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ふたなり女王陛下の甘美なる受難
第六話 ◆
しおりを挟むしかし小躍りしたいほどの歓喜を感じるシャルロッテと異なり、ウィルフレッドは何処か不満げな表情を浮かべている。
しばらくはご機嫌のシャルロッテの顔を眺めていたが、そのうち大きな溜息をついて不機嫌にムッと唇を尖らせてしまう。
「まさか俺はもうお払い箱ですか?」
「……え? ……へ?」
シャルロッテと違い、ウィルフレッドはご不機嫌斜めだ。目を細め、口をへの字に曲げ、僅かにシャルロッテを睨む視線に凄みを感じる。思わず後退る。
しかしその行動はウィルフレッドにすぐに気付かれ、逃亡はあっさりと阻まれた。伸びてきた無骨な手が、シャルロッテの手首をぐっと捕まえる。
「俺は言いましたよね。本物の男の欲はこんなものじゃない、と」
ウィルフレッドはシャルロッテの腰を掴むと、お尻に自分の股間を押し付けるように身体を引き寄せてくる。互いに裸の身体を強く密着させて、再びベッドの上へ倒れ込む。まるで背後からシャルロッテの身体を抱きすくめるような体勢で。
すぐ傍でウィルフレッドの息遣いを感じる。背中と彼の胸板がぴったりとくっついていることを知る。再び急接近して緊張に強張るシャルロッテを余所に、ウィルフレッドはひどく楽しそうな声で笑う。
「あなたが言ったんですよ。私を抱きなさい、と」
「あの、えっと……それは……」
「命令はまだ継続中ですよね? 次は女性の悦びを教えて差し上げましょう。陰核を刺激しながら奥を突くと、最高に気持ちいいらしいですよ」
「や……やっ」
ウィルフレッドが悪戯のようにシャルロッテの耳に舌を這わせる。そのまま丹念に味わうように舐られる。それと同時に後ろから抱擁されてシャルロッテの花芽を弄り始める。約数か月ぶりに姿を現した女性の性感帯だが、当然性的な意味でそこへ触れたことなどない。
「どうですか? ここを弄られるのは気持ちいでしょう?」
「っや、ぁっ、あ、あん……あ」
シャルロッテはここに来てまた新たな快感を知ることとなる。
ウィルフレッドの指先がシャルロッテの陰核を刺激する。愛液と精液が混ざり合った蜜を纏い、くちゅくちゅと淫猥な音を響かせる。
その刺激から逃げようとして腰をくねらせても、彼の脚が逃亡を阻むようにシャルロッテの脚へ絡みつく。そうして捕捉された獲物のように、ただ彼の愛撫を受け続ける。
「さあ、もう一度挿れますよ。今度は陰茎や陰嚢がない分、より深い場所を突いて差し上げます」
「なっ……あ、っ……、やぁ、あん!」
ウィルフレッドが不穏な宣言をする。トロトロにぬかるんだ蜜壺に、勃ち上がった屹立をぐいっと押し込んでくる。
その熱い塊は先ほどまでとは比較にならないほど大きく膨らんでいる。どうやら彼は、先ほどまでの姿より今のシャルロッテの姿の方に興奮を覚えるらしい。
「ウィル……っぁ……ぅん」
「ほら、ここは?」
「あ、はぅ……ああ、ぁん、あっ……!」
そのまま奥を貫くように腰を揺らされる。脚を抱えるように股と秘部を大きく開かれて、後ろから蜜穴を削るようにがつがつと抉られる。空いた手も身体の下から秘芽を擦り撫で、より強い快感を与えるように動いている。
「やぁ……ウィルぅ……っ……!」
「ああ……俺の女王様は、本当に……いやらしいな」
ウィルフレッドの言う通りだ。陰核を刺激されながら奥を突かれるのは、亀頭の先から精液を零しながら突かれるときとはまた違う。
最奥まで行き届く彼の亀頭部が子宮口をトントンと叩くと、そのまま昇天しそうになってしまう。それほど強い愉悦が全身に襲いかかる。
「あっ、そこっ……やぁ、っ、あ……だ、だめっ……!」
迫りくる快感に恐怖を感じてふるふると首を振る。だがウィルフレッドの腰は止まってくれず、当然陰核を刺激する指も、後ろから耳を舐める舌や息遣いも変わらない。
