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深夜零時のベルベット・レース
Vervet Lace 後編 ◆
しおりを挟む胸への刺激だけで達するなんて、と恥じ入っていると、ふいに寝室の扉をノックする音が聞こえた。コンコン、と高い音が室内に響くとアリーシャの身体が緊張に強張る。
『旦那さま、奥さま、お休み中のところ失礼いたします。フルールリアの店主からお電話が』
「……ベリルか」
執事長に部屋の外から声をかけられる。彼はアリーシャとセインの睦まじさを熟知しているが、それでも快感に溺れる声を聞かれたいとは思わない。
慌てて手で口を押えるアリーシャだが、その様子を見ても左腕にアリーシャの身体を抱え、その手でアリーシャの乳首をクリクリと捏ね回す手は止まらない。それどころかセインの右手はいつの間にか股の間に滑り込んでいる。そのまま胸の突起以上に膨らんだ花芽をゆるゆると撫でられ、扱きはじめている。
「んっ……ふ、――ぁ……っ」
胸の先端をレース越しに弄られる感触と、恥部を直接撫でられる感覚に同時に襲われる。
(だめ……声、聞こえちゃ……ぅ)
もどかしさと激しさの狭間で、震えながら声を漏らさないようにと耐える。けれどセインの右手があまりにもみだらに動くので、秘部からはぬちぬちと水音が漏れ始めている。これではこの音が外に聞こえるのも時間の問題だ。
「今はショックを受けて泣いている妻を慰めるのに忙しい、そのうちこちらから連絡する、と伝えてくれ」
『かしこまりました』
セインの指示を聞いた執事が冷静な声で返答する。その足音が部屋の前を離れ、廊下の向こうへ遠ざかり、やがて階段を下りていくことを確認すると、アリーシャはセインをきつく睨んだ。
「なにするのよ……私、泣いてなんかいないわ!」
「これでも?」
「っゃ……ああっ!」
「ほら、啼いてる」
くすくすと笑う声とぐちゅぐちゅと卑猥な音が入り混じる。陰核を捏ね回していたセインの右手が蜜口の中へ侵入し、アリーシャに秘部の様子をわからせるように中をかき混ぜるように激しく動いて絶頂へ導かれる。
「だめ、ぇっ、やぁぁあん……!」
アリーシャが操られたように乱れて果てると、その全てを観察していたセインが楽しそうに喉で笑った。
「声が聞こえるかもしれない状況は、恥ずかしかったかな?」
質問されると火照った顔がさらに熱くなる。セインの腕に抱かれたまま見つめ合うと、彼が愉しげに微笑む。まるでアリーシャの全てを見透かしているみたいに。妻に恥ずかしい衣装を纏わせる趣味を持つセインだが、それは君も同じだと教えられている気分になる。
「君は恥ずかしければ恥ずかしいほど大胆になる。本当は焦らされるのが好きだろう?」
「……そんなことはないわ」
セインの言葉に静かに首を振る。
夫の予想が大幅に外れているとは言わない。だがアリーシャが彼の趣味に付き合う最大の理由は、もっと別のところにある。
少し疲労した身体を奮い立たせて身を起こす。そのままセインの身体を押し倒すと、彼の上に跨って股間で主張をはじめている雄の象徴に指先を這わせる。
「私が恥ずかしがる姿に興奮する、セインの表情が好きなのよ」
「へえ?」
アリーシャの回答にセインがにやりと微笑む。やはり彼も、どんなに恥ずかしくてもアリーシャが自分の趣味に付き合う本当の理由に気付いていたらしい。
「さっきまで恥ずかしがって震えていたのに、恥ずかしいことが気持ち良くて箍が外れたのかな――いけない子だね、アリーシャ」
レースのグローブをはめたままスリスリと撫でるだけで、セインの逸物は布を突き破らんばかりに勃ち上がる。その存在を認識するとアリーシャの身体も歓喜に震え出す。
「透けててとってもいやらしい。君の恥ずかしいところはもう濡れているようだよ」
「は、ぁぅ……んん」
セインの夜着を脱がせるために腰に結ばれた紐を解くと、伸びてきた手が再び胸を包み込んだ。先ほどは後ろからだったが、今度は下から。たわわに実った果実を味わうように、ゆったりと丁寧に胸を揉み込まれる。
「は、ぁ……ん、ああ……!」
