44 / 159
44 7日目
しおりを挟む
頬を撫でる心地よい風に意識が浮上し、ゆっくり目を開く。
「……やっぱり……高いな」
2日ぶりに見上げた真っ白な天井は相変わらず無駄に高い。
「んっ……先輩?起きたんですか?」
声のする方を見るとちょっと眠そうな顔のイチゴくんがいた。
そんなイチゴくんの手はオレの手をしっかり握っている。
「オレ……確か、毒に……」
「全て取り除きました。怪我も治療しましたのでもう大丈夫ですよ」
「そうか」
握られた手にちょっと力を入れたら、ちゃんと動いてイチゴくんの手を握ることができた。
その手を強く握り返され驚いてイチゴくんを見ると、泣きそうな目をオレに向けている。
この目、炎の中オレを助けに来た時もしていた。
「なんでそんな目してんだよ」
「先輩……に、危険な目に遭わせてしまいました。……守るって約束したのに……」
悔しそうに目を伏せ俯くイチゴくんのつむじを眺める。
そういえば、イチゴくんのつむじ見るの初めてだなぁ。
「イチゴくん」
「………」
「……っ。アワユキっ」
名前を呼んでも顔を上げないイチゴくんにイラッときて、握ったままの手を思いっきり引っ張る。
「えっっ」と目を大きく開いて驚いて顔を上げたイチゴくんが、受け身を取ることもなくベッドに顔からダイブした。
「ぷっ……ダサっ……アハハッ」
「……歩夢、先輩?」
布団で擦ったのか顔を上げたイチゴくんの鼻の頭が赤くなってて余計に笑える。
呆気に取られるイチゴくんを放って暫く笑ったら「グゥ」とお腹が鳴った。
「腹減ったな。アワユキくんは?」
「えっ、あの、僕はあまり……」
「オレはめっっっっっちゃ腹減った。アワユキくんがオレを助けてくれたから、オレは死なずにこうやって腹が鳴る」
空気を読んで「グー」と元気に鳴るオレの腹にニッと歯を見せると、クスッとイチゴくんが笑った。
その時「キュー」とイチゴくんのお腹も鳴った。
「ブッ、アワユキくんも腹減ってんじゃん」
「……そう、みたいです」
恥ずかしそうに頬を赤らめるイチゴくんの握ったままの手にもう片方の手を乗せてギュッと力を込める。
「とりあえず、ご飯一緒に食おうぜ」
「……はいっ。食事を用意します。歩夢先輩、何食べたいですか?」
イチゴくんに少しだけ笑顔が戻った。
「……やっぱり……高いな」
2日ぶりに見上げた真っ白な天井は相変わらず無駄に高い。
「んっ……先輩?起きたんですか?」
声のする方を見るとちょっと眠そうな顔のイチゴくんがいた。
そんなイチゴくんの手はオレの手をしっかり握っている。
「オレ……確か、毒に……」
「全て取り除きました。怪我も治療しましたのでもう大丈夫ですよ」
「そうか」
握られた手にちょっと力を入れたら、ちゃんと動いてイチゴくんの手を握ることができた。
その手を強く握り返され驚いてイチゴくんを見ると、泣きそうな目をオレに向けている。
この目、炎の中オレを助けに来た時もしていた。
「なんでそんな目してんだよ」
「先輩……に、危険な目に遭わせてしまいました。……守るって約束したのに……」
悔しそうに目を伏せ俯くイチゴくんのつむじを眺める。
そういえば、イチゴくんのつむじ見るの初めてだなぁ。
「イチゴくん」
「………」
「……っ。アワユキっ」
名前を呼んでも顔を上げないイチゴくんにイラッときて、握ったままの手を思いっきり引っ張る。
「えっっ」と目を大きく開いて驚いて顔を上げたイチゴくんが、受け身を取ることもなくベッドに顔からダイブした。
「ぷっ……ダサっ……アハハッ」
「……歩夢、先輩?」
布団で擦ったのか顔を上げたイチゴくんの鼻の頭が赤くなってて余計に笑える。
呆気に取られるイチゴくんを放って暫く笑ったら「グゥ」とお腹が鳴った。
「腹減ったな。アワユキくんは?」
「えっ、あの、僕はあまり……」
「オレはめっっっっっちゃ腹減った。アワユキくんがオレを助けてくれたから、オレは死なずにこうやって腹が鳴る」
空気を読んで「グー」と元気に鳴るオレの腹にニッと歯を見せると、クスッとイチゴくんが笑った。
その時「キュー」とイチゴくんのお腹も鳴った。
「ブッ、アワユキくんも腹減ってんじゃん」
「……そう、みたいです」
恥ずかしそうに頬を赤らめるイチゴくんの握ったままの手にもう片方の手を乗せてギュッと力を込める。
「とりあえず、ご飯一緒に食おうぜ」
「……はいっ。食事を用意します。歩夢先輩、何食べたいですか?」
イチゴくんに少しだけ笑顔が戻った。
0
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。


世界⇔異世界 THERE AND BACK!!
西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。
友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。
しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。
「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」
これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。
週一、不定期投稿していきます。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。


紅(くれない)の深染(こそ)めの心、色深く
やしろ
BL
「ならば、私を野に放ってください。国の情勢上無理だというのであれば、どこかの山奥に蟄居でもいい」
広大な秋津豊島を征服した瑞穂の国では、最後の戦の論功行賞の打ち合わせが行われていた。
その席で何と、「氷の美貌」と謳われる美しい顔で、しれっと国王の次男・紅緒(べにお)がそんな事を言い出した。
打ち合わせは阿鼻叫喚。そんななか、紅緒の副官を長年務めてきた出穂(いずほ)は、もう少し複雑な彼の本音を知っていた。
十三年前、敵襲で窮地に落ちった基地で死地に向かう紅緒を追いかけた出穂。
足を引き摺って敵中を行く紅緒を放っておけなくて、出穂は彼と共に敵に向かう。
「物好きだな、なんで付いてきたの?」
「なんでって言われても……解んねぇっす」
判んねぇけど、アンタを独りにしたくなかったっす。
告げた出穂に、紅緒は唐紅の瞳を見開き、それからくすくすと笑った。
交わした会話は
「私が死んでも代りはいるのに、変わったやつだなぁ」
「代りとかそんなんしらねっすけど、アンタが死ぬのは何か嫌っす。俺も死にたかねぇっすけど」
「そうか。君、名前は?」
「出穂っす」
「いづほ、か。うん、覚えた」
ただそれだけ。
なのに窮地を二人で脱した後、出穂は何故か紅緒の副官に任じられて……。
感情を表に出すのが不得意で、その天才的な頭脳とは裏腹にどこか危うい紅緒。その柔らかな人柄に惹かれ、出穂は彼に従う。
出穂の生活、人生、幸せは全て紅緒との日々の中にあった。
半年、二年後、更にそこからの歳月、緩やかに心を通わせていった二人の十三年は、いったい何処に行きつくのか──

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる