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第15話 ◆
しおりを挟む「大和……?」
大和が菜帆の脚を自分の太腿の上に乗せたまま、着ていたパーカーを脱ぎ捨てる。その手がそのまま、ヘッドボードの上の小さな箱に伸びる。
ベッドに寝転がった菜帆には見えない位置で、カササッとナイロンが滑るような音がした。その聞き覚えはないが心当たりがある音に、つい不安の声を発してしまう。
「先に、少し慣らさないとな」
「え……そこまで、するの……?」
視界の端に見えた正方形の小袋に、声を上擦らせながらおそるおそる訊ねる。
大和が手にしていたのは、キスや愛撫よりももっと深い繋がりに使用する『避妊具』だった。
恋人もいないし、好きな人も菜帆だけ。そう言っていた大和のベッドに避妊具が用意されているということは、彼もこうなることをあらかじめ予想していたのだろう。
それはそうだ。クリスマスプレゼントに高級ランジェリーを贈り、愛犬以外の家族が不在の部屋に誘っておいて『全くそのつもりがなかった』と言うほど彼は枯れていないはず。健全な男子大学生の大和は、こんな展開になることを……否、最初からこういう展開にするつもりだったに違いない。
「……今日はしない、っていうのは、だめ……?」
「鬼みたいなこと言うなって」
お互いの気持ちを知っているのだから、プレゼントした下着を見せて欲しいと要求されるところまでは予想していた。しかしそれ以上の壁を、今日この場で飛び越えることになるとまでは予想していなかった。
だが視線を上げて切ない表情を見せる大和に『やめて』とは言えない。軽い提案はあっさり却下されてしまったのだから、彼を止めるつもりなら本気で嫌がられなければならないだろう。
けれど菜帆は大和に触れられることが本当に嫌なわけではない。
大和が好き――優しく気遣って、労わって、時々いじわるでも菜帆の気持ちいいことを探して触れてくれる大和に、嫌悪感や拒否の気持ちは湧き起こらない。
「っ……ん、ぁ」
大和の誘導に従って力を抜くと、閉じていた花弁を左右に開かれて指の先を挿し入れられた。
楽な体勢になっていていいと言われて仰向けのままになっていたので、挿し込まれた指が彼のどの指なのかはまでは分からない。
少しずつ慎重に、そして確実に挿入されていく骨張った指に、だんだんと変な力が入ってしまう。
「や……っぅ、ん」
異物が挿入される感覚に、つい力んでしまう。尿意を我慢するときのように下腹部にキュウと力を入れると、気付いた大和もすぐに手の動きを止めてくれる。
「痛い?」
「ん……少し。……だいじょ、ぶ」
心配そうに声をかけられると、もう少しだけ頑張ってみようと思える。あと少しだけ頑張ってみて、やっぱり駄目なら止めよう、と覚悟する。
「ん、ぅ……っ――」
大和の指一本が全て花蕾に収まると、それだけで変な汗をかきそうになる。変な声が出そうになる。そこからさらに指を引き抜かれていく感覚も、体感した事のない不思議なものだった。
それを何度か繰り返されるが、あまりちゃんと力が抜けない。どうしても緊張して力んでしまうと、大和が小さく微笑んだ。
「菜帆、ちょっと自分で胸揉んでみて」
「え……え? なんで……?」
「中触られるの、痛いんだろ。気持ちいーのと同時にすれば、少し気が紛れると思うから」
大和に諭された菜帆は少しだけ返答に戸惑ってしまう。確かにあんなに濡れていた割には、いくら慣らされても圧迫感が拭えない。
気持ちいいとか気持ち良くない以前に、普段意識しない場所に大和の指が挿入されていると思うだけで、どうしても緊張してしまう。
だから少しでも気持ち良くなれる方法があるなら、それを試そうという大和の意見は一理ある。だが人に触られるのと自分で触るのでは全く別物のような気がする。
現に菜帆は、今まで下着を着脱する時やお風呂で身体を洗う時に自分の胸に触れても、気持ちいいと思ったことは一度もない。敏感な場所に触れたとしても、感情も快楽も無だ。
「あと俺の視覚の問題」
それでは意味がないのでは……と考えたところで、大和がニィと口角を上げた。
「菜帆が自分の胸揉んで気持ち良くなってるとこが見たいだけ」
「バ……ッッカ……!」
ばかだ。幼なじみは過保護でバカでちょっと変態だ。
けれどそのちょっとおバカな発言に一瞬で絆された。自分の胸を自分で揉むなんて恥ずかしいだけで気持ちいいわけがない、と高を括っていたのに。
両手で両胸を包み込み、少し強めに胸を揉む。するとなぜか、不思議と声が出てしまう。
「あ、っぁ……あ……ぁ」
「そうそう……ゆっくり、な」
大和の右手は相変わらず菜帆の蜜壺を広げるように抽挿を繰り返している。けれど左手は、菜帆のささやかな努力を褒めるように髪を優しく撫でてくれる。
でも優しいのは、口調と手つきだけ。大和の熱を帯びた鋭い視線は、菜帆の痴態を楽しんでいるように見える。その視線に快楽の得方を教え込まれているような気分になる。
自分で胸を揉んだところで気持ちがいいはずはない、はずだった。
それでも先ほど大和に触れられたときと同じように手のひら全体で胸を掴み、乳首をきゅっと摘み、突起をスリスリと擦ってみる。するとそれだけで、身体がまた熱を持ち始める。
「っぃ、あ……っ、ん……ん」
その隙に指の腹で蜜壁を撫でられると、気持ちがいいのか痛いのか、緊張しているだけなのか、快楽なのか苦しいのか……だんだんその境界が曖昧になってくる。そして――
「ぁふっ……う、ぅん、ん……」
ついに大和が蜜壺を刺激する指の動きだけで感じるようになってしまう。淫花口の上部にあるザラザラした場所を擦られると、その刺激が他の何よりも気持ちいいと思うようになってしまう。
「やま、と……?」
「いいよ。そのまま胸揉んでて」
大和の指が引き抜かれると、そこがキュン、と収縮する。いつの間にかもっと触って欲しくなっている。
そんな菜帆の変化を横目に、大和が小さく微笑む。目線をさらに下げると、彼は先ほど用意していた避妊具の封を開けて、中からぬらぬらと濡れた薄い膜を取り出しているところだった。
浅い呼吸を繰り返しながら、大和が『準備』をする様子を眺めてしまう。左手でそそり立つものを支え、右手に持った避妊具を先端部に被せて、くるくると下ろしていく。
他より少し肌の色が濃い塊に、ピンク色の膜が密着していく。その卑猥な様子に、ごくり、と唾を飲み込んでしまう。
「大和……なんか、大き、くない……?」
菜帆は、男性の陰部の標準サイズなど知らない。特に勃起時のサイズなど想像したこともなかったので、その感想が合っているのか、間違っているのかすら自信がない。
けれど今からその凶器じみたものに貫かれると思うと『絶対に無理』だと思ってしまう。
「……あんまりじっくり見るなよ」
「え……あぁ、うん……ごめん」
大和が否定も肯定もせず受け流してしまうので、菜帆もつられて頷いてしまう。
それは謝罪であって了承の合図ではなかったが、火照った身体の上にのしかかられて微笑まれると、期待も不安も恐怖も綯い交ぜになってしまう。大和の肌の熱さに身を委ねることを、そっと受け入れてしまう。
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