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【上】
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妹が、あの広大な領地を守る伯爵、リチャード様に婚約破棄を突き付けたとの知らせを聞いたとき、さすがに開いた口が塞がらなくなりました。
記憶にあるリチャード様は、礼節を忘れぬ立派なお方でした。実際、不肖の妹マゼンタも最初はその婚約に乗り気だったはずです。
「どうして? 今度は、何が不満だったのかしら?」
「どうやら、リチャード卿の容姿に不満を持ったとか、なんとか……」
ロイの返事を聞くと、私は思わず顔に手をやり俯いてしまいました。
つまるところ、結局マゼンタはリチャード様の財産が目当てであり、それを不埒に使うことにも飽きたとき、また衝動的な我儘を言い出したと……。
ただの一令嬢が婚約破棄を突き付ける。明確な理由あらば仕方のないことですが、何一つ公正のない我儘でそんなことをしでかすなんて……。私たちにかかる迷惑など一つも考えていないのでしょう。
「ヘリオト、君にまた迷惑が行くことになるだろう。そのときは迷わず私に相談してほしい」
「ありがとう、ロイ」
私はやりようのない鬱屈が溶けたような気持ちで、ロイに微笑みを返しました。
ロイは所謂、辺境伯。でもいつだって優しさに満ちた素敵な人。
――きっとあの子には、この気持ちが何一つ分からないのでしょうね。
記憶にあるリチャード様は、礼節を忘れぬ立派なお方でした。実際、不肖の妹マゼンタも最初はその婚約に乗り気だったはずです。
「どうして? 今度は、何が不満だったのかしら?」
「どうやら、リチャード卿の容姿に不満を持ったとか、なんとか……」
ロイの返事を聞くと、私は思わず顔に手をやり俯いてしまいました。
つまるところ、結局マゼンタはリチャード様の財産が目当てであり、それを不埒に使うことにも飽きたとき、また衝動的な我儘を言い出したと……。
ただの一令嬢が婚約破棄を突き付ける。明確な理由あらば仕方のないことですが、何一つ公正のない我儘でそんなことをしでかすなんて……。私たちにかかる迷惑など一つも考えていないのでしょう。
「ヘリオト、君にまた迷惑が行くことになるだろう。そのときは迷わず私に相談してほしい」
「ありがとう、ロイ」
私はやりようのない鬱屈が溶けたような気持ちで、ロイに微笑みを返しました。
ロイは所謂、辺境伯。でもいつだって優しさに満ちた素敵な人。
――きっとあの子には、この気持ちが何一つ分からないのでしょうね。
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