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最終章 Side:愛梨
20話
しおりを挟む「や、ちょ…! ユキ…!」
脱がされそうになっている事に気付き、再び拒否の声を上げる。だが焦ってその手を振り解こうと思っても、男の雪哉の力には適わず、ボタンはどんどん外されていってしまう。
「だめ……! 私、小さいから……!」
「大きさなんかどうでもいい。ちゃんと全部見せて」
囁かれるのと同時に、最後のボタンが外されルームウェアの前部がハラリと肌蹴られてしまう。誰にも見られたことがない場所を直に見られて、かぁ、と全身が熱を持つ気がしたが、隠すよりも再び唇を塞がれる方が早かった。
「んん、ん…っ」
さっきのキスでまだ濡れていた唇を更に濡らすよう、丁寧に舌で辿られる。愛梨の小さな舌まで存分に味わい尽くされ、酸素が足りずに再び頭がぼうっとしてくる。クラクラと熱に浮かされながら激しいキスに応えていると、雪哉の右手に左胸の膨らみを優しく撫でられた。
「ゃあ、ん…」
慣れない刺激に恐怖を感じると思ったのに、離れた唇からは自分が発したとは思えない程に甘ったるい声が漏れ出た。雪哉にすごくいやらしい子だと思われた気がして慌てて口を噤むと、それを阻害するように大きな手がゆるりと動き出す。
「っぅ、…ん、…んっ」
「愛梨の身体、すごい綺麗だ」
恥ずかしいから、変な事言うのやめて。
雪哉の真面目な感想に抗議したい気持ちはあるのに、その手が優しく動く度に拒否の言葉が喉の奥へ溶けて流れていく。更に反対の胸にも同じ刺激が与えられ、胸の膨らみの存在を確かめるように丁寧に触れられ、撫でられる。
両方の胸を同時に揉まれると、それだけで微熱が生じたように頭がぼんやりしてきた。ゆるやかな刺激に恥ずかしさと落ち着かなさを感じていると、雪哉の指先が敏感な場所を同時に摘み上げた。
「ひゃあっ…ん」
ビクン、と身体が跳ねると同時に高い声が漏れる。今まで意識したことがなかった場所に急に触れられ、身体が過剰に反応する。
「ユキ…、んぅっ、ぁんっ…あ…」
「固くなってる……ここ、気持ちいい?」
再び恥ずかしい事を耳元で囁かれ、ふるふると首を振る。首の動きで否定はするが、指先がそこをくるくるころころと撫で回ると、少し自信が無くなって来る。
異性に見られることなどなく、まして触られたことなど同性ですらない場所を丁寧に撫でられ、ただ恥ずかしいだけだと思っていたのに。雪哉の指が左右ばらばらにいやらしく動くので、何だか、少しだけ、気持ちいい。
「やぁ、やっ…ん、んん、んぅ」
「愛梨は気持ちいい時、こういう声で啼くんだ」
「っふぁ、ん」
意地悪な事を確認されながら、きゅ、と摘ままれると更に高い声が出る。思わず仰け反って雪哉の指から離れても、またすぐに伸びてきた指先が愛梨の敏感な場所を楽しそうに転がしていく。
「んぅ、っや、だぁ、ユキ……」
「想像してたよりずっとクるな」
そう言って手を引っ込めた雪哉が、自分のネクタイを乱暴に緩めて、するりと引き抜く。既に何度か遭遇している黒ヒョウの視線に捕らわれて戸惑っているうちに、愛梨の身体はベッドの上に押し倒されそのまま ぽすんと沈み込んでしまった。
「ゆ……ユキ……?」
愛梨が困惑している間に、雪哉は片手でシャツのボタンを外し、腕を抜いてそれを脱ぎ捨てた。
小学校6年生のプール授業以来見た事がなかった雪哉の裸が、愛梨の目の前で露わになる。当然と言えば当然だが、肩幅も胸板も昔より成長し、意外と筋肉がついている事も思いがけず知ってしまう。
その身体が愛梨の身体の上に覆い被さると、雪哉の腕が首の下と背中に回り込みそのままぎゅっと抱きしめられた。裸で抱き合って肌と肌がこれ以上ないほど密着すると、リズムの違う心臓の音がトクトクと重なって振動する。
「ん、気持ちいい」
小さく呟かれて、愛梨もそっと頷く。
雪哉の身体も熱く火照っていたが、空気に晒されて不安だった肌にはその温度も心地いい。それに雪哉も毎日忙しく社内外を走り回っている筈なのに、こんなに近付いて密着しても汗の匂いがしない。それどころか香水のような上品で甘い香りがするのが何だか不思議だ。