逸物を覆うものがなくなると、手間が省けたとばかりに腰を掴まれて先端を宛がわれる。アリーシャがいつも以上に恥ずかしがってしまったせいか、セインもいつも以上に興奮して熱竿を硬く膨らませている。
猛った切っ先をレースの隙間からねじ込まれ、一気に最奥まで挿入される。身体を引き下ろすように貫かれると、あまりの勢いと圧迫感から視界がチカチカと明滅する。
「ああ、ぁああっ!」
ゴリゴリッと内壁を擦り上げながら奥まで挿入され、セインの腹の上で身体が仰け反る。
そうやってアリーシャが激しく感じる姿はセインの官能を刺激するらしい。奥へ届いてピタリと動きが止まったので閉じていた目を見開くと、ぎらぎらと雄の欲望に満ちたセインの瞳と目が合う。
次の瞬間、腰をぐっと持ち上げられ、蜜壺から陰茎を引きずり出される。しかし物足りなさを感じる前に、再度腰を引き下げられて深く貫かれる。じゅぷぷッと音を発しながら、淫らな飛沫が二人の結合部をしとどに濡らしていく。
「ひぁ、あっ……」
「脱がさなくても君の中に挿入れるのは便利だな」
「あ、ぁあ、あ……んっ」
下から激しく貫かれては引きずり出され、抜かれては強く押し込まれる。結んだチョーカーの端が小刻みに揺れ動く。鈴でも付けたら激しい音がしそうだ。
「美しく可愛い、私のアリーシャ。君の全てが……よく見える」
「ふぁ、あっ、あ」
「感じやすい、この胸が揺れるのも……さくらんぼのような……この果実も、全部透けているよ?」
「ゃあ、あぁん」
「私のために、下生えも、処理しているんだね……すべすべで、触り心地がいい」
「ひぁ、あっ……くすぐ、った……」
「中から溢れてくる、蜜も見えて……敏感な場所も……レースが擦れると、気持ちいいのかな? ほら、濡れて膨らんできてる」
「も、いいっ……いわなくて、いいから、ぁ……」
セインの言葉も途切れ途切れだが、それ以上にアリーシャが限界を迎える寸前だ。その姿が何よりも淫らであると、セインの言葉と視線と突き刺さった陰茎が教えてくれる。言葉で示されると同時に結合部から激しい音が溢れるので、否定しようにも説得力は皆無だ。
「ああ、やっぱり……アリーシャは恥ずかしいのが、好きなんだね」
「だから、ちが、ああぁっ……!」
「最高だ」
「やあ、ぁん! あっ、あぁ……っ」
腰を掴まれて激しい抽挿を繰り返されるたびに、レースの豪奢な模様が乳首や陰核を撫でて官能を刺激する。身体はちゃんと覆われているのに、透けているせいでその全てをじっくりと見られている。
たかがナイトドレス、けれどこれは媚薬と同じ。アリーシャの羞恥心を煽り、セインの欲望を満たす魔性の衣だ。
「せ、セイン……! いく、もう、イッちゃ……っ」
「いいよ、アリーシャ……全部見ててあげる」
「んぁ、ふぁ、あああぁ――っ!」
月明かりに照らされたセインが獰猛な獣の瞳でアリーシャを見つめる。ぐちゅん、と音を立てて雄竿を埋められた瞬間、羞恥と快楽を解放するように激しく達してしまう。
搾り上げるようにビクッビク! と痙攣すると、膣の収縮に導かれるようにセインも中へ射精した。
「んっ……ん、っぅ……」
最奥へ精液を塗り付けるような腰の動きにも感じてしまう。唇を奪われて丁寧に舌を絡められる。激しい交わりよりも可愛らしい口付けの方が恥ずかしいと思っていると、唇と頬と額にキスを落としたセインがにこりと微笑んだ。
「そうそう、アリーシャ」
汗と愛液と精液でぐちゃぐちゃになったアリーシャのナイトドレスを脱がせながら、セインが穏やかな声で語りかけてくる。
アリーシャは知っている。これはセインがアリーシャを可愛がるときの――さらに恥ずかしい思いをさせたがるときの合図だ。
「実はね、この他にも布の少ないメイド服とか、胸の部分だけくり抜いたドレスもあるらしいんだ。今度それも……」
「もっ……もういいってば!」
その表情を確認したアリーシャは全力で叫ぶが、本当はこれも知っている。
きっとアリーシャが新しいベルベット・レースを纏う夜も、そう遠くない。
――Fin*
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