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第2部
後日談 2
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日付が変わって30分も過ぎた頃からボチボチお客さんが来て、いつも通りの勤務が終わった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「ふたりとも、おはよう。お疲れ様」
「「お疲れ様です」」
帰り支度が済み裏口から出ると店長と遭遇した。
いつもよりちょっと遅めの出勤だ。
「はい。可愛くん、お誕生日おめでとう」
店長から花束を差し出され、条件反射で受け取る。
「え……っと、ありがとうございます」
白い小さな花がついた小さな花束は、揺れるたびすごく美味しそうな匂いがする。
「いい匂いでしょ?カモミールだよ。この時期に咲く花ではないんだけど、家の温室で咲いていたらから花束にしたんだ。そのお花は可愛くんの誕生花でね、花言葉も君にピッタリなんだ。あと、お花はお茶にしても美味しいからお得なお花なんだよね~。あっ、一后くんにはガーベラね」
「ありがとうございます」
いつも以上のニコニコ笑顔で捲し立てられて戸惑ってしまう。
会ったら「店長、イチゴくんに優しすぎ」って、ちょっと文句でも言ってみようと思ったけどその笑顔に完全に毒気を抜かれた。
「それと、一后くん。これ、頼まれていたもの。今回は特別仕様だよ」
そう言う店長からイチゴくんは嬉しそうに紙袋を受け取った。
サイズからしてケーキが入ってるっぽい。
「ありがとうございます。代金は僕のお給料からーー」
「いいよ、いいよ。これは僕から2人へのプレゼントだと思って」
店長はそう言うヒラヒラ手を振って中に入って行った。
「歩夢先輩、帰りましょう」
オレの手を掴んだイチゴくんはオレの返事を待たずに歩き出した。
「すっげえー!」
イチゴくんの家に帰ると、リビングは誕生日仕様にデコレーションされていた。
子どもの誕生日パーティーみたいな飾りで、料理もそれに合わせたものにしてある。
敢えてそうしたシフシさんになんとも言えない感動を覚えた。
「シフシ、1人で大変だっただろう」
「いえ、私もお2人がお喜びする顔を思い浮かべながら楽しく準備をさせていただきました」
イチゴくんが持ってきた箱をテーブルの真ん中に置いたシフシさんは、オレたちを見るとそう答えた。
無表情だった最初の頃よりだいぶ柔らかい雰囲気のシフシさんは、少しだけ口の端を上げていた。
「シフシさん、ありがとうございます」
「歩夢様、お誕生日おめでとうございます」
「さぁ、パーティーを始めましょう!」
楽しいパーティーが始まった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「ふたりとも、おはよう。お疲れ様」
「「お疲れ様です」」
帰り支度が済み裏口から出ると店長と遭遇した。
いつもよりちょっと遅めの出勤だ。
「はい。可愛くん、お誕生日おめでとう」
店長から花束を差し出され、条件反射で受け取る。
「え……っと、ありがとうございます」
白い小さな花がついた小さな花束は、揺れるたびすごく美味しそうな匂いがする。
「いい匂いでしょ?カモミールだよ。この時期に咲く花ではないんだけど、家の温室で咲いていたらから花束にしたんだ。そのお花は可愛くんの誕生花でね、花言葉も君にピッタリなんだ。あと、お花はお茶にしても美味しいからお得なお花なんだよね~。あっ、一后くんにはガーベラね」
「ありがとうございます」
いつも以上のニコニコ笑顔で捲し立てられて戸惑ってしまう。
会ったら「店長、イチゴくんに優しすぎ」って、ちょっと文句でも言ってみようと思ったけどその笑顔に完全に毒気を抜かれた。
「それと、一后くん。これ、頼まれていたもの。今回は特別仕様だよ」
そう言う店長からイチゴくんは嬉しそうに紙袋を受け取った。
サイズからしてケーキが入ってるっぽい。
「ありがとうございます。代金は僕のお給料からーー」
「いいよ、いいよ。これは僕から2人へのプレゼントだと思って」
店長はそう言うヒラヒラ手を振って中に入って行った。
「歩夢先輩、帰りましょう」
オレの手を掴んだイチゴくんはオレの返事を待たずに歩き出した。
「すっげえー!」
イチゴくんの家に帰ると、リビングは誕生日仕様にデコレーションされていた。
子どもの誕生日パーティーみたいな飾りで、料理もそれに合わせたものにしてある。
敢えてそうしたシフシさんになんとも言えない感動を覚えた。
「シフシ、1人で大変だっただろう」
「いえ、私もお2人がお喜びする顔を思い浮かべながら楽しく準備をさせていただきました」
イチゴくんが持ってきた箱をテーブルの真ん中に置いたシフシさんは、オレたちを見るとそう答えた。
無表情だった最初の頃よりだいぶ柔らかい雰囲気のシフシさんは、少しだけ口の端を上げていた。
「シフシさん、ありがとうございます」
「歩夢様、お誕生日おめでとうございます」
「さぁ、パーティーを始めましょう!」
楽しいパーティーが始まった。
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