結婚を前提に異世界にきてくれませんか?

むー

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第2部

2-11

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「あっ、先生。それは、あの……」
「うーん。そうなったら僕の仕事無くなっちゃうね。無職になったら奥さんに捨てられちゃうかも……。それは困るなぁ」

焦るオレとは対照的に先生は真面目に答えてくれ、オレはポカンと口を開けて相槌も打てなかった。
その代わりーー

「そんなことで捨てないわよ。バカねー」

隣の受付にいた奥さんがヒョッコリ顔を出して先生と笑うから、オレもつられて笑ってしまった。

「で、歩夢くんはどう思うの?」
「……へ?」
「そんな魔法のような治療法について、君はどう思うの?って話」

先生と奥さんは興味津々な目を向けられ、オレは先日のことを思い返しながら考えた。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「待って、何言ってんだよ。こんなんでストロベリー王国あっちに行くわけないだろ。こっちの世界にも時間は掛かるけど治す方法はあるから」
「でも、それではーー」
「それに、治してもらったらまたオレ寝込むだろ?それだけじゃない。この怪我がすぐ治ったら周りが不審がる」

前回、向こうの世界で誘拐されて毒針を受けたオレは魔法の治療を受けて丸一日寝込んだ。
毒と言っても痺れ薬らしいが、魔法に慣れていないオレは薬を抜いて傷口を治してもらったそれだけで寝込んだ。
たぶん、この捻挫でも治療後寝込む可能性が高い。
それに現場でオレが怪我をしたところを目撃した人がいるのに、その怪我が短期間で治ったら確実に不審がられる。
下手したらオレが治療費目当てで噓を吐いたって思われるかもしれない。

「それでもすぐ治るのならいいじゃないですか」
「はぁ?こんなの腫れが引いたら今みたいな痛みはなくなるし、ちょっとの間不便なだけだから必要ない」

オレは何度か怪我して経験あるから、それなりに対応方法は心得ている。
それでもイチゴくんは納得してくれず食い下がるから、だんだん腹が立ってきた。

「でもっ」
「あ゛ー、だからここはイチゴくんがいた世界とは違うんだよ。オレはこういう時だけ利用するのは絶対嫌だ。こっちのやり方で治すっ」

イチゴくんの手を振り払うと、ちょうどホームに滑り込んできた電車に乗り込んだ。
走り出した電車の窓から外を見ると、悲しそうな目で電車を見送るイチゴくんが見えた。

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