14 / 34
スパダリ御曹司を異世界転生させるつもりが、なぜか寵愛された女神の話
第四話 ◆
しおりを挟む遊真と性交を体験したことで、メルは処女を失った。ただしそれを知るのはメルと遊真だけ。あとは失った処女膜さえ回復すれば誰にもその事実を知られない。女神であることに処女性は絶対条件ではないが、やはり人々の信仰を得るためには気高く純潔であるべきだろう。
「遊真さん……もういいでしょう。早くそこを退い……って!?」
とにかく、これで遊真の要望は叶えたのだ。いつまでもメルの身体に覆い被さったまま退けてくれないのも困るので、彼の身体を押し退けようとして思わず仰天してしまう。何故ならそこに息づく『それ』は、メルが聞いていた男性の特徴とは明らかに違ったのだから。
「な、なぜそんなに大きいままなのですか……?」
「これ? 再生の力だろ?」
「え……? は?」
「メルに触れてたら、俺の疲労と精力も即時回復するみたいだ。これで永遠にシ続けられるなぁ」
「な、なんっ……!?」
遊真がにこやかな顔でとんでもないことを言うので、思わず唖然と見上げてしまう。だが遊真は冗談ではなく本気でそう思っているようで、メルと視線が合うとニッと無邪気な笑顔を浮かべた。
どうやらメルが処女膜を回復させるために力を使うと、至近距離にいる遊真もその影響で超回復してしまうらしい。射精直後の虚脱感など一切感じさせないように固く張り詰めた剛直に、メルは思わず震えあがった。
「メルは俺に奪われるってわかってて処女に戻るんだもんな?」
「ち、ちがいます……! 遊真さんのためではありません……!」
「ほら、すぐそうやって俺の言うこと否定する」
「え……? いえ……そういうつもりは」
メルとしては当然の主張のつもりだったが、遊真には思わぬ指摘をされてしまう。だがメルは遊真の言葉だから否定しているのではない。彼がメルの意思や考えと一致しない言葉ばかりを紡ぐので、誤解のないようにちゃんと否定しているだけだ。
「でも最後は俺が正しいって認めるんだろ」
遊真がにやにやと笑う。その間にも彼の手はベッドに座り込んだメルの腰に回り、まだ快楽の余韻が抜けきっていない身体を優しく淫らに撫で上げる。
「清楚で神聖な女神様なのに、エッチなことされるの大好きなんだよな?」
「ちが……っ」
「ほら、また『ちがう』」
再度否定しようとした言葉は、言い終わる前にまた奪われてしまった。これではメルの言動が遊真の指摘通りになっているようでものすごく癪であったが、言葉を探しているうちにさらに腕を引っ張られてしまう。
「メルがいじめられるのが好きでも、俺は別にいじめるのが好きなわけじゃねぇからな。メルは残念だろうけど、優しくしてやる」
「うそ、うそっ……!」
「まぁ、なんでもいいけどな。ほら、ここに腰落とせ」
遊真の言葉を否定するために懸命に首を振ろうとしたが、ベッドに寝転がった遊真の上に乗るように誘導されたことにすっかり気を取られてしまった。反論すべきか従うべきか迷ってるうちに、再び挿入を許してしまう。
「っゃああっ……!」
優しい導きと同時に蜜孔を貫かれ、メルは遊真の腹の上で快感に身悶えるように背中を仰け反らせた。下腹部の奥で何かが破れるような音がしたが、それを確認する前に下からの激しい突き上げに全身を揺さぶられる。
「あっ、ゃあ、あん、ああっ……あん、っふぁ」
左手で腰を掴まれ、右手で濡れた花芽をスリスリと扱かれる。二度目の貫通は先ほどよりもすぐにメルの身体を快楽へ引きずり込み、抵抗する間もなく絶頂まで導く。甘い興奮と激しい脈動に全身を奪われ、あっという間に頂点を極める。
「だめぇ、だめ、も……また……わたし……ッ」
「ああ……イッていい、ぞ……メルっ」
「あ、あああああっ!」
遊真の誘導に導かれるように、メルは彼のお腹の上で再度絶頂を迎えた。きゅうきゅうと膣を締め付けるように力が入ると、遊真が少し辛そうに表情を歪める。
「っぅ、ん……んぅ、ぁ……っ」
ふるふると痙攣する身体から、再び熱塊がずるりと抜け出る。その瞬間、最後の堰を切ったように彼もメルの股の間に精液を振りまいた。
遊真の射精を知った瞬間、全身から力が抜けて彼の胸の上にくたりと倒れ込む。遊真にさらさらと頭や髪を撫でられると、心地良さからそのまま眠ってしまいそうになったが、遊真はまだ寝落ちすることを許してはくれなかった。
「ほらメル、ちゃんと再生しないと。女神の権限、剥奪されるぞ」
――そこまでは言っていない。
メルが処女膜を回復させるのは、他の神々にからかわれたり、女神への信仰心が薄れることを懸念しているからだ。女神の威光が失われれば、折角遊真が努力してくれたことが無駄になってしまうから。
そう。メルが処女喪失を隠そうとする本当の理由は、ここまでメルの面倒を見てくれた遊真を悪者にしないため。女神に手を出したとんでもない奴だと彼が後ろ指を指されないために、メルは処女であり続けようとしているのだ。
もちろんメルも悲しい思いをする可能性はあるが、それよりも彼のためという気持ちの方が大きい。だと言うのに、遊真はニヤリと笑みを浮かべてメルを存分にからかおうとするのだ。人の気も知らないで。
