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第2部
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「忘れ物ない?」
「大丈夫です。あの、本当にここでいいですよ」
「だーめ。せめて駅まで送らせて。ほら、肩に掴まって」
田中さんはオレの腕を無理矢理自分の肩に回してオレを支えてくれるが、互いに不慣れで逆に歩き辛い。
「うーん。やっぱりおぶった方がいいかも」
「えっ、いや……」
戸惑うオレに構うことなく田中さんはしゃがんだ。
「早く乗って」
「……はい」
まだ仕事が残っている田中さんの時間をこれ以上奪うわけにはいかず、バレないよう小さなため息を吐いて田中さんの背中に乗る。
「立ち上がるよ~」
「はーーうわっ……ぶっ」
突然、田中さんの肩に乗せていた手を引っ張られた。
そして勢いよく顔面を強打した。
ぶつけた鼻が痛い。
でも、それ以上に無意識に踏ん張ってしまった左足が痛い。
「涙が出るほど痛いんですか?それほど怪我、酷いんですか?」
涙目で鼻を押さえるオレを心配そうに覗き込む奴を睨むけど、その視線は既にオレの足元に移っていた。
「あ、怪我をしたのは足ですか?捻挫ですか?歩けないほど痛いんーー」
「ええいっ、落ち着け!」
イラッとしてつい目の前でしゃがみ込んだ頭についチョップをかますと「ふぎゃっ」と情けない声が聞こえた。
「イチーー、淡雪くん、どうしてここに?今日は来れないって言ってたじゃん」
「いたた……用事が早めに終わったので急いで来たんです。歩夢先輩を驚かそうと思って……。それなのに、来たら歩夢先輩がいなくて……他の子から怪我をしたって聞いたら居ても立っても居られなくて……」
頭をさすりながらオレを涙目で見上げるイチゴくんにちょっと申し訳ない気持ちになる。
こんなに心配してくれてるイチゴくんの頭をチョップするなんて……。
うん、煩かったから仕方がない。
でも、一応謝ろう。
「それはゴメーー」
「あっ、頬も赤いじゃないですか」
ガバリと立ち上がったイチゴくんは、その勢いのままオレの頬を両手で挟んだ。
「イチゴくん……イタヒ……」
「大丈夫です。あの、本当にここでいいですよ」
「だーめ。せめて駅まで送らせて。ほら、肩に掴まって」
田中さんはオレの腕を無理矢理自分の肩に回してオレを支えてくれるが、互いに不慣れで逆に歩き辛い。
「うーん。やっぱりおぶった方がいいかも」
「えっ、いや……」
戸惑うオレに構うことなく田中さんはしゃがんだ。
「早く乗って」
「……はい」
まだ仕事が残っている田中さんの時間をこれ以上奪うわけにはいかず、バレないよう小さなため息を吐いて田中さんの背中に乗る。
「立ち上がるよ~」
「はーーうわっ……ぶっ」
突然、田中さんの肩に乗せていた手を引っ張られた。
そして勢いよく顔面を強打した。
ぶつけた鼻が痛い。
でも、それ以上に無意識に踏ん張ってしまった左足が痛い。
「涙が出るほど痛いんですか?それほど怪我、酷いんですか?」
涙目で鼻を押さえるオレを心配そうに覗き込む奴を睨むけど、その視線は既にオレの足元に移っていた。
「あ、怪我をしたのは足ですか?捻挫ですか?歩けないほど痛いんーー」
「ええいっ、落ち着け!」
イラッとしてつい目の前でしゃがみ込んだ頭についチョップをかますと「ふぎゃっ」と情けない声が聞こえた。
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頭をさすりながらオレを涙目で見上げるイチゴくんにちょっと申し訳ない気持ちになる。
こんなに心配してくれてるイチゴくんの頭をチョップするなんて……。
うん、煩かったから仕方がない。
でも、一応謝ろう。
「それはゴメーー」
「あっ、頬も赤いじゃないですか」
ガバリと立ち上がったイチゴくんは、その勢いのままオレの頬を両手で挟んだ。
「イチゴくん……イタヒ……」
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