✕✕✕すぎる大賢者様は、○○の成長がとっても早い!

紺乃 藍

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第6話 R

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 約一週間ノエルの様子を観察してみたが、やはり彼の髪は伸びるスピードが早い気がする。

 ノエル本人に聞いても『気のせいだ』『変わってない』とはぐらかされてしまうが、どう考えても普通の成長速度ではないと思うのだ。一日で数センチ、三日経てば十センチも伸びていて気のせいということはないだろう。

 もちろんノエルが最初から三日で十センチ髪が伸びる人であれば、さほど気にならなかっただろう。けれど違う。確かに以前から散髪時に髪をもらってはいたが、その頻度は二カ月に一度ほどだったのだ。

 不思議な違和感が気になって仕方がないマリーは、店の定休日を使ってノエルの髪の秘密について調べることに決めた。

 やって来たのは国立図書館。樹海のように入り組んだ本棚には、古今東西から集められたさまざまな本や文献が所狭しと詰め込まれている。知識の宝庫とも言える図書館のロフト席で、マリーは数冊の本を前に唸り声を上げていた。

「うーん……?」

 マリーが調べた範囲のことをまとめると『髪を抜きすぎるとハゲてしまうのは本当』『美髪を保つには栄養のある食事と適度な運動による健康維持が必須』『ハゲを改善する霊薬は作成可能だが、調合の難易度はやや高い』『下心と毛髪の成長速度の相関性は不明』だった。

「えっちな人が伸びやすいかどうか、はわからないかぁ」

 しかし一番知りたい肝心の事についてはよくわからなかった。古今東西の知識を借りても辿り着けない真実なんて、マリーには難解すぎる。

「このままノエルの髪がじわじわ伸び続けて……はげたらどうしよう」

 ロフト席から階下の様子を眺めて、ほうっとため息を零す。

 調べた中に伸びすぎたらはげるとは記されていなかったが、毛髪の成長サイクルが激しいのは髪にも頭皮にも負担がかかる気がする。ならばその負担を減らすか、本当にはげてしまったときの対処法を考えておかなければならない。

「そうだ! たしかさっき育毛剤の調合方法が……」
「……マリー?」
「ふぁっ!?」

 背後から声を掛けられたので、びっくりして飛び跳ねる。ロフト席には先ほどまでマリーの他に誰もいなかったので、完全に油断していた。

「……え、あっ、ノエル!?」

 ロフト席への階段を上がりながら声を掛けてきたのは、マリーがたった今まで心配していたノエル本人だった。

「びっくりした……仕事中?」
「ああ。でももう終わった。資料の閲覧に来ただけだ」
「へえ。大賢者様でも、わざわざ自分で図書館に来るんだね」

 補佐係とかいるんでしょ?

 と言うのを口にしたつもりはなかったが、顔には出ていたらしい。賢者や大賢者と呼ばれる高位魔法使いには、側近や小間使いのような専属の補佐係が宛がわれる。そして業務を円滑に行うための補佐係は、なぜかやたらと可愛い女の子が多いのだ。

 それを知っているマリーがムゥと頬を膨らませると、ノエルが喉で笑った。マリーの小さなやきもちは、ノエルにはお見通しのようだ。

「禁書の類は持ち出せないからな」
「……」

 ノエルは補佐係の存在に触れないよう、何気なく答えたつもりだろう。だがマリーは直前までのささやかな嫉妬も忘れて、表情が凍り付いてしまう。

 国が指定する閲覧制限がかけられた書物……いわゆる『禁書』は、マリーには持ち出しは当然、閲覧することさえ出来ない。しかし大賢者たるノエルは当然のように禁書の閲覧権限を有するらしい。しかしこればかりは、一般人は深入りしないに限る。

「マリーは調べもの?」
「うん」

 ノエルに問いかけられたので、首を縦に振る。するとノエルが、すぐににこりと笑いかけてくれた。

「えらいな。マリーはいつも努力してる」
「……っ~~」

 恋人同士になってからというもの、ノエルはよく笑顔を見せてくれるようになった。周囲の人に対して口数が少なく無愛想なのは変わらないが、マリーには以前よりもやわらかく接してくれるようになった気がする。

 自然に笑いかけてくれたことが嬉しかったが、照れが勝ってつい可愛げのない返答をしてしまう。

「そんなことないよ。まだまだ足りないのは自分でも分かってるの」
「なんだ……謙虚だな。そういうところも可愛いよ」
「ノエ……っ、ん」

 さらに近づいてきたノエルに、そっと頭を撫でられた。ここ図書館だよ? とノエルの戯れを止めようとしたが、気付くのが少し遅かったようだ。すっかり油断していたマリーは腰をかがめたノエルにあっという間に唇を奪われてしまう。

「っ、ちゅ、……だめ……っ」
「マリー、声抑えて」

 キスはだめ、と制止しようと思ったが、ノエルは聞いてくれなかった。

 席数が五つしかないロフトのカウンター席は、マリーとノエルの他には誰もいない。とは言え階下には人がいるし、吹き抜けを挟んでさらに上階にあるロフト席からだとこちらの様子は丸見えなのだ。

「やっ、のえるっ……! ここ、としょか……ん、んんっ……!」

 カウンター席の本や文献を広げていない場所に座らされ、更に深く口付けられる。焦って抵抗しようと思ったが、ノエルの手がワンピースの裾から足の付け根に向かって侵入して来る方が数倍早かった。

「ちょっ……と、まっ……っ、ふ……」

 ノエルの手首を掴んで制止しようとしても、その度に唇を塞がれて言葉を遮られる。深いキスに身体が震えて力が抜けるが、後ろに支えがないので油断するとバランスを失って崩れてしまいそうだ。

 そうならないよう姿勢に集中すれば、今度はノエルに対する注意が散漫になり制止を怠ってしまう。

「弱いな。もう濡れてるのか」
「だめ、だめっ……!」

 ショーツの隙間から入り込んだ指が膨らんだ花芽に触れる。素肌よりざらざらとしたグローブ越しにもノエルの温度を感じるようで、その感覚に驚いて首を振る。

 だが探り当てられた場所をゆるゆると扱かれると、結局は力が抜けて抵抗もままならなくなる。

「やだ……っ、そこ、っあ、ふぁ」
「図書館には魔法書グリムも多いからな。異常共鳴を抑えるためにグローブは外せない。直接触れないのが残念だが……」

 腰を引いても、お尻の位置をずらしても、ノエルの指先は執拗に濡れた場所を追いかけて撫で続ける。指の動きがだんだんと早まると、次第に声が抑えられなくなってしまう。

「マリー、こっちおいで」
「っはぁ、はあ、っ……?」

 ようやくノエルの指が離れたかと思ったら、今度は腕を引っ張られて立ち上がるよう誘導された。さらにノエルの背後にあった本棚に背中をつけて立つよう指示される。ぼんやりとする頭では何を言われたのか分からず、そのまま従いそうになった。
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