「だめ……もう、無理、です……」
「……そっか。残念だけど、ここまでだな」
メルが遊真の顔を見上げて懇願すると、ようやく諦めてくれたらしい。メルの頭を撫でて終わりを告げる言葉を呟く。
これで少しは彼の望みを果たせただろうか。女神という高潔な立場にありながら貞操観念が低いのではないかと言われそうだが、それよりも今は今後の遊真のことばかり気にかかる。これを最後に遊真がここを離れて新しい人生を歩き出すのかと思うと、少しだけ寂しい気持ちだ。
けれどメルがわがままを言う訳にはいかない。どんなに切なくても、これが彼との最後の思い出でも、願いを叶えられたのならそれで良い、と思ったのに。
「じゃあ続きは明日にするか」
「!?」
至極当然のように、ごく自然に、また明日も同じことをすると言われてメルはその場にがばりと起き上がった。驚きのあまり眼窩から目玉が転がり落ちそうになる。
「え、あ、明日もするつもりですか……?」
「するだろ、そりゃ」
「え……遊真さん、いつここを発つつもりですか?」
「……は? 何が?」
メルの問いかけに、遊真が不機嫌な声を出す。声だけではなく表情まで不機嫌そのもので、まるでメルの言葉が気に入らない、とでも言いたげだ。
「明日も、じゃなくてこれから毎日、一生だ。俺は異世界には転生しないし、元の世界にも戻らない」
メルを腹の上に乗せたまま腕をがっちりと掴んで、恥ずかしげもなく堂々と宣言する。
「ポンコツ女神さまがちゃんと守護世界を回していけるように俺がサポートしてやる」
「ええ、えええ……?」
この際だからぽんこつは認める。それはもう紛れもない事実なので否定のしようがない。
けれど、問題はその後だ。守護世界の適正な運用のためにメルのサポートをする、というのは一体どういう意味だろうか。
「あの……それって私を操って私の守護世界を支配するってことですか?」
「いや? 俺は正直メルの守護世界がどうなるかなんてどうでもいい。ただメルが困って泣きべそかいてる顔を見た……ンンッ」
「……」
「メルの傍にいて、メルの力になりたいんだ」
「今、結構聞き捨てならないこと言いかけましたよね?」
聞き間違いだろうか。もし聞き間違いじゃなかったら、遊真は今『メルの泣き顔を見たい』という理由でここにいる、と言わなかっただろうか?
「反論できる元気があるなら、もう一回するか? ん?」
「い、いえ……結構で――ゃん!」
断ろうとした言葉は、メルの身体をベッドの上にころりを押し倒した遊真に遮られた。背中にやわらかい感触があると知るより前に、形の良い濡れた唇がメルの唇を吸うように撫で始める。
「一つだけ訂正する」
「はっ、あっ……ぇ?」
「メルの人選は最適だった」
ぱ、と口付けから解放してくれた遊真が、頬をすり寄せながら以前の自分の言葉を訂正して来た。
それは最近亡くなった者の中から魔王の討伐に適していそうな人を選出したとき、選んだ相手が沖田遊真だったことを間違えている、と言ったことだった。あの時『人選ミスだ』と吐き捨てたことを、遊真は取り下げたいと言うのだ。
「会社の運営よりメルの世界を運用する方が大変だけど、やりがいはあるよなぁ。死んで楽しいって変な話だけど、ここに来てからずっと楽しいからメルには感謝してる」
そろそろ別の問題にも着手する頃か? と笑顔で問いかけられる。その間にも小さな口付けを落とされ、頭や髪を撫でられる。確かにそれは相手が遊真以外の人だったら得られなかった幸せなのかもしれない。
だからメルも――諦めた。
遊真を受け入れることを、今この瞬間決めたのだ。
「メルもこうやって撫でられるの好きだろ?」
「……仰るとーりです」
えへん! と胸を張って笑ったら、その胸をまた愛おしそうに撫でられた。
後に神々の集う場で、メルティアーシアの刻の狭間に異世界からやってきて転生に失敗した悪魔が棲み付いていると噂になった。
だが当のメルの姿を見れば、以前より髪が艶めき、肌が耀き、表情が明るくなって、仕草も色っぽくなったので、誰も不幸になってないなら良いか、ということであっさり流されてしまったらしい。神とは大体いつも適当なのである。
0
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説


マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
続・上司に恋していいですか?
茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。
会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。
☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。
「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる