114 / 159
第2部
2-46
しおりを挟む
イチゴくんたちが出かけた後、オレは王妃様に付き合って午前中は図書室で本を読んで、午後は薔薇園を散策した。
現在は薔薇園にある四阿でアフタヌーンティーだ。
「私に付き合わせてごめんなさいね。退屈でしょう?」
「あ、いえ。寧ろ、お薦めしてくださった本を読まずに居眠りしてすみません」
美人が申し訳ない表情を浮かべながらの謝罪に「謝らせてごめんなさい」という気分になり、逆に謝罪する。
事実、図書室ではあまりの陽気の良さに居眠りしてしまったし。
「でも……あなた、温泉好きでしょ?」
「うっ……あー、まあ年一、家族で温泉に行ってるのもあって、好きか嫌いかと聞かれたら好きですけど……」
正直なところ、朝食の場で温泉の話が出た時、ちょっと……いや、すっげぇ期待した。
「でも、ほらオレは異世界人の部外者だし……王様の兄弟の方とは会ったこともないから、連れて行ってもらっても気不味いだけなので結果オーライかな~って」
「そんな寂しいこと言わないで」
そうは言われても、この人たちとはまだ家族ではないし、そもそもなるともまだ決めていない。
だから、家族ではない部外者が温泉入りたい欲望だけで着いていくなんて図太い神経は持ち合わせてない。
「……それより、王妃様は一緒に行かなくて良かったんですか?」
「ふふっ、それは問題ないわ。私、この世界に来てあの人と結婚したけど、あの人の兄弟の領地には行ったことがないから」
「……ん?……あの、一度も?」
思わず聞き直すと、王妃様はクスリと笑うとティーカップをテーブルに置いた。
視線が合った王妃様の目はどこか寂しげに感じたが、すぐに目を伏せられた。
「それより、アユムさん。私あなたの家族のことが知りたいわ」
再び視線が合った王妃様の目にはもう寂しげな感じはなかった。
そしてオレの質問を華麗にスルーされたことに気づけないほど。
現在は薔薇園にある四阿でアフタヌーンティーだ。
「私に付き合わせてごめんなさいね。退屈でしょう?」
「あ、いえ。寧ろ、お薦めしてくださった本を読まずに居眠りしてすみません」
美人が申し訳ない表情を浮かべながらの謝罪に「謝らせてごめんなさい」という気分になり、逆に謝罪する。
事実、図書室ではあまりの陽気の良さに居眠りしてしまったし。
「でも……あなた、温泉好きでしょ?」
「うっ……あー、まあ年一、家族で温泉に行ってるのもあって、好きか嫌いかと聞かれたら好きですけど……」
正直なところ、朝食の場で温泉の話が出た時、ちょっと……いや、すっげぇ期待した。
「でも、ほらオレは異世界人の部外者だし……王様の兄弟の方とは会ったこともないから、連れて行ってもらっても気不味いだけなので結果オーライかな~って」
「そんな寂しいこと言わないで」
そうは言われても、この人たちとはまだ家族ではないし、そもそもなるともまだ決めていない。
だから、家族ではない部外者が温泉入りたい欲望だけで着いていくなんて図太い神経は持ち合わせてない。
「……それより、王妃様は一緒に行かなくて良かったんですか?」
「ふふっ、それは問題ないわ。私、この世界に来てあの人と結婚したけど、あの人の兄弟の領地には行ったことがないから」
「……ん?……あの、一度も?」
思わず聞き直すと、王妃様はクスリと笑うとティーカップをテーブルに置いた。
視線が合った王妃様の目はどこか寂しげに感じたが、すぐに目を伏せられた。
「それより、アユムさん。私あなたの家族のことが知りたいわ」
再び視線が合った王妃様の目にはもう寂しげな感じはなかった。
そしてオレの質問を華麗にスルーされたことに気づけないほど。
0
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説


推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

続・聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』(完結)の続編になります。
あらすじ
異世界に再び召喚され、一ヶ月経った主人公の古河大矢(こがだいや)。妹の桃花が聖女になりアリッシュは魔物のいない平和な国になったが、新たな問題が発生していた。

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる