秘密のノエルージュ

紺乃 藍

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Epilogue

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「菜帆」
「わあぁッ……!?」

 後ろから突然声を掛けられ、びっくりして大きな声を出してしまった。びっくりするに決まっている。着替え中、だったのだから。

 下着姿のまま振り返ると、部屋の入り口に大和が立っていた。はぁ、とわざとらしいため息が聞こえる。

「お前、わざと俺に下着姿見せようとしてるだろ」
「そんな訳ないでしょ! 大和こそ、約束した時間より早く来ないでよ!」

 穿こうとしていたタイツを手にしたまま、振り返って叫ぶ。

 残念ながらこの部屋には鍵がない。着替え中も就寝中も侵入者を阻めない。おまけに大和も、ノックをしない。だから二年前にも趣味のひとときを見られてしまった。

 というか母も母だ。年頃の娘の部屋に男の人をホイホイ通さないで欲しい。いくら幼なじみだからといって。

 大和は部屋に入って扉を閉めると、そのまま菜帆の傍に近付いて来た。

「ちょっと、着替えるんだから出て行って!」
「いいじゃん、もうここで待つよ」
「やだ、外で待……って、ちょ、ちょっとおおぉ! 外さないで!!」
「脱がせたくなるのが男の性だって言ってるだろ?」
「今!? ここで!?」

 大和の手が腰に伸びて来るので、驚いて絶叫する。この場で下着の引き下ろされるのだと焦って身を捩る。

 その直後、扉をコンコンと叩く音が聞こえて二人の動きがぴたっと止まった。

『あんたたち、うるさいわよ』

 ――お母さんの声だ。

『ご近所迷惑になるから、もう少し静かにしなさいね?』
「……はい」
「ごめんなさい」

 扉越しに思いきり不機嫌な声を掛けられて、二人でしゅんと謝罪する。大和と違って中まで入って来ないだけ母の方が良心的だったが、この会話を親に聞かれていたのかと思うと猛烈に恥ずかしかった。



   *****



「お待たせしました」
「ん」

 着替えを済ませて家を出ると、マンションの共用廊下で大和が待っていてくれた。知らない仲じゃないのだからリビングで待っていれば良かったのに、大和も恥ずかしかったみたいだ。

「映画見に行って、飯食って。あと文房具も見たいな」
「大和」

 幼なじみから恋人同士になって、少しだけ距離感と空気が変わった。と思うのは菜帆だけのようで、大和の態度は以前とさほど変わらない。いつもと同じマイペースだ。

「あの……そろそろ、バレンタイン向けの可愛い商品が売り出される頃で。ちょっとだけ見たいなぁ、なんて……」

 菜帆は大和と恋人になったが、ランジェリーショップにまで連れていくのは忍びない。普通なら嫌がられてもおかしくないし、大和も気まずいと思う。

 だから少しだけ、コーヒーショップとかファストフードとかで待っていてくれないかなぁ。それとも、デートの最中に下着を見るのは止めておいた方がいいものなのかな。なんて、思っていたら。

「うん、いくらでも買ってやる」
「え……いや、買うのは自分で買うんだけど」

 大和はなんだかご機嫌だった。
 なぜ。と首を傾げたら、大和はもっとご機嫌になった。

「菜帆、知らないの? 男が買った服や下着は、そいつだけが脱がせていいって『特権』が付いてくるもんなんだよ」
「!?」

 キラキラで美しくて可愛いランジェリーだけじゃない。下着の世界の常識には、まだまだ菜帆の知らないことがたくさんだ。


  ――― Fin*

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みんなの感想(2件)

クリスマス🍀メリークリスマス

メリー✨✨クリスマス☺️

2021.12.26 紺乃 藍

クリスマス🍀メリークリスマスさん
コメントありがとうございます!
メリークリスマスです😀🎄💕

解除
ささゆき細雪
ネタバレ含む
2021.12.26 紺乃 藍

ささゆき細雪さん 感想ありがとうございます♪
遅くなってしまいましたが、メリークリスマスです~!
一年前のお話の加筆版なのですが、大好きな幼馴染み設定にランジェリーの要素やクリスマスの要素を詰め込んでみました☆ささゆきさんにキュンキュンして頂き嬉しいです(*'ω'*) 大和くんむっつりDTになっちゃいましたけど……笑
お読み頂きありがとうございました~!

解除

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