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第2部
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アウルは建物の影に移動すると屋根に飛び上がった。
そのまま屋根伝いに走り、街のはずれに移動した。
「おい、何でオレまた拉致られたんだ?また依頼されたのか?」
「あー……いや、依頼はされてねぇよ。俺が誰にも邪魔されずにアユムと話がしたかっただけ」
文句を言うオレに気にも止めず、ひときわ高い建物のてっぺんにオレを下ろすと隣に腰掛けた。
つか、この建物、3階建てくらいの高さがあって怖いんだけど。
「本当に久しぶりだな、アユム」
「4ヶ月、振り?アウルも元気そうで良かったよ。相変わらず仕事忙しいのか?」
「まあ、楽な依頼はあまりないな。あ、でも、今回は珍しく楽なうえ報酬も高いんだぜ」
アウルはポケットから袋を出すと、その中に入っていた飴玉を一個オレにくれ、もう一個は自分の口の中に放り込んだ。
「どんな仕事?……んっ、この飴美味い」
「だろ。とあるお貴族様のお嬢様のお守りってとこかな。この飴はそのお嬢様から貰ったやつ……どこの誰かは守秘義務があるから言えねえな」
「聞いてもわかんねぇから別にいいよ」
コロコロと不思議な味がする飴を口の中で転がしながら、会わなかった間のお互いのことを話した。
といっても、オレの場合は異世界のことになるから、適当に雑貨屋で働いていると話した。
「それでさ……」
異国での話をしていたアウルは突然口をつぐむと眉を顰めて舌打ちをした。
「アウル?」
「……あー意外に早かったな」
天を仰いだアウルは残念そうにぼやいた。
その瞬間、オレの体はフワリと宙に浮き、そのまま背後から抱き上げられた。
「わっ……え、淡雪くん⁉︎」
横抱きにされたオレが見上げると、不機嫌丸出しのイチゴくんの顔があった。
イチゴくんは王子様の格好のまま何もないところに浮いていた。
そして、下を見ると肩で息をしながら見上げるコウシさんと静かに見上げるシフシさんの姿があった。
「こちらとしては、もう少しゆっくりしてて良かったんだけどなぁ、王子様」
「懲りずにまた歩夢先輩を誘拐するとは、そんなに城の牢屋が気に入ったのか?」
笑みを浮かべながら立ち上がったアウルに、イチゴくんは怖いくらいニッコリ笑顔を浮かべた。
「誘拐?……はぁ?お友達とゆっくりお話しするために移動しただけだけどぉ」
「僕にはそうは見えなかったね」
オレを挟んで氷点下の笑顔で会話する2人を見上げてブルリと震えた。
そのまま屋根伝いに走り、街のはずれに移動した。
「おい、何でオレまた拉致られたんだ?また依頼されたのか?」
「あー……いや、依頼はされてねぇよ。俺が誰にも邪魔されずにアユムと話がしたかっただけ」
文句を言うオレに気にも止めず、ひときわ高い建物のてっぺんにオレを下ろすと隣に腰掛けた。
つか、この建物、3階建てくらいの高さがあって怖いんだけど。
「本当に久しぶりだな、アユム」
「4ヶ月、振り?アウルも元気そうで良かったよ。相変わらず仕事忙しいのか?」
「まあ、楽な依頼はあまりないな。あ、でも、今回は珍しく楽なうえ報酬も高いんだぜ」
アウルはポケットから袋を出すと、その中に入っていた飴玉を一個オレにくれ、もう一個は自分の口の中に放り込んだ。
「どんな仕事?……んっ、この飴美味い」
「だろ。とあるお貴族様のお嬢様のお守りってとこかな。この飴はそのお嬢様から貰ったやつ……どこの誰かは守秘義務があるから言えねえな」
「聞いてもわかんねぇから別にいいよ」
コロコロと不思議な味がする飴を口の中で転がしながら、会わなかった間のお互いのことを話した。
といっても、オレの場合は異世界のことになるから、適当に雑貨屋で働いていると話した。
「それでさ……」
異国での話をしていたアウルは突然口をつぐむと眉を顰めて舌打ちをした。
「アウル?」
「……あー意外に早かったな」
天を仰いだアウルは残念そうにぼやいた。
その瞬間、オレの体はフワリと宙に浮き、そのまま背後から抱き上げられた。
「わっ……え、淡雪くん⁉︎」
横抱きにされたオレが見上げると、不機嫌丸出しのイチゴくんの顔があった。
イチゴくんは王子様の格好のまま何もないところに浮いていた。
そして、下を見ると肩で息をしながら見上げるコウシさんと静かに見上げるシフシさんの姿があった。
「こちらとしては、もう少しゆっくりしてて良かったんだけどなぁ、王子様」
「懲りずにまた歩夢先輩を誘拐するとは、そんなに城の牢屋が気に入ったのか?」
笑みを浮かべながら立ち上がったアウルに、イチゴくんは怖いくらいニッコリ笑顔を浮かべた。
「誘拐?……はぁ?お友達とゆっくりお話しするために移動しただけだけどぉ」
「僕にはそうは見えなかったね」
オレを挟んで氷点下の笑顔で会話する2人を見上げてブルリと震えた。
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