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50 8日目
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ああっ、どうしよう……
まだ、お付き合い始めたばかりなのに……
これはもう……
けっこ……
「ウルセーっ!」
バチっ
「ピャッ」
なんか煩くて振り上げた手は見事に何かに当たった。
当たった手がジンジン痛くて寝てられなくてゆっくり目を開けると、視界の端でもぞもぞ動く物体が見えた。
「……ぁ……」
「歩夢先輩、おはようございます」
顔の一部を掌の形に赤らめながら挨拶する男を目にして、昨夜のことを思い出してちょっと青ざめる。
「お、おはよ……イチゴくん」
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
イチゴくんの暴走妄想を聞かされなんとか止めさせたことで余計に眠れなくなったオレは、同じく目が冴えたイチゴくんとお喋りを続けた。
イチゴくんはこの国で過ごして感じたオレの感想を話すと興味深けに聞いてくれたが、誘拐されアウルと共に過ごした時の話をするとムスッとされた。
それでも、立ち寄った先で食べた鶏肉の煮込み料理が美味しかった話をすると「それは僕も食べたいです」と羨ましそうな顔をした。
オレが一方的に話してイチゴくんが楽しそうに相槌を打っていたのだが、次第に反応が薄くなって、終いには何も返してくれなくなった。
詰まんなかったかなとチラッと横を見ると、イチゴくんは目を閉じて……
寝ていた。
「イチゴくん?こんなところで寝たら風邪ひくぞ。もう部屋に戻って寝ろ」
「ぅ……ん。あゆむしぇんぱぁい……」
イチゴくんの体を揺すると薄らと目を開けたが、ムニャムニャしてまた目を閉じてしまう。
「おーい。イチゴくん?」
「ん……イチゴじゃないれす……アワユキって、呼ん、で……せんぱぃ……」
イチゴくんはオレに抱きついてきて、そのまま完全に眠ってしまった。
抱きつかれた際に耳元で囁かれたオレは、さらに目がギンギンに冴えてしまった。
起きる気配のないイチゴくんをどうしたものかと悩む。
このままソファーで寝かせておこうかとも考えたが、一応、イチゴくんは王子様だ。
何よりイチゴくんがオレから剥がれてくれないため、結局、オレのベッドに寝かせることにした。
無駄にデカいベッドまでイチゴくんをなんとか運び、フッカフカのベッドに投げて転がそうとする。
が、肩に回していたイチゴくんの腕がオレを離してくれず、そのままイチゴくんに引っ張られる形でオレも一緒にベッドにダイブした。
弾力のあるベッドに、オレとイチゴくんの体はバウンドし、ベッドの上で一回転した。
思わぬ形で至近距離にイチゴくんの顔が寄ってドギマギしながら様子を伺った。
が起きる様子はなかった。
綺麗な顔に不釣り合いな隈があるが、その寝顔はとても幸せそうだ。
「オレ……イチ……アワユキくんの寝顔、初めてみたかもしれない」
「ンフフ、あゆむしぇんぱぁい。もっと呼んでぇ」
「むぎゅぅっ」
首の後ろに回された腕に力が入ったイチゴくんが寝返りを打ち、オレの体はイチゴくんの体に潰された。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「……ということだ。同じベッドて並んで寝た。それ以上もそれ以下もないっ」
「そ、それはごめんなさい」
ことの顛末を話すと、イチゴくんは申し訳なさげに謝罪をしてくれた。
「夢の中で歩夢先輩が僕の名前を呼んでくれて嬉しかったんだと思います。それに……」
「それに?」
頬を赤く染め嬉しそうにハニカムイチゴくん。
なんか超ご機嫌ですな。
「それに……目が覚めたら歩夢先輩と手を繋いで眠ってて、それがとても嬉しかったんです」
え……?
記憶にございません。
まだ、お付き合い始めたばかりなのに……
これはもう……
けっこ……
「ウルセーっ!」
バチっ
「ピャッ」
なんか煩くて振り上げた手は見事に何かに当たった。
当たった手がジンジン痛くて寝てられなくてゆっくり目を開けると、視界の端でもぞもぞ動く物体が見えた。
「……ぁ……」
「歩夢先輩、おはようございます」
顔の一部を掌の形に赤らめながら挨拶する男を目にして、昨夜のことを思い出してちょっと青ざめる。
「お、おはよ……イチゴくん」
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
イチゴくんの暴走妄想を聞かされなんとか止めさせたことで余計に眠れなくなったオレは、同じく目が冴えたイチゴくんとお喋りを続けた。
イチゴくんはこの国で過ごして感じたオレの感想を話すと興味深けに聞いてくれたが、誘拐されアウルと共に過ごした時の話をするとムスッとされた。
それでも、立ち寄った先で食べた鶏肉の煮込み料理が美味しかった話をすると「それは僕も食べたいです」と羨ましそうな顔をした。
オレが一方的に話してイチゴくんが楽しそうに相槌を打っていたのだが、次第に反応が薄くなって、終いには何も返してくれなくなった。
詰まんなかったかなとチラッと横を見ると、イチゴくんは目を閉じて……
寝ていた。
「イチゴくん?こんなところで寝たら風邪ひくぞ。もう部屋に戻って寝ろ」
「ぅ……ん。あゆむしぇんぱぁい……」
イチゴくんの体を揺すると薄らと目を開けたが、ムニャムニャしてまた目を閉じてしまう。
「おーい。イチゴくん?」
「ん……イチゴじゃないれす……アワユキって、呼ん、で……せんぱぃ……」
イチゴくんはオレに抱きついてきて、そのまま完全に眠ってしまった。
抱きつかれた際に耳元で囁かれたオレは、さらに目がギンギンに冴えてしまった。
起きる気配のないイチゴくんをどうしたものかと悩む。
このままソファーで寝かせておこうかとも考えたが、一応、イチゴくんは王子様だ。
何よりイチゴくんがオレから剥がれてくれないため、結局、オレのベッドに寝かせることにした。
無駄にデカいベッドまでイチゴくんをなんとか運び、フッカフカのベッドに投げて転がそうとする。
が、肩に回していたイチゴくんの腕がオレを離してくれず、そのままイチゴくんに引っ張られる形でオレも一緒にベッドにダイブした。
弾力のあるベッドに、オレとイチゴくんの体はバウンドし、ベッドの上で一回転した。
思わぬ形で至近距離にイチゴくんの顔が寄ってドギマギしながら様子を伺った。
が起きる様子はなかった。
綺麗な顔に不釣り合いな隈があるが、その寝顔はとても幸せそうだ。
「オレ……イチ……アワユキくんの寝顔、初めてみたかもしれない」
「ンフフ、あゆむしぇんぱぁい。もっと呼んでぇ」
「むぎゅぅっ」
首の後ろに回された腕に力が入ったイチゴくんが寝返りを打ち、オレの体はイチゴくんの体に潰された。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「……ということだ。同じベッドて並んで寝た。それ以上もそれ以下もないっ」
「そ、それはごめんなさい」
ことの顛末を話すと、イチゴくんは申し訳なさげに謝罪をしてくれた。
「夢の中で歩夢先輩が僕の名前を呼んでくれて嬉しかったんだと思います。それに……」
「それに?」
頬を赤く染め嬉しそうにハニカムイチゴくん。
なんか超ご機嫌ですな。
「それに……目が覚めたら歩夢先輩と手を繋いで眠ってて、それがとても嬉しかったんです」
え……?
記憶にございません。
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