顔を上げて見つめ合い、もう1度優しいキスをする。まるで子猫のじゃれ合いのような触れ合いに照れていると、長い指先がまた胸の上に伸びてきた。
「っふあぁッ」
驚いて声が出た愛梨の顔の隣に右肘をつきながら、左手はまた胸を弄る。じっと見下ろされ、顔を見られるのが恥ずかしいと思っていると、降りてきた唇は胸元に寄せられた。
「愛梨、すごい甘い匂いがする」
「っあ、あぁ、あ…」
雪哉の肌の香りに酔い痴れていた愛梨だったが、雪哉にも同じ感想を持たれた。唇が鎖骨の間の窪みを吸い、舌先が頸動脈に沿って上へ辿っていくと、腰から背中にぞわぞわ、びりびりと電流が走っていく。なんで首なんて舐めるの、と恥ずかしい文句も言葉にならない。
時折肌を吸いながら耳元まで登って来た唇に『愛梨』と低く名前を呼ばれた。
「……ん、やぁッ…」
それだけで、脳が溶けてしまいそうな程の熱い刺激が全身に波及する。今までも耳の近くで名前を呼ばれた事はあるが、それとは全然違う。恋慕の深淵に誘い込むような声ではなく、愛しい名前を呼ばずにはいられないと言うような、ひどく甘ったるい声で。
胸を撫でていた雪哉の左手がそろりと下へ降りていく。ゆっくりとお腹を撫で、腰の横を通過した指先が、ルームウェアの下衣に引っかかった。上半身を起こした雪哉の右手が愛梨の腰を持ち上げると、左手が器用に衣服を引き剥がす。
「ちょ…っ!」
制止の間もなくショーツごと奪い取られ、持ち上げられた足の先から取り払われると、あっという間に雪哉に全裸を晒す羽目になる。しかもそのまま、右足を雪哉の腰の横に乗せるように拡げられてしまう。
「やっ……」
あまりの恥ずかしさに視線を逸らしたが、太腿の間に滑り込んできた指先は閉じた間を広げながら花芽に直接触れてきた。予想だにしていなかった感覚にびくっと身体が過剰に跳ねても、指先はそのまま敏感な場所を擦り始めてしまう。
「あ、っあ、やぁ、…あ」
そんなところ触らないで、と止めようとしたのに、優しく扱かれると恥ずかしさと奇妙な感覚に邪魔されて言葉が意味を成さない。
「ゆ、…あッ、ん、んぅ」
同じ場所をゆるゆると擦られているうちに、触られた箇所から痺れるような感覚が沸き起こる。小さな痙攣を起こしたように震える下半身に恐怖感を感じ、思わず足をバタバタと動かしてしまった。
「や、やだぁっ」
「愛梨?」
「い、今のやだ……何か、変な感じする…」
拒否の言葉を吐き出すと、雪哉が驚いたように顔を覗き込んできた。変な、と呟くと一瞬不思議そうな顔をされたが、雪哉はすぐに表情を緩めた。それから優しく頭を撫でられると、少しだけ恐怖感が薄れる。
「そっか。達った事ないなら、少し怖いか」
いっ…?
雪哉が呟いた言葉の意味が分からず『怖い』の部分だけを拾ってしまう。何をされるのかと怯えていると、視線を合わせてきた雪哉が、子供をあやすように愛梨を諭し始めた。
「今と同じとこにまた触るけど、痛くなかったらそのまま感じてて」
「いやっ……でも、今の」
「大丈夫、気持ちよくなるだけ。ゆっくり触るから」
そう言った雪哉の指先が宣言通り同じ花芽を扱き出すと、じわりと不思議な感覚が広がっていく。
ここまでは先ほども感じたものと同じ。けれどそのまま刺激を与え続けられると、下腹部の奥底から未知の感覚が押し寄せて来た。
「ん……んっ、…」
触られた場所に、感覚が研ぎ澄まされながら虚脱するような痺れが走る。慣れない刺激に腰が引けて身体が上に逃げても、雪哉の指は愛梨を追いかけて同じ場所を執拗に撫で続けた。
「っや、あっ…あ…」
気持ちいい。このまま触られ続けたらどうなるのだろう、と恥ずかしい行為のその先を知りたいような、背徳的な期待感が芽生えてしまう。
「やぁ、…あ、あぁッ」
そんな淫らな好奇心に呼応するように、雪哉の指先が激しく動く。津波のように押し寄せる快感に腰が浮いて内股が痙攣した後、頭の後ろ側で甘い痺れが急に弾けた。
「…ふあぁ、あ!」
触られている場所は下腹部なのに、背中から首、脳にまで快感が伝播したように、全身がふるふると震えて身体が硬直してしまう。何も考えられなくなるほどの強烈な感覚は、愛梨の視界と思考を白く塗り潰した。
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