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第2部

2-41 新年参賀

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ストロベリー王国の王族にも正月休みがあるらしい。
政務は5日までお休みだが行事は出席必須で、ちょっとのんびりできる程度らしい。

❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

再びストロベリー王国に来た2日目は王家の新年参賀が行われるため、朝から城中の人たちが慌ただしく動き回っていた。
その新年参賀に出席するのは王様と王妃様と淡雪くんたちだけで、それ以外の王族は都合が合えば、らしい。
って、結構アバウトだな。


「折角来ていただいたのに慌ただしくてすみません」

部屋に迎えに来たイチゴくんは、オレをエスコートしながら謝罪した。

「いいよ。淡雪くんも忙しいんでしょ。別に迎えに来なくても食堂までなら一人で行けるし、それがダメなら他の人にーー」
「ダメです。これは僕の最大かつ最優先の使命です。誰にも譲りませんっ」

鼻息荒く言われて「はぁ」とため息をついた。
外面は完璧な王子様なのに、こういうところが本当に残念だ。
なのに、最近では「まあいっか」と思ってしまう自分についクスリと笑ってしまう。

「とりあえず、その緩みまくった顔で国民の前に出んなよ。ガッカリされるぞ」
「はい、気を付けます」

キリッと王子様の笑顔を作ったイチゴくんと食堂に入った。


「はぁぁー。すげぇ人混み」
「アユム様、はぐれないようお気をつけください」
「あ、はーい」

『一般参賀見てみたい』とポロリと零したオレの言葉に王様が護衛騎士を1人付けることを条件に城下に出ることを許してくれた。

「すみません。付いてきてもらっちゃって」

人集りの少ない場所で一般市民に紛れたオレは同じような格好の護衛騎士のコウシさんに声を掛ける。

「いえ。アワユキ王子の大切なお方の護衛を任せていただき、とても名誉に感じております。か、かならじゅお守りしましゅ」
「ぁ……ありがとうございます」

コウシさんはいいところで噛んで勢いよくお辞儀した。
その声が大きすぎて近くにいる人が騒つかれるが、タイミングよく数発の号砲が上がった。
その音を合図に民衆の歓声が上がった。
見上げると、城壁に設置されたテラスに王様が王妃様をエスコートし現れた。
それに続くようにイチゴくん、オオキミくん、キラピカくんの順で現れ、全員が揃うと歓声は更に上がった。


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