結婚を前提に異世界にきてくれませんか?

むー

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第2部

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昼食後はみんなでショッピングモールを散策して過ごした。
というのも、途中、何のスイッチが入ったのか「ブッフェのメニュー制覇しましょう」とイチゴくんが言い出し、それに乗ってついうっかり限界を超えて食べてしまった。
ご飯はどれも美味しかったけど、乗り物に乗れる状態ではなくなった。


色々歩き回って外に出ると既に陽が落ちて、キラキラとライトアップされていた。
あちこち歩き回った足はパンパンだが、今日が楽しかったし目の前の夜景は綺麗だから、今は明日のことは気にしない。

「結構時間経ったな……あと一回なんか乗って帰ろっか?」
「歩夢先輩。僕、最後はアレに乗りたいです」

イチゴくんが上を指差すのに釣られて見上げる。

「ん……ああ、観覧車か……。そういえば乗ってなかったな。じゃあ、それに乗ろーー」
「私はあちらに乗りますのでお二人で乗ってください」

オレの言葉を遮ったシフシさんが指したのは、最初に乗ったジェットコースターだった。
そしてオレたちの返事を待たずに、軽くスキップしながら乗車列の最後尾に向かった。

「……んじゃ、乗るか」
「はいっ」

オレたちは並んで観覧車に向かった。


ショッピングモールの屋上に設置された観覧車に着くと、列がほとんどなくすぐに乗ることができた。

「うわぁ、高いですね!それにとても綺麗です」
「うん。そうだな」

さっきまでいた場所で見たライトアップも綺麗だったが、上から見るのもまた違った雰囲気で綺麗だ。

「あっという間に頂上……」
「まあ小さいからな……あ、そうだ」

オレはバッグを開けると小さな紙袋を取り出した。

「はい、これ」
「?……ぁ」

オレから紙袋を受け取ったイチゴくんは中身を覗くと驚いた顔を浮かべそれを取り出した。

「歩夢、先輩……コレって……」
「うん。誕生日プレゼント」
「開けていいですか?」

オレが頷くのを確認したイチゴくんはリボンだけのラッピングを解き箱を開けた。

「14日に渡すか悩んだけど……こういうものはやっぱ当日に渡したくて……それ、オレとお揃いなんだぜ」

オレは左腕を上げ裾を捲ると、イチゴくんはオレと箱を交互に見る。

「この腕時計そんな高いもんじゃないけど防水だから、バイト中も外さなくて楽なんだ。淡雪くん、こういうの嫌いじゃなかったら……」
「嫌いじゃないです!……すごく嬉しいです」

イチゴくんはを取りだした腕時計を着けるとオレに見せてくれた。
すっげえ嬉しそうに笑うから、オレも嬉しくなって笑った。

「僕も歩夢先輩にプレゼント用意してるので、当日、貰ってくれますか?」
「もちろん。楽しみにしてる。……あ、でも、オレの方は期待しないで欲しいかなぁ……」

プレゼントに今日と、調子に乗ってお金使いすぎた。
たまにはこんなのもいいけど。

「大丈夫です。歩夢先輩からのプレゼントはどんなものも僕には宝物です」

申し訳なさそうなオレに対し、イチゴくんは笑顔でオレの手を取った。
その手に顔を近づいたと思ったら、指先にフニッと何かが当たった。

「っっ!!」

驚いて引っ込めようとしたが、手を強く握られ逃げ損なった。
イチゴくんはオレを見上げると今度は至近距離に顔を寄せてきた。

「だから……歩夢先輩。僕と結婚を前提にお付き合いして下さい」

良すぎる顔面に息が止まる。
オレを見つめる目はもっと綺麗で直視できずにギュッと目を瞑ると、更にギュッと手を握られた。

「ああ……やっぱり、今結婚してくだーー」

ガコンッ

一番下に着いた観覧車が揺れ、我に返ったオレは空いていた腕を精一杯伸ばしてイチゴくんを跳ね返した。

「……こ、断るっ!」

言い放つと、開いたドアから飛び出た。
出る時ドアを開けてくれたスタッフさんをチラッと見る。
オレたちが顔を寄せ合っていたのを見ていたのか、顔が赤くなっていて余計顔が熱くなった。


「……あ、大事なこと言い忘れた」
「?」

急に足を止めたオレを追いかけてきたイチゴくんもすぐ後ろで足を止めた。
呼吸を整えたオレは振り返って言った。

「淡雪くん。誕生日おめでとう」


第2部 おわり

__________________

第2部、ここで終わりです。
ここまでお読み下さいまして、ありがとうございました。
後日談がありますので、もう少しだけお付き合いくださいましたら嬉しいです。

※後日談は8/2、0時から公開します。
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