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番外編
魔女の秘薬は効きすぎる 後編 R
しおりを挟む「外せば楽になるだろう。ほら、手伝ってやるから」
「え、やっ……!」
最近ではリリアが身に付けている衣服を脱がせる動作も手早くなり、ぼんやりしているとあっという間に着ているものを奪われてしまう。
案の定、今日もコルセットどころか全ての衣服を脱がされ、全裸に剥かれてソファの上に転がされてしまった。
胸と下腹部を手で隠し、恥ずかしさから逃れようとする。視線を彷徨わせていると、シャツとトラウザーズの前を開いたエドアルドが身体の上に覆い被さってきた。
「ひぁ、……っ、ん」
身体を隠す腕を退かされ、左右の胸を同時に掴んで揉まれてしまう。その間に落とされる小さな口付けが、喉から顔の輪郭、耳元へとだんだん上昇してくる。
「やぁ……あっ……」
くすぐったい感覚に身を捩ると、エドアルドの指先が尖った乳首をくるくると撫でてきた。その刺激にまた身体がびくんと激しく跳ねてしまう。
「ふあぁっ……ん」
身体の制御がまるで効かない。いつもなら触られていて気持ちいいと感じるほどの優しい刺激なのに、今日は異様に鋭く感じる。
胸の上の小さな果実をきゅ、と摘まれた瞬間、身体がふるるッと震えた。少し遅れて腰の奥から駆け抜けてきた快感が下肢に伝わり、足先にぴんと力が入る。
「ああ、あああっ」
「……早いな」
達したあとの強烈な快楽の波に流されて全身が痙攣していると、呟きとともに太ももを持ち上げられた。ヒクつく秘部にエドアルドの指が添うと、治まりかけていた快感がすぐに逆流してくる。
「やだ、っ、……ふぁッ!」
制止しようとのばした手が届くよりも早く、くちゅっと濡れた音が耳に響いた。その音を拾った瞬間、自分の身体の状態に気付いてしまう。
「……いやらしい身体だな」
近付いてきた唇が放つ低い声が、耳から思考を犯していく。さらに熱い吐息と舌が耳朶や耳孔を舐ると、リリアの理性は簡単に吹き飛んだ。
「んっぅ、っふ、あぁ……っ」
耳からの刺激が背中をぞくぞくと震わせる。その刺激だけでも強すぎる感覚だと思うのに、エドアルドはリリアの身体から力が抜けた隙をついて、濡れた蜜壷に指を挿し込んできた。
「やっ、そこ……だめっ! いま、だめです……っ」
必死の訴えも虚しく、濡れた泉はエドアルドの指を簡単に飲み込んだ。そしてそのまま、手と指先を激しく動かされてしまう。
「やぁっ、あああ……ッ」
きゅうきゅうと収縮したそこは与えられる激しい快感に抗えず、あっという間に二度目の絶頂に到達した。
「っはぁ、あ……は……」
「挿れるぞ」
エドアルドが少し急いたように呟く。力が抜けて肩で息をするリリアの返答も待たず、猛った剛茎が突き入れられた。すでに数回達してぐずぐずに溶けた蜜孔は、硬く大きく変貌した凶器でも簡単に受け入れてしまう。
「ゃあ、あぁッ!」
「これは……耐えられない、な……」
はぁっ、と濡れた吐息交じりの声を聞く。返事の隙さえ与えられず、エドアルドの腰は突き上げを始めてしまった。
「やっ、あっ、あぁん……!」
「……ッ、まず、い……っ」
途切れ途切れの声が耳朶を掠める。雄々しいようで、弱々しい。か細いようで、熱の籠った声。その色を含んだ呻き声を聞いて、リリアはエドアルドにも余裕がない事を知る。
そっと腕を伸ばすと、すぐに正面から抱きしめられて再び深いキスを与えられた。
「はぁ……、ふ……」
けれど腰の動きは止まらない。むしろだんだんと速さを増し、最奥を荒く潰される。重ねた唇の間からは、くぐもった声が溢れてしまった。
「あうっ、っふ、ぅ……」
腰の動きが速まると、強制的に昇り詰められる心地を味わう。いちばん奥に鋭い存在を感じる度に全身ががくがくと震える。無意識のうちに蜜孔を締め付けてしまうと、エドアルドが悩ましげな表情をした。
「やぁああっ……あん、んぅ――!」
くんっ、腰を突き上げられると、リリアの身体は快感に弾けた。同時に、中で蠢いた陰茎に熱を吐き出される。身体に触れられて達する時と違い、奥を突かれて達する時の快感は深く長く全身を支配していく。
「はぁ、あ……えど、さま、ぁ……」
何度か身体を震わせながら愛しい名を呼ぶ。もう一度優しいキスをされて微笑まれると、エドアルドの愛情を感じた。
よくわからない薬を飲んでしまったせいで、いつもより激しい行為になってしまった。けれどこれで終われる――そう思うも束の間。
まだ快感の残り火が燻る身体を抱き起こされ、エドアルドに顔を覗き込まれた。上手く力が入らない首を動かして顔を上げると、エドアルドが優しく笑っている。
「背もたれに手をついて」
「ふぇっ……?」
にこやかに言われた言葉に対して間抜けっぽい声を零すと、クルリと身体をひっくり返された。そのままソファの背もたれに腕をつくよう身体を固定され、エドアルドに背中を向ける格好にさせられてしまう。
夕暮れの残光がさすエドアルドの私室で、オレンジ色に染まったソファの背もたれに手をついて、全裸で後ろ向きにされるという状況。
「ちから……、入ら、な……」
力が入らないと言い訳をして恥ずかしさから逃れようとしたが、背後に感じたエドアルドの体温がその言葉を最後まで言わせなかった。
エドアルドも達したはずなのに、かすかにお尻に当たっている陰茎は未だ昂ぶったままだ。なぜ……と愕然とする時間も与えられず、腰の位置をずらされて指先で花弁を広げられてしまう。あ、と声を零す前に、背後から再び熱の塊を挿入された。
「ひぁああぁ……っ!」
つい大きな声が出てしまう。部屋中に響いた自分の甘ったるい声に恥じ入り、思わず顔の位置を下げる。背もたれについた腕に唇を押し当て、後ろから貫かれる衝撃とその度に零れる吐息をどうにか打ち消そうと試みる。
「あっ、ふぁっ、ぁん、んぅっ」
「どう、だ? ……気持ち、いいか?」
「や、わかりまっ……っ、あぁッ」
エドアルドの荒い息遣いが耳朶をくすぐる。途切れ途切れの声は彼の興奮度を示しているようで、その様子にリリアの性感も高まってしまう。
滋養強壮効果で精力が付く。体力回復効果で果ててもすぐに回復する。虚弱体質の改善効果で身体の感度が増す。恐らく行為の後は魂が抜け落ちるほどの疲労感を感じるはずだが、薬の効果があるうちは理性も疲労も吹き飛ぶ。
確かにメイナは、嘘のない説明をした。ただ本当のことも一切説明していない。ここにきてようやく、彼女が生粋の魔女であることを思い出す。魔女はいつだって虚構と悪戯を好むのだ。
「あぁ、あっ、やぁッ、だめぇっ……!」
「は……、――くっ……」
引いた腰を、ぐりっと一気に押し込まれると、その強烈な圧迫感から簡単に絶頂を迎えてしまう。ソファを握りしめるようにして快感に耐えようと思ったが、骨の髄まで砕くような衝撃に抗うことは出来なかった。
きゅうぅっ、と蜜壺を締め付けてしまうと、耐え兼ねたエドアルドの剛茎も暴発したように熱を吐いた。衝動的な吐精の余韻は長く、最奥に熱を擦りつけられているような錯覚さえ感じる。
ぐったりと力を失った身体がソファからずり落ちると、収まっていた塊がぬるりと抜け出た。
呼吸と思考を整えながら、ぼんやりと窓の外を見る。時間を考えるとそろそろ晩餐の頃だと思うが、今は食事よりもとにかく眠りたい。
そう思ってソファの上へ身体を横たえつつ瞳を閉じかけたところで、再び足を持ち上げられた。ぐいっと広げられた脚の間には、確かに一度抜け出たはずのエドアルドの剛茎。直視するのは躊躇われたが、無意識に視線を下げるとそこが全く衰えていないと気が付いてしまった。
えっ、と顔を上げると、目が合ったエドアルドが優しく『ん?』と首を傾げる。
「え、ちょっ……エドさま、まって……!」
「待たない」
肩からすべり落ちたシャツを完全に脱がないところと、獲物を捕らえたような獰猛なサファイアブルーに妙な色と艶を感じる。けれどリリアは、その色気にあてられている場合ではない。
足を持ち上げられ、膝関節と股関節を曲げられて左右に開かれた場所へ、再度熱の塊を埋め込まれる。今度は猶予さえ与えられず、一気に奥まで押し込まれた。