それどころか、雄の色気を孕んだ吐息で『何と言うんでしたっけ?』なんて悪戯っぽい問いかけが重ねられる。
「だめ、っ……きもち、ぃ……いく……いく、ぅっ」
「いいです、よ……イッて……ほらっ」
「ふぁ、あああぁ……!」
シャルロッテの宣言と同時に、ウィルフレッドが短く息を吐く。その直後にぐちゅ、っと一気に奥まで押し込まれ、シャルロッテは快楽に吹き飛ばされるように全身を震わせて果てた。
最奥に吐精される感覚を覚え、シャルロッテはより強く彼の熱竿をきゅうきゅうと締め付けてしまう。
「シャルロッテ、様……」
「ウィル……ん、ん……」
いつもこうだ。絶頂する瞬間をウィルフレッドに見つめられると、心臓がどきどきと高い音を立てる。心を読まれている気分になる。
けれどそれと同時に、強い睡魔に襲われる。脱力して全てを委ねてしまう。昔から同じ……彼が傍にいると、無防備な状況に身を置いていても不思議と安心してしまう。女王として国を率いる重圧や不安から、ウィルフレッドがシャルロッテを守ってくれているように錯覚してしまうのだ。
そして睡魔に抗えずに眠りの底へ堕ちてしまうから、結局は気付かない。
シャルロッテが眠ってしまった後に、ウィルフレッドが長い金の髪を愛おしそうに撫でていることも。蜜に濡れた唇をそっと奪われていることも。シャルロッテが知らない真の理由に、ウィルフレッドには心当たりがあることも。
「王陛下も発想は悪くなかったと思いますよ。一番可愛がっていた貴方を嫁がせないために、男の逸物を宿す呪術をかけるなんて」
珠のように白く美しい肌を清めながら、ウィルフレッドはひとり苦笑する。
前国王であるシャルロッテの父は、確かに彼女の言う通り世継ぎとなる王子を欲していたのかもしれない。だがそれ以上に、優しくて少し無能な王は娘たちを溺愛していた。中でも美しく聡明である長女シャルロッテのことは、目に入れても痛くないほどの可愛がりようだった。
だから彼は自分が死してなお、愛娘がどこかの男の元へ嫁ぐことを阻止したかった。後継者を欲している一方で、王女が婚姻することを厭うだなんて大いに矛盾した感情だとは思う。だがその矛盾に気付けないほど、彼は必死だったのだ。
結果男の逸物を宿す呪術で愛しい娘を悩ませるなど、本末転倒にもほどがある。
「ですが残念でしたね。俺はどんな姿をしていても、シャルロッテ様を愛せる自信があります」
すーすーと寝息を立てるシャルロッテのあどけない姿を見つめて、ウィルフレッドはそんな事を考える。
王の思惑は大外れだ。もう十年以上もシャルロッテの側近として傍に仕えるウィルフレッドは、王と同じぐらい――否、それ以上にシャルロッテを愛していた。
彼女が女王という大役の不安に襲われ、重圧に苛まれ、逃げ出したくなるほど辛いと感じたときは、この身を呈してでも彼女を守りたいと思っている。
シャルロッテが望むものならば、なんでも差し出すつもりだ。心と身体のすべてを捧げることを今すぐ誓ってもいい。そう思える存在が、他でもないウィルフレッドに縋りついてくれるのだ。
だからもう離さない。ウィルフレッドは為政者になりたい訳ではないが、永久にシャルロッテの傍に身を置きたいとは思っている。その為にすべきことはいくつかあるが……まずはより深いところまでシャルロッテの心と身体に教え込まなければいけない。彼女に、自分と同じ場所へ堕ちてきて貰わねばならない。
指先で顎を持ち上げ、再び唇を重ねる。一方的な誓いの口付けを、眠っている彼女は拒めない。
「さぁ、明日は何を教えて欲しいですか? 貴方が望むなら、何でも教えて差し上げますよ――俺の可愛い女王様」
シャルロッテの甘美な受難は続く。
――Fin*
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