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第2部

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「また……と仰られるほどの面識はないと思いますが」

ニッコリ笑って、後ろに回した手を握りしめる。
根岸准教授あの人は正直オレの中では『苦手』という言葉では収まらないレベルの存在だ。
オレを蔑むような目。
たった一度の出来事から、オレはずっとその目を向けられてきた。
そして、この人の言葉はーー。

「一后淡雪くん。確認だが、君の言う『連れ』とはではないよね?」
「……仰られる意味がわかりませんが?」

ピリッと一瞬電気が走った気がしてイチゴくんを見るけど、根岸准教授の方を向いていて表情が見えない。
オオキミくんと目の前の根岸准教授に視線を移す。
イチゴくんの方を向いているオオキミくんの表情が今までに見たことがないくらいに強張っている。
逆に根岸准教授は少し驚いた顔をしていたが、オレと目が合うと口の端を上げた。

「君たち兄弟は頭脳は高いがまだまだ子どものようだね。いいか、君たちは今からでも付き合う人間を正しく選ばなければならない。学生のうちに作った人脈で社会に出たときのスタートラインが変わるんだよ。断言するよ。彼とつるむことは今は楽しいかもしれないが、いづれ君たちはその彼に足を引っ張られる」

最後の言葉にオレは下を向いてしまった。
確かに今のオレはただのフリーター。
どんなに仲良くても、社会に出たら高卒のオレはどんなに頑張っても大卒の2人と肩を並べることはできない。

……あれ?

社会に……?
あの2人は出るのか?

「はあぁ……」

大きなため息が聞こえて頭を上げると、オオキミくんが面倒臭そうな顔で頭を掻いた。

「……で?」
「で……とは?」
「それで、言いたいことはそれだけですか?……の『で』ですよ」

不機嫌丸出しのオオキミくんの代わりにイチゴくんが穏やかに言葉を発した。
その声にオレはブルリと震えた。
たぶん……。
イチゴくん、めちゃくちゃ怒ってる。
イチゴくんの様子にオオキミくんは口を噤み、根岸准教授も言葉を失った。

「だから言っただろう、根岸くん。君は誰よりも勉強ができるが、誰よりも視野が狭い……って」

陽気な声が凍りついた空気を叩き割った。


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