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第2部

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「2人ともお疲れ様。シフト変えちゃってごめんねー」

バックルームで帰り支度をしていると店長が声を掛けてきた。

「いいえ。楽しかったから大丈夫です。なっ、イチゴくん」
「はい。とても楽しかったです」

猫耳は恥ずかしかったけど、終わってしまえばいつもより給料ちょっと多めにもらえるし、なんだかんだで賑やかで楽しかったからやって良かったって思ってる。

「それは良かった。あ、これ、良かったら食べて」
「「ありがとうございます」」

店長がくれたのはハロウィンで子どもたちに配っていたお菓子の残りだ。
ラッピングされた小さな袋にはビスケットとチョコが1個ずつと、キャンディーが2個入っていて、どれもオレが好きなお菓子だ。
オレはホクホクしながらその袋をトートバッグに入れた。

「ところで、可愛くん」
「はい?」
「あのね……その……」

珍しく言いづらそうな様子の店長に首を傾げる。
なんかイチゴくんと目配せしてる?
そんなイチゴくんは、ニッコリ笑っているのに何か圧を感じる。

「あの、てんーー」
「あーうんうん、大丈夫。なんでもないよ。お疲れ様」

店長はオレから視線を逸らすと慌ただしく店内に行ってしまった。

「歩夢先輩。帰りましょう」
「あ、うん」


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「ううっ、今日は一段と朝日が眩しいな。心なしか頭がズキズキするような気もする……」
「ははっ。そうですねー」

朝日を遮るように手を翳す。
イチゴくんと並んで帰るのも、朝日より眩しい周りの視線にも慣れたはずなんだけど……。
さり気なく辺りを見渡すと、いろんな人と目が合う。
それはほんの一瞬で、その後必ずあからさまに目を逸らされる。

「うーん……解せぬ」
「どうしたんですか?」

覗き込んでくるイチゴくんはいつも通りのイケメンだ。
なのに、いつもと違うのはいつもの視線がオレに向かっているように感じることだ。

「なんかさ、いつもと違うんだよ」
「違う?……って何がですか?」
「それがーー、ん?」

クイっと服の袖を引っ張られる。
気のせいかと思ったらまた引っ張られる。
そちらに視線を移すと、昨日コンビニに来てくれた女の子だった。

「とりっく、おあ、とりぃと」
「へっ?……ええっと、おはよう。昨日はお店に来てくれてありがとね。あとハロウィンは昨日で終わ……あ、そうだっ。はい、これどうぞ」

トートバッグからさっき店長からもらったお菓子の袋をあげると、女の子は「わあっ」と嬉しそうに受け取った。

「すみません。ありがとうございます」
「いえいえ、昨日の残りものなんで」

追いかけてきた女の子のお母さんが代わりにお礼を言ってくれた。
……んだけど、顔を上げたお母さんと何故か目が合わない。

「それで……あの……」
「?」

なんか気まずそうな顔をしているのが気になって首を傾げる。

「あのーー」
「ネコしゃん、おかしありがとー!」

女の子がお母さんの言葉を遮って大きな声でお礼を言った。

「…………ぇ……?」

オレはそっと手を伸ばした。

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