由は、いったいどこに?
「ロレディ」
私は疲れを表情の内に隠しながら、私は平坦な声を出しました。
「分かったわ」
「――ありがとうアイリス! 助かる、本当に――」
「わかった、分かったわ」
「では、少しローズの容体を窺いに出てくる。そんなに悪いわけではないと思うのだが……」
……彼を追い払うために承諾したとはいえ、それでもイラっとくるわね。
なんて思っていたら、彼は部屋を飛び出す直前に、最も私を苛立たせるためとしか思えない言葉を置いていった。
「そんなに心配はしないでくれ―――急を要するという衰弱ではないんだ。では」
血管がはち切れそうになりました。
心配してねえよ。
……これは、もう駄目ですね。
この現状を伝えれば、お父様も納得して下さるでしょう。
婚約破棄をしましょう。
二人きりでの私との会食のときも、時折幼馴染の話を口にしていました。――まだ、婚約を結ぶ前、顔を合わせたばかりの頃です。
お家の事情――祖父方の縁ゆえに結ばれた婚約ですが、――これは少々、いえ大分、とんでもない縁だったと、今であればはっきりとそう思えます。
「アイリス、聞いてほしい。――ローズの容体が芳しくないんだ。また、と思われるかもしれないが……少し、お金を貸してほしい」
――皮肉に思えるほど彼の懸念通り、私は「またか」という念を抱いて、小さくため息を吐きました。
「……ロレディ、ローズの容体は本当に悪いの?」
「ああ。この頃はまた、弱っていて……。見ていられないんだ……」
「……お金を返す充てはあるの?」
「アイリス」
ロレディは生真面目な顔つきになり、ずいと一歩進み出て、私に非難のような視線を向けて言いました。
「心も体も弱めた、一人の人のためなんだ。頼むよ、……冷たいことは言わないでくれ」
こめかみに、ピキリと筋が奔る心持ちでした。
私は何度も警告したけれど……彼がきちんとそれに耳を貸したことは一度としてなかった。
――それに。
その話しは、私と何の関係があるの?
私の家のお金で貴方の幼馴染を養う理由は、いったいどこに?
「ロレディ」
私は疲れを表情の内に隠しながら、私は平坦な声を出しました。
「分かったわ」
「――ありがとうアイリス! 助かる、本当に――」
「わかった、分かったわ」
「では、少しローズの容体を窺いに出てくる。そんなに悪いわけではないと思うのだが……」
……彼を追い払うために承諾したとはいえ、それでもイラっとくるわね。
なんて思っていたら、彼は部屋を飛び出す直前に、最も私を苛立たせるためとしか思えない言葉を置いていった。
「そんなに心配はしないでくれ―――急を要するという衰弱ではないんだ。では」
血管がはち切れそうになりました。
心配してねえよ。
……これは、もう駄目ですね。
この現状を伝えれば、お父様も納得して下さるでしょう。
婚約破棄をしましょう。
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