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プロローグ
プロローグ
しおりを挟む幼稚園の頃、約束を破ってはいけないと先生に教わった。
小学生の頃、約束を破ると罰を受ける事を知った。
中学生の頃、できない約束はしないほうが良いと悟った。
なのにそう気付いた時には、すでに大切な約束をしてしまった後だった。
『愛梨。俺、絶対に愛梨を迎えにくるから。待ってて』
そう言ってアメリカに旅立って行った幼馴染みの雪哉の言葉が、また愛梨の心を引き留める。
幼馴染みと結婚の約束をするなんて、小さな子供にとっては通過儀礼みたいなものだ。そのまま本当に結婚する人達もいるだろうし、大人になるにつれて思い出話や笑い話となって何処かへ消えていく人達もいるはず。
――それなら、私たちは?
問いかけたいのに、その相手はここにはいない。
本当なら15年も前の約束なんて、もう無効のはずだ。
これが幼い頃――幼稚園かせいぜい小学校低学年ぐらいの約束だったなら、愛梨だって知らないふりを出来た。
けれど雪哉が愛梨に約束をしたのは、中学1年生の頃だった。
中学1年生という年齢なら、もう物の分別が出来る。けれど無垢な心で、特別な意味を持たない口約束が出来る年齢でもある。
雪哉がどれほど本気でそう言ったのか、今となっては愛梨には判断できない。
『私も、ユキのこと、ずっと待ってる』
そう言って安易に応えた自分の言霊に、15年経った今も囚われたまま。過ぎていく時間のレールの上で、約束の答え合わせが出来る日をただ待ち続けている。
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