短編作品集(*異世界恋愛もの*)

紺乃 藍

文字の大きさ
上 下
8 / 34
王女様の婚約者

Main Story, Side Loretta. 後編 ◆

しおりを挟む

「もうすぐ同盟国との関税に係る条約と、それに付随した国内の税法……そして新しい法律に則った制度の運用が始まる」
「……え? え??」
「俺はその新しい法制度の整備に貢献した功労者として、王室から褒賞を賜ることになっているんだ。表立ってこちらから願うことは出来ないが、それとなく望みを伝えておけば、少しは融通してくれるかもしれない」

 な、なるほど。女王国への貢献の証に下賜を受けると言っても、突然要らないものを押し付けられるわけではないようです。内々に打診を受けると同時に、何か望みのものがあれば要望を伝えることが出来るのでしょう。私には縁がないので、存じ上げませんでした。

「それではコンラッド様は、アナベル様を?」
「まさか。俺がアナベル様を望んだところで、叶うはずがない」
「では何を……」

 コンラッド様の話を聞いた私は、てっきりコンラッド様はアナベル様を望み、間近だと囁かれている婚姻を確実なものにするのだと思っていました。

 コンラッド様のように素敵な男性なら、初めは心が動かなくてもそのうちアナベル様の気持ちが向くかもしれません。ならば明確にアナベル様を手に入れて、そのまま結婚して夫婦になってしまう方法を取るのかと思っていましたが、どうやらコンラッド様のお考えは違うようです。

「わからないのか?」
「? 何がでしょう……?」
「……いや。まぁ、わからないのなら今はいい」

 疑問の表情を向けられても、私には何がなんだかわかりません。ふむ、と鼻を鳴らしながら納得した顔をするコンラッド様に、もう一度意味を訊ねようとしました。けれど疑問の言葉は声になりません。

「っぁ、んっ……ふ」

 コンラッド様の整った顔が急速に近付いたと思った瞬間、再び口付けられてしまいました。驚きの声を発する前に口の中に舌が侵入してきて、私の舌を激しく求めはじめます。しかも彼の左手はまた胸を揉み始め、さらに右手はワンピースの裾を捲り上げ、そこから太腿を撫でつつどんどん足の付け根に向かって伝い上がってきます。

「あ、ふぁ、あ……っ」

 口も胸も乱され、さらに股の間にある恥ずかしい場所をすりすりと撫でられると、喉からは甘い声ばかり溢れてしまいます。慌ててコンラッド様の腕を掴もうとしても、上手くかわされてあっさり避けられてしまいます。

「あっ……や、んっ……」

 それにコンラッド様の指遣いは手早く巧みです。ショーツを少しだけ引き下げられたのかと思うと、その中に指が入り込んできて、敏感な場所を直接擦り始めてしまいました。

「あ、あっ……や……っぁ」

 けれどそこは本来、他人が触る場所ではありません。普通は用を足すときにしか機能しない場所です。

 なのにコンラッド様の指はなんのためらいもなく同じ場所を何度も擦り続けます。それにコンラッド様の指は先ほどまで手袋をしていたので乾いているはずなのに、なぜか今は濡れているのです。ぬるぬると滑る指が股の間を撫でると、そこから力が抜けたように身体が痺れてだんだん足ががくがくと震えてきます。

「あ、あっ、あん……っ」

 けれど身体は震えるのに、喉からは操られたように甘い声ばかりが溢れてしまいます。自分の意思じゃないみたいに、コンラッド様が摘まんだり揉んだりする左手と、撫でたり擦ったりする右手の動きに合わせて恥ずかしい声ばかりが止め処なく零れてきます。

 私が想像する慰めや癒しというのは、コンラッド様を抱きしめて頭を撫でる程度だったのです。こんな破廉恥なことになるなんて、想像もしていませんでした。こんな恥ずかしい状況は予定外です。

 それでも熱い視線でじっと私を見つめるコンラッド様を退けて逃げ出すつもりはありません。すごく恥ずかしいですし、いやらしいことをされている自覚はありますが、これでお慕いしているコンラッド様の気が晴れるならば――

「えっ……ちょ……? 何を、なさってる……んですか?」
「ん。ロレッタに『ちゃんと』癒してもらおうと思ってな」

 せっかく覚悟を決めたのに、その決意は一瞬でどこかへ吹き飛びます。なぜか突然ベルトを外したコンラッド様が下穿きの中から取り出したのは、大きく膨れ上がって張り詰めた男性器です。

 しかし曲線の美しさを表現しているとされる男性の像や絵画、それに医学や生物学の本に記されているものとは明らかに形状が違います。形状というより、大きさが全然違います。

 男性像や絵画で描かれている男性器もまじまじと眺めたことはありません。そんなはしたないことはしません。けれど私の記憶の限りでは、丸い部分と長い部分をあわせても、握りこぶし一つぐらいの大きさだったはずです。ですがコンラッド様のは……なんというか……かなりの長さと太さがあります。肥料を与えすぎて過剰に成長した茄子ぐらいはあるように思えます。

「お、大きくないですか?」
「そうか? 照れるな」

 いえ、照れている場合ではありません。コンラッド様は私が生身の男性の裸体を見たことがないから、馬鹿にしているのでしょうか。口元を緩めて視線を反らす表情は、私が知識も経験もないことを面白がっているように見えます。ほんの少しですが、顔を赤くするほど笑いを堪えるなんて、ひどいと思います。

「ほら、ロレッタ。後ろを向いて手をついて」
「え、え……あっ」
「大丈夫だ。挿れはしない。君の可愛い誘いには乗ったが、こんなところで無粋に純潔を奪いたくはないからな」

 そういって後ろを向かされて本棚に手をついた瞬間、スカートががばっと捲り上げられました。急に肌がスースーと冷たさを感じます。さらに下げられたショーツが股の間にぱさりと落ちると、何も穿いていない無防備なお尻をコンラッド様に突き出すような格好になってしまいました。

 ガーターベルトとストッキングだけでは、大事なところは何も隠せません。後ろを向いた私には何がなんだかわけがわかりません。けれど私の腰を掴まえて背後に密着するように立ったコンラッド様の体勢から察するに、コンラッド様はご自分の男性器を無防備になった私の恥ずかしい場所にくっつけてきたのでしょう。

「ひぁっ……!」

 お尻の間に熱さを感じた瞬間、肌の表面に柔らかい何かが擦れます。そのままぐりっと音がしそうなほどの強さで肌を擦り付けられると、私はまた甲高い声が出てしまいました。

「だめ、擦れて……っ」
「ああ、熱い……。このまま挿入れてしまいたくなる」

 いれてしまいたく……? それはどういう意味ですか、と聞こうとしたのに、コンラッド様の動きは止まりません。

「っふ……ぁ……」

 先ほどはお尻の間に固いものを押し付けられているように感じましたが、今度は少し様子が違います。どうやらコンラッド様は、私の太腿の間にご自身の男性器を挟んだようなのです。といっても私が無意識に足を開いてしまうので挟んでいるという表現は少し違うかもしれません。

「ロレッタ……よく擦れるな。気持ちいい」
「っぁ……あ、あっ、ん」

 見えません。スカートの裾が邪魔をして、股の間で何が起こっているか、私にはまったく見えないのです。見えないのですが、何かの存在を感じます。熱くて、太くて、長くて、固い何かが股の間で何度も行ったり来たりしているのを感じます。

 でもただ股の間でコンラッド様の男性器が動いているわけではありません。銅像よりも格段に大きいコンラッド様の男性器が同じ場所を行ったり来たりするたびに、私の恥ずかしい場所に先端がツンと当たっているようなのです。そのコンラッド様の男性器が敏感な場所に触れる刺激は私には少しばかり強すぎました。

「逃げるな……ほら」
「……っんぅ――んっ……ぁあっ」

 強い刺激を回避しようとすると、無意識のうちにコンラッド様の身体を避けたり、上へ逃げたりしてしまいます。叱責の声に身を震わせる私を余所に、後ろから腰を掴んだコンラッド様が耳元でなにかを呟きます。

「君が俺を幸せにしてくれるんだな。嬉しいよ、ロレッタ」
「っぁあ、ああっ……!」

 甘ったるい囁き声が響くと同時に腰をぐりぐり擦り付けられると、身体が突然ふるふると震え出しました。何かに追い詰められると同時に何かを開放するような激しい感覚に襲われて、まるで失禁したように全身が震えて股の間が麻痺していきます。

 実際、私の股の間はひどく濡れていました。私かコンラッド様のどちらかが漏らしたのかもしれない、と思いましたが、その状態を確認する前に、私はその場に崩れ落ちてしまいました。

「ありがとう、ロレッタ。君の気持ちは十分に伝わった。……俺もそろそろ動く頃合いか」

 床に倒れ込む前に、私の身体を抱きとめてくれたコンラッド様の声が聞こえました。しかしその意味を確かめる前に意識を手放してしまった私には、コンラッド様の真意に気付くことは出来ません。

 なぜ最初にアナベル様とバルトロメオ様が書庫に入ってきたときに、コンラッド様がふたりの間に割って入らなかったのか。その場でバルトロメオ様の軽率な行動を糾弾しなかったのか。現時点で婚約者であるアナベル様を責めようとしなかったのか……その本当の理由には。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

続・上司に恋していいですか?

茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。 会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。 ☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。 「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...