結婚を前提に異世界にきてくれませんか?

むー

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第2部

2-20 仲直り

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イチゴくんに熱烈なハグをされたオレは危うくまだ渡る予定ではない川に片足を突っ込みそうになった。
たまたまゴミ捨てにきたバイトメンバーに無理やり剥がしてもらったが、苦笑いされた。

「ごめんなさい。先輩に会えたのが嬉し過ぎて抑えが効かなりました……」

ショボンと肩を落として隣を歩くイチゴくんについニヤけてしまう。
あんな喧嘩別れしたのに、今のイチゴくんは喧嘩前と全然変わっていない。
怪我の影響で歩みの遅いオレに合わせてゆっくり歩いてくれる"正常運転"のイチゴくんにホッとする。

「ほんっとだよ。オレ、圧死するかと思ったわ」
「ああっ」

だからつい嫌味を言ってしまうが、圧死しかけたのは事実だから、まあいいか。

「あの……」
「でも……来てくれてありがとな。オレも今日会いたかったから……あん時のこと謝りたくて……ごめんな、あんな風に怒鳴って」

イチゴくんの袖を掴んで足止めし、オレは頭を下げた。

「イチゴくんがすっげぇ心配してくれてたのわかってたはずなのに、冷静に話ができなかっーー」
「やめてください。謝るのは僕の方です。押しに弱い歩夢先輩ならちょっと強く言えばいけると思って生意気なこと言って傷つけました。それで……店長さんにもすごく叱られました」

イチゴくんは袖を掴んでいたオレの手を取り両手で握るとオレよりも深々と頭を下げた。
いつから外で待っていたのか、イチゴくんの手はびっくりするほど冷えていた。
んで、オレって押しに弱かったんだ……。
こんな時にも関わらず軽くショックを受けた。

「僕、歩夢先輩に治療を断られた時、住む世界が違うと言われたようでちょっと拗ねてました……」

少しだけ頭を上げたイチゴくんは反省しているようだが、よく見たらちょっと口を尖らせていた。
いや、「住む世界が違う」のはあながち間違いではないんだけど。

「だからって、歩夢先輩にちゃんと相談もせずに先輩のシフトを変えるのは間違ってました。それに、僕のバイト代をあげるなんて……」
「あー、うん。それは正直ムカついた。オレって金さえ払えば解決するような人間に見られてたのかなって」
「それは違いますっ」

イチゴくんは大きな声と共にガバリと顔を上げた。
って、なんで目を潤ませてるんだよ。

「っぷ。なあ、寒いしオレ腹減ったからどっか入って話さないか?オレさ、イチゴくんに話したいことたくさんあるんだ」
「っ!ぼ、僕も歩夢先輩ともっと話がしたいです。……あの、良かったら、僕のマンションに来ませんか?泊まって構いませんから」

モジモジするイチゴくんに吹き出して笑ってしまう。

「じゃあさ、ちょっと家に連絡させて」

オレはひとしきり笑った後、パーカーのポケットからまだほんのり温かいホットココアをイチゴくんの手に持たせると、ジーンズのポケットからスマホを取り出した。
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