秘密のノエルージュ

紺乃 藍

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第16話 ◆

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「菜帆……力抜いてて」
「ん……ぅん」

 大和に促された通りに身体の力を抜くと、きゅんと収縮する蜜口に薄い膜を被った陰茎の先端が沈み込んだ。二人が同時に息を飲む音にぬぷ、くぷ、と結合部が深度を増す水音が重なる。

 ゆっくりと挿入される雄竿は、菜帆が想像していた以上に太くて硬くて熱かった。本当に灼けた鉄の塊を突き入れられているのではないかと思い、圧迫感から逃れようと身を捩る。

「っぁ、あ……っ、ふ」
「あ――き、つ……」

 挿入時の圧迫感は大和も感じているようだ。菜帆の身体に力が入る度に大和もぐっと表情を歪める。

 ただし大和は痛みを伴うわけではないらしい。何かを堪えるようにぐ、と息を詰まらせることはあるが、うっすらと目を開けて表情を確認すると、口の端を上げてふっと笑顔を零す。

「痛いだろ?」
「んん、や、やま……とぉ……」
「ごめん……一回抜くか」

 蜜壺の途中まで挿入されていた陰茎が少し引かれる。その動きに合わせて圧迫感も少し遠退くが、菜帆は逆に焦燥感を覚えた。

「やだ……! 抜かな……て、いい……」
「……菜帆?」

 抜かなくていい。きっと今止めてしまったら、次はもっと恐怖を感じる気がする。今日ここで中断したら、いくら丁寧に慣らされても、次の機会でまた痛みの感覚を思い出してしまう。

 だからここで止めたくない。さっきは一瞬ためらってしまったが、本当は大和の告白を受け入れると決めた時点で、彼のものになることも決心していた。

 それなら止めなくていい、抜かなくていい。痛みはあるかもしれないけれど、そうは言っても指を入れられたときだって気持ち良くなれた。さっきと同じく大和に教えてもらえるのなら……いや、一緒に気持ち良くなれるのなら、頑張れるから。

「ん、わかった。……じゃあまた、触ってやるから」

 菜帆の決心を汲み取ったのか、大和はそこから腰を引かず、代わりに手を伸ばして菜帆の胸に触れてきた。また両手で両方の胸をやらわかく包み込んで、ぷくりと弾けそうなほどに勃起した乳首をくりゅくりゅと撫でられる。

「んっ、ぁ、……ぁあっ」
「菜帆……ここ、好き……なのか」
「ぅ、んっ……ん、ん……気持ち、ぃ……っ」

 恥ずかしい問いかけをされていると理解しているのに、こくこくと首を振ってしまう。

 嘘ではない。大和に見つめられながら、大和の昂った陰茎を挿入されながら、大和の大きな手で胸の突起を弄られるのが気持ちいい。このまま思考がトロトロにとろけてなくなってしまいそうなほど、身体全体が熱く火照り出す。

「ン……濡れてきた」

 大和が腰を少しだけ動かすと、結合部からクチュッと濡れた音がした。その音を快楽の証だと感じたのか、大和が徐々に腰を動かす速度を上げる。

「っひ、ぁ……ああぁ、んっ」

 今度は痛くない。それどころか、気持ちいい。先ほどまでの重だるい痛みを身体のどこかに感じつつも、大和が腰をゆるく動かして振る度に、身体の奥からドロリと濃い快楽の気配が全身に広がる。

「あっ、ひ、ぁっ……!」
「~~っ、ん……っく、ぅ――」

 びく、と身体が敏感に飛び跳ねる。下唇を噛んで快感に耐える大和が、菜帆の胸から手を外して代わりに腰をがっちりと掴む。

 それがこの行為が激しくなる合図だ。と理解した直後、脚を折り曲げてお尻を持ち上げられ、上から下に向かって抉るように抽挿を繰り返された。

「ひぁ、あっ……あん、ぁっ……、あぁっ」

 激しいリズムを刻まれて、目の前で白い火花が飛び散る。胸がふるふると震える。自分の胸が揺れる振動を感じると、客観的に見れば卑猥な絵面だろうと思えたが、そこに羞恥を感じている余裕はなかった。

「――……ふ、っ……ぅぁ」
「んっ、ぁあ、んぅ……っ」
「なほ……ごめん俺……も、無理……っ」
「ああ、あっ、ああぁ――!」

 無理、と口にした瞬間、一気に引いた腰を一気に最奥まで突き入れられた。その激しい振動に、菜帆の身体も愉悦の津波に飲み込まれる。

 初めての絶頂は、菜帆の想像よりもずっと強烈な快感だった。下腹部のすべてを蹂躙するような強い刺激の後は、痙攣を伴う強い余韻に身体の全ての感覚を奪われる。気持ちがいいのか悪いのかもわからない。

 ただ抗う事の出来ない快感に支配されると、そこから先はむしろ一切の感覚が消えてしまう。臨界値の向こう側には、全力疾走したあとのような激しい倦怠感と疲労感が広がるだけ。

「やま……と……」
「菜帆……、菜帆」
「ぁ……う、ぅん……ン」

 快楽のあとの甘いだるさを貪りながら、ゆったりと抱き合って口付けを交わす。長い長い余韻を二人で楽しむように、何度も見つめ合って何度も抱き合う。

 そうこうしているうちに、だんだん意識がはっきりして、思考がクリアになってくる。そして急にやってしまった感に襲われる。

 何だか気分が盛り上がって、色々と恥ずかしい姿を見せてしまった気がする。恥ずかしいこともいっぱい言った気がする。

 我に返ってみてその相手が自分の幼少期から今に至るまでの全てを知る人だと思い出すと、その恥ずかしさはさらに一気に増幅する。

「ねえ、大和……クリスマスプレゼント、なに欲しい……?」
「……ん?」

 だから照れと羞恥を隠すように別の話題を無理矢理捻じ込む。さすがに少しわざとらしすぎるとも思えたが、大和には特に気にした様子はなかった。

「その、少し遅れちゃうけど……」

 菜帆も一応、考えるには考えたのだ。期間は短かったが、大和が下着を送ってくれると言ってくれたその日から、菜帆は菜帆なりに大和の喜びそうなものをプレゼントしようと考えた。

 しかし幼なじみである大和への気持ちに、下着を買ってくれるという発言の意味、急に縮まった距離感と、忘年会シーズンのシフトのせいで、上手く考えがまとまらないうちに今日という日を迎えてしまったのだ。

 だからまだ用意はしていないけれど、一応アルバイトをしている身なので、プレゼントを買う金銭的な余裕はある。はず。余程高いものじゃなければ……

「そう? じゃあ……」

 なんて考える菜帆に、大和がにやりと笑う。ちょっとだけ怪しい笑顔で。少しだけいじわるな表情で。

「今度は黒にするか。実はこれ探してるとき、良いの見つけたんだよなぁ……」
「……」

 なんの話か、というのは聞かれなくても分かる。だから菜帆は開いた口が塞がらなくなる。

「大和……なんか私より詳しくなってない?」
「んー? 気のせー気のせー」

 裸のまま菜帆の身体を抱きしめて微笑む幼なじみは。

 やっぱり、ちょっと、かなり、
 変態なんだと思う。

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