「ああぁッ……!」
それだけでもどうにかなってしまいそうなのに、エドアルドの指先は熟れた花芽をくりゅくりゅと扱き出す。震える陰核を撫でる動きは、リリアの理性を極限まで削り取った。
「ああ、あっ、あ、んッ……!」
「リリアの、声は……本当にっ、……可愛い、な」
小鳥のようだ、とエドアルドが傍で呟く。けれどそんなに可愛らしいものではない。蜜壺の奥を突く感覚を拾い過ぎてしまって、途切れた声しか出せないだけだ。
それを察しているはずなのに、エドアルドは更に腰の動きを速めて、リリアの喉から声を絞り出そうとする。
「やぁ、ぁん、んっ、ン」
じゅぷ、ぐしゅ、と湧水のような濡れた音が響く。もはやどちらのものか分からない甘い蜜と白い蜜の混合物が、二人を隔てる摩擦を減らしてより卑猥な抽挿を促す。
「あ――っ、やぁ、ああっ!」
ぱちゅ、ぱちゅん、と肌と肌がぶつかる音がする。その動きと熱い塊が内壁を抉るたび、意識が飛びそうになる。
「あぁ、あっ、あ、あぅ」
「かわいい……」
「んん、あ、っぅ、ん……!」
「リリアは、……俺に、抱かれるの……好きだろう?」
それはもちろん嫌いではない。けれどこんなにも強く激しく淫らに愛されると、良し悪しの判断も出来なくなってしまう。首を振っているのが縦なのか横なのかもわからず、ただ必死にその腕に縋る。
「ふぁっ……あぁ、あッ」
溢れ出る声が止められない。彼の動きに合わせて揺れる腰の動きも、はしたないとわかっていても止められない。
下腹部の奥底からやってきた快感が、理性と本能を綯交ぜにしながら快楽の極みへと誘う。
「やぁ……、あん、おくっ……熱……いぁああっ!」
いちばん奥にまた熱い精を吐かれ、リリアの身体も薬効と快感を放出するように身悶えた。
同時にエドアルドの欲望を全身で受け止めたように感じたが、瞳を開くとエドアルドの瞳はまだ足りないと訴えていた。
「あ……、の……?」
身体はまだ火照っているが、もう体力がもたない。そろそろ許してもらおうと思ったのに、エドアルドに先手を打たれた。
「そろそろベッドに移動しようか」
エドアルドににこりと微笑まれる。その笑顔を見たリリアは、達したばかりにも関わらず血の気が引いたような心地を覚えた。
こういう場合、いっそ意識を手放してしまった方が解放してもらえるのではないか――そんなことを考えて顔を上げると、機嫌のいいエドアルドにまた優しく口付けられた。
*****
どうやって寝室へ移動したのか記憶が定かでない。だが意識がはっきりすると、そこは確かにベッドの上だった。首を動かして隣を見ると、エドアルドが楽しそうにリリアの顔を眺めていた。
「……っ!?」
びっくりして飛び跳ねた心臓が落ち着くまで、シーツを顔まで引き上げてエドアルドの視線から隠れる。
メイナの言う通り、確かに滋養強壮、体力回復、虚弱体質改善の効果があった。頭は割とすっきりしている。だが身体は疲労困憊で、今は起き上がれる気がしない。薬剤を返品したくなった人の気持ちも……よくわかる。
「またもらって来ようか。リリアの乱れた姿は可愛いし、気持ちいいし、いい事ばかりだ」
「……もういやです」
エドアルドはいつもの通りに身体が動くらしい。目覚めたリリアは彼の腕に頭を抱えられて、髪を撫でられて、口付けられて、されるがままになるしかない。
さすが鍛えている人は体力がちがう、なんて感心する気力も起こらない。反論の言葉すらまともに出て来ない。
エドアルドは最初からあの小瓶の正体を知っていたのだ。姉弟がかりでリリアにいたずらをするなんて、ひどすぎる。
「今度はちゃんと一本ずつ飲むことにしよう。体力の回復が早いぞ」
「……」
もし魔女がどんな薬でも作れると言うならば――リリア個人的には、エドアルドが人の話をちゃんと聞いてくれるようになる秘薬を作って欲しいと思う。
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