4 / 15
第4話 R
しおりを挟む返答を聞いたノエルがフッと力を抜いて笑みを作る。
魔力を抑えるために着用している黒いグローブを、前歯で噛んでずるっと引き抜く。普段あまり目にすることがないノエルの素手は、想像よりも骨張っていて男性らしい印象があった。
反対のグローブも外すと、両方合わせて床に放り投げてしまう。その手がマリーのエプロンの紐をほどいてワンピースのファスナーを下げ、肌着の隙間から素肌を探り当てるように弄る。
口付けを交わしながら慎重に衣を剥がれる感覚に、マリーの緊張感も期待と共に膨らんだ。
「ノエルの手、熱い」
「……ごめん」
きっと誰も知らないであろう、大賢者ノエルの真剣な表情。本能的な欲を剝き出しにした男性的な姿。素肌の温度――彼の手の温度は高く、触れられた場所から肌にも熱が灯るようだ。
「マリーの肌も、熱い」
「……ん、……っ」
肌着の下に滑り込んだ手が、胸の膨らみに優しく触れる。誰にも触られたことがない肌を揉むように撫でられ、か細い声が喉から零れ出た。
「あ、ノエル……そこ……っ」
「気持ちいい?」
耳元でそっと訊ねられ、恥ずかしさを感じつつもコクコクと頷く。胸に触れられることが気持ちいいとは知らなかったが、尖った場所を指の腹で撫でられれば、身体がふわふわと熱を持って軽くなる気がする。
「気持ちいいなら良かった」
「よく、ない……私だけ、こんな……」
「俺も触ってるだけで気持ちいい」
ノエルが自信満々に言い放つので、マリーは『嘘でしょう』と言いたくなった。けれどノエルはマリーの仕草には構わず、今度は胸ではなく下肢へ触れる。大きな手がワンピースの裾を捲り上げて、ショーツの上から敏感な場所に触れると、身体が反応して背中が仰け反った。
「っあ、っ……ん」
「もう濡れてる。……マリーは初めて?」
「っ……あ、たりまえ、でしょ……っ……」
「その割に感度がいいな」
性行為については、ある程度の知識はあるが経験はない。しかもその知識でさえ、魔法使いに必要な心身機能と身体構造の医学的知識であって、愛の行為を知っている訳ではない。
ノエルは知っているのだろうか……どこで覚えたのだろうか。そんなことを考えていると、ノエルの指先がマリーの濡れて膨らんだ秘芽を弾いた。
「ゃああん、っ!」
「ああ、敏感な体質なのか?」
「ちょ、だめ……っ……!」
「俺も初めてだから、特段上手いとは思えないしな」
「あっ、あ、ぁん」
「中もすごい濡れてるし……指もスムーズに入る」
ノエルは感心したように頷いているが、その冷静な言葉と指の動きが全く釣り合っていない。マリーは大好きな人に身体中に触れられ、撫でられ、耳元で囁かれているからこそ、敏感に反応してしまうだけ。
当然知識だけで実体験はなく、初めての感覚の連続に戸惑ってばかりだ。だが困惑するマリーと異なり、ノエルの指先は慣れ親しんでいるかのように気持ちがいい場所ばかりを撫でて掻き回すように動く。
身体の奥から滲み出してくる分泌物を擦り付けるようにくちゅくちゅ、ぬちゅぬちゅと音を立てられると、余裕のある態度への悔しさと羞恥心で、声が震えた。
「そんなとこ、研究、しないで……っ」
「ああ、ごめん。……つい癖で」
少しの怒りを含めて訴える。抗議の気持ちを込めてむうっと頬を膨らませると、気付いたノエルと目が合った。
目が合った瞬間、ノエルの頬がそっと赤く染まる。
「……余裕そうに見えるか?」
「見える……」
「違うぞ。考え事をしてないと、暴走してしまいそうだから必死に頭を働かせてるところだ」
恥ずかしそうに視線を逸らしてブツブツと呟く姿が、なんだか可愛らしい。
その態度を見て、なるほど、と納得する。大賢者であるノエルは叡智の塊のような存在で色々な魔法や知識を持つが、実際の経験の有無とはまた異なるらしい。
だから目の前の事象と自分の知識を照らし合わせながら、探り探りマリーの身体を理解しようとしているようだ。けれど愛の行為には理論も解釈も必要なんてない。
「ノエルばっかり冷静でいようなんて、ずるい」
「マリー……?」
「変になってよ。私もノエルが冷静じゃなくなるとこ見たい」
「……それは普通、男の台詞じゃないか?」
ノエルがフッと破顔する。その言葉に『そうなの?』と聞き返そうと思ったが、言葉にはならなかった。
ワンピースをお腹の傍まで捲り上げられると、両足をかぱりと開かれる。いつの間にかショーツを剥ぎ取られていたせいで露出された場所に、熱く猛った塊を宛がわれた。
「え……、あ……あああっ!」
「っ……マリー……!」
ぷつ、と熱い塊を埋められた瞬間、喉から悲鳴に似た声が溢れ出た。あまりの衝撃に身体が仰け反ると、ノエルもその動きに反応して低く呻く。
「痛い……か?」
「っうん……いた、い」
「……一旦、抜くか」
ノエルの言葉に、ぶんぶんと首を振る。自分の否定の行動でさえ下腹部に響いて痛みに変わるが、不快なほど苦しい激痛ではない。
「痛くても、っ……いい、のっ」
痛くてもいい。激しくてもいい。
男性経験豊富な友人のベルから、最初は痛いものだと聞いていたので、このぐらいは想定の範囲内だ。それにどんなに乱れても、苦しくてもがいても、このはしたない姿は誰も知らない。
「ノエルしか、知らないから……っ」
「っ、……君は……!」
マリーの懇願に、ノエルが焦ったような声を零した。彼は何かを言いかけたようだが、く、と小さな声を零すと、腰を掴まれてそのままさらに貫かれた。
「あっ、や、……っぁ、あん、ん」
やはり痛みがあって、気を抜けば涙が零れそうになってしまう。秘部が飲み込んだ塊は硬くて太くて熱くて、ノエルが動く度に衝撃を感じて身体が上へ逃げてしまう。
けれどそれも最初のうちだけで、唇を重ねられ、緩急をつけて優しく慣らされると、次第に痛みが和らいでいった。
「ふぁ、あっ……」
代わりに繋がった場所から熱が生まれる。それに濡れた感覚も。
ぐ、と押し込まれた瞬間、ぐちゅ、ぬちゅ、と卑猥な音が溢れた。その音を聞いているうちに、だんだん思考が蕩けて、身体が快感を拾い始める。痛かったはずの抽挿に、全身で反応して過敏に跳ねるようになってしまう。
「ん……っぁ、だめ、っ……」
「マリー……!」
「あ、ゃっ……ああぁっ!」
きゅう、と力が入った瞬間、身体の奥から強烈な感覚が沸き起こって身体がびくんっと跳ねた。直後に快感の波に襲われ、下腹部からぶわりと熱が広がる。
身体がふわふわする。直前まで身体の中で熱が暴れ回っているように苦しかったのに、今は蓄積していたものを解放できたように、なんだか気持ちがいい。
ノエルも同じ状態になっていたのか、視線が合うとほっとしたように微笑まれた。
ちゅ、と小さく口付けられると、マリーも安堵する。ノエルとちゃんと分かり合えたような気がして、心も身体もほんのりと熱を持った気がした。
「……暑いな」
ノエルはそう言ってベストを脱ぎ、シャツのボタンを外してばさりと衣服を脱ぎ去る。素手と同じく裸体を見たこともなかったマリーは、直前まで感じていた熱がさらに増幅した感覚を覚えた。サッと視線を外しながら、すぐに唇を尖らせる。
「ノエルの、体温が……高すぎるのよ……」
「マリーも脱いだらどうだ。身体がだるいなら、俺が脱がせてやるから」
「……ばか」
不埒な提案に口では文句を言いつつ、大人しく従う。初めての強烈な感覚を知って身体が動かないのは事実だが、彼がまだマリーの肌に触れたがっていることは察知できた。それにマリーも、もう少しノエルの温度を知りたい。
ふと、肌着のリボンをほどいているノエルの頭部に視線を移す。
あれ? と違和感に気が付く。
ノエルは今日の昼間、確かに耳が見えるほどの長さまで髪を切ったはずだ。なのにすでに、耳介の上部が黒髪に隠れている。それに襟足も……うなじが見えるほどまで短くしたはずなのに、心なしか伸びている――気がする。
不思議に思って手を伸ばしたマリーだったが、耳に触れる前にノエルに見つかって捕えられる。そのまま指先にキスを落とされ、次いで唇を重ねられると、マリーの思考はすぐに快楽の波に攫われてしまった。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説


今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる