結婚を前提に異世界にきてくれませんか?

むー

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アウルのとこに行く?

どういう意味だ?

さっきまでオレのことを馬鹿にして大笑いしていた奴の発言を言葉通りに受け取っていいのか?

そんな思いが言葉に乗った。

「はあ?……何の冗談だよ」

冗談と受け止めたオレは不審な目をアウルに向けた。

「冗談じゃない。本気で言ってる。俺はお前……アユムのことが気に入ったから、嫁にしてもいいと思ってる」
「それこそ冗談じゃねぇかよ。イチゴくんもそうだけどオレは男だ。例え結婚したところで子どもできねぇんだぞ」

どいつもコイツも、モテる顔してるくせになんで男のオレなんだよ。
審美眼狂ってる。

「イチゴ?」
「おっ王子の渾名だよ。つか。気にすんのそこかよっ」

アウルは今度は不思議なものを見るような目をオレに向ける。

「お前、やっぱりこの大陸の人間じゃないな」
「っ!」
「そのことは、まあいいよ。……子どもなら産めるぞ。男でも」
「なっーー」

大声を出す前にアウルの手でオレの口は塞がれてしまった。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「ストロベリー王国の南隣にあるラズベリー国の神殿に特別な果実が成るラズベリーの木があるんだ」

村の出口まで並んで歩きながらアウルは説明を始めた。

「アユムはラズベリーの葉の効能を知ってるか?」
「知るわけない」

ラズベリーは赤くて酸っぱい実だった記憶はあるが、葉っぱなんて食べたことがない。

「ブハッ……。ラズベリーの葉は乾燥してお茶にして飲むんだよ。その葉には女性に必要な栄養が豊富に含まれていててな、月ものの痛みの緩和するだけでなく、出産を助けると言われているんだ。果実にはその効能はない。しかし、神殿の果実だけは違うんだ」
「どう、違うんだ?」
「そのラズベリーの木は一年に一度、満月の夜に3つだけ果実が成るんだが、その実に特別な効果が宿っているんだ。不妊に悩む女性の体を作り替えるだけでなく、男も子どもが産める体に作り替える」

さすが魔法の世界。
植物にも魔法的なものが宿るんだ。
でも、男が子どもを産むということは……。

「……それって女体化するってこと?」
「正解」

まさかとは思ったがまさかだった。
この世界はこんなに簡単に男が女の体に変わることができるんだ。
でもーー。

「アウルはもしオレと結婚したら、その果実でオレの体を女に変えるつもりなのか?」
「そこまで考えてなかったが、……いづれはそうするかもな。あの王子もそのつもりだろ。次期国王なんだから。……アユム?」

イチゴくんがオレに求婚したのは。
オレが男でも気にしなかったのは。
この世界に男が女になれる魔法の実があったからだ。
じゃあ、イチゴくんもオレと結婚したら……。

「ふっざけんなっ。オレは男だ。イチゴくんやアウルに比べたら全体的にちっちゃい……けど、オレは……オレ自身が男であることを否定したことはないっ」

体は男でも心は女の人がいることも、男だけでなく女も同性を好きなることもあるって知ってるし否定したことはない。
でも……

「女の体にする?ふっざけんな!お前らの都合でオレの体を作り替えようとすんなっ」

この世界に来て、誘拐されたこと以上にショックで悔しい。
鼻の奥がツンと痛み涙が溢れた。

「アユム……っ……ごめん」


こんな世界とこ来るんじゃなかった……